ハロウィンでのMAGES.ちゃんと5pb.ちゃんのお話

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仮装祭のヘーメラー

 もしもし、私だ。ハロウィンというものを知っているか?古代ケルト人が起源とされる祭りだ。本来は魔よけの意味を持つ、宗教的なものであるが、今日ではコスプレをしてバカ騒ぎをするイベントと思っている人もいる。私とて、本当なら家で今日も世界を混沌に導くための研究をする...つもりだったのだが...。まんまと罠にはめられてしまった。なあに、大丈夫だ、何とかするさ、そちらも十分警戒してくれ、ルクス・トゥネーヴェ・イメィグ・ノイタミナ・シスゥム・・・

 

 

 

 

 

 「き、着替え終わったぞ...」

 

 カーテンをはらい、すでに着替え終わっていた5pb.のもとへゆっくりと歩く。

 

 「うわぁ、MAGES.、すっごく似合ってるよ!」

 

 「......///」

 

 赤い瞳にじっと見つめられ、意味もなく胸元を手で隠す。気温はそれほど低くないが、妙に寒い。

 

 「なあ、5pb.、一つ聞いてもいいか?」

 

 「何?」

 

 「お前はいつも、この格好で歌ったり踊ったり、握手会をしてるんだよな?」

 

 「そうだよ?」

 

 「いささか露出が多いのではないか?」

 

 そう、私がいま着ている服は、普段の5pb.のライブ衣装。なんでも今日のハロウィンのために、別の次元の女神に作ってもらったらしい、おまけに腹部のマークはシールで再現し、ヘッドホンとチョーカーまで身に着けた完全体である。

 

 「そうかなぁ...確かに普段のMAGES.の服と比べたら、多いかもしれないけど...」

 

 そう言って5pb.は自分の服を見る。彼女が着ているのは、私の普段着である魔法学院制服。帽子も私のものを貸してあげたが、まるで普段から着ていたかのように似合っている。

 

 「まあ、女神様たちの衣装に比べたら...」

 

 「...フォローになっていないぞ」

 

 「まあ、とりあえず、行こ?もう大分人が集まってるはずだから」

 

 「あぁ...」

 

 こうして、私のハロウィンが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 「すごい...人出だな」

 

 「うん、ボクもここまでとは思ってなかったよ」

 

 私たちはプラネテューヌの駅前広場にやってきたのだが、見渡す限り、人、人、人...それぞれが思い思いの格好をして、街を闊歩している。

 

 「ん...?5pb.とMAGES.かにゅ?」

 

 名前を呼ばれ後ろを振り返ると、そこには大きな鈴をつけ、メイド服を身にまとった小柄な少女が。

 

 「あっ、ブロッコリーちゃん、トリックオアトリート」

 

 「トリックオアトリートにゅ」

 

 「ほう、貴様も来ていたのか」

 

 「......?」

 

 ブロッコリーは私たちを交互に見やり、首をかしげる。

 

 「お前たち、なんか雰囲気がいつもとちがうにゅ」

 

 一瞬何を言っているのかわからなかったが、今の私たちは装いを入れ替えているのだった。そのことを理解した5pb.が、ブロッコリーに説明する。

 

 「ああ、ごめんね、MAGES.の格好をしているのが、ボク、5pb.。それでこっちが...」

 

 「......MAGES.だ」

 

 できるだけ目をそらしながら言った。

 

 「なるほどにゅ、面白い仮装にゅ」

 

 ブロッコリーがそういうと、そばにいるゲマもうなずいているように見えた。

 

 「ブロッコリーちゃんは、何の仮装?」

 

 「詳しくは知らないにゅ、でもコスプレショップで見かけたとき、ビビッときたにゅ」

 

 よくわからないが、どことなく一昔前の雰囲気を感じる仮装だ。そんなことを考えていると、

 

 「MAGES.、お前さっきから何をそわそわしているにゅ?」

 

 「え?」

 

 羞恥心が動きに出てしまっていたのだろうか、こういうところは勘のいいブロッコリーである。

 

 「MAGES.、具合悪いの?」

 

 「いや、なんというかだな...その...体は大丈夫なんだが...」

 

 へそ出しかつビキニレベルの面積であるトップス、膝上30㎝に迫ろうかというスカート、おまけに両足の太ももは網タイツとダメージという、冷静に考えれば物凄い衣装である。その上秋の夜風に当たり、肌寒くもある。

 

 「ま、せいぜい楽しむんだにゅ、またにゅ」

 

 そう言ってブロッコリーはゲマに乗り、人ごみの中に消えていった。それを確認し、私は5pb.に話しかける。

 

 「なあ、5pb.よ」

 

 「どうしたの?」

 

 「通りかかる人が、さっきから私を見ている気がするのだが...」

 

 「あー...まあそうだよね、今のMAGES.、すっごく可愛いもん」

 

 「か、可愛い...?」

 

 顔が赤くなる音が聞こえる。

 

 「MAGES.、私よりその服似合ってるんじゃない?」

 

 穴があったら入りたい

 

 「私よりその...胸も大きいし...」

 

 それは関係ないだろう!?

 

 「MAGES.?」

 

 私はすっかり固まっていた。

 

 

 

 

 

 駅前広場の喧騒から少し離れ、自販機で飲み物を買ってからベンチに腰掛ける。私はもちろんドュクプェ、5pb.は暖かいコーヒーだ。

 

 「MAGES.、そんな冷たいもの飲んで、お腹壊さない?」

 

 「何を言うか、私にとっては、ドュクプェを飲まない方が、体調に差し障る」

 

 「ふふっ」

 

 「何が可笑しい?」

 

 「今日のMAGES、可愛いなって」

 

 「ブーーーッ!?」

 

 思わず吹き出してしまった。

 

 「うわ!?」

 

 「も、もうその話は終わったはずだ、それとこの衣装も、もう着ないぞ」

 

 「えー、もったいない」

 

 再びドュクプェに口をつける。まったく、今日は疲れた...

 

 「まあでも、大人気だったね、MAGES.」

 

 「うぅ...」

 

 ブロッコリーと別れた後、多くの人に写真撮影を求められた。クオリティ高すぎ、本物みたい、そんな言葉で、たくさん褒められた。

 

 「最後の方はちょっと得意げにしてたよね?」

 

 「あ、あぅ...」

 

 「MAGES.、正直、楽しかったでしょ?」

 

 「......」

 

 「まあ、もう着ないって言うんだったら、それでもいい...」

 

 「5pb.」

 

 「え?」

 

 彼女の言葉を遮る形になったが、気持ちは正直に伝えたかった。深呼吸を一回してから、口を動かす。

 

 「いいか、一回しか言わないからよく聞いておけ、この狂気の魔術師たるMAGES.、今後も世を欺くために、この衣装を再び身にまとう事があるだろう」

 

 「本当!?」

 

 5pb.が心底嬉しそうな顔を浮かべる。ずっと見ていると表情が崩れそうになるため、慌てて言葉を続ける。

 

 「ああ本当だ、協力してくれるな?」

 

 「もちろん!」

 

 5pb.が私に抱き着いてきた。夜風とドュクプェで冷えた体に、暖かさが伝わる。生まれて初めて、10月31日が終わることが惜しく感じた。




ギリギリ当日に間に合いましたが、できるならマベちゃんとかも出したかった。


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