テイルズ オブ デスティニー2 ~疾空の刃~   作:トカGE

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設定覚書その2
・孤児院は借金をするほど苦しくはない。カイルとロニがルーティのモンスター討伐についていき、一緒に報酬を貰い、それを孤児院の運営に回していたため。
・街の近くにモンスターが寄らない理由は、レンズ技術脱却運動で余ったレンズで作られた、劣化クリスタル(ソーディアンのコアクリスタル生成の際に、基準に届かなかった失敗作。モンスターを寄せ付けなくする効果がある。制作過程での試行錯誤があったのか、いくつか数が存在し、各街に設置されていた。PS版参照。)の模造品である特殊レンズを新たに街に配置したから。劣化品のさらに模造品なので、街を囲うよう大量に設置する必要があったが、レンズ需要の低下からレンズの値段が下がったことで、それが可能になった。


1-2:久しぶりの再会

 次の日、二日連続で悪夢にうなされるという事もなかったカイルは、清々しいまでに爆睡していた。既に階下ではカイル以外の子供たちが、騒がしく朝食を食べている真っ最中だ。

 

「むにゃ……母さん、もう食べられないよ……」

 

 等とベタすぎるカイルの頭上に、黒光りするフライパンとお玉が掲げられる。勢いよく振りぬかれたお玉は、フライパンの底目掛けて一直線である。

 

「秘技・死者の目覚め!」

 

 そして、今日も轟音が孤児院に鳴り響いた。

 

 

 その頃一階では、

 

「やっぱりあれがないと朝って気がしないよねえ」

「だよね。母さんやカイルが出掛けてるときって、なんか1日が始まった気がしないって言うか」

 

 死者の目覚め。ルーティが亡き夫、スタンの妹から直伝された、対寝坊助用強制起床奥儀によって鳴り響く轟音は、最早デュナミス孤児院名物である。そこに住む子供たちにとっては朝の鶏の声みたいなものだ。稀にカイルが早起き(と言っても他の子ども達からすれば、普通に起きる時間だったりするのだが)する事でもなければ、毎日の日課となっている。

 

「しかし、カイルもいい加減自力で起きればいいのに」

「お子様だよねぇ」

「お母さんも大変だよねえ、毎日毎日」

 

 自分より5、6歳も年下の子供達にそんなことを言われてるとは知らないカイルは、今日もあわてて……まあ、それでも半ば寝ぼけ眼だが……でベッドから転げ落ちた。

 

 

 

 その後、身支度を済ませて遅い朝食をを終えたカイルは孤児院の年少組を連れて、街の近くの森までピクニックに来ていた。

 本来なら、モンスターが闊歩する街の外へ幼い子供達を連れて出かけるなどとんでもないことだが、この森は特別だった。人が住む街には、モンスターを近づけないために特殊製法で作りだした特殊レンズが設置されている。この特殊レンズが発する晶力の波長は通常のそれと異なり、本来ならばレンズを取り込もうとする動植物などを遠ざける効果がある。

 そのため各都市では、その周囲を囲うように特殊レンズを設置し、モンスターの脅威から街を守っているのだが、今カイル達が来ている森は、街と特殊レンズの輪の丁度中間に位置しているのだ。つまり、街の外ではあるがモンスターが近づかない『安全地帯』なの

であり、言ってしまえばここも街中のようなものなのである。

 

「よーし!あっちいこうぜ!」

「待ってよ、僕も行く!」

「あ、じゃあ私たちはあっち!」

「あ、お前たちちょっと待てって!バラバラになるなっていつも言ってるだろ!」

 

 しかし、普段遠出することがない幼い子供達にとっては、そんな森の中でも物語に出てくるダンジョンのような未知に溢れた場所のようで、着くやいなやあちらこちらに走って行ってしまい、保護者役のカイルはそうそうに追いかけっこをするハメになってしまった。

 

 

「ふっ!せっ!やっ!」

 

 カイルが皆を捕まえ終わったころには、もう日は真上に上っていた。母ルーティの作ってくれたお弁当をペロリと平らげ、子供達は再び遊びだす。もっとも先ほど、カイルにこってり絞られた為、彼の眼の届く範囲で遊んでいる。そんな子供達の様子を見つつ、カイルは自身の剣の修行をしていた。

 元々は、モンスター退治でお金を稼いで孤児院の経営を助けようと始めた剣術だったが、カイルの性格にあっていたのか、今ではそれ自体が楽しみの一つとなっていた。剣の修行は真面目にやる反面、勉強は苦手なカイルはことあるごとに逃げ出しているため、母ルーティは、

 

「こんなとこまであの人に似ることはないのに」

 

と頭を抱えていたりするのだが。

 それはともかく、カイルは無心に剣を振るう。カイルの剣の師は母ルーティだが、その剣は我流のものだ。故にカイルも、剣の型に関しては我流で試行錯誤を繰り返していた。常日ごろから訓練を繰り返し、母ルーティと共に行うモンスター退治という名の実践で磨かれたそれは、カイルに最も適したものになって行った。

