カイル達と別れてしばらくした後、ジューダスもまた旅人用の小屋で身を休めていた。こういった小屋は街道沿いに幾つか存在していて、アタモニ神団等が慈善事業で管理している。あまり人に会うことは避けたかったジューダスだったが、消耗した身で一人で野宿することを考えれば仕方がなかった。せめて人が居ることを知られない為にと、明かりは最低限にしているため小屋の中は薄暗かった。
「神の誘いを蹴った僕が、その信徒の活動に助けられるというのも皮肉なものだな」
そう呟きながら、ジューダスは小屋に置いてあった乾パンを口に放りこむ。
「なあ、お前もそう思うだろ?」
そう言いながら、彼は背中から剣を抜いた。それは、カイルらと共に戦っていた時に振るっていた二刀とは違う剣だった。あのとき振るっていた剣は一般に流通しているような数打ちの剣だったが、今ジューダスが手にしている剣は、一目で相当な業物と分かるほどの剣だった。特に眼を引くのが、柄に嵌め込まれたレンズだ。まるで話に聞くソーディアンのようだと、誰かが見ていたら思ったかもしれない。
「ああ、あいつそっくりだったな。一目でわかったよ」
手に持った剣に話しかけるジューダス。はたから見ればジューダスが独り言を言っているだけに見える。だが、ジューダスはまるで『剣が意思を持っている』ように話しかけていく。
「仕方ないだろ! 気がついたらあいつの前に出てしまっていたんだ。僕らしくないのはわかっている」
「嘘は言っていないだろ。一応牢から抜け出すときに、レンズ強奪の話は聞いてはいたんだ。それに、スタンに世話になったのも嘘じゃない」
そう剣に話しかけるジューダス。その表情は部屋の暗さと仮面で伺いしることは出来ないが、その声は先ほどまでのカイル達と居る時の印象とはまるで違っていた。例えるならば、兄弟や親しい友人と話しているような感じだろうか。
「いやまあそうだが……お前、僕が生き返ってから口が悪くなってないか? まあいいが。」
「あの女、いろいろと動いているようだな。スタンの奴が殺されていたとあの時知っていたら、あの場であいつの首を落としていたものを。」
瞬間、ジューダスの瞳に怒りが宿り、剣を握る手にも力がこもる。
「あの時はまだ計画は動き出していないように話していたからな。だが、既に動き出していたと言うならあの女はもう止まらないだろう。『あれ』はそういうものだ」
「ああ。バルバトスを使って『神の眼の騒乱』の英雄達を消していくつもりだろう。あいつはアタモニ神団とは直接関係ない人間だ。そうして希望を失った人々に手を差し伸べていく。とんだマッチポンプだ。人を救う聖女が聞いて呆れる。」
「ルーティは恐らく大丈夫だろう、今の所はな。今のアイツはただの孤児院の院長で、周りへの影響力はそれほどない。それに手を出すとしたらスタンを殺した時に一緒に始末しているはずだ。となると、危ないのはアタモニ神団であの女と同等の影響力があるフィリアや、ファンダリアの王ウッドロウだな。次点でジョニー・シデンやコングマンか。ウッドロウのところのチビや、スタンの妹は表に出ていないから大丈夫だろう。」
そこまで言った所で、ジューダスの肩がぴくりと震えた。
「ほう、僕があいつより小さいと? ……それはそうだろう。あいつらは僕と違って18年を過ごしているんだ。だったら別に僕より大きくなってて当たり前だ」
そう、自分に言い聞かせるように話すジューダス。だが、次の瞬間彼の眼から感情が消えた。
「それ以上言うなら、折るぞ」
そう言うとジューダスは剣を地面に叩き付けるような動作を繰り返す。だが、二言三言しゃべると、
「……次は無いからな」
と言ってまた先ほどの様にしゃべり始めた。
「これからの予定だが、まずはアイグレッテだな。サブノック達が向かったというのもあるが、あそこにはフィリアが居る。まずはあいつの様子を確認してからだな。」
「……会える訳無いだろう。今更、どんな顔をして会えというんだ。だからこそ、こんな仮面も被っているというのに」
そう言うとジューダスは剣を背中にも戻し、壁に寄り掛かって目を閉じた。しばらくした後、小屋の中には静かな寝息だけが響いていた。
原作ではアイグレッテ港からファンダリアへ行こうとして船がモンスターに襲撃をくらう>修理が必要になって結果ノイシュタットでしたが、拙作では少なくともジューダスはアイグレッテ港からアクアヴェイル行。他のメンバーがどうなるかは……アイグレッテ編終わるころまでには考えときます。