テイルズ オブ デスティニー2 ~疾空の刃~   作:トカGE

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バルバトス戦だけでどんだけ続くんだろう、これ


1-24:VSバルバトスI-II

 カイル達の前に現れた『それ』は、漆黒の鎧を纏った騎士のようにも、侍のようにも見えた。

 

「具現結晶だと!?」

 

 ジューダスの焦る声が聖堂に響く。具現結晶とは上級晶術の発動に用いられた晶力の残滓を使って放たれる昇華晶術の総称だ。下級、中級術の残滓を用いるそれとは異なり、上級術によって完全にその属性の『色』に染まった晶力を用い、伝承にある『精霊』の様な力持つ像を具現化するそれは、『精霊結晶』とも言われる。つまり、闇の術から生み出された目の前に居るこの鎧騎士は、それ程強大な『闇』の力を秘めた存在と言うことだ。

 

「貴様らの死に場所はぁ……」

 

 バルバトスの言葉に合わせて、ルナシェイドが腰の刀に手を伸ばす。この後何をするつもりなのかは、容易に想像できた。

 

「二人とも!」

「解ってる! あれはやばい!」

「くそっ! しのげるか!?」

 

 カイルが叫ぶと同時に、ロニとジューダスが晶力防御の体勢を取る。だが、3人は直感的に理解していた。『眼の前のアレが放つ一撃を避けるのは絶対に不可能だ』と。ならば正面から受け切るしかない。

 

(だが、あれは……)

 

 三人は、特にジューダスは痛いほど理解していた。目の前のアレが放つ一撃は、自分たちに耐えられるものでは無いということを。それほどまでに眼の前の存在は圧倒的な力を発していた。脳裏に切り捨てられる自分達の姿が浮かぶ。

 

(ふざけるな!)

 

 カイルは歯を食いしばりながら、剣を盾にし腹に力を込める。ここで自分たちが倒れれば、フィリアやリアラも殺される。それだけは何としてでも阻止しなければならない。そしてカイルが死なせたくないのはその二人だけでは無い。

 

「なっ! おいカイル、何してやがる!」

「カイル、下がれ!」

 

 カイルはロニやジューダスよりも前に出る。自分の小さい体で二人の盾になれるとも思えなかったが、それでもそうしないでは居られなかった。二人さえ無事なら、フィリアやリアラを助けることもできる可能性が残る。自分の命一つで皆を守れる可能性があるのなら、それをしない訳にはいかない。

 

―――誰かを守れない自分に、■■■■■■■■■のだから―――

 

 

……一瞬、自分の思考が飛んだ気がしないでもないが、今この状況では関係ない。カイルは、ただ来るであろう死に備えていた。願わくば、自分の体一つで後ろの二人を守れるようにと。

 

 

 

「このっ、バカ野郎!」

 

 カイルを引き戻そうと……いや、自分が逆に盾になろうとロニが前に出ようとする。だが、それがかなうことはなかった。。ルナシェイドから放たれる闇の力の奔流は激しさを増し、彼らの体をその場に縫い付けていた。まるで質量があるかのごとく体にまとわりつく闇が、彼らの体の自由を奪っていく。本来闇は実体をもたない。だが、高密度の晶力でもあるそれは、物理的な拘束力で彼らを縛り付けていた。

 

「ふざけんな!」

 

 ロニが吼える。それは、誰に向けたものだったのか。自分を庇おうとしているカイルにか。そんな弟分に庇われる事しか出来ない今の自分にか。こんなふざけた力を持ったバルバトスにか。あるいはその全てにか。

 

「こなくそ!」

 

 動こうと四肢に力を込めるだけで、体が悲鳴を上げる。ルナシェイドからあふれ出している力は、それだけでロニやジューダスの放ったネガティブゲイトと同等以上のものだった。それに無理やり抗おうとしているのだ。皮膚が割け、骨がきしむ。それでもロニは前に出ようとするのを止めようとはしなかった。

 

「やるぞ。ああ、もうそんなことを言っている場合じゃない!」

 

 対して、ジューダスは比較的冷静だった。いや、この場に居ないはずの誰かに話しかけているという所だけを見れば、錯乱しているようにも見えるのかもしれないが。だが、彼は強大な力を持つ具現結晶を前にした今、これまでに無く冷静になっていた。

 彼は『この状況を打破する手段を持っている』。だが、本来彼はその手段を使いたくは無かった。何故ならばこれを使った瞬間、『フィリア・フィリスに自らの正体を悟られてしまう』からだ。彼の目的の為にも、そして彼の感情的にも、それはどうしても避けたいことだった。

 だが同様に、カイルを守りたいという思いは決して偽りの物では無い。出し惜しみをしている余裕は無い。彼は目を閉じ、精神を集中し始める。周囲にルナシェイドの放つ凄まじい力の奔流が無ければ、この場に居る人間はジューダスの元に大量の晶力が集まって行くのが感じ取れただろう。だが、今彼に起こっているその変化に気づくものは誰も居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、

 

「ここだ!」

 

 バルバトスの言葉に合わせてルナシェイドが刃を抜き放とうとし、

 

「うおおおおおお!」

 

 カイルがそれを己の全力で受け止めようとし、、

 

「があああああああ!」

 

 ロニが戒めを引きちぎりカイルの前に飛び出し、

 

「ブラック……」

 

 ジューダスがその集めた力を解き放とうとした瞬間。

 

「氷結は終焉。せめて刹那にて砕けよ!」

 

