設定覚書その13
・前作組の現在の強さは、全盛期より劣っては居るもののまだまだ現役クラス。とは言え現在の一流どころと比べると、年齢的にきつい。
・アナゴさんのアイテムなんぞ使ってんじゃねえ! はやらないと思われ。
「行くぞ!」
まずカイルが駆けだし、それにジューダスが続く。ロニはその場で詠唱をしつつ様子をうかがう。
「数が増えれば勝てる、とでも思ったのか!」
三人を鼻で笑いながら、バルバトスは斧を構える。状況はカイル達が有利だ。実力差があるとはいえ、カイル達が三人なのに対してあちらは一人。さらに先ほどのジューダスの不意打ちで、相手は少なからずダメージを受けている。だが、二つの点に置いて有利に立たれて尚、バルバトスはその強気な態度を崩さなかった
「へっ、その鼻ッ柱へし折ってやる! デルタレイ!」
まず最初に仕掛けたのは先頭を行くカイルではなくロニ。放たれた3つの光弾はカイル達を追い抜き、バルバトスに襲い掛かる。
「温い!」
それを斧で受け止めるバルバトス。だが、ロニもそれが通るとは思っていない。
「空翔斬!」
「幻影刃!」
防御に回った一瞬の隙を狙い、空中からカイルが、下からジューダスがバルバトスに斬りかかる。避けるにはもう遅い。だが、どちらかを防いでももう片方に斬られるだろう。
「ちっ!」
故にバルバトスは前に出た。予想外の行動に驚きつつもそのまま技を放つ二人。だが、バルバトスはさらに予想外の行動にでる。
「この程度の連携などぉ!」
カイルの剣を手で受け止めるバルバトス。当然、刃が食い込み血が噴き出す。だが、それだけだった。剣は手を切断することなく、バルバトスの手で受け止められている。
「なっ!?うぁああああ!?」
だがカイルには驚いている暇はなかった。バルバトスはそのまま、カイルを下にたたきつけた。その先に居るのは、同様にバルバトスに向かっていたジューダス。
「ぐっ!」
「っ!」
カイルをまるで鈍器のように振り降ろし、ジューダスを打ち据えたバルバトスは、そのままもう片方の手に持った戦斧を二人目掛けてなぎはらった。
「見飽きているわぁ!」
「ぐぁぁぁぁっ!」
「うわぁああああ!」
吹き飛ばされる二人。それを見て、ロニは次の攻撃の為に詠唱していた術を中断した。
「カイル!ジューダス!」
おそらくバルバトスはすぐに追撃に入るだろう。とにかく二人が体勢を立て直す時間を稼がなければ。そう考え、前に出るロニ。だが、バルバトスは予想に反してロニの方に一直線に向かってきた。
「何!?」
「貴様らの考えなど読めるに決まっているだろぉがぁ!」
振るわれた戦斧をハルバードで受け止めるロニ。だが、力の差か少しずつ押されていく。
「貧弱なんだよぉ!」
「くっそ、どんだけ馬鹿力なんだよ!」
ロニが吐き捨てるように言う。これでも力には自信があるほうだったが、この男相手ではそんな自信などあっという間になくなってしまいそうだ。
「ほらほらどうした!腰が引けてるぞ!」
「へっ、誰がへっぴり腰だってんだ!」
前に出て、少しずつ押し返すロニ。だが、押し切るには至らない。遠からず押し負け、ロニはバルバトスに切り捨てられるだろう。今の押し返しも、わずかな時間決着を長引かせたに過ぎない。だが、そのわずかな時間がロニの命運を左右する。
「前だけ見てていいのか?ネガティブゲイト!」
「むぅっ!」
体勢を何とか立て直したジューダスが、無防備だったバルバトスの背目掛け晶術を放った。唱えたのは中級の闇属性疑似晶術『ネガティブゲイト』だ。ほとばしる闇の晶力がバルバトスを包み込む。それによるダメージはさほどないようだったが、この術の本質はそこでは無い。この術は『動きを封じる空間を生み出す』のだ。それによってバルバトスの腕に籠められている力が緩んだ。
「今だ!」
その瞬間、バルバトスと力比べをしていたロニが再び押し返す。不意を打たれた為か、バルバトスの斧がはじかれた。
「爆灰鐘!」
