テイルズ オブ デスティニー2 ~疾空の刃~   作:トカGE

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 なんか微妙だなと書きなおしていたら、思いっきり中身が変わってしまったので閑話ということにしました。

*原作と違い黒幕はミクトランだと広まっています。いや、ヒューゴが操られてたって知った以上、お人よしなTODメンバーが汚名を晴らさないってことは無いと思うんだ。



番外編2:ストレイライズ大神殿の一室にて

 突然だが、『歴史』とは何であろうか。物事が時間的に変遷したありさま、と言葉の意味を答えるものも居るだろうし、人々の行動の積み重ね、と人のそれに限定して答えるものも居るだろう。だが、そう言った『歴史』について定義するのが人であるならば、歴史とはつまり人の為にあるものだということだろう。そう思った『女』が少なくとも一人、この世界に居た。

 

 

 

 

 カイルらがラグナ遺跡を訪れた日から丁度3か月前。ストレイライズ大神殿の一室、特に誰かが使っている訳でもない空き部屋の一つに、その女は居た。彼女は一人、部屋の壁を眺めていた。もし、誰かがこの部屋に訪れたのならその顔は驚愕に染まっただろう。その壁には、まるで映画を上映するかのように、18年前この世界に大きな被害を引き起こした『神の眼の騒乱』の様子が映し出されていたのだから。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 『神の眼の騒乱』。第二次天地戦争やヒューゴの乱とも呼ばれるその事件のそもそもの始まりは、オベロン社総帥『ヒューゴ・ジルクリスト』が天地戦争時代の遺物『ソーディアン』のうちの一振り『ソーディアン・ベルセリオス』を発掘したことから始まった。

 ソーディアン・ベルセリオス。かつて、天上王ミクトランを命と引き換えに打ち倒したソーディアンマスター『カーレル・ベルセリオス』の帯剣。本来ならば、ベルセリオスの人格が宿っているべきそれには、なんと彼が打ち倒したミクトランの人格が宿っていた。天才科学者でもあった彼は、死の間際にベルセリオスのコアクリスタルに自身の人格を転写し、上書きすることに成功していた。つまりソーディアン・ベルセリオスは、ソーディアン・ミクトランとでも呼ぶべきものへと変貌していた。

封印が解かれたミクトランは、まずヒューゴの体を乗っ取った。おとぎ話にあるような幽霊が取りつくようなものとは訳が違う、レンズのエネルギーを利用した精神介入により、ヒューゴの体はミクトランの物となってしまった。ミクトランに憑りつかれたヒューゴは、まず妻と娘を放逐した。それは自身の正体を悟られないようにする為だったのか、あるいはわずかに残っていたヒューゴ本来の意志のあがきだったのかはわからない。だが、幼い息子だけは彼の手元に残された。

 

 そうして体を得たミクトランは、己の目的の為に行動を開始した。それはすなわち『自身の復活』と『天空都市の復活』、そして地上の支配だ。天空都市復活の為には動力となる巨大レンズ『神の眼』が必要。だが、一介の考古学者であるヒューゴにはそれを手にする手段がない。

 

「手段がないなら、得ればいいではないか」

 

 最初に彼が行ったのは権力を得ることだった。自身のレンズ知識を活かし、オベロン社を設立。その手腕で瞬く間に世界中にシェアを持つ大企業へと成長させた。そうして国への影響力すら手に入れた彼は、その財力を使い世界各地で天地戦争時代の遺跡を発掘し空中都市を探すとともに、自身と行動を共にする仲間…否,手駒を探し始めた。彼にとって地上人は家畜同様なのだから。そうして彼の思想(と言っても、自身がヒューゴでは無い事等都合の悪いことは隠してあったが)に共感したオベロン社幹部たちが計画に賛同することとなった。

 

 そうして全ての準備を終えた彼は、次にストレイライズ大神殿の大司祭グレバムを焚き付け、神の眼を強奪させた。グレバムとしてはただ己の野心を叶える為の行動であったが、ヒューゴの狙いは自身の手腕で事件を解決し、国王の信頼を得て神の眼の奪取を容易にすることだった。彼は配下のソーディアンマスターであり、ヒューゴの実の息子である『リオン・マグナス』を向かわせる事にした。そして、当時王国管理の遺跡に侵入した容疑で逮捕されていた、後に四英雄と呼ばれることになるスタン・エルロンやルーティ・カトレット、その親友のマリー・エージェントらをリオンの配下とし、グレバムを追わせた。これは、後に計画の障害になる他のソーディアンマスターに、配下であるリオンとの仲間意識を持たせ戦いづらくさせる目的もあったようだ。

 

 ミクトランの目論見は成功し、リオンらは見事神の眼を取り戻した。この国王の信頼を得たミクトランは全ての準備を終えると、リオンと共に神の眼を強奪し天空都市復活の為の行動を開始した。四英雄達はそれを阻止するために行動するも、リオン・マグナスの妨害にあった。彼は、ミクトランに大切な人を人質に取られていた。そして仲間よりも彼女を取ったのだ。結果、彼は打ち倒されたものの、空中都市復活の阻止は失敗、空中都市は再び空へ浮かぶこととなった。