 少女の声が、その場に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

「このままじゃ皆が!」

 

 具現された精霊結晶『ルナシェイド』を見たリアラは叫んだ。このままでは、間違いなく彼らは死ぬ。だが、今の自分には何もできない。自分は所詮”あの人”よりも弱い存在。そんな自分が、あの圧倒的な力を相手に一体何ができると言うのだろうか。

 そう、リアラは”あの人”を止めるためにストレイライズ大神殿を訪れた。その結果がこれだ。言葉では止められず、結果力づくで抑えこまれ、先に幽閉に近い扱いを受けていたフィリアのところに預けられた。そう、リアラの力は”あの人”には遠く及ばないのだ。

 ……だが、そう思うと同時にこう言っている自分もいた。『自分の力ならば、あの程度、大したものではない』と。そう、彼女は■から■■■■■た■■。本来なら、バルバトス程度など一人で何とかできるはずだ。”あの人”に劣るとは言えど、それは決して彼女に力が無いということではないのだから。

 それでも、”あの人”相手に何もできなかった事実がリアラを立ち止まらせる。もし、何も出来なかったら。もし、彼らを助けられなかったら。そういったもし、が彼女の足をすくませる。

 

(それに、私が今あっちに行ったらフィリアさんが……)

 

 一瞬そう考えたものの、すぐにそれは言い訳だと気づく。なぜなら、『フィリアの怪我の治療は既に終わっている』。ほんの少し前、カイルが一人でバルバトスと切り結んでいた時に。意識はまだ無いものの、命の危機は既に脱している。つまりリアラの一歩を阻んでいるのは、他ならぬ彼女自身の怯えだけだった。

 

(怖い……怖い……!)

 

 そう、怯えだ。それはバルバトスの力に対する怯えではない。先ほども言った”もし”への怯えだ。人は誰しも失敗を恐れる。少し前に失敗したばかりならば猶更だろう。本来ならばある程度の時間をかけて立ち直るものだが、彼女にはその時間がなかったのが不幸だった。

 

「行きなさい……リアラさん」

 

 だが、彼女には幸運なことに、道を示してくれる人が傍に居た。

 

「フィ、フィリアさん! ダメです、まだ動いちゃ!」

 

 体を起こそうとするフィリアを慌ててリアラが制止する。傷が塞がったとはいえ、失った血までは取り戻せない。無理をすれば、本当に命に係わる。だが、フィリアは言葉を紡ぎ続ける。

 

「あなたが何を考えているかは、なんとなくわかります。それでも、あなたは行かなくては」

「わかってます、そうしないと皆が! でも……」

 

 そう言うリアラの顔には、見てわかるほどの恐怖が浮かんでいた。

 

「大丈夫ですよ……あなたは、できます」

「えっ?」

 

 フィリアは微笑みながら、リアラの手を取った。

 

「あなたは、私を救ってくれた。あなたには力がある。あなたに必要なのは、自らを信じること。自信を持つことです」

「自信……」

 

 フィリアの言葉に、リアラの杖を持つ手に力がこもる。

 

「あなたから聞いた言葉が本当なら、あなたに秘められた力は素晴らしいもののはずです。それこそ、あの男なんて目じゃないくらいに。だって、『■■■■』の強さが、あんな一人の自分勝手な男に負けるはずないんですから。ね?」

 

 そう言うと、フィリアは再び意識を失った。やはり無理をしていたのだろう。

 

「ありがとうございます……フィリアさん」

 

 だが、その無理に感謝をしなければならない。リアラは覚悟を決めていた。そうだ、自分の力は自分だけのものではなかった。彼女が持つ力、それは■■■■の力。ならば、■■である自分は誰よりもその力を信じなければならなかった。

 

「行ってきます!」

 

 そうしてリアラは、杖を持って駆け出した。自分を、そしてその身に宿る■■■■の力を信じて。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

「インブレイズエンド!」

 

 リアラの唱えた水系晶術によって生まれた、巨大な氷塊がバルバトスとルナシェイドの真上から落ちてくる。

 

「小娘が!」

 

 ルナシェイドの刃が前方ではなく真上に向かって振り上げられる。まるで豆腐でも斬るように両断される氷塊。だが、それはリアラにも想定内だ。本番はここから。

 

「我が呼びかけに応えよ!」

 

 相手が具現結晶ならば、こちらも具現結晶をぶつけるまでのこと。

 

「アクアリムス!」

 

 両断され、砕け散った氷塊の破片が一か所に集い、同時に周辺の『闇』の力を押し流すほどの『水』の力があふれていく。そして集まった氷が水に姿を変え、さらに槍を携えた女性の姿を形どっていく。

 

「皆は私が守る!」

 

 リアラの意志に従い、現れた水の具現結晶『アクアリムス』がバルバトス目がけ突き進む。だが、それをルナシェイドの刃が阻む。

 

「水の具現結晶か。いいぞ、小娘。少しは楽しめそうだ!」

「っ、アクアリムス!」

 

 リアラの声と共に、アクアリムスがルナシェイドを押しのけ距離を取る。不意を撃っての一撃は防がれた。ならば後は正面から打ち合うのみ。

 

「行って!」

「来い!」

 

 水と闇、二つの精霊結晶の戦いが始まった。




リアラは単純に「人の命が危険」だから守ろうとしています。。今はまだ、「ラグナ遺跡で出会って、今また助けてくれた人たち」程度の認識ですし。
なお、この作品のリアラさんはくっそ強い設定。あくまで潜在的なあれですが。
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