そしてそのまま、ロニはハルバードを力任せに振り下ろす。本来この技は『武器を地面に叩き付ける』事により、砕いた地面を飛ばして前方に面の攻撃を行う技だ。だがロニが狙ったのは地面では無く、バルバトスの斧。
「何!」
「へっ、油断してるから足元すくわれるんだよ!」
全力の打ち下ろしが叩き込まれる。先とは違い、今度はロニが押す側だ。
「ふん、おとなしく体を狙えばいいものを。力比べで勝ちたい、なんてバカなことを思っているのか?」
バルバトスが嘲笑する。だが、ロニも考え無しではない。ロニの目的は、バルバトスの動きを止める事、それだけだった。彼の目に映るのは、バルバトス目掛け全力で駆けてくる弟分の姿。
「いけぇ!カイル!」
「はぁぁぁ!空破!絶風撃!」
「!?」
バルバトスの背後から、カイルが渾身の突きを放つ。剣はバルバトスの背中に吸い込まれるように突き刺さった。
「ぐっ!」
「おりゃああああ!」
それにより戦斧に加えていた力が緩んだところに、ロニは全力でハルバードを振りぬいた。戦斧を押し切り、そのままバルバトスの体を袈裟懸けに切り裂いた。
「……これで勝った、と思ったか?」
「っ!?」
「おいおい、嘘だろ!?」
だが、カイルとロニの一撃、そのどちらも決定打になってはいなかった。決して浅くはないそれらを受けてなお、目の前の男は平然としていた。
「残念だったな、これが俺とお前たち力の差だ。」
「がはっ!」
そういいながら、後ろにいるカイルをを蹴り飛ばすバルバトス。
「油断といったな? これは強者の余裕と言うものだ」
「っ!?ぐぁぁぁぁ!」
そしてロニの頭をつかむと、力任せに締め上げていく。苦悶の表情を浮かべるロニ。
「そしてぇ!気づかないとでも思っていたのか!」
「ぐあああっ!」
そしてそのまま、捕まえたロニをいつの間にか忍び寄っていたジューダス目掛けて放り投げた。
「「うわぁぁぁぁ!」
二人はもつれ合いながら後方に転がって行った。あれだけの勢いでぶつかったのだ。ぶつけられたジューダスだけではなく、ぶつかったロニにも少なくないダメージがあるだろう。致命傷と言うことは無いだろうが、二人ともすぐには動けないのは確かだった。
(くそっ、このままじゃ……!)
バルバトスに蹴られた腹を押さえながら、何とか立ち上がるカイル。とにかく注意をこちらにひきつけなければ。カイルの行動は迅速だった。
「フレイムドライヴ!」
可能な限り手早く晶術の詠唱を行い、バルバトス目がけて火の晶術を放つ。それと同時にカイルは駆けだす。
「利かぬわ!」
それに気づいたバルバトスが、振り向きながら斧で迎撃する。バルバトスが振るった斧に当った火球は爆発を起こすものの、バルバトス自身にはたいしたダメージを与えずに消える。
だがその炎は彼の視界からカイルの姿を少しの間だけ隠した。その少しの間にカイルはななめ前、バルバトスの真横に飛んでいた。一瞬だが無防備になったバルバトスの横っ腹目がけてさらに地を蹴る。
「それで俺の隙をついたつもりか!」
再び斧を振るい、迎撃しようとするバルバトス。だが、それくらいはカイルも”読んでいる”。
「空っ翔!」
バルバトスが斧を振るった瞬間、カイルは全力で地を蹴った。バルバトスが振るった斧がカイルの足元を通り抜ける。少し肝が冷えたが今はそれを気にしている余裕もない。
「斬!」
戦斧を振りぬき、無防備になったバルバトス目がけて、カイルは一気に剣を叩きつけた。
「ふん!」
だが、それでもバルバトスの方が上手だった。振りぬいた斧を引き戻し、カイルの斬撃に防御を間に合わせてきたのだ。剣と斧がぶつかり合い、体格の差かカイルの方が弾かれた。
「まだまだぁ!」
「ぐぉう!?」
防がれるならば攻め続けるのみと、着地すると同時に再び駆けだすカイル。今度は体を低くし、バルバトスの足を斬りつける。流石に、力回せに間に合わせた防御から、さらなる連撃に防御を間に合わせることはこの男にも不可能だったようだ。太ももを斬りつけられ僅かに体勢を崩した!
