なお、道は天国、地獄、新境地と複数分かれております。
それと全部喋ってます。音声しか拾ってないので脳内補完でお願いします。すいません。そういうネタなんです。ご了承ください。
※語感がいいのでパロディとして使用している言語が混ざっています。
忍殺、食、Tみたいなのが混じっている。夕方に鳴く虫はパロディじゃない。でもパロディに見える不思議。シンプルな言葉が有名になるとそのつもりがなくてもちらついちゃうな……。実際書いててちらついたし。全然違うのに。
卑しいながら、私め賢者をやらしていただいております。
賢者と申しましても、やる事は一般の冒険者の方々と同じく魔物を潰す、叩く、壊す、封印するといったもの。
知恵も悟りも、人を悩ます暴力の体現である魔物の前では抑止力となるはずもなく、ただただ知識の集大成の破壊魔法を使い暴力を返す日々を送っております。
「賢者?いや違うだろ。どちらかというとバーサーカーだろ。」
おや、羽虫がうるさいですね。
「はっ?羽虫?お前いま羽虫っつった?」
「破っ!!」
「ぐぉえぇぇ。コイツ……、躊躇なく腹殴りやがった……。パートナーだよなおれ。なぁ。」
羽虫……。
「ひどいよぉ!マスター、傷心のおれにいい酒ちょうだい。」
「お前らの漫才には安酒で充分だな。」
キュッキュッとグラスを磨くマスターは白けた目で羽虫を見やる。
「そんなぁ。」
相方はガックリとした。結構本気で殴ったのにピンピンしているのは流石だ。羽虫のようにうざい奴だがタフさは天下一品だな。
「出来れば誉めるだけにしてほしいよ。それと頭で考えてる事をそのまま口に出すのはいい加減やめろや。」
あれ、口に出していたか。うっかりうっかり。てっきり相方が読心術の境地に達したかと思った。
「お前、たまにわけの分からん過大評価するよな。」
「はいよ。今日のオススメの酒だよ。」
「サンキューマスター。」
相方がグッと杯を呷る。いい飲みっぷりだ。酒に弱い癖に荒い飲み方をするからすぐに居眠りを始めてしまうが、迷惑になど思ってない。
「お前さん達よく続いてるな。酒飲むのを毎回実況されて飲みにくくないか?」
「馴れだよ馴れ。それと居眠りについては謝ったろ。根に持つなって。」
「根に持ってなどいない。」
「……。」
「そうとう根深いみたいだが何をやらかしたんだい。」
「いや、マスター。ちょっとギルドの大きい依頼で打ち上げがあって二、三時間放置しただけだよ。」
その結果、裸踊りを強制されそうになった。
「ほう。」
マスターが興味を示す。エロオヤジ。
「コホン。」
咳払いでマスターは聞こえないふりをした。
「起きたら皆寝てて、聞いたら破壊魔法の余波で脳震盪を起こして落としたんだってさ。迷惑だよな、裸の一つや二つで。」
「女二人のパーティーで、危なくないのかい?」
マスターが懸念して聞く。
「私達は寝る時必ず一方が起きているようにしている。これは二人で決めたルール。なのに酒の時だけ勝手に寝る。私が飲めないのをいいことに。」
「それはちょっとひどいんじゃないかい。」
そうだ、もっと言ってやれ。
「おれは酒に貢献してるんだ。気持ちよく酔ってたまに居眠りする。マスターなら酒飲みの方の肩を持つよなっ、なっ!」
おかわりに杯を突き出す。
マスターは杯に酒を注ぐ。
「一理あるな。」
「ないから!」
「賢者ちゃん超元気。」
酒くさい!
悪魔の飲み物め。賢者の真理など通用しないというのか。この、酒場を吹っ飛ばせばいいのか。
「危ない事をいってるぞ。」
「大丈夫大丈夫。賢者として飲食物は大事にしてるから、一線を越えることはめったにないよ。」
「たまにあるのか?」
「うーん、ごくまれに。」
「……おや、外が騒がしいな。何かあったか。」
マスターが窓の方へ視線を移す。今が好機だろうか、悪魔の精製する魔性の飲み物を殲滅する。
「おっ?何だ何だ。喧嘩かなにかか?混ざりいくか?」
相方も外に視線を向けた。
「キャー。」「ニゲロー!」
「マモノヨー。」「オニー!」
「魔物?ケェー、街中に出るなんて。いい気分が台無しだ。」
「怖いねぇ。魔物がこっちに来たらお二人に頼んでもいいか?」
「酒代分なら働くぜ!」
「キャー。」「ニゲロー!」「マモノヨー。」
「ア、アクマダー!」
ガタッ
「悪魔めぇ……。真理の道を塞ぐのはこの賢者が許しはしない!」
「賢者さんいっちゃったな。」
「はぁ。マスター、お勘定。」
「毎度。」
街中に出現した悪魔。平穏を崩し、真理をねじ曲げる存在。
「この賢者の前で摂理を乱すとは笑止。その命無いと思え。」
ギチギチと黒い昆虫のような悪魔がギザギザの歯が並んだ口を開く。
「ギキィィイ!」
甲高い音を立てて吠える。頭に響き殴られたような衝撃を生んだ。
通りに散らばる逃げ遅れた人が数人耐えられず倒れた。
「そうか、やはりそうか。耐え難き眠りの苦しみを生む。お前は許されぬ存在だ。」
街の警備兵や、ギルドの緊急召集を受けた冒険者が駆けつけている。
しかし、遠い。ここまで来るには時間が足りない。街人を守るには時間の猶予が無いだろう。
「ならば見よ、真理の代行者を!汝打ち砕ける者!真理の前に膝を折れ!」
頭の中を埋め尽くしていくビジョン。
私は世界を旅し真理を学んだ。水が長い時間を掛け岩山を削ったのを。雷が巨木を打ち壊したのを。
それは破壊の真理。
「ギチギチギチ。」
黒い悪魔が節のある前足を振り回す。建物の壁が抉れ、地面に埃が立つ。障害にぶつかってもその勢いは衰えない。
破壊魔法その一、紫電の流水。
水が蛇のように動き悪魔を鞭打つ。それは同時に雷撃の痺れを残す。
悪魔の動きが鈍った。前足もビクリと痙攣し、勢いが無くなる。
破壊魔法の副産物。紫電が拳に宿る。全身の毛が逆立つ感覚。
雷だ。
「ウォォォォ!!!!」
正面に見える頭、大きく開かれただらしない口の下。体を滑り込ませ、拳を頭上に突き上げる。顎にめり込む紫電の拳、二度とその口が開かれないよう渾身の力を放つ。
それは鉄砲水のように。
眠りをもたらす怪音が出せぬよう。
壊す!!
