テイルズ オブ デスティニー2 ~疾空の刃~   作:トカGE

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設定覚書その5
・パーティメンバーは原作で覚えてない技や術も使える(作者的に無理のない範囲で)。
・サブノックやオセは強い(迫真)


1-10:『獣らしからぬ獣』と『騎士らしからぬ騎士』

「ぬおりゃああ!」

「グゥ!?」

 

 オセの前足を受け止めたまま、ロニは力任せにハルバードを振りぬく。その勢いで上空に吹っ飛ばされるオセ。だが、さすが猫科と言うべきなのか。空中でクルクルと回って姿勢を立て直すと、何事も無かったかのように着地しようとする。

 

「見た目通りと言うかなんと言うか。だが、隙ありだ!アクアスパイク!」

 

 オセが宙を舞っている間に詠唱を終えたロニが、着地した瞬間を狙って追撃の晶術を放つ。回転する水流を放つ下級晶術『アクアスパイク』だ。高速で渦巻きながら対象を削り砕こうと飛翔するそれは、もはや水流と言うより水の削岩機と言う方が正しいかもしれない。激しく渦を巻く水が、着地した瞬間の無防備なオセに襲い掛かる。

 

「ゴアァァァオ!」

 

 だが、オセの体を打ち据えるはずだったそれは、逆にオセから放たれた水流によって打ち砕かれた。

 

「アクアスパイクだと!?」

 

 そう、オセが放ったのはロニと同じアクアスパイクだった。驚くべきことに、オセは空中に吹き飛ばされ宙を舞っていた時に晶術を詠唱し始めていたのだ。そしてそれは、ロニのアクアスパイクを打ち砕いただけでなく、ロニ目がけて一直線に飛んできた。

 

(吹き飛ばされながら空中で詠唱するとか、どんだけだよ!)

 

 咄嗟に晶力の膜を前方に張るロニ。晶力防御と呼ばれるそれは、レンズから引き出した晶力によって周囲に膜を張り、相手の晶術を防ぐ技だ。ロニの作り出した晶力の膜とオセのアクアスパイクがぶつかり合う。直前にロニのアクアスパイクとぶつかり合って威力が削がれていたのか、水流はロニを傷つけることなく噴霧となって消えた。

 だが、その霧の向こうから何かがロニに向かって飛んでくる。また晶術かと再び晶力の膜を張るロニだったが、飛んできた『それ』は膜に阻まれる事なく、ロニの顔面に命中した。

 

「ぶっ、なんだこりゃ!? 砂じゃねえか! くそ、前が!」

 

 飛んできた物体は、オセが後ろ足で蹴りあげた砂だった。晶力防御で防げるのは、晶力で生み出された晶術だけだ。物理的な攻撃は防ぐことができない。飛んできた砂はロニの眼に入り、一時的に視界を奪う。そしてそれを見逃すオセではなかった。ロニが砂を払いのけるよりも速く、その鋭い爪で襲い掛かる。

 

「ぐっ!」

 

 咄嗟に横に飛びのいて避けたロニだが、避けきれずに肩を切りつけられ、一瞬だが足を止めてしまった。それを好機と判断したのか、オセはさらにとびかかり追撃を仕掛ける。

 

「しまっ!?ぐあああああ!」

 

 今度は腹部を大きく切り裂かれる。仕留めようとさらに追撃を仕掛けるオセに対し、ロニはとっさにハルバードを振るってけん制し、距離をとる。見た目に反して傷はそこまで深くはないが、出血が激しい。

 

(くっそ、ドジった!)

 

 悠長に回復晶術を唱えてる暇はないと判断したロニは、懐から『レモングミ』を取り出し口の中に放り込む。グミはこの世界では一般的な回復薬だ。薬草の効果を濃縮してあるそれは、高価なものならそれなりの深手もすぐさま塞いでくれる。レモングミはそれなりに値段はするが効果も高い。乱暴にグミを噛み砕いて飲み込むと、高いだけあり直ぐに傷は塞がる。少し動かして戦闘に問題がないことを確認すると、ふたたび武器を構える。

 

(畜生、こいつ本当にモンスターか? そこらの盗賊共よりも頭いいだろ絶対!)

 

 騎士団での日ごろの訓練や、任務で同行したことによりオセの実力をある程度は把握しているつもりのロニだったが、その認識が甘かったことを思い知る。訓練された兵士のように的確に状況を判断し最適な行動を取る、人よりも優れた身体能力を持つ存在と言うものがいかに恐ろしいかを今まさに味わっていた。

 だが、引くわけにはいかない。カイル達の方に視線をやる。カイルが加わった事で多少優勢になったものの、いまだサブノックは二人と互角以上にやりあっている。そこにオセが加われば、天秤は一気にあちらに傾くだろう。

 

(気合、入れねえとな)

 

 グミで傷はふさがったとは言え、失った血が戻るわけではない。ふらつきそうになる体を支えるため、足に力を籠める。

 

 

「グルァァァァッツ!」

「そう何度もやられるかよぉ!」

 

 飛びかかってきたオセの一撃に合わせ、ハルバードを叩き付ける。爪を打ち払われて無防備になったその顔面目掛け、反動を利用した裏拳を叩き込む。

 

