・カイルはスタンの技をいくつか見たことはあるが、うろ覚え。
・TOD組の技に関してはリメイク版準拠。神の眼の騒乱に関してはPS版とリメ版を合わせた感じ。
「ちょ、ちょっと待ってよ。やめるってどういうこと!?」
ロニの突然の発言に、カイルは驚愕してロニに詰め寄る。ロニがどんなに頑張ってアタモニ騎士団に入ったかを知っているからである。最初は四英雄のフィリアさんに憧れて興味を持ったという不純な理由だったが、そこからアタモニ神団の教義を知り、騎士団の人達と接し、人に尽くす思想に共感したロニは、自分を育ててくれた孤児院に恩を返すだけではなく、かつての自身と同様に苦しんでいる人々の助けになりたいと必死になって努力した結果騎士団への入団を許されたのだ。
力無き人々の為に力を振るうアタモニ騎士団、その一員であることをロニは誇りにしていたし、そうあるための努力の過程をずっと見続けていたカイルからすれば、どうしてロニがそんなことを言い出したのかが理解できなかった。
「落ち着けよ、カイル。『かも』だ『かも』。まだ辞めるって決めたわけじゃねえよ」
そういってカイルを引きはがし、落ち着かせるロニ。
「と言うか、あぶねえだろ! 屋根の上で暴れるなバカイル! 落ちたらどうする!」
「あ、ごめんロニ。だけどバカイルはやめろよ!」
「いや、だって語呂がなんかいいじゃん?」
「いいから嫌なんだよ。いつの間にか母さんまで使ってたりするんだぜ?」
そう言ってため息をつくカイル。この義兄が言い出したバカイルと言う呼び方は、いつの間にやら母ルーティまで使うようになっていた。いや、まあ本当にバカをやった時しか言わないからいいのだが。
「まあ、とりあえず屋根の修理を終わらせちまおう。そしたら詳しいこと話すわ」
「わかったよ」
数時間後、屋根の修理を終えた二人はカイルの部屋に居た。さすがに内容が内容だけに、他の子供達にはあまり聞かれたくなかった。ちなみにデュナミス孤児院の部屋割りは、年少組が4人1部屋。ある程度年齢が上がると、2人1部屋になる。
カイルは個室だ。彼が個室なのは、院長の息子だから……と言うわけではない。モンスター退治に積極的に出かける関係で、体を洗ってもどうしても臭いが部屋にこもってしまい、それが子供達には気になるということ、そして朝の
「じゃあ、話してもらうよ。一体何で、騎士団辞めるかもって話になるんだよ」
「んー、何から話すか……そうだな。カイル、お前聖女エルレインって知ってるか?」
「ああ、街に来る行商の人から、名前は聞いたことがあるよ」
聖女エルレイン、3年前に現れた彼女は、神の使いに相応しい美しさと奇跡を起こす力で、瞬く間に人々の信仰を集めていった。曰く、盲目の老人の視力を回復させた。曰く、両手が動かなかった人の腕を治した等々。今では、アタモニ神と同一視する人まで現れる始末だ。アタモニ神団の本拠地から距離のあるここクレスタでも、彼女こそ救い主だと信仰する人間が少なからずいる。
「実際、確かにそういった奇跡を起こしてるし、それによって救われている人が居るのも事実だ。俺もこの目で何度か見たことがある。だがな、あの女のせいで神団は変わっちまった!」
そう言って拳を握るロニの瞳には、抑えきれない怒りが浮かんでいた。
「変わった?」
「ああ。あいつが『レンズは神の力の欠片。だからこそ、それを多く神団へと奉納するものはより神の愛を受ける資格を得るのです』なんて言い出したせいで、今じゃ神殿への参拝も、診療所の病気の治療も、騎士団へのモンスター討伐の嘆願も、何もかもレンズを持ってきた者順だ。それじゃあ金を要求してるのと何が違うって言うんだ!」
「ロニ……」
「もちろん、全員がそれを良しとしているわけじゃねえぜ? 俺の知りあいの騎士団員にも疑問を持ってる奴は結構居るし、神団側にも四英雄の…いや、ルーティさんの友達のフィリアさんを中心として、異議を唱えるグループがあるしな」
そういうロニの顔は少し柔らかくなった。だが、またすぐに先ほどまでのように苛立ったものになる。
「だけど、やっぱり大多数はエルレイン派なんだよ。実際に、奇跡のような事を起こしているしな。彼女が言うなら、何かしら意味のあることなんだろうって事で受け入れちまってる人間が多い。でもな、そうじゃねえだろ!人を助けるって事は、見返りを求める事と当たり前に思っちゃダメだ!でなけりゃ、気づかないうちにどんどん腐っちまう!」