 斬り、払い、突き。剣の基本と、たまに技の練習。それをひたすらに繰り返す。そんな剣の修行は、子供達が遊び疲れるまで続けられた。

 

 

 

 

 

 カイルが異変に気付いたのは、クレスタへの帰り道だった。遊び疲れた子供達を連れ、街への道をを歩いていたカイルは、妙な違和感を感じた。

 

(なんか、妙に静かだ。)

 

 いつもだったら、小鳥や虫のざわめきが聞こえるのに、森の中はシンと静まりかえっていた。まるで何かに怯えているような、そんな不自然な静けさに、カイルは無意識のうちに剣に手をかけていた。

 

「ねえ、カイル。なんか変じゃねえ?」

「うん、なんか静かすぎて怖いよ」

 

 そう子供たちが言った、次の瞬間だった。

 

「グァァァァ!」

 

 近くの茂みの中から熊型のモンスター『オウルベア』が突然飛び出してきた。オウルベアは近くに居た子供達に目をやると、鋭い爪で襲い掛かる。

 

「きゃあああああ!」

「なんでモンスターがこんなところに!?」

「みんな、下がれ!蒼破刃!」

 

 とっさにカイルはオウルベア目がけて特技を放つ。振りぬいた剣から放たれた衝撃波が、オウルベアの脇腹を切り裂く。

 

「グルルルル」

 

が、浅い。オウルベアはカイルに少し注意を向けたものの、大した敵ではないと判断したのか、再び子供達目がけて腕を振り下ろそうとする。しかし、一瞬注意が逸れただけでカイルには十分だった。

 

「まだだ! 蒼破!」

 

 蒼破刃を放った勢いをそのままに振り上げた剣を、今度は高速で踏み込みながらオウルベアの頭にたたきつける。急所への一撃にたまらずよろけるオウルベア。すかさず今度は胴目がけて薙ぎ払いを放つ。狙うは先の一撃でつけた腹の傷。

 

「追蓮!」

 

 振り下ろしの反動を利用して放たれた強烈な斬撃を受け、後ろに大きく吹っ飛ばされたオウルベアは、そのまま森の中まで飛んでいき見えなくなった。

 

「やったー! さっすがカイル兄ちゃん!」

「やっつけた!」

 

 兄貴分であるカイルの活躍にはしゃぐ子供たち。しかし、カイルの目は未だ吹っ飛んでいったオウルベアの方を見据えていた。傍目には綺麗に決まったように見えた今の連携だった。だが、カイルは子供達を守る為にとにかく、オウルベアを子供達から引き離すことだけを考えていた。蒼破刃が大した傷を負わせられなかったのがその証拠だ。会心の一撃の様に見えた蒼破追蓮もそれは同様だった。頭に入った一撃はともかく、追撃の薙ぎ払いは相手を吹き飛ばしはしたものの、その胴を断ち切っては居ないとカイルは感じていた。

 

「いや、まだだ。気をつけろ!」

 

 その言葉の通り、再び草木をかき分け現れたオウルベアの胴体を見ると、傷は追っているものの、致命傷にまでは至っていないのは明らかだった。そしてさらに、

 

「カイル! あっち!」

「な、もう一体だと!?」

 

森の中からもう一匹オウルベアが現れる。どうやら、番いか何かだったらしい。二匹とも、こちらに向けて敵意のこもった目を向けている。

 

「くそ、何でこんなにモンスターがいるんだよ!」 

「カイル兄ちゃん、どうしよう!」

「大丈夫だよ。だから、ちょっと下がってて!前に出るなよ?」

 

 剣を向けオウルベアをけん制しつつ、カイルは怯える子供たちを背後に庇う。

 

(本当、なんでこんな所にモンスターが居るんだよ!)

 

 カイルは知る由もなかったが、数日前に起きた地震によって、この近くに設置されていた特殊レンズが壊れてしまっていたのだ。モンスターがこんな街の近くにまでやってきていたのは、そのせいだった。街にモンスターが大挙して押し寄せてくるよりはマシかもしれないが、そんなことは今現在モンスターに襲われているカイル達には何の慰めにもならなかった。予想外の増援に焦るカイル。

 

(落ち着け、俺。しっかりしろ!こんな時こそ俺が皆を守るんだ!そのために剣の修行をしてきたんだろう!?)

 

 深呼吸し、オウルベアを見据える。彼にとって、オウルベアと戦うこと自体は初めてではない。剣の修行と孤児院の食糧及び運営資金稼ぎを兼ねて街周辺のモンスター退治をしているが、その時に何度か遭遇している。その際も危なげなく倒せている。

 問題は"子供たちを庇いながら戦えるか"だった。基本的にカイルの剣技は、スピードを生かしたものが多い。小柄な体躯を補おうと、母ルーティの戦い方をアレンジし続けた結果生まれたスタイルだったが、それは逆に言えば、速さを活かせない状況に弱いということでもあった。つまり、子供たちを庇いながら二体のモンスターと戦わなくてはならない今の状況は最悪であると言えた。子供達を先に逃がすことも考えたが、森の中にまだオウルベアが居るかもしれないこの状況ではそういう訳にもいかない。徐々にカイルの思考も追い詰められていく。

 

(それでも、皆を守るんだ。俺が父さんの代わりに。でなきゃ、父さんが俺を庇った意味がなくなっちまう! そうだ、俺は"死んでも"皆を守らなきゃならないんだ!)