「フギャッ!?」

「へっ、猫っぽい声も出るんじゃねえか!」

 

 さすがに顔への強打は痛烈だったか、悲鳴を上げのけぞるオセ。逃さないとばかりに、裏拳の勢いのままさらに一歩踏み込む。

 

「双打連蹴!!!」

 

 放たれた回し蹴りがオセの腹をとらえた瞬間、オセは大きく後ろに吹っ飛ばされた。いや、”吹っ飛んだ”。

 

「おいおい、本当にモンスターか?お前」

 

 綺麗に入ったと思った蹴りの手ごたえを、ロニはほとんど感じていなかった。おそらくオセは、蹴りの勢いを殺すため、とっさに方向を合わせてに自ら飛んだのだろう。そう言う技術があるということは知っていたロニだったが、実際にそれを、しかもモンスターが行うのを目の前で見ることになるとは思ってなかった。

 

「驚いたぜ。だけどな悪いな」

 

 だが、ロニの顔に驚きはあっても、焦りの色はなかった。

 

「今回は俺の方が一枚上手だったみたいだな?」

「!?」

 

 ロニがそう言うのとオセの姿が消えたのは、ほぼ同時だった。ロニがオセを蹴り飛ばそうとしたのは、この部屋の出口だった。当然蹴りの勢いを殺すように跳んだオセも出口に向かって跳ぶ事になる。

 

「グッ!ギャッ!フニャ!」

 

 出口の先にあるのは、先ほどブエルを倒した部屋に続く下り階段だ。とっさのことで体勢を整えることができなかったオセは、そのまま下へと転げ落ちていった。

 

「あーあ、ありゃ相当痛いだろうなあ。」

 

 派手に落ちたなあ。などと思いながら、部屋の出口を見つめるロニ。戦いにおいて、何も真正面からぶつかる必要なんてどこにもないのだ。それは、ロニの戦いの師匠であるルーティやマリーから学んだ考え方だ。利用できるものは全て使って勝つ、どんな手を使っても生き残る、ただしなるべく人の道は踏み外さない。

 そんなレンズハンターとしての戦い方を子供の頃から叩き込まれていたロニにとってもそれは当然の考え方だった。騎士団に入ってからの師であるアガレスもそう言ったロニの考え方を『面白い』とし、騎士団らしいガッチガチの型にはまった戦い方を強制することはなく、結果ロニは、騎士仲間から『騎士らしくない』『不良騎士』などと呆れと親しみを込めて呼ばれていたのだった。

 

「まあ、確かに騎士らしくない戦い方ではあるのは認めるけどよ。命がけの戦いでそうも言ってられねえよな?」

 

 そう言いながら、ロニはすぐに出口に向かい、階段下に向かってハルバードを構え、晶術の詠唱を始める。相手はまかりなりにもモンスターだ。人間の数倍打たれ強いそれは、階段から落ちた位でおとなしくなってくれるような相手ではあるまい。事実、下から何かが駆け上がってくる音が聞こえる。すぐに眼を血走らせたオセが姿を現した。

 

「まあ、そうだよな。だけどそんなの、こっちも解ってるんだよ!」

 

 そう言うとロニは詠唱していた晶術を発動する。

 

「スプラッシュ!」

 

 上から打ち下ろす滝の様な水流を生み出す水の中級晶術が、オセの体を飲み込んで行く。大量の水は、オセもろとも階段下まで流れて行った。いくら相手が素早いとはいえ、階段を上ってくる以上動きは制限される。上がってきたところを部屋の入口で迎撃し続けて時間を稼ぐ、それがロニの作戦だった。

 

(しかし、今の手は次は使えないだろうなあ)

 

 今、スプラッシュをオセが無防備に受けたのは、階段を転げ落ちて頭に血が上っていたからだ。普通のモンスターなら、このままバカみたいに同じことを繰り返すだろうが、相手はあのオセだ。恐らく既に冷静になり、次の手を考えているだろう。

 そんなロニの予想通り、今度は階段下からオセではなくアクアスパイクが飛んできた。咄嗟に部屋の中に戻るロニ。そこを目がけて一気に階段を駆上るオセ。

 

「させるかよ! 雷陣招!」

 

 再び部屋から飛び出したロニが、オセ目がけて雷撃を放つものの、難なく避けられてしまう。だが、雷撃を避けたオセの目の前にはロニが迫っていた。

 

「さらに! 割破爆走撃もどき!」

 

 もどきと言うのもおこがましい、ただの体当たり。それでも、今の状況では効果的だった。再びオセは階段下へ落ちていく。

 

「よし、これならやれるか?」

 地の利を利用することにより、ロニは優位に立ってる。だが、優位に立っては居たが、オセが弱体化したと言う訳ではない。相手の行動は予想できない。気を抜けばいつ逆転されるか解らない、そんな綱渡りのような状況がしばらく続くかもしれないと、ロニは考えていた。だが、予想に反してそんな状況はあっさりと終わりを迎えることになる。

 

 

 

 

「うわあああああ!!!」

「カイル君!?」

 

 背後から聞こえたカイルの絶叫とアガレスの焦りの声によって。




 カイルに何が起こったか、ロニとオセの戦いの決着は次回。
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