テイルズ オブ デスティニー2 ~疾空の刃~   作:トカGE

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設定覚書 その8
・神の眼の騒乱の元凶は、原作ではヒューゴだと認識されていたが、拙作ではスタンらの尽力によりミクトランだと周知されている。
・ただし、リオンについては彼が守ろうとした人を守る為、スタンらが詳細については言わなかったため、ただの裏切り者として世間には認識されている。


1-14:古都ダリルシェイド

 ダリルシェイド。位置的にクレスタとアイグレッテの中間に位置するこの街は、かつての『二大強国』の一つであり、オベロン社の本社があったことにより高い技術力を誇っていた国『セインガルド王国』の首都だった街だ。だが、神の眼の騒乱の最終局面、天上王ミクトランが最後の悪あがきで地上に降下させた外殻は、ソーディアンマスター達の活躍によって神の眼と共に砕かれた。だが、それでも全てが破壊できたわけでは無い。いくつかの破片は形を保ったまま地上に降り注ぎ、決して少なくない被害を与えた。

 それが最も顕著なのが、セインガルド王国だった。首都ダリルシェイドをはじめとした町村のほとんどが被害を受けた上、王城に特に大きな破片が直撃。王を始めとした国の主要人物の多くが命を落とし、セインガルド王国という国の長い歴史は幕を閉じた。もちろん被害は王城だけではなく、その城下街であるダリルシェイド、そして周囲にあったハーメンツとアルメイダ等多くの都市が被害を受けた。ちなみにカイルらの故郷であるクレスタもそれなりに被害があったものの、大陸中心部にあったその3都市よりはまだ軽微だった。その後、国最大の宗教『アタモニ教』の総本山であったストレイライズ大神殿を頼って集まった、難民が中心となって新たに作りあげたのが新興都市『アイグレッテ』であり、それとの対比で今ではこの街は『古都』と呼ばれている。

 

 現在のダリルシェイドには、かつての首都の面影はほとんどない。街が崩壊した後、それでも希望を捨てなかった人々はアイグレッテを作り上げたが、全ての人がそんなに強いわけでは無い。家族を失った人や国の滅亡を見たことで生きる希望を失った人。そういった『生きている』のではなく『死んでいないだけ』の人々がくらすガレキの街。それが今のダリルシェイドだ。18年たった今でも街が当時のままであることが、今もその街に残っている人々の絶望を物語っていた。ここ数年はアタモニ神団の司祭や騎士達が彼らに希望を取り戻してもらうために復興協力や食料の配給を行っているが、それも大して効果が表れていない。それでも人々を救うため、神団の人々は今日も奉仕活動を続けている。

 

 

 

 さて、この街に出向してきている司祭や騎士達が住居として使っているのが、元オベロン社総帥のヒューゴ・ジルクリストの屋敷だ。比較的被害が少ない建物だったのだが、街に残った人々は基本的に自分の家から離れようとしなかったため放置されていたものを利用している。その建物の地下、物置を改造した地下牢に、ロニは居た。目が覚めた時カイルの姿は無かったが、外の騎士達の会話によるとどうやら隣に居るらしい。

 

「まさかエルレイン派の連中がこんな強硬手段を取ろうとするとはな。いよいよもってエルレインの奴が胡散臭くなってきたぜ」

 

 昼食のパンを咥えながら、考え込むロニ。エルレインやその取り巻きたちが何らかの目的を持っている事は明らかだが、それが何なのかが解らない。

 

「反対派の中核の一人を狙うってことは、推進派の勢力を増大させたいってことだよな。やっぱり主な目的はレンズを集めることか?」

 

 パンを飲み込み、ミルクをのどに流し込む。食事が出るということはすぐさま殺されたりなんだリって事はないだろう。考え事をする時間くらいはあるはずだとロニは思っていた。

 

「じゃあそのレンズで何をする気だ? 大量のレンズを集めるってことは、レンズを集めて神の眼クラスの巨大レンズを作るとか……いや、そんな技術、天地戦争時代ならともかく、今の時代どこにも残ってねえ」

 

 今の時代の研究者では、精々疑似晶術用の小型高純度レンズを作るので手いっぱいであり、作り出せないからこそ大型船舶の動力用のレンズは未だに高額で取引されているのだ。そういった技術が残っている可能性があったのは空中都市群だが、それも神の眼の騒乱の際にほぼ全てが地上に落ちて消滅している。唯一原型を残しているラグナ遺跡も、既に探索されつくしていてそんな技術は無かったと確認済みだ。

