テイルズ オブ デスティニー2 ~疾空の刃~   作:トカGE

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 その後、カイルたちの行方を知る者は、誰も居なかった(CV:グリリバ)・・・嘘。

設定覚書その7
・スピリッツブラスターは拙作ではレンズが原因で起こる現象ということに。発動後しばらく無敵、は面倒なので効果中何もかも弾き飛ばす晶力バリアが張られていることに変更。
・グミは各種薬草ごった煮を味付けして固めたもの。即効性が高いが、深い傷は治るのに時間がかかる。また、連続使用は体に負担があるからできない。


1-12:スピリッツブラスター

「む?」

 

 サブノックの振り下ろした刀がアガレスの首に届く事はなかった。

 

「やらせ……るかよ……」

 

 先程サブノックの一撃によって倒れたはずのカイルが放った蒼破刃が、サブノックの刀を弾いて軌道をそらしていた。

 

「俺の前で、誰かを殺させは……しない!」

「ふむ。その意気や良し。だが、その体で何ができる?」

 

 サブノックの言う通り、カイルの体はずたずたに引き裂かれていた。

 本来魔神剣やその派生の技は、そこまで威力の高い技ではない。だが、サブノックに誘導され、ほぼ無防備な状態でそれを受けてしまったカイルは、本来受けるはずのそれよりも大きなダメージを受けていた。普段放つ蒼破刃なら、本来ならば刀を吹き飛ばすくらいはできたたはずだ。それが剣筋をそらす程度の威力しか出なかったということが、カイルの状態が如何に悪いかを物語っていた。

 

「カイル……君……逃げ……ろ」

 

 カイルはアガレスの体に、懐から取り出した薬品を振りかける。重傷用の治療薬『ライフボトル』だ。これで、アガレスの命が直ぐに危なくなるということは無くなった。だが、サブノックの奥義を受けた彼がすぐに戦線に戻ることは不可能だろう。容体が落ち着いたことを確認すると、カイルは剣を構えサブノックと対峙する。

 

「俺はあの時、守られるだけだった。何も出来なかった。いや、むしろ足を引っ張って……だから、目の前の誰かを助けられないなんてのは、嫌なんだ!」

「なるほど、貴公も我と同じ、己が信念に命を賭する者だったか。なれば、子供だからとて手加減は無礼か。」

 

 そう言うと剣を低く構え、待ちの体勢を取るサブノック。カイルの攻撃に合わせてカウンターを決めるつもりなのだろう。それはカイルにもすぐ解った。だからこそ。カイルは、一直線にサブノックに向かって突っ込んだ。

 

「うおおおお!!!」

「愚かな!」

 

 サブナックがカウンターを合わせようと動き出すのを見て、カイルはさらに足に力を入れる。今の持久戦に持ち込む体力はない。ならば、残った全てをこの一撃に籠めるだけだ。

 

「何!?」

「うあああああああっ!」

 

 全身全霊を籠めたその一撃は、あるいは万全の状態のカイルですら放てないものだったかもしれない。サブノックの予想を超えた速さと鋭さで繰り出されたその斬撃は、サブノックの胴体をとらえた。

 

(しまった!?)

 

 だが、無理を押しての一撃だったためか、わずかにずれた。それは、サブノックほどの達人ならば、回避をかろうじて間に合わせるに足るずれだった。剣はサブノックの胴を切り裂く。だが、浅い。相手の動きを止めるほどではない。そうしてサブノックは、渾身の一撃を放ち、完全に無防備になったカイル目掛けて刀を抜き放った。

 

「さらばだ、カイル・デュナミス!」

(殺られる!)

 

 もはや、出せるものは全て出し尽くした。その一撃を避けるすべを、今のカイルは持っていない。サブノックは勝利を、カイルは己の死を、その瞬間確信した。

 

「えっ?」

「何ぃ!?」

 

 だが二人の確信は、一瞬で覆された。『カイルの体に触れる前に』止まった己の刀を見て、サブノックはこれまでに無いほど驚愕している。目に見えない何かが、サブノックの刃を阻んでいる。

 カイル自身も、何が起きているかははっきりとは分かっていなかった。理解できるのは、己が逆転の機会を得たということだ。残った全てを今の一撃に籠めた? 後はもう動けない? 甘えるな。お前の体はまだ動くはずだ。お前が動かなければ皆が死ぬ。動け。そして守れ。それが今お前の果たすべき責任だ。そうして、全てを出し切った体に力を込める。足が、前に出た。剣を持った腕が、持ち上がった。

 

(動く!)

