カイル「そういやさ、ロニのスパイラルドライバーってあるじゃん」
ロニ「ああ。それがどうかしたか?」
カイル「あれ、空破特攻弾とどう違うの?」
ロニ「飛距離が違う」
カイル「……だけ?」
ロニ「だけ」
やはりと言うかなんというか、戦っていた人物はジューダスだった。まあ、骨の仮面なんて被った人物などそうそういる訳ないのだが。
「相手はロックハープンだな。ってなんだありゃ!?」
ジューダスの戦っている相手を見たロニが、驚きの声を上げる。カイル達も先程まで戦っていたロックハープンのようだが、ジューダスの戦っている個体は先程の奴よりも二回りほど大きかった。彼らが戦っている周りに複数のロックハープンが倒れているのを見るに、どうやらこの近辺のロックハープンのボスが群れで襲い掛かってきたらしい。
ボス以外を一人で片づけてるあたりさすがと言ったところだが、ジューダスも無傷では済まなかったらしく、本来なら二刀流で戦うはずの彼の手には長剣しか握られていなかった。このままでは危ないのは誰の目に見ても明らかだった。
「ロニ! ヒール詠唱急いで!」
「解ってるよ!」
二人の判断は早かった。カイルがロックハープン目がけて走り出すのとロニが回復晶術を唱える始めるのは同時だった。
「ガァァァァ!」
「調子に乗るな! 虎牙破斬!」
ジューダスの放った上下段の連続斬りがロックハープンの体を切り裂く。だが、まるで何事も無かったかのようにロックハープンはジューダス目がけて腕を振り下ろした。
「ぐぁぁっ!」
地面に叩き付けられるジューダス。唯でさえ打たれ弱い上に、今のジューダスは雑魚ハープンたちとの戦いでかなりの傷を負っていた。このままでは彼を待っているのは死だろう。もはや出し惜しみしている場合では無い、そうジューダスは考えた。
(誰かに見られることを気にしている場合では無いか)
そして彼がマントの影から何かを取り出そうとした時だった。
「いくぞ、シャ「空破絶風撃!」!?」
駆けつけたカイルが放った一撃が、ロックハープンを思いっきり吹き飛ばした。同時に詠唱を終えたロニの回復術が彼の体を癒していく。慌ててジューダスは取り出そうとした何かを戻した。
「大丈夫? ジューダス」
「久しぶり、ってほどでもないがまた会ったな」
ジューダスに駆け寄ってくる二人。どうやらジューダスが何かを隠したことには気づかなかったようだ。その事にほっとするジューダス。
「どうした?」
「いや、何でもない」
「そうか? まあそんなことはいいや。まだやれるか?」
「ふん、当然だ。お前たちこそどうなんだ?」
「ボロボロのジューダスよりはマシだって」
「それでもロニよりはマシだぞ?」
「どういう意味だこら」
軽口を叩きあう三人。だが、それは決して目の前の敵を忘れているからでは無い。短い間ではあるが共に戦った仲だ。だからこそわかるのだ。
『自分たち三人ならば、こんなサルなんてどうと言うことはない』と。
「さあ、行こう!」
駆けだしたカイルに合わせて、ロニとジューダスもロックハープンに向かって行く。
「切り刻む! 遅い! 魔神千裂衝!」
カイルらが加わってもしばらくの間持ちこたえていたロックハープンのボスだったが、最後はジューダスが放った連続斬りによって倒れ伏した。
「正直、危ない所だった。礼を言う」
「俺たちだって牢屋から抜け出すの手伝ってもらったんだし、お互い様だって」
「そうそう、気にすんな」
剣を収め、礼を言うジューダスに、二人は笑って答えた。
「ところで、何でジューダスがここに?」
「ああ、アイグレッテに居る知りあいを尋ねようと思ったんだがな」
そうしてジューダスは何があったかを話し始めた。別れてからカイルらと同じように小屋で一泊した彼は、そのままアイグレッテを目指した。その後ハーメンツヴァレーまで来たのだが、その時アイグレッテ側から一人の男が走ってきた。どうやらモンスターに襲われた行商人のようで、モンスターに追われながら必死に橋を渡ってきていた。その時、モンスターが放った晶術が橋に着弾。木製だった橋は簡単に燃え上ってしまった。男は火が広がる前に渡りきることができたが、橋は燃え落ちてしまったとのことだった。
さすがに橋の修理が終わるまで待っていられなかったジューダスは、カイルら同様谷を降りてから登る方法でハーメンツヴァレーを抜けようとしたのだが、谷底まで落りたところであのボス猿に目をつけられたのだと言う。
「雑魚はなんとか片づけられたんだがな。群れのボスが異常に打たれ強くて難儀してたんだ。お前たちがいなければ危ないところだった」
