リアル忙しいのと体調不良でぼろくそでしたが、何とか続きできました。
お待たせして申し訳ない。
バルバトスが気が付いた時、そこは大聖堂の中ではなく、別の建物の一室の中だった。内装から大神殿内のどこかだと当たりをつけた彼は周囲を見回し、そして視界に二人の男女をとらえた。そして何が起こったのか理解し、
「エルレイン!貴様ぁ!何故邪魔をした!」
瞬間、バルバトスは女……アタモニ神団聖女、エルレインに掴みかかろうとした。だが、その手はエルレインに触れる前に、横から伸びた手につかみ取られる。その手の主は、エルレイン親衛隊隊長、ガープのものだった。
「バルバトス、お前が不甲斐ないからだろう。エルレイン様に怒りをぶつけるのは筋違いだ」
「ガープ、貴様……!」
バルバトスの顔が赤く染まる。それは怒りか、それとも羞恥からか。或いは、その両方からか。
「お前がより強い者との戦いを望むのは解る。我も武人の端くれだからな。だが、お前は聊か相手を侮りすぎだ。だから足元をすくわれる」
「ぐっ」
ガープの言葉に言い返せず言葉が詰まるバルバトス。今回など、まさにその通りだった。いくら"こちらに相手を全滅させても有り余るほどの余力が残っていたとしても"、押されていたのは事実だ。
「それにバルバトス。私はあなたが敗れると思ったから介入したのではありませんよ?」
そこでエルレインも口を開く。その顔には笑みが浮かんでいた。
「貴方があの方たち程度の相手に敗れるとは思っていません。ですが、貴方にはこの後大切な、それこそ歴史に名を刻むような大仕事が待っているのです。ですから、大事を取って」
「わかった、もういい。二度とするな。それでいい」
エルレインの言葉を遮るように、バルバトスが言う。その様子を見て、エルレインは微笑む。
「ええ、期待しています。それでは行きましょう、二人とも。アガレスさんも待っています」
そう言うとエルレイン、そしてガープは部屋をでる。それに続いて部屋を出ようとしたバルバトスだったが、ふと足を止め、部屋の中のレンズを見つめる。そこには、大神殿の医務室で眠っているカイルが映っていた。
「カイル・デュナミス……その名、そしてこの屈辱覚えておこう。次出会った時、貴様の首をもらう!」
そう吐き捨てるように言うと、彼も部屋を出ていった。残されたレンズは、しばらくカイルの姿を映していたが、やがて光を失い何も映さなくなった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……ん、あれ?」
カイルが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋のベッドの中だった。
「お、起きたか。カイル」
「あ、ロニ。っていってぇ!?」
カイルが目覚めたことに気付いたロニが近づいてくる。カイルは返事をしようと体を起こそうとしたが、痛みで体がまともに動かせなかった。
「おい、無理すんな。お前全身ボロボロだったんだぞ?アタモニ神団の術士が晶術で治療してくれたが、それでも2、3日は安静にしとけってさ」
そういってロニはカイルに痛み止めだと言ってマグカップを差し出す。
「飲めるか?」
「ん、たぶん」
今度はゆっくりと手を伸ばす。痛みは相変わらず強いが、それでもカップを持つ程度なら何とかなった。ゆっくりと中身を口に含み、飲み込む。そんなにすぐに効くものではないだろうが、気持ち幾分か楽になった気がした。
「ここは?」
「ああ、ストレイライズ大神殿の医務室だ。あの後お前がぶっ倒れたから、あわてて担ぎ込んだんだよ」
そのロニの言葉で、カイルはバルバトスとの闘いを思い出した。
「それで、あの後どうなったの? 俺、バルバトスに一撃叩き込んだとこまでしか覚えてなくて……そうだ!フィリアさんとリアラは!?」
自身が放った爆炎がバルバトスを飲み込んでいく。それがカイルが最後に覚えている光景だった。自分やロニがこうしているということは、とりあえず奴は倒せたということなのだろうか。
「二人は無事だ。フィリアさんは傷がちょっと深かったが、手当が早かったから命に別状はない。自分の部屋で今は休んでるよ。リアラはあの後体力の消耗で少しふらついた程度でお前よりよっぽどマシだ。今はフィリアさんと部屋で話してる。そんで……」