 

 最悪、刺し違えてでも皆を守る。そうカイルが覚悟したその時だった。

 

「オラァ!」

「グオォォ!?!?」

 

 カイルが最初に切りつけた方のオウルベアが、いきなり真横に吹っ飛んだのだ。そのまま木に叩き付けられて、オウルベアは動かなくなった。先のカイルの一撃で傷を負っていたオウルベアは、今度こそ絶命したようだった。

 

「へ?」

 

 突然のことに、目が点になるカイル。だが、オウルベアが吹っ飛んだ理由はすぐに解った。

 

「ロニ・デュナミス、ただいま参上! ってな。大丈夫か?お前ら。」

 

 先ほどオウルベアが立っていた場所に、ハルバートを振りぬいた姿勢で銀髪の青年が立っていた。カイルたちの兄貴分でデュナミス孤児院の稼ぎ頭。ロニ・デュナミスである。

 

「ロ、ロニ! なんでここに!?」

「手紙送っただろ? 今度仕事で近くまでくるから、一度孤児院に帰るって」

「そう言えば、そんな手紙が来てたような」

「忘れてたのかよ。ひでえな、おい。しっかし久しぶりに帰って来てみりゃ、なんでかこんなとこにオウルベアがいるし、お前らが襲われてるしで、本当キモが冷えたぜ」

「あ、あは……あはは!」

 

 そうおどけながら話すロニの姿に、緊張の糸が一気に緩んだカイルは思わず笑い出した。

 

「ありがとうロニ。おかげで助かったよ。ところで、後一匹居るんだけど」

「なに、問題ない。俺たちならすぐ終わるさ。だろ? カイル」

 

 ロニにうなずくと、カイルはオウルベアに向かって突っ込んでいく。合わせて、ロニが子供達を守る体制に入る。この無言のコンビネーションこそ、二人の自信の源だった。ロニが孤児院を出るまでの間、ルーティにモンスター退治で鍛え上げられた二人のコンビネーションは、数年会わなかった程度で錆びつくものではなかった。

 

「散葉塵! さらに、散葉枯葉! ロニ!」

「おう!デルタレイ!」

 

 三連斬りで相手の防御をはね上げ、がら空きになった胴体に剣を深々と突きさすカイル。それによって動きを封じられたオウルベアに、ロニが放った光弾が突き刺さる。

 そこからは一方的だった。カイルが高速で動き回って錯乱しつつ、オウルベアの体力を削っていく。ロニは子供たちを守りつつ、それを晶術で援護していく。そうしてものの数分でもう一体のオウルベアは崩れ落ちた。その頃になってようやく気絶していたオウルベアも起き上がってきたが、ボロボロの体でカイルとロニの二人を相手にできる訳もなく、あっさり打ち取られたのだった。

 

「すげえ! さっすがカイルとロニだぜ!」

「カイル兄ちゃん大丈夫?怪我してない?」

「ロニにーちゃん、お土産は?」

 

 子供たちの歓声があがった。嬉々としてカイルとロニに群がる子供たち。ロニは久しぶりに子供達にあえて嬉しそうだ。

 

「ははは、よかっ…た………」

「な!? おい、カイル!どうした!」

 

 突然、カイルはその場に崩れ落ちた。慌ててロニが駆け寄る。だが、カイルに外傷はなく、どうやら気が抜けて気絶しただけらしかった。

 

「やれやれ、しゃーないな。まったくこいつは」

 

 呆れたふうに言いながらも、ロニの顔には安堵の表情が浮かんでいた。

 

「さあ、お前ら、ルーティさんに怒られる前に帰るぞ!」

 

 そう言うとロニはカイルをおんぶして歩き出した。やるべき事は多い。ルーティへのあいさつ、街の大人たちとモンスターがこの森に侵入してきたことについての報告と相談。後はオウルベアの死体から肉や皮を剥いで、等々。だがまあ、とりあえずは、

 

「孤児院に着いたら、とりあえずこいつを褒めてやらないとかねえ?」

 

 後は皆を守るために無茶しようとしたことのお説教だな、とロニは笑った。




基本序盤はストーリーなぞるだけになるかもです。
ちなみにカイルが剣を始めた理由は、モンスターを倒してお金を稼ぐためというのが表面上の理由ですが、スタンの代わりにならなければという思いから、スタンと同じく剣が使えなければならないと思っていたから。作中にあるように、今は楽しみながらやってますが、同時にもっと強くならねばならないという強迫観念があったり。本人は気づいてないどころかまるで苦にして無い為、ただの剣術バカみたいになってますが。後ロニは、カイルが孤児院の皆を守る為に無茶をすることがあるのは知っていますが、ただ愛情が強いからだと思っていて、今はカイルのトラウマには気づいていません。
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