「ロニ……」
「っと、すまねえ。熱くなっちまったな。まあ、やめるかもっていうのは、今言った通りアタモニ神団のあり方がおかしいと思っているからだ。しばらくはフィリアさんや仲間達と一緒に、神団の体質を変えられないかがんばってみるが、それでもだめな時はスパッと騎士団をやめて、俺なりのやり方で皆の為に働くつもりだ」
そう言うロニの瞳には、先ほどまでの怒りではなく、闘う意志が宿っているようだった。
「っと、愚痴悪かったな」
そう言って済まなそうに頭を下げるロニ。カイルは場の空気を元に戻そうと、少々無理やりにだが別の話題を出すことにした。この話に入るきっかけになった、最初の質問を。
「それよりも、今回ロニがやってた仕事って、一体どんな仕事だったのさ。俺、そっちの方が気になるよ」
そういう弟分の気持ちを察してか、ロニの表情も柔らかいものになっていく。
「いや、本当大した仕事じゃねえぜ?騎士団のお偉いさんをダリルシェイドまで護衛してきただけだ。」
「何でダリルシェイドに?」
「ダリルシェイドは中継地点なんだ。そこで神殿からの護衛は休暇をもらって解散。ダリルシェイドの駐留部隊が護衛を引き継ぐって形になっててな。だから俺もこうして帰ってこれてるわけだ。さて、最終的な目的地はどこだと思う? 当ててみろよ、カイル。」
そう言ってニヤつくロニ。おそらく、カイルが知っている場所なのだろう。そしてこの近辺で、そう言った物々しい護衛が必要な場所となると、カイルの頭の中には一か所しか浮かばなかった。ここクレスタの町から少し離れた場所にある、モンスターが蔓延るその場所の名前は、
「もしかして、ラグナ遺跡?」
「正解。実はな…ちょい耳かせ」
言われるがままに顔を近づけるカイルの耳元で、ロニが呟いた一言は、カイルの度胆をぬくには十分だった。
「ラグナ遺跡の最深部でレンズが発見されたんだよ。それも小型や中型じゃない。ざっと300万ガルドはするだろう大型レンズだぜ!」
「さ、さ、さ、300まむーーーーーー!?」
「声がでけえって!」
驚きのあまり大声で叫ぼうとしたカイルの口を無理やり押さえつけたロニ。だが、カイルの驚きは当然のものであった。18年前の騒乱までは、オベロン社のレンズ製品は広く世界中で使われており、その動力であるレンズの買い取りもオベロン社が行っていた。だからこそルーティのようにレンズ集めを生業とする。レンズハンターなる職業も存在したのだ。
だが、18年前の騒乱の犯人がそのオベロン社のトップであったため、会社は解体。さらに、神の目と言う巨大なレンズの力を目の当たりにした人々にとってレンズは危険なものであるという認識が広まってしまったせいで、レンズ技術脱却、いや排斥運動が広まってしまったため、基本的にレンズは一山いくらくらいの値段になってしまった。
一応今では排斥運動も収まりを見せ、レンズ製品も再び使われるようになっている。そして今は無きオベロン社に代わり、アタモニ神団がレンズの買い取りを行っている。これは、神団が開発した疑似晶術の発動に必要な、高純度レンズの生成のためだ。
疑似晶術は、アタモニ神団の司祭たちが、元オベロン社の研究員と共に開発したものだ。ソーディアンの晶術を参考にし、一般人でもレンズの力を引き出せるようにと開発されたそれは、アタモニ神団が作り出したことから、レンズ技術排斥運動の中でも広まっていき、今では世界中で利用されているのだが、その使用には通常の物より高純度、高密度なレンズが必要となっている。この生成と販売を、アタモニ神団は慈善事業として行っているのだ。これにより、一山いくらよりはマシなものの、かつてと比べたらレンズの値段は大分安くなってしまっているのが現状だ。例外としては、過去の遺跡やオベロン社の大型製品で使われていた、一部の大型高純度レンズだろうか。特殊技法で製錬されたそれは、半永久的に使える動力源として、大型船の動力等の大型機械を動かすのに重宝されていて、こういった大型レンズは、未だに高値で取引されている。が、それでも100万ガルドが良い所である。
だからこそ、そんな時代に300万という価値がつくレンズが如何にトンデモない代物であるかが、カイルには解った。
この作品では、ゲーム中の晶術は『疑似晶術』の名で世界に広まってます。詳細は用語集。