「バルバトスの奴は消えた。炎が消えた後、そこにバルバトスの姿はどこにもなかった」
ロニの言葉の続きを言いながら、ジューダスが部屋に入ってきた。その手には何枚かの紙が握られていた。
「あいつの性格からして、自分から逃げるとは考えづらいし、あの状況で逃げ出せたとも思えん。協力者がいるんだろうな」
「それってまさかエル…」
「カイル、確証がないのに口に出すな。ここは大神殿の医務室。アタモニ神団の本拠地だ。うかつなことは言うな」
「あ、ごめん」
「まあ、怪しいことは確かなんだがなぁ。確かにあの女にとって反対派かつ神団の中心人物のフィリアさんは邪魔なんだろうが……」
手を出し制するロニに謝るカイル。確かにラグナ遺跡でエルレイン親衛隊のサブノックに襲われ、それを追って来たらバルバトスに遭遇したとなればその二つを結びつけたくなるのは当然だ。だが、確かに確証はないのだ。バルバトスの口からエルレインの名前が出たわけでもない。
「あいつについてはもう少し情報が入ってからだな。今はわかっていることを先に処理しよう」
バルバトスについての話を一旦打ち切りながら、ジューダスは持っていた紙をベッドの横のテーブルに広げた。
「お前が寝ている間にフィリアとリアラに話を聞いてきた。リアラは大神殿に連れてこられた後、すぐフィリアのところに預けられたらしい。エルレインとは会ってないそうだ」
「そうなの?サブノックの言葉だと、そのために連れてきたと思ったんだけど」
ジューダスの言葉にカイルが疑問を口にする。
「リアラも不思議がっていた。見張りはつけられていたが、大神殿から出る以外は比較的自由に行動できていたらしいしな」
「ますます訳が分からねえなあ」
カイルとロニが首をかしげるのを横目に、ジューダスは広げた紙を持ち上げた。それは騎士団への指示書らしきものだった。
「で、本題はここからだ。アガレス老とその部下たちが、僕らがアイグレッテを訪れる少し前にアクアヴェイル公国に向かって出発している」
「アクアヴェイル公国?なんでまたそんなところに」
ロニが口に手を当て考え込む。アクアヴェイルはセインガルド北東に位置する国家連合だ。かつては各領ごとに独自の統治が行われていたが、現在は統一され公国となっている。
「それはわからない。だが、お前たちの言う通り彼が洗脳されているというならば……」
「ろくなことにはならねえだろうな」
「そうだね」
苦い顔をするロニに、カイルも同意する。もしエルレインがアガレス老を利用して何かをしようとしているならば、止めなければならない。
「すぐに後を追おう!っていつつ……」
「気持ちは分かるが落ち着け、カイル。傷も治りきってないし、何より船が次に出るのは三日後だ」
「そ、そっか」
「ったく、本当お前は昔から無茶しやがって。今回も俺をかばおうとしたろお前」
「あ、いや、その」
「気持ちはありがたいがな、お前にかばわれるほどやわじゃねえっつうの、俺は」
そういってカイルの頭をわしゃわしゃ撫でまわすロニ。
「す、ストップ!い、痛い!真面目に今は痛いから!」
「あ、わりぃ」
「ふっ、バカどもが」
じゃれあう二人を尻目に、ジューダスは部屋を出ようとする。
「あれ、ジューダス。どこいくの?」
「ああ、ちょっとフィリア達の様子を見てくる。お前が目を覚ましたことも伝えないとな」
「そっか。二人によろしく。俺も歩けるようになったら挨拶に行くからさ」
「わかった」
そういって、ジューダスは部屋を出た。そうしてフィリアの部屋に向かおうとして、ふと足が止まった。
(……あの時)
バルバトスとの闘いの中、カイルがロニや自分をかばおうと前に出たときの事を思い出す。
(何か違和感がある……なんだ?)
何か、見落としてはいけない何かがあった気がした。だが、それが何かはわからない。少しするとジューダスは気のせいだろうと思いなおして再び歩き始めた。
そんなわけでとりあえず序盤編終わり……にはもう1,2話。
そこからアクアヴェイル編入ります。
……終わるのいつになるかなぁこれ(汗