 

「過去の遺物を動かす動力にするとか……そんなもんあったとして、フィリアさんが気づかない訳ないよな」

 

 四英雄のフィリア・フィリスは今は司祭として人々の為に尽くしているが、それと同時にアタモニ神団を通してレンズ技術が悪用されないように目を光らせている。エルレイン派の司祭達も、神の眼の騒乱による被害を目の当たりにしている以上、それに関しては協力的だ。

 

「となると、何だろうなあ」

 

 その後も備え付けのベッドに寝転んでしばらく悩んでいたロニだったが、結局何も思い浮かばなかった。

 

「そもそも、一介の騎士団員でしかない俺が持ってる情報なんてたかが知れてるんだよなあ」

 

 親交のあるアガレスやフィリアからも話は聞いており、他の騎士よりも神団の内部事情に詳しいつもりではあるが、それでも所詮はヒラの騎士であるロニ。事の全容を推察できるほどの情報は持っていなかった。

 

「もうちっと上の奴らなら何か知ってるかもしれねえけど」

 

 そういうロニの頭の中には、一人の老司祭の顔が浮かんでいた。

 

「アガレスさんなら何か掴んでたかもな」

 

 そう言った後ロニは、ああそうかとつぶやいた。

 

「だからこそ、今回消されそうになった可能性もあるのか」

 

 だとすれれば、アガレスの洗脳を解くのが真相に近づく一番の近道なのかもしれない。ロニ自身、恩人をあのまま放っておくつもりは無かった。そうと決まれば、とっととこの牢屋を出なければならない。

 

「だが、どうするかねえ。外にいる奴らを説得するか? 無理だな」

 

 今この屋敷に居る騎士の大半はサブノックによって洗脳されているし、ダリルシェイドに残っていた騎士もサブノックのついた、『ロニ達は300万ガルドの巨大レンズを強奪しようとした挙句、それを破壊した凶悪犯』と言う嘘を信じている。それを聞いたときはぬれぎぬだと憤ったが、親衛隊であるサブノックの言葉を疑う者はいなかったようで、こちらの言い分はまるで聞いてもらえなかった。元々ダリルシェイドの騎士達と、アイグレッテの方で働いていたロニは面識がほとんどなく、信頼関係などあんまり無いのだからなおさらだろう。処刑される、と言うことは無いだろうが、下手すると一生この牢屋から出られないなんてことになりかねない。

 

「となるとやっぱり、脱獄か」

 

 自分たちの冤罪と脱獄の罪は、後で洗脳を解いたアガレスにでもどうにかしてもらおう。どうやってこの牢屋から脱出するかを考え始めたその時、天井の方からガタガタと音がした。

 

 上を見ると、天井に人が一人通れるくらいの穴が開いており、そこからロープが落ちて

「な、何だ?」

きた。警戒するロニ。だがそこから現れたのは、自分とは別の牢屋に捕まっているはずのカイルだった。

 

「ロニ、助けに来たよ!」

「か、カイル!? お前どうやって!?」

「えっとね、あの人に助けてもらったんだ」

 

 そう言ってカイルが指さした先には、ロープを支える誰かの姿があった。ここからは、姿が良く見えない。

 

「誰だ?」

「話は後後。とりあえず、見つからないうちに上に行こう」

「あ、ああ。そうだな」

 

 カイルに促され、ロープを上るロニ。上がった先には、立ち上がれるほど広くは無いものの、人が這って進むには十分なスペースがあった。どこからか光でも取り込んでいるのか、あるいはスキマがあるのか、うっすらと周囲が確認できる程度の明るさはあった。

 

「天井裏? いや、と言うかここって地下室だろ。何でこんな空間があるんだ?」

「ここはオベロン社総帥邸の頃からあった、隠し通路の一つだ」

 

 そう言う声の主の方を向くロニ。そこにあったのは、

 

「ほ、骨ええええ!?!?」

 

薄闇に浮かびあがる、謎の骸骨。

 

「落ち着け、ただの仮面だ」

「あはは、やっぱ驚いたよね、ロニ」

 

 ではなく、骨でできた仮面をかぶった、黒ずくめの少年だった。




 骨の人、登場。原作ではロニとカイルが同じ牢屋でしたが、拙作ではバラバラに放り込んでみました。カイルがあちらの牢屋で何を考えていたかは次回。
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