悪魔の頭が吹き飛んだ。周りにいる気を失っていた街人が悪魔の地面に倒れた音を聞いて起きる。
こちらをみて震えた。
大丈夫ですよ、と微笑んだ。
逃げた。
「おーい!」
飲んだくれの相方が酒場から出て呼びかけてきた。
「うへぇ。派手にやったな。バーサーカーは伊達じゃない。何か髪が逆立って迫力マシマシだね。」
「バーサーカーではない。」
「よっ凶戦士!」
「戦士ではない。賢者だ。」
相方はよくこの手の冗談を言う。面白くないからやめて欲しい。苦笑いするな。
「おっ、ギルドの奴らようやく登場だ。後片付けは任せるか。」
コイツ何もしてないな。
「非難すんなよ。酒入ってるから仕方ないだろ。大体ただ働きかもしれないし。ちょっ、蹴るな蹴るな。何か痺れる。」
「あっ、バ……賢者さんがやっつけたんですね。」
「遅い。」
ギルドの動きが遅い。街の警備兵の委託を受けているのはギルドだ。緊急時に雇われる冒険者もギルドを通している。つまりギルドが悪い。
「建物の一部が壊れてしまいましたね。まぁ、これぐらいで済んで良かったです。」
「愚かな悪魔だった。大振りで攻撃してくるとは。」
「えっ。魔物が壊したんですか?」
「そうだが?」
「あっ、いやハハハ。何でもないです……。」
街の警備兵もようやくやってきた。警備兵は見張りに特化した者が多い、なのになぜ警告がなかった。
「げぇっ、みろよ。頭がぶっ飛んでやがる。」
「うぷ。」
「おいおい、吐くなよ?」
「あっ!バー…ぁ冒険者の方ですね。」
警備兵の一人がこちらにくる。
「見張りをしていた新人が魔物を見て気絶しまして発見が遅れました。本当にご迷惑お掛けしました。」
まあ、人を眠らせる怪音波を出す奴だ。警備兵が出遅れたのも無理はないかもしれない。
「そんなにハッキリいうなよ。警備兵のおっちゃん凹んでるじゃん。」
相方の言葉に首を傾げる。
「口に出てるって。事実でも面と向かって言われると凹むんだからな。更にこの後責任問題の追及もあるだろうし。」
「それ以上いけない!」
ギルドの冒険者が間に入り、なぜかうなだれていた警備兵を連れて行く。
何にせよ、悪魔の来襲から街を守ったのだ。真理の道は閉ざされる事はない。如何なる者にも。
「うわー、すげースッキリした顔してる。今回の魔物は気の毒だったな。」
相方が悪魔に同情するような言葉を言った。さては、悪魔に魅入られているのか。
「待って、それはおかしい。誤解だ。悪魔はもういない。いいね?」
「悪魔め。」
「禁酒する。」
「嘘だ。」
「一週間。」
……。
「今舌打ちしたよね?聞こえたよ?賢者の癖に舌打ちとか、ちょっと酒飲んだだけじゃん?心狭くね?賢者の癖に。」
拳が紫電でまだちょっと痺れている。
「ぐふぅ!?なぜ殴った。」
「電気マッサージ、胃腸によい。」
「確かに、痛いけどなんか体が楽に……、何だこの理不尽は。」
「真理だ。」
私は真理を探求し続けなければならない。賢者とは真理の道そのものであるのだから。
賢者さんはずっと小声で実況して、周りから距離を取られている危険人物認定されてる人。更に相方がバーサーカーうるさいせいで、だんだん賢者と呼ばれなくなってきている。既にギルドの奴等はバーサーカー呼びである。なんもかんも裸踊りが悪い。
少しでもお楽しみいただけていたら幸いです。