 

 そうしてミクトランは天地戦争時代と同様、空中に外殻大地を形成、星を覆い尽くし、自らが支配する世界の神となろうとした。空中都市を甦らせたミクトランは、その施設を使い自らの肉体を取り戻し、その目論見はあと一歩と言うところまで進んだ。

 だが、それは四英雄『スタン・エルロン』『ルーティ・カトレット』『フィリア・フィリス』『ウッドロウ・ケルヴィン』によって阻止された。空中都市に直接乗り込んだ彼らによって、ミクトランは打ち倒され、今度こそ完全に滅びたのだった。だが、ミクトランは最後の悪あがきをしていた。降下していく外殻大地。このままでは、地上は全て押し潰されてしまう。ソーディアンマスター達は、ソーディアンを犠牲にして神の眼を破壊し、それにより外殻を破壊、世界の滅亡を防ぐことに成功した。

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 全てを見終えた後、女はため息をついた。今女が見たのは、『実際に起こった真実』だ。言葉の意味としての歴史ならば、今見たものがそれなのだろう。だが、人々の中の歴史はそうではなかった。最初は、神の眼の騒乱の元凶はヒューゴ・ジルクリスト本人だとされた。彼の私欲が、世界を滅ぼそうとしたのだと。だが、その後四英雄らの働きかけにより、人々はミクトランこそが元凶だと認識し、今はそれが真実だとされている。

 

「でも、本当にそれが真実だとは限らない」

 

 実際に見た自分ならともかく、四英雄から事情を聞いただけの人々にはそれを確かめる術はない。ならば、何故それを信じたのか。

 

「それを語ったのが、『英雄』だから」

 

 そうだ。人は信じたいものを信じる。そして信じたものが、人にとっての歴史となる。ああ、ならば。歴史が人の為にあるのだというのならば。

 

「人が幸せになるためならば、『歴史程度』いくらでも作り替えましょう」

 

 そう、女は笑った。その表情は慈愛に満ち溢れていた。正しく、人の幸せを願う者の表情だった。だが、その口から出た言葉はとてもではないがその表情に似つかわしくないものだった。そしてそれは、次に放たれた言葉も同じだった。

 

「なればこそ、歴史を変えるのは私だけでなければいけない」

 

 人の幸せの為に歴史を変えるのだ。それを邪魔するものはあってはいけない。だが、それができる者達が今この世界に居た。

 

「四英雄を始めとした神の眼の騒乱の功労者たち」

 

 そう、人々は世界を救った彼らを信じている。それは、まるで彼女が崇める神に対するがごとく。彼女自身はそれに対して特に思うことは無い。何故ならば、彼女の願いは人々の幸せ。英雄を信じて人々が救われるならば、それはそれで正しいことだ。だが、それだけではだめだ。彼女は『全ての人』を救いたい。そしてそのための手段は既に考えてある。

 そして、そのためには彼らは、英雄は邪魔になってしまう。彼女の願いの為には大量のレンズが必要だ。だが、レンズの……『神の眼』の恐ろしさを見た彼らは、ひとところにレンズが集まることを良しとはしないだろう。そしてそれを人々が知れば、彼女の計画はとん挫する、とまではいかなくても遅れが出る。それは、人の救いが遠のくということだ。彼女はそれを許すことができなかった。

 

 "だから消し去ることにした"のだ。古の戦士を呼び覚まし、その刃を持って。四英雄達はこの世界では死を迎えるだろう。それはとても悲しいことだ。だが、彼女の目的が達成されてば、全ては書き変わる。彼らも幸福に包まれた世界を享受できるのだ。そう考えるならば、一時の痛みも仕方のないものだと思ってもらおう。そう、身勝手な事を女は考えていた。

 

「でも、彼は一人目に打ち倒されてしまった」

 

 そう、彼女が呼び覚ました青い戦士は、一人目の英雄と相討ちになってしまった。傷はもう癒えるが、一人では心もとないと思ってしまう。

 

「ならば、もう一人呼びましょう」

 

 一人で足りないならもう一人。簡単な理屈だった。だとすれば、誰がいいのか。彼女は考える。ふと、先ほどまで見ていた壁が目に入った。

 

「ああ、彼にしましょう」

 

 一人、後悔を持っていたであろう少年の姿が浮かんだ。大切な人を人質に取られ、友に刃を向け、打ち倒された少年。愛した人を守るため、死後も汚名を受け続ける少年。

 

「彼ならば、私の手助けをしてくれるでしょう」

 

 なぜなら、彼女は彼が愛した人も、仲間達も幸福にしようとしているのだから。だが、彼女は気づかない。彼が彼女の計画をどう思うかを。彼女は人を救いたいと思いながら、その実誰よりも、『人』を見ていなかった。その歪みに彼女が気づくことはあるのだろうか。

 

 

 

 

 

「さあ、蘇りなさい」

 

 それは、神にさえわからない。




彼女が誰かはお察しで
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