「そういうお前はどうなんだよ。少しは背のびたのか?」
「…俺、もう身長についてはあきらめてるから。」
「いや、でもお前まだ15歳だろ。まだまだ成長するって!」
「そ、そうだよね!まだまだこれからだよね!」
(でも、ルーティさんって結構小柄だからなあ、スタンさんじゃなくてルーティさんに似たなら…うん、カイル。強く生きろよ?)
「何生暖かい目向けてるのさ。」
「おっしゃあ!」
「やったね、ロニ!」
ブエルを倒し勝利に沸く二人。特に被害らしい被害もなく目当ての敵を打ち倒せたことで、二人のテンションは上がりに上がっていた。
「これで孤児院の雨漏り、ちゃんと直せるね!」
「いやいや、それどころか運がよければ新しいベッドも入れられるさ!なんてったって生体兵器だぜ?普通のモンスターよりも高く売れる!」
「まあ、元がボロボロだからちょっと怪しいけどね」
「そこは気にしてもしょうがねえさ!ともかく、さっさと素材を回収しようぜ!」
そう言ってはしゃぐ彼らは気付くことができなかった。
「何をそんなにはしゃいでおるんじゃ? ロニ・デュナミス」
「それは当然…ってげ!」
「何がげ! なんじゃ? ん? 言うてみい、ほれ」
自分たちが置いてきぼりにしたアタモニ神団のお偉いさんと騎士団員たちが、自分たちに追いついてきていたことに。
騎士達を引き連れた白髪でオールバックの老司祭が、ロニの背後に立っていた。だが、カイルはこの老人か、行きの道中には居なかったことに気付く。
「ええっと、お爺さんはアタモニ神団の司祭さん? でもここに来た時はいなかったような……」
「おお、君がカイル君じゃね? このバカから話は聞いとるよ。ワシはアガレス・アグレスクというものじゃ。おっしゃる通り、アタモニ神団のしがない一司祭じゃよ。」
「いや、元騎士団の幹部で現高位司祭のことは世間一般では一司祭だなんて言いませんよ!」
ちなみに後でカイルはロニから聞くことになるのだが、彼は反レンズ優先主義者の中心人物の一人で、神団の今後を危惧して騎士をやめ、司祭になった人物だ。鉄棍を振りまわしながら戦うその姿に憧れて騎士団に入団した人も少なくないとか何とか。今回は、『エルレイン派の奴らに任せたら、そのまま懐に入れそう』、という理由で自ら今回の調査団を編成したらしい。
「あ、あの~、なんであなた様がここにいらっしゃるのでせうか? たしか私の記憶が確かなら、『年寄だから無理はやめとく。腰も痛いし』とか言って、ダリルシェイドで待機することになったと思ったのですが」
冷や汗を流しながらロニが尋ねる。カイルはロニのこんな姿は、母ルーティを怒らせた時、あるいはその親友のマリーを怒らせ、謝る時くらいしか見たことがなかった。
「いや、なに。やっぱり自分でも見てみたくなってな。噂の300万ガルドのレンズとやらを」
「さ、さようですか。って護衛無しでダリルシェイドからここまで来たんですか!?」
「何か問題あるか?」
「ありまくりでしょうよ……」
この爺さんのことだから、嘘じゃなくて本当に気が変わったんだろうなぁとか、というか護衛なしってダリルシェイド駐屯組が泣くぞとかロニが呟いているのが聞こえてくる。
「いやはや、驚いたぞ? お前さんらが遺跡について来ていたこともだが、いきなり穴に落ちるとは。日ごろから周囲に気を配れと教えただろう!」
そう言ってロニの頭をひっぱたくアガレス。だが本気で怒っている様子でもなく、どうやらこの二人にとってはただのじゃれあいのようなものなのだろうとカイルは感じた。先ほどのロニのつぶやきといい、どうやら二人はかなり親しい間柄のようだ。
「いやあれは無理ですって! 落とし穴とかならともかく、ほぼ床全抜けじゃないですか! どーせいってんですか、いや本当!」
「んなもん、いつも言っているじゃろ。気合いじゃ、気合い!」
「うわー、相変わらず無茶苦茶だこの人ー!」
これを眺めているのも楽しいかもしれないが、そろそろ疎外感を感じてきていたカイルはアガレスに一つ質問をした。
「あの~、アガレスさん? でいいんですよね?質問いいですか?」
「おう?なんじゃ?」
「俺たち、さっきここに居たモンスター……空中都市に元々いた生体兵器だったんですけど、それを倒したんです。こいつのパーツとかレンズとかアイテムって持って帰っても大丈夫ですか?」
「ああ、なるほど。つまりロニ」
ロニをジト目で睨むアガレス。
