・ジューダスの方が先にアイグレッテに向かったのにハーメンツヴァレーで合流できたのは、ジューダスが道中で
1)街道沿いにある、名前も無い小さい村によって道具や装備の補充をしていた。
2)元々の能力と今の能力の差異からくる違和感を埋めようと少し訓練していた。
ということをしていたため。
2に関しては地下水道の中で自覚した感じ。
・ホーリィボトルの設定は全てフィクションです。実際のそれとの関係は一切ございません。
ロニの友人に別れを告げ、カイル達はアイグレッテのはずれに来ていた。ストレイライズ大神殿に忍び込む方法を考えて居た時、ロニがあることを思い出したのである。
「ロニ、ここがそうなの?」
「ああ、間違いない。昔アガレスさんから聞いた話だと、ここから入れるはずだ」
カイル達の目の前には、大きな洞窟が広がっていた。ロニが思い出したこと、それはアイグレッテの地下に広がる古代遺跡の話だ。ストレイライズ遺跡……ストレイライズ大神殿と同時期に作られたと思われるその建築物は、ストレイライズ大神殿に通じているということをアガレスから聞いていたのだ。
もっとも、騎士団に入ったばかりの話だったことと、一度も訪れたことが無かったこともあり、ロニはつい先ほどまですっかり忘れてしまっていたのだが。
「気をつけろよ、お前ら。遺跡の外には特殊レンズのおかげで出てこないが、ここから先はモンスターの巣だ。どこから襲い掛かってくるかわからねえぞ」
「って言ってる傍から来たし!」
カイルの言う通り、遺跡の奥からモンスター達が飛び出してきた。ハーメンツヴァレーでも戦ったゴーレムが1体に、空飛ぶ石像『ガーゴイル』が複数だ。遺跡らしくと言っていいのかは謎だが、無機物のモンスターばかりだ。
「先に行くよ!」
「くそ、先にホーリィボトル使っとけばよかったぜ!」
「こんなにモンスターが多い所だと、使ってもあまり効果はあるまい。愚痴らず行くぞ!」
愚痴るロニを叱咤しつつ、ジューダスは先に駆けだしたカイルに続いた。ホーリィボトル、と言うよりも街を守っている特殊レンズの原理とは、『特殊な晶力によって強大なモンスターが居ると誤認させる』ことだ。それによって街を『自分たちよりも強力なモンスター達の縄張り』と誤認させることにより、モンスター達が入って来れないようにしているのだ。
その特殊レンズの屑を使って作るホーリィボトルも原理は一緒だが、あくまでレンズの欠片、屑しか使ってないため、どうしても特殊レンズよりも効果が落ちてしまう。
精々『なんか強そうな相手が居るな』くらいの効果しかない。それでもある程度のモンスターは遠ざけることができるが、相手がボスクラス……たとえばハーメンツヴァレーで戦ったロックハープンのボスのように、自分の強さに自信をもっている場合や、今のように数が多い場合はそれほど効果が望めなくなってしまうのだった。
「ああもう解ったよ! 放墜鐘!」
ロニは近くのゴーレムにハルバードを突き刺し、そのまま力まかせに飛んでいるガーゴイル目がけてぶん投げた。突然のことによけきれなかったガーゴイルたちが、ゴーレムにぶち当たって地面に落ちてきた。
「やるな! ならば、幻影刃!」
そして落ちてきた敵たちを、ジューダスがその隙間を縫うように斬りつけて行く。それほど大きなダメージは無いようだが、落下から体制を立て直そうとするモンスター達の動きを阻害するには十分だった。
「そしてダメ押し! スラストファング!」
そして最後にカイルが一定範囲内を風の刃で切り刻む中級晶術『スラストファング』を放った。落下と追い打ちの斬撃で体制を崩していたモンスター達はそれを避けることができず、なすすべも無く切り刻まれて行った。
「見たか!」
「見てねえよ!」
「見てろよ!」
「バカやってないで先へ進むぞ!」
連携が綺麗に決まったからか調子に乗っている二人を、ジューダスが諌める。とりあえず見える範囲の敵は片づけたが、遠くから何かが歩いてくる音が聞こえる。まだまだモンスターは居るのだろう。こんな所で立ち止まっている暇はない。
「解ってる。次が来る前に先に進もう!」
「カイル、急ぐのは良いが注意を怠るなよ?」
