ヒーロー協会、そこは数多のヒーロー達が集い、人類の天敵『怪人』を日夜くいとめる、人類対怪人の最前線と言える組織だ。
そんなヒーローの中にはランキングが存在する。一番低いランクからC級、次がB級、A級そして最上位にS級が存在する。
これはその最も強いS級、さらにその第三位に位置する男『キング』の話である。
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『出たぞー!怪人だー!』
男の叫び声が響き渡る。それと同時に空の雲の切れ目から『龍』が顔を出してきた。
「我が名は龍王ゼノール!古より貴様ら人間に粛清を下すために舞い降りた。これより地上の浄化を始める!」
その龍の足は如何なる獣よりも鋭く、大きく地面を踏みしめ、その体は強靭な鱗に覆われており、その鱗一枚ですら人間一人の大きさに相当している。
『もうおしまいだ・・・』
『嘘だろ、こんな終わり方かよ・・・』
あまりの強風、あまりの絶望、そしてあまりにも強大なチカラは彼らに逃げるという選択肢すら失わせた。
龍が叫ぶ。それだけで辺りに凄まじい突風を巻き起こし、木々は折れんばかりに曲がり、人々は飛ばされないように身をかがめるだけで精一杯だった。
────たった一人の男を除いては。
「はぁ〜、せっかく今日はプラキュア3の発売日だというのに・・・ついてないな〜」
その言葉は風の音や人々の悲鳴に掻き消され、誰にも届くことはなかったが、目の前にビルよりも高い異形がいるというのに堂々としたその姿勢は他ならぬ『龍』の視線を引いた。
「ほぅ、貴様は我を見ても怖気づかないのか」
「・・・・・・・・・え、おれ?」
「そうだ貴様だ。他に誰がいる。周りの人間はご覧の通り跪いているぞ」
ゼノールの言葉に男は周りを見る。そこには腰が抜けた者、頭を抱え、目を瞑っている者、子どもを抱きかかえて
「これは・・・・・・!」
あまりの光景に男の口から驚きの声が出る。
「貴様もコイツらのように跪けば命だけは助けてやらんこともないぞ」
ゼノールの龍の眼が男を射抜く。フードを深く被る男の顔は見えなかったが、畏怖しているとゼノールは思った。
(まぁ全員殺すんだがな・・・!)
今の言葉は嘘。ゼノールは人間が希望から絶望に落とされる瞬間を見るのが大好きだった。今の提案はその絶望に満ちた人間の顔を見るためのブラフだった。
「さぁ、跪け!」
ゼノールの言葉を男は───
「これってつまり、俺が先頭?よし、一番乗りだ」
無視していた。
「・・・お、おい貴様。我の言葉を聞いていなかったのか?」
『何してるんだ!はやく言うことを聞け!』
『はやく土下座しろ!』
ゼノールが怒っていることに気づいた民衆はすぐに男に跪くように怒鳴るが、男は何故そんなことを言われてるのか分からないという風にキョロキョロとしている。
「もうよい。貴様は・・・・・・見せしめだ!」
激怒したゼノールはその大きな足を高くあげる。
『あああ、ああああああぁぁ』
山のように大きな足はその下に巨大な影を生み出し、そこにいる人間は絶望に空を見上げる。
「死ねぇぇえええええ!!!!」
と、ゼノールは渾身のチカラをこめ大地を踏みしめる。その威力は巨大隕石が落ちたかのようなクレーターを作り、一瞬にして都市を廃墟へと────
「え?」
その間の抜けた声は、民衆でもパーカーの男でもない、他ならぬゼノールの口から漏れ出ていた。
それもそのはず。踏み潰した・・・はずなのに、豆粒のような人間なんぞ踏み潰した感触もないはずなのに。
その男が、コチラを見上げるのがゼノールの視界に入った。
それはすなわちゼノールの足が、
それどころではない。ゼノールの足があった所から肩にかけて、まるで何か鋭利なものが通り過ぎたかのようにきれいさっぱりに無くなっていた。
豪風が吹く。その風圧は簡単に男のパーカーを吹き飛ばし、素顔を露わにする。
『あ!!!!!』
全員が理解した目の前の出来事に。
全員が納得した目の前の奇跡に。
そして、
全員が
ヒーローランキングS級三位
『キング』!!!
キングはただ手を振っただけである。目の前にある障害を払うために。だが、
【キングブレード】、いつの日かその『行為』はそう呼ばれるようになった。
だが、当の本人はそれを知らない。
なぜなら彼はただ、本当に、目の前から迫ってくる物を───
手で払ったに過ぎないのだから。
キング最強ムーブってなんかワクワクしない?