「スナイプ!」
斬りつけながらバルバトスの背後に抜けた勢いで体を捻り、反動で跳ぶカイル。
「しつこいわぁ!」
バルバトスはその技に見覚えがあった。ルーティが放った『スナイプロア』だ。さすがに一度受けたことがある技だからか、バルバトスも対応して来た。後ろを振り向くと共に迎撃の斬撃を放つ。だが、動きを読んで放ったその一撃はむなしく空を切るだけだった。
「……なんてね。」
確かにカイルは跳んだが、それはバルバトス目がけてでは無く『後ろ』だった。空振った事と予測が外れた事によって無防備になっていたバルバトス目がけ、さらに地を蹴るカイル。だが、それだけでは今までと同じだ。それでもカイルは突き進む。"仲間を信じて"。
「「ネガティブゲイト!」」
「なにぃぃ!?」
カイルが走り出すのと、倒れていたロニとジューダスの声が響くのは同時だった。カイルの稼いだ時間で体勢を立て直した二人が、カイルを援護するために晶術を解き放つ。
バルバトスに襲い掛かるのは、先程と同じネガティブゲイト。だが、今度は先程と違って二人がかりだ。今度は明確にバルバトスの動きが鈍くなる。
「散葉塵!」
そうして放たれたのはカイルの技の中でも最速の連撃。今度こそ、カイルの剣がバルバトスの体を捕えた。後の事など考えず、とにかく剣を振るうカイル。
「貴様ぁぁぁぁ!」
「当たるかぁ!」
斧を振るって反撃しようとするバルバトス。だが、二重のネガティブゲイトによる負荷はまだ彼の体の動きを鈍らせ続けていた。切り上げた斧はカイルに当たることなく空を切る。
「まだだ! 空破絶風撃!」
「がはっ!」
がら空きになった胴に、今度こそ神速の二段突きを放つ。暴風によって吹き飛ばされるバルバトス。だが、カイルの攻撃は終わらない。終わる訳には行かない。先ほどそれなりの傷を負わせたにも関わらず、自分達三人を打ちのめした相手だ。一度手を休めれば、またすぐに反撃してくるだろう。ならば、攻めに転じている今のうちに、可能な限り押し切るしかない。
「空を断つ……」
カイルの剣に、晶力が集中していく。サブノックとの戦いのときにスピリッツブラスター状態で放った爆炎剣と同等か、それ以上に晶力が集まって行く。そして晶力が集まり切ると同時に、剣が炎に包まれる。炎を纏った剣を構え、カイルがバルバトス目がけ突き進む。
「ぶるぁぁぁ!」
反撃しようとするバルバトス。だが、空破絶風撃によって生み出された風が彼の体の自由を奪う。その暴風の中を突き進むカイルの持つ剣の炎は、次第に勢いを増して行く。
「食らえ! 絶破滅焼撃!」
そしてその勢いのまま突き出された剣がバルバトスに突き刺さると同時に、剣が纏っていた炎が解放された。炎は周囲の風を喰らい、さらに勢いを増し、炎の奔流となってバルバトスを飲み込んで行く。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「燃え尽きろおおおおおお!」
炎はバルバトスを飲み込み吹き飛ばし、後方にあった椅子や壁もろとも焼き尽くした。
「やったか?」
息を整えながら、カイルはバルバトスの吹き飛ばされた方を見る。炎が消えた後、そこにあったのは燃え尽きた椅子の残骸と焼け焦げた壁、そして全身にやけどを負ったバルバトスの姿だった。だが、驚くことに彼はそれでも立っていた。彼の服は焼け焦げ、そこから見える肌も所々炭化している。だが、それでも平然と立っているその姿に、もはやカイル達は恐怖等を通り越して、もはや呆れしか浮かばなかった。
カイルは構えを解かずにバルバトスを見据える。この様な状態でもまだ戦えると思えてしまうあたり目の前の男は恐ろしい。
「カイル、大丈夫か?」
「今手当する。ちょっと待ってろ」
そこにロニとジューダスもヒールで回復を終えてやってきた。すぐにカイルの傷もヒールで回復し、これでこの場にはほぼ万全なカイル達三人と、ボロボロのバルバトスと言う図が出来上がった。
「ここまでだ。バルバトス」
カイルがバルバトスにそう言うと、彼はカイルの顔をじっと見、そしていきなり笑いだした。
「はーっはっはっは!」
「な、何だ?」
予想外の事に呆然とする三人。
「貴様、カイル・デュナミスだったな?」
「あ、ああ」
「悪かったな。俺は貴様を侮っていたようだ。」
そう彼が言った瞬間、カイル達の足元と上空に闇の晶力が集まり出した。集まった晶力によって、空間が歪み出す。
「何!?」
「な、なんだこれ!」
「貴様らはぁ、全力でぇ、潰してやるよぉ!」
見た事がない術に混乱するカイルとロニ。だが、ジューダスはその晶術に見覚えがあるのか、焦りながら二人に叫ぶ。
「マズイ、二人とも身を守れ!」
「遅いわ! 断罪のエクセキューション!」
晶力によって歪んだ空間から、闇の力が吹き出しカイル達を打ちすえる。下からの闇の力に撃ち上げられ、上からの闇の力によって叩き付けられるカイル達。
「ぐあああああ!」
「くおおおお!」
「があああああ!」
上下から激しく吹き荒れる闇に、意識がもっていかれそうになるのを必死にこらえる三人。そんな中で、彼らはバルバトスの声を聞いた。
「貴様らの死に場所は……ここだ!」
その言葉と同時に周囲の空間が砕け散り、漆黒の死神が姿を現した。
具現結晶、無茶苦茶すぎますよね。あの時点だと。