三人は武器を構えたまま、奥へと進んで行った。
「何だろう、ここ」
モンスターを倒しつつ奥に進んだカイル達が見つけたのは、閉ざされた扉と、等間隔に区切られ、様々な色で塗られた床だった。床の上には文字が刻まれており、それは子供が文字を学ぶ為の木製ブロックのようにも見えた。
「んー、これはあれだな。正しい順番で歩くと、閉じている扉が開くとかそんなだろ」
「んじゃ正しい順番って?」
「そりゃ今から考える」
頭を悩ませる二人をよそに、ジューダスはためらうことなく歩き出した。それを見て慌てるロニ。
「お、おいジューダス! 下手に動くなよ! 罠とかあったらどーするんだ!」
「問題ない。もう答えは解った」
「は?」
唖然とするロニを後目にどんどん歩を進めるジューダス。そうして彼が扉の前にたどり着くと同時に、彼が歩いてきた床が光り扉が開いた。
「おいおい、本当に解いちまったよ。早すぎるだろ」
「えっと……D E S T I N Y……デスティニー?」
カイルはジューダスが歩いた床の文字を読み上げた。
「デスティニー、古い言葉で運命って意味だったかな。しかしよく知ってたな、ジューダス」
「考古学者の知りあいが居てな。いろいろと教わった」
そう言うジューダスは、昔を懐かしんでいるように見えた。だが、何かを否定するように首を振ると、開いた扉目指して歩き出した。
「さあ、先を急ぐぞ」
「あ、待ってよ! いこう、ロニ」
「あ、ちょい待ちカイル。一応、ジューダスが歩いた通りに行こう。何かあると怖いからな」
慌ててジューダスの後を追おうとするカイルの肩を、ロニが掴む。彼の言う通り、不正解のルートを通って罠でもあった日には目も当てられない。二人はジューダスが歩いた道順を辿りながら、急いでジューダスを追いかけた。
その後、閉ざされていた扉の奥にあった階段を上り、その先にあった扉を開けた先は、どこかの物陰だった。薄暗くて、ここがどこなのかはよくわからない。
「ちょっと二人はそこで待ってろ。俺ならまだ見つかっても言い訳できるだろ。骨とか被ってたら一発で不審者扱いだし」
「言ってろ、指名手配犯」
そう言って、ロニが物陰から外に出る。特に誰かに見つかることも無かったようで、少しした後に彼は戻ってきた。
「ロニ、ここ、どこだった?」
「ここは間違いなくストレイライズ大神殿。それも、中心にある大聖堂のすぐ傍だ。ここに来れるのは神団の中でも高位の人達だけだから、俺も来るのは初めてだな。確かフィリアさんはこの大聖堂の近くの部屋で暮らしているはずだ」
普段会うときはフィリアさんの方から出向いてくれてたからな、と付け足すロニ。無論二人きり等と言ういい感じの雰囲気などでは無く、アガレスやその他騎士や司祭も居るなかでの事だということは付け加えておく。
「とりあえず、見つからないようにしながらフィリアさんを探そう。現状信用できそうな人はあの人しかいないからな」
「うん、俺はそれでいいよ。ジューダスは?」
「ああ、僕もそれでいい「きゃああああ!」っ!」
これからの行動方針を決めようとしたその時、大聖堂の方から女性の物らしき悲鳴が聞こえてきた。思わず物陰から飛び出る三人。
「今の悲鳴……大聖堂の方か!」
「まさか、フィリアさんか!?」
「じゃなかったら、リアラ!?」
「おい、待てお前ら!」
誰かに見つかるかもしれないということも忘れ、カイルとロニは大聖堂目がけ走り出していった。
「まったく、考えなしどもめ!」
そう言いながらも、自身も誰かに見つかることを気にせず後を追うジューダスであった。
「大丈夫ですか!?」
「何があったんですか!」
大聖堂に飛び込んだ二人が見たもの。それは、血だまりの中に倒れ伏す四英雄フィリア・フィリスと、その傍を彼女の名を呼ぶリアラ。そして、フィリアの血でぬれた戦斧を持った……
「ほう、誰かと思えば貴様……もしや」
「お、お前は……!」
「まさか、てめえは!」
数年前のあの日、スタン・エルロンの命を奪った『青い髪の男』の姿だった。
英雄絶対殺すマン降臨。でも、この人作中だと人質取ってスタン殺しただけで、他誰も殺せてないですよね。