私には憧れのハンターさんがいます。

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憧れのハンターさん【短編】

 私には憧れている人達がいる。

 

 

 それは、村の平和を守る私達のヒーロー。

 時にその人達は強大な生き物───モンスターに立ち向かい、時にその人達は街に出掛ける人々を護ったり、モンスターの蔓延る危険な場所で生活に必要な薬草等を集めて来てくれたり。

 

 私達はその人達の事を、ハンターさんと呼んでいました。

 

 

「何をしているんだい?」

「えーとね、ハンターさんの絵を描いてるの」

 私はそんなハンターさんが大好きで、紙にハンターさんの似顔絵を描いたりするのが好きです。

 他にも、ハンターさんが戦うモンスターを描いたり。ハンターさんから聞いたお話を妹達に話すのも好きだった。

 

 

「わぁ、上手だね」

「えへへ。でも、こんな事してても立派なハンターさんにはなれないよね……。誰かの為に何かが出来るハンターさんに憧れてるのに」

 描いていた絵をハンターさんに見せると、ハンターさんは私の事を褒めて頭を撫でてくれる。

 モンスターから身を守る防具は硬いけれど、その手からは温かい気持ちが伝わってきた。

 

「どうしてそんな事を思うんだい?」

「だって、私は足も遅くてよく転ぶし。重い物は持てないし、泣き虫なんだもん」

 ハンターさんは、俯いてそう言う私と視線を合わせてもう一度頭を撫でてくれる。

 そうしながらハンターさんは、優しい声でこう口を開いた。

 

「誰だって初めは上手く出来ないものなんだよ。上手く出来なくて、失敗して、それでも続けているとね、今自分がしてる事が好きになって、()()()ようになっていくんだ」

()()()?」

「うん。出来る。それに、別に立派なハンターになんてならなくて良いんだよ」

 ハンターさんはそう言って、村の周りに視線を移す。

 

 

 村は小さな村だけど、商売や物作りは盛んで明るい雰囲気の村だ。

 私はこの村が好き。だからこそ、この村の人達の為に働いているハンターさんに憧れているし、ハンターさんみたいになりたいと思っている。

 

 

「どうして?」

 立派なハンターになんてならなくて良い。

 

 そう言ったハンターさんに、私は首を傾げてそう聞いた。

 

 

「確かに、ハンターのお仕事はとても大変だから君達は凄いと思うかもしれないね。けれど、ハンターにだって出来ない事は沢山あるんだよ」

「出来ない事?」

「うん。出来ない事。例えば、この防具や武器なんかはね、素材を集めてくるのはハンターだけど加工してくれるのは加工屋のおじさん達なんだ」

 ハンターさんは村の加工屋さんに手を向ける。それを見た加工屋のおじさんは私達に手を振ってくれた。

 

「綺麗だったり立派な装飾が施された料理なんかも、ハンターはあまり自分では作らないかな。ほら、君のお母さんは偶にモンスターの顔が描いてあるお弁当を作ってくれるだろう? とても器用で凄いと思うよ」

「うん! お母さんのお弁当は凄いんだよ!」

「そうだね。他にもほら、本を書く人やギルドでハンターの仕事を纏めてくれる人。色んな人がいて、皆が助け合って生きているんだ」

「でも私……加工屋さんみたいにもなれないし、お母さんみたいにお弁当も作れないよ。私は誰も助けられないのかな?」

 立派なハンターになんてならなくて良い。

 

 もう一度そう言ったハンターさんは、さらに私にこう続ける。

 

 

「君が描いてくれた絵を、もう一度見せてくれないかな?」

「え? あ、うん。良いけど……」

 私が自分の描いた絵を持ち上げると、ハンターさんは私の絵を見てニッコリと笑った。

 

「君が描いてくれた絵を見るとね、嬉しくて仕事を頑張ろうと思えるんだ。君はもう、誰かを助けられる人なんだよ」

「でも、私、本を書いたりしてる人達みたいに上手じゃないよ……」

「そうかもしれない。けれどね、君が絵を描くのを好きなら、きっとこの先とても素敵な絵を描く人になれると思う。だから、皆に沢山見てもらおうよ」

「皆に……」

「うん、皆に」

 そう言って、ハンターさんは私を連れて沢山の人に私の描いた絵を見せてくれる。

 私の絵を見た人達は「上手だね」とか「新しいペンをあげよう」とか褒めてくれたり、色々な事を教えてくれた。

 

 そんな皆は、とても笑顔だった。

 

 

「ほら、立派なハンターになんてならなくて良いだろう?」

「うー、でもぉ」

「あはは、悩むのも良い事だよ。勿論、立派な絵を描く人にならなくても良い。君は人にハンターのお話をする事も好きだもんね。それに、もしかしたらこれからお母さんに習って料理が好きになるかもしれない。……そんな好きな事を、自分の好きなように続ければ、きっと誰かを笑顔にさせる事が出来るから」

 ハンターさんはそう言って、もう暗いから帰ろうねと私の手を引いてくれる。

 

 

 その手はやっぱり暖かくて、私はハンターさんに言われた事を何度も頭の中で繰り返しながら歩いた。

 

 

「好きな事……」

「そう、好きな事。……それで、もし、本当にハンターになるのが自分の好きな事だというなら集会所に来て話しかけて欲しい。ちゃんと、皆で君が()()なハンターになれるように応援するからね」

 私には憧れている人達がいる。

 

 それは、村の平和を守る私達のヒーロー。

 時にその人は強大な生き物───モンスターに立ち向かい、時にその人は街に出掛ける人達を護ったり、モンスターの蔓延る危険な場所で生活に必要な薬草等を集めて来てくれたり。

 

 

 私は将来、何をしているのかな。

 

 

 ハンターさんになっているのかな、絵を書いてるのかな、何かを作っているかも。

 

 今はただ、好きな事を続けてみよう。

 

 

 

 そしたらきっと、立派な誰かより、素敵なわたしになれる気がするから。


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