「──やぁやぁ、失礼するねー。人間ちゃん」
私とミネアの出会いは、こんなありふれた台詞から始まった。
勿論、彼女が声をかける場所なんかまともな場所であるはずがなく、始めはなぜが当たり前のように部屋の中にいる彼女に、私は大層驚いたものだ。ここ最近は慣れたものだが、真後ろから笑うように声をかけられると流石にびっくりする。
そんなミネアは、長い長い蒼い髪に、あんまりにも綺麗な金色の瞳が印象的で。
よくよく見ると左目にだけ精緻な紋様が刻まれていて、彼女曰くそれは『チャーミングなお洒落ポイント』らしかった。
「もしかして私の体を見たいの?……えっち」
特にそれ以外、彼女の身体に特徴と言える特徴は無かったと思うけど、なぜがミネアは真夏日でも、金糸の入った真っ白な厚い上着を羽織り続けていた。脱がそうとするとあの手この手でするりと抜け出す。
小柄な体躯も相まって、部屋の窓の淵に乗った彼女はまるで気紛れな猫のようだった。
「ん?なにこれ?」
猫のよう、と言ったがこれをまさに彼女は体現していると言って良い。目を離せば右に、左に。
隠れんぼでもしているつもりなんじゃないかと思ったのは一度や二度ではない。机の上に置かれた教本を取って、面白そうな目でパラパラと捲っていた事もあった。
「ほーん……魔術、魔術かぁ」
他に彼女を構成するものとして、非常に飽きやすいことがあげられる。まあ、彼女が言うには学ぶのは嫌いなんだと。何かを手探りで進めていったり、何かを努力して得ることが好きじゃないらしい。
それが魔術師になるための教科書だと告げると、彼女はすぐにポイと放った。放り投げれた先が私の顔面だったのは、最早言い逃れも出来ない悪行だったと思う。
「?どうしたの、不思議そうな目で見て」
そして最も訳の分からない特徴は、結構な頻度で浮いていること。低身長ゆえになのか、高いところへ移動するときは当たり前のようにふわふわ浮いては物色をする。
「つまらないなー……まだレーアを弄っていた方が楽しいよ」
それと、大体手持ち無沙汰になるとふわふわと勉強中の私の隣へ浮いてきて、不躾に体や髪を撫で回し始める。すべすべした、小さな熱を持った彼女の手は、別に嫌いというほどでもないけど、流石に長時間触れられ続けると私でもキレた。
王立魔術学校の中等部に通っている私にとって、成績とは何より重要なものだったから尚更に。これで高等部への進学が左右されるのだ。
だけど、頬を緩めてカラカラと笑うミネアを見ると、大体私はなあなあで済ませてしまう。
「──まー、私は可愛いからねー」
そんな私とミネアだが、私は彼女を不思議な友人として。ミネアは……分からないけれど。
少なくとも、私はミネアを認めていた。
ちょっと奇妙だとは思うけれど、よく妖精さんと空で話している同級生を知っているし、まあまあ普通だと思う。
だから、これが私の日常だ。
「これは……おお……ふむふむ……ふむふむ──ッ?!」
あと最後に。
いたずらすると、真っ赤になってものすごく可愛い。
よく考えると『飄々とした』の定義が分からない……。