愛に溺れる静寂、驚愕する暴食、何もしない大神   作:スーパータヌキ

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3話

 爽やかな風が吹き、絶好のピクニック日和の今日この頃、私ことアルフィアはブチギレていた。

 

 みっともないと思われるかもしれないが、私はガチだ。本気(マジ)だ。かの忌々しい小娘を取り除かねばならないと決心した。

 

 だが、そうなった原因を作ったのはこの私だ。だからこそ今は振り返りに徹する時だ。そうでもしなければキレそうだ。

 

 というのも先日、ベルとザルドと糞爺と共にオラリオにある闘技場に行ったのだが、そこでどういう訳かザルドと小娘が……アイズが戦うことになったのだ。

 

 向こうはレベル5らしいがザルドはレベル7だ。どうあがいても勝てないし、一方的な戦いだろうと考えていた。その間ベルは若干半泣きでアイズちゃんが……とか言っていた。本当に優しい子だ。

 

 だがその対象が間違っている。私だって自慢の息子に心配されたい。マジだ。マジなんだ。だってベル可愛いほんとしんどい。うちの息子が尊すぎる。……話がそれた。だが私もまたレベル7だ。私を追い込む事ができる存在は殆ど限られている。言っておくがザルドといえど私を追い込むことは出来ないし、オッタルなど論外だからな。

 

 そういえば何でもダンジョンを破壊し続けると、壊しまくってた奴を軽く屠れるレベルのモンスターが出るとかなんとか言ってた奴いたな。

 

 100階層くらいに行けば出会えるだろうか。明日の予定が決まった、などと考えていた次の瞬間

 

 割と本気になっているザルドが見えてしまった。もちろん小娘(アイズ)は満身創痍、いつ倒れたっておかしくない状況。そんな中地面を蹴り、果敢に攻め込む姿は素直に評価できると思う。

 

 結局はザルドが勝利し、小娘(アイズ)はもっと強くなると仲間の手を借りて、治療室へ向かっていった訳なのだが……

 

 それを見てからベルがやたら鍛錬に励むようになったのだ。

 ベルももう13歳、割と小娘(アイズ)はベルが幼い時から身近にいたので、対抗意識でも出来たのかと微笑ましく思いながら鍛錬に付き合っていた。

 

 それが間違いだった。本当にそう思う。今もし過去に戻れるなら私は私を殴る。本気で殴って鍛錬をやめさせる。あとステイタスを更新もさせない。

 

 というのと試しにベルのステイタスを更新すると信じられない事が起こったのだ。

 

 そう…………

 

 

新しいスキルが発動しやがったのだ。

 

 …………ん? 良いことだろ、だって? 黙れこの有象無象が。

 

 ただでさえベルは経験も少ないし、場数をあまり踏んでいないから、下手にスキルや魔法を習得してしまえば、それに頼り切りになってしまうかもしれない。だからこそスキルが発動し、その効力が攻撃系のスキルじゃなかった為、一瞬は安堵したのだが……

 

 よくよく見るとスキルの内容がとてつもないものだった。

 

 憧憬一途(リアリス・フレーゼ)とかいうそのスキルはいわゆる成