「あー予想通り本降りになってきたな・・・」
戸を少し開け、外の様子を見る黒白の服を着た金色の髪の女の子。彼女がここ博麗神社に来る時はにわか雨だったが、本降りになるのを見越してやってきたらしい。現に開口一番「今日は泊めてくれ」だった
「ということだし、予定通り泊まらせていただく」
満面の笑みを浮かべ、座っている紅白の服を着た漆黒の髪の少女、博麗霊夢に語りかける。博麗と名のあるだけあり、ここ博麗神社に1人で住んでいる。肩と腋を顕にし独立した袖、膝より長い程度のスカート。服からはなかなか想像しにくいが、彼女はこの神社の巫女をやっている
「別にいいけど・・・その為にわざわざ天気悪い中来たわけ?」
正座をしつつちゃぶ台に頬杖をつき、やや不満を見せるジト目で金髪の少女、霧雨魔理沙を睨みつける
しかし魔理沙は変わらず満面の笑みを見せ、
「勿論だ。たまには霊夢と一緒にいたいしな」
大きなため息をつく。本当にその為だけに来たとわかり、呆れつつも内心複雑だった
霧雨魔理沙は博麗霊夢の事が好きだ。友人、そんなものではない。霧雨魔理沙は幼い頃親から勘当をされ、博麗霊夢は小さい頃からそもそも1人で、お互い以外には霖之助程度しか話を出来る人もいなくて。そんな状況だった故に、姉妹の様な感覚で接していたであろう。血の繋がらない家族。2人を表すにはそれが適当であった。
対して博麗霊夢はというと、表に出すことはないもののやはり霧雨魔理沙の事が好きだ。その愛は友達ではなく、家族愛と言える。年頃の少女。それはこの幻想郷の管理という大任を任される彼女にとっても例外ではない。幾ら浮世離れした、どこか達観し、他人に無関心な彼女にとっても、やはり孤独は怖いのだ
「それで、雨で弾幕ごっこも出来ないわけだけど、ご飯はどうするの?後色々」
霊夢の問いかけに、キョトンとした魔理沙の顔。今度は魔理沙が呆れる番だった
「そんなの2人でやればいいだろ。たまにはそういうのもいいぜ?」
腰に手を当て、ヤレヤレといった様子で魔理沙は霊夢に答えを返す。呆けるのは霊夢の番だった
数秒して、あーそういえばそんな方法もあったわね・・・と顎に手を当て、ひとりごちる。それを見て魔理沙は満足気な表情に変わる
「それじゃそれまでなんかするか」
「いや、何かってなによ」
言いながら魔理沙は霊夢の対面に胡座をかく。夏も終わり秋になつた幻想郷は、まだ寒さも無く炬燵は必要なかった。日が落ちるより一足先に暗さを増す外。やや肌寒さは感じるが、戸を締めてしまえば関係の無いことだった
正面に座る半袖姿の魔理沙を見て
「寒くない?」と尋ねる。「大丈夫。寒さは感じない」と、余裕のある表情を見せる。それを見た霊夢は残念そうに言う
「あら・・・寒いなら鍋にしようかと思ったのだけれど・・・」
「鍋・・・」
鍋という言葉に魔理沙は釣られる。確かに鍋は美味しいし、割と手軽だ。大人数で食べるなら割と鉄板ではあるだろうが、なにせ2人だけだ。それならなにか作る方が適当だと考え、そもそもの目的を話す
「そうか・・・なら久しぶりに一緒に料理を作るのは断念する事になるのか・・・哀しいな・・・」
霊夢はそれに反応する。和気あいあいと鍋をつつく様子を思い浮かべてた脳内を一掃し、台所で楽しそうな会話をしながら料理を作るイメージを想起した。悪くないどころかむしろ100点満点の回答だと考えた。確かに泊まりに来たというのに手軽に終わらせるのも勿体ない。そう考え、しかし『だとしたら料理は何にするか』という問題にもぶち当たる
手軽な鍋は、野菜やキノコ、肉を投げ込めば大体鍋になり、ワンパターンになりがちだが特に何も考えなくても作れる。それが本格的に料理となると、冷蔵庫との相談をしないといけない。霊夢は頭を抱える
「うーん・・・冷蔵庫何が残ってたかしら・・・」
買い出しに行こうにも外は土砂降りの大雨。たまに瞬間的な光さえ感知出来た。そんな悪天候の中空を飛んでいたら、死んでもおかしくはない。かといって地道に人里まで歩いたところで何時間かかるか予想も出来ない
「まあ別に何でもいいが。霊夢と一緒に料理出来たらそれでいいしな」
魔理沙は恥ずかしがるわけでもなくサラッと言ってのけた。それを聞いた霊夢も別段その一言に感情を抱くでもなく、『本当にそう思ってるのか』という疑惑の眼差しをかける
魔理沙は表情で『なんでもいいさ。そこまで気にしない』と言う。博麗神社の居間で、無言の会話が繰り広げられていった
くつくつと煮える音が聞こえる。蓋はカタカタと動き、耐えきれなくなった水蒸気を放出している。火を弱め、揺れは小さくなったがそれでも微振動を続ける
いつも博麗霊夢はエプロン姿になり料理を作る。そのエプロンは、丁度霧雨魔理沙が何時も腰に巻くようなエプロンドレス
交換しようーーーーーーそう持ちかけたのは魔理沙だった。最初は若干の抵抗を見せたが、同じもんだし変わりない。そう言われ納得したように交換をした。魔理沙はいつもの大きい結び目をした、手を開いてもいいほどのちょうちょ結びをするエプロンではなく、うどんのように細長いヒモをチョウチョ結びにして、腰に巻いていた。代わりに大きなチョウチョは霊夢の腰に滞在していた
「魔理沙ー、それ切っといて」
「あいよー」
霊夢も魔理沙も一人暮らしが長引きーーというか小さい頃から一人暮らしをせざるを得ない状況だったがーー料理の腕はなかなかのものであり、手慣れていた。会話をしつつも手を動かし、先のことを考えれれる。またその呼吸も見事なものであり、双子の姉妹のようにすら思える
「」