「ホーリィボトルは使ってなかったの?」
「使ってはいたんだがな。ああいうボスクラスのモンスターはホーリィボトルでも怯まないことが多い。あいつもそうだった」
「あ、ちょっと待った。ということはホーリィボトルもってるんだな?」
ジューダスの言葉に、ロニが食いついた。
「ん? ああ、お前たちと別れた後、街道沿いの小さな村に寄った時に買い込んだんだが」
「ってお前街道通ってきたのかよ」
「当然だろう? お前たちは……ああ、指名手配中だったな」
「悪かったな、凶悪犯で」
そんな二人のやり取りはまるで悪友同士のじゃれあいだった。この二人、意外と相性がいいのかもしれない。
「それで、ホーリィボトルがどうかしたのか?」
「ああ、俺たち街道を通らなかったから、ホーリィボトル使い切っちゃってさ」
「良けりゃあアイグレッテまで一緒に行かせてくれねえか?」
「なるほど、そう言うことか。断る理由もない」
決して、うっかり落として瓶を割ったとは言わない二人であった。
それからは特に何事もなく順調に進み、無事にアイグレッテ側に抜けることができた。そこからはジューダスのホーリィボトル頼みで街道を避け(途中でジューダスが遠回りになることに関して嫌味を言ったりしたが)、1日ほどでアイグレッテにたどり着くことができた。後はどうやってアイグレッテの中に入るかだったのだが……
「いやあ、お前らが門番の日で助かったよ!」
幸運にも、その日のアイグレッテの街の門番はロニの知りあいで、さらに反エルレイン派の騎士だった。そのおかげで割とあっさり中に入ることができた。ちなみに割と、とつけたのはジューダスが少し怪しまれたからだったりする。
「いやしかし驚いたぜ? お前がレンズ強奪したなんて知らせを受けた時は」
「すまない。心配かけちまったか?」
「いや、ついにやったかって思った」
「お前なあ!」
そう言ってじゃれあう二人。知りあいどころか結構親しい友人のようだ。そんな二人を後目に、カイルはジューダスと話していた。
「これからジューダスはどうするの? 知りあいに会いに来たって言ってたけど」
「ああ、それなんだがカイル。一つ尋ねるが、お前たちはこの後ストレイライズ大神殿に忍び込むつもりなんだな?」
「うん。あの人の話だと、サブノックたちは大神殿の方に行ったらしいし」
ロニの友人の情報により、サブノックらは皆大神殿に向かって行ったということは解った。そうなればカイル達もそこに向かうしかない。犯罪者扱いなので当然正面からは入れないので、忍び込むハメになるわけだ。
「ならば、僕も一緒に行こう」
「ええ!?」
ジューダスの発言に驚くカイル。
「いや、でもどうして?」
「何、僕が用がある相手も、大神殿に居ると言うだけだ」
「でも、それだったら普通に大神殿に行けば……」
「カイル、騎士団員のロニならともかく、一般人の僕が行っても門前払いされるだけだ」
「そうなの?」
とりあえず、骨を被った一般人が居るのだろうかと思ってしまったことは黙っていることにしたカイルだった。
「まあ、そのロニも今は泥棒扱いで正面からは無理だがな。そして僕はその知りあいになるべく早く会わなければならない。だったら後は忍び込むしかあるまい」
「そうまでして会わなきゃならない知りあいって一体誰なのさ」
カイルは当然の疑問を口にした。ジューダスはしばらく考えた後、カイルの眼を見ながら答えた。
「すまないが、名前は言えない。だが、僕はどうしてもあいつに会わなきゃならないんだ」
本来ならば、怪しいと斬って捨てられても仕方ないその言葉。だが、カイルはジューダスの眼に真剣さを見た。無論、カイルはまだ15歳の若僧だ。その目を含めてだまされているのかもしれない。だが、カイルは自分を助けてくれた目の前の人物の眼差しを信じたいと思った。
「うん、解った。一緒に行こう、ジューダス!」
「っ、いいのか? 自分で言うのもあれだが、だいぶ怪しいと思うんだが」
「自分から言い出しといて何言ってるんだか。いいんだよ。俺はジューダスを信じた!」
そう言うカイルを見て、ジューダスはぼそりと何かを呟いた。
「ん? 何か言った? ジューダス」
「いや、何でもない」
「そう? よし、それじゃロニにもジューダスが一緒に行くって伝えないと」
そういってロニの方に駆けていくカイルの背中を、ジューダスはまぶしそうに見つめていた。
かなり無理やりな気がするけど、ジューダスさんここで加入です。第一章はアナゴさん凹ってアイグレッテの港から出発するあたりまでになります。