「どうせ、『大物倒せば金になるなー。でも馬鹿正直について行って、騎士団の奴等と一緒に倒すとなると分け前減るなー。だけど現場で鉢合わせたらもめるから、途中まで適当な理屈でついてって、中で撒くなりなんなりして、先に自分たちだけで、倒しちまえばいいや』とか思ったんじゃろう?」
その場に居る誰もが、ロニの頭上にギクッ!!!っといった感じの文字が見えた気がした。
(完全に思考把握されてんじゃん、ロニ)
カイルは呆れた顔でため息をついた。そう言えばこの義兄は年上に弱い。女性の好みがお姉さま好きということは置いておいても、自身を子ども扱いしてくる老人や、しっかり叱ってくれる大人にかなり弱い。たぶん孤児院で常に年長者だったからじゃないかなーとカイルは思っていたりする。が、ロニ本人に言うと戦吼爆ッ破当たりで吹っ飛ばされるのは目に見えるので黙っておくことにしているが。
「まあ、任務中なら騎士であるお前が倒したそいつのアイテムは神団で回収するところじゃが、今回お前さんは休暇中じゃろ? なら個人の物でいいじゃろ。ここには一応善意の協力者ってことで来とるんじゃし、騎士じゃないカイル君も頑張ったんじゃしな」
「本当ですか!? いやぁ、さすがはアガレスさん! 話がわかる!」
「まったく、現金な奴じゃて」
そういって喜ぶロニとつられて笑うアガレス。すると彼らの後ろから、他の司祭が話しかけていた。
「雑談はそれぐらいにして、そろそろ最深部へ向かいましょう。今回の私たちの目的は、レンズの存在の確認と、その確保です」
「わーっとるわい。ったく、少しくらいええじゃろうに。んじゃ行くぞ、ロニ。残る話は帰ってからじゃ」
「了解。うっし、んじゃカイル。とっととそいつからレンズとか取っちまおうぜ」
「うん、わかった。って言うかロニがアガレスさんと話してる間に、先に始めてるんだけどね」
あ、わりい。と、ロニも作業に加わる。なお、アイテム回収はアガレスが、「お前らが倒さにゃならんかった相手なんだから、それくらい手伝ってやれ。」と他の騎士団員にも手伝わせてくれたおかげで、すぐに終わった。
「もういいな? それじゃいくぞ」
「へいへい。しっかし300万ガルドのレンズか。一体どんなの何だろうな」
「実は俺、かなり楽しみなんだよね。そのレンズ見るの」
実は俺もなんだよ、俺も俺も、実は私もと後ろの騎士団員や司祭たちもにぎやかになる。どうやら皆気になっていたらしい。どんどん騒がしくなっていくのを、アガレスが一括する。
「ええい! すぐそこにあるんだから見たほうが早いじゃろ! はよこんかい!」
「「「「「「「「は、はい!」」」」」」」」
まったく、とあきれながら最深部への階段を上るアガレスと、それを追う騎士団員と司祭たち。そんな様子を、カイルは半ばあきれながら見ていた。なんか想像していたアタモニ騎士団とは違いすぎじゃなかろうか。そんなふうにロニに聞くと、
「あの爺さんの所くらいだから、気にすんな。」
とすがすがしい笑顔で返されてしまったので、それ以上気にしないことにしたカイルであった。代わりに、先ほどからの疑問を一つ口にする。
「にしてもロニ、あのお爺さんとずいぶん親しげだったね? アタモニ神団のお偉いさんと、言っちゃ悪いけど下っ端のロニの接点が浮かばないんだけど。」
「ああ、あの爺さんは騎士団への入団試験の時から何かと目をつけられててなあ。ことあるごとに、修行をつけてやる~とか言ってしごいてくるんだから、たまらないぜまったく。」
そうくたびれたように言うロニだったが、口調に反してその顔は嬉しそうだった。
「アガレスさんの事、好きなんだね」
「うーん、嫌いでは無いな。うっし、んじゃ俺たちも行こうぜ。いよいよ300万ガルドのレンズとご対面だ!」
「うん!」
そうして二人は、アイテム等をまとめた袋を背負い、アガレスらの後を追って階段を駆け上がっていった。
というわけで拙作初の名ありオリジナルキャラ、アガレス老が登場しました。名前の由来は、アタモニ神団キャラってことで、他原作キャラにならってソロモン72柱から。たぶん名前かぶりはないと思うのですが…。ボスには確かいなかったはず。ロニと接点のあるアタモニ神団の名ありキャラって、フィリアさんくらいだよね?たしか。他居ても印象にないなーってことで出来たキャラです。レンズ至上主義に傾倒してくアタモニ神団に危機を覚えている一派の中心人物で、たぶんそれなりに出番があるんじゃないかなと思います。作者が忘れなければ。