 

 理屈は解らない。わからないが、体はまだ動く。ならば、まだ戦える。剣を握る手に力を籠め、カイルは己が持つ技の中でも最速のものを放った。

 

「散葉塵!」

「こ、これは!」

 

 刀が止まったことで、逆に隙をさらすことになったサブノック目がけ、カイルの三連切りが迫る。突然の事態と、先程まで死に体だった少年の猛攻に、反応が遅れる。

 それでもなお、刀による防御をかろうじて間に合わせる当たりはさすがだろう。一撃目を振り下ろしで叩き落とし、二撃目を斬り払いで弾き、三撃目を再び受け流し、今度は首目がけて突きを放つ。だが、それも先程同様に何かに阻まれる。それによりサブノックは確信した。

 

「これは『スピリッツブラスター』か! 厄介な!」

 

 『スピリッツブラスター』。それは疑似晶術が広まり始め、人々が疑似晶術用にレンズを身に着けるようになった頃に発見された現象で、レンズが周囲の生物の感情の高ぶりに呼応して爆発的に晶力を放出すると言うものだ。放出された晶力は引き金となった生物の体内に吸収されてその身体能力を引き上げると共に、生物の周囲を覆い、見えない『晶力の鎧』生み出す等様々な恩恵を与えることが確認されている。昔から確認されていた、モンスターが死にかけになると強くなる現象も体内のレンズにこれが起きているからだと考えられた。

 そしてそれが今、カイルの持つレンズに起きていた。カイルの体の中に流れ込む晶力が彼の体を活性化させ、その身を守っているのだ。サブノックが晶力を視認出来たならば、カイルがベルトにつけているレンズから、晶力が嵐の様に吹き荒れているのを見ることができただろう。

 

 

「爆炎剣!」

 

 その嵐のような晶力を剣に纏わせ、再び斬りかかるカイル。咄嗟に刀で受け止めたサブノックだったが、その瞬間剣が纏っていた晶力が爆炎へと代わり、サブノックに襲い掛かる。

 

「ぐおおおお!?」

 

 先程アガレスが放った空破爆炎弾も晶力の炎を使う技だったが、それとは火力が違った。晶力の量が違うからか、巨大な火柱がサブノックの体が燃え上がらせる。

 

「まだだ! 爆炎連焼! 燃え尽きろぉぉぉ!」

 

 爆炎をそのまま剣に纏わせ、更なる追い打ちをかけるカイル。だが、サブノックは炎に体を焼かれながらも尚、その守りを崩していなかった。これさえ凌げれば勝機はある。そう思うサブノックはカイルの斬撃を受け止めることに集中する。たとえ炎で体を焼かれていようとも、一撃を防いでカイルに反撃を叩き込むくらいはできる。スピリッツブラスターによる晶力の鎧があるとは言え、最初からそれがわかっていれば断ち切ることは不可能ではない。サブノックはそう思っていた。爆炎をまとった刃を、刀で受け止める。更なる炎が身を焼き、口から声がでそうになるのを食いしばる。

 

(ここだ!)

 

 そして彼は2度の爆炎にその身を焼かれながらも、その猛攻を受け切った。

 

 

「はああああ!」

 

 間髪入れず、反撃の刃が放たれる。

 

「ぐっ!?」

 

 だが、強靭な精神力で耐えてはいたものの、アガレスとの戦い、カイルの先の一撃による腹部への傷、そして今の爆炎による火傷。積み重なったそれらのダメージは、サブノックの刃から鋭さを奪い取るには十分すぎるほどだった。刃は再び、晶力の壁に阻まれた。

 

「もらった!牙連!」

 

 その隙を見逃すカイルではなかった。残る力を、目の前の相手目掛けて解き放つ。

 

(まずい!)

 

 もう立っているのもやっとであろう状態で尚、サブノックは剣を振るった。彼の信念とやらがそれを可能にしたのかもしれない。だが、そんな状態での防御が間に合うはずもなく、一撃、二撃、三撃と斬撃を浴びるサブノック。剣を振るった勢いで体を猛烈に捩じるカイル。剣に気と晶力が集中していく。

 

(く、これまでだというのか!? あの方の理想を果たせずにここで朽ちるというのか!? 否!!!)

 

 それでも尚サブノックはあきらめていなかった。最後の一撃を防ごうと刀を持つ手に力を籠めようとする。だが、もはや彼には刀を握る力すら残っていなかった。

 

(慢心……己が慢心に負けたか)

 

 本来ならば、実力で大きく劣るカイルがこの男に勝てる道理は無かった。だが、無意識のうちに格下と侮っていたが故、スピリッツブラスターによってにサブノックは無様にも動揺し、反撃を許してしまった。それが敗因だ。

 サブノックの手から刀が零れ落ちる。カイルの勝利は決まった。最後の一撃で、サブノックの命は刈り取られるだろう。

 

 

 

 

 しかし、それを許さないものが一人、いや一匹いた。

 

 

「蒼破「グゥゥオォッォォォ!!!」ぐああああ!」

 

 身にまとった晶力の壁ごと、カイルの背中を螺旋の水流が打ち抜いた。吹き飛ばされるカイル。サブノックが視線をやると、気を失ったロニを背後にしたオセの姿があった。その姿は、主ほどではないがボロボロであり、ロニの攻撃が決して生半可なものではなかった事を物語っている。

 

「オセ……か……助かった……」

「グァゥ」

 

 サブノックの声に、それまでとは違う穏やかな鳴き声で答えるオセ。

 

「しかし運が良かったというべきか。後数瞬遅ければ、我が命はここで果てていただろう」

 

 だが、その数瞬でサブノックは命をつなぎ、カイルは勝利をつかみ損ねた。

 

「くそ……」

 

 剣を杖替わりに立ち上がろうとするカイルだが、それが精一杯だった。アクアスパイクによるダメージは大したものでは無かったが、元々スピリッツブラスターの恩恵で無理やり体を動かしているに近かったのだ。最早動ける事自体が奇跡に近かった。

 

「お前が来てくれねば、危ないところであったよ、オセ」

 

 サブノックが懐に入れたレモングミを何とか飲み込む。重症すぎる傷はすぐに完治することはなかったが、それでも瀕死の一人にとどめを刺すには十分すぎる体力は戻った。カイルを見やる。

 

(本来ならば、己が未熟で敗れる所を横やりで命をつないだ身。見逃してやりたいところだが……)

 

 わずかにためらいを見せた後、すぐに刀を拾う。今は任務中であり、私情を挟むべき時ではない。サブノックは己にそう言い聞かせた。

 

「本来ならばアガレス老だけが目的だったが、見られてしまってはな。悪く思うな、とは言わん。せめて安らかに眠るがいい」

 

 カイルの命を奪わんと歩み寄っていくサブノック。だが、その時だった。

 

「む?」

「え?」

 

 突然、部屋の奥が光り始めた。思わず其方を向くサブノック。そこには、激しい光を放つ巨大レンズの姿があった。

 

「な、なんだ!?」

 

 どんどん輝きを増していく巨大レンズに何かを感じたのか、オセがけたたましく吼える。そして輝きが止んだかと思うと、今度はレンズにヒビが入り始めた。そしてヒビがレンズ全体に広がった次の瞬間だった。

 

――――キィィィィィン――――――

 

 レンズが砕け散り、そこから閃光と共に凄まじい晶力の嵐が吹き荒れた。

 

「くそ!」

「ガゥゥゥ!」

「うわっ!」

 

 レンズに最も近かったサブノックは嵐の直撃を受け吹き飛ばされた。だが、主を守ろうとするオセがその体をクッションとし、地面に叩き付けられることは免れた。体を支えるのがやっとだったカイルはサブノックの体が壁になったのか、その場に倒れこむだけで済んだ。二人とも、レンズの光に思わず目を瞑る。しばらくすると、光と晶力の嵐はだんだんと弱まって行き、やがて納まった。

 

「何が起きている?レンズはどうなった!」

「一体……何がどうなって?」

 

 レンズがあった場所に、サブノックとカイルが視線を向ける。そこには巨大レンズは影も形もなかった。そして代わりに、一人の少女が立っていた。 

 




 ようやくあの子が出せました。……どんだけかかってるんだよ。これ、最初の未来編まで何話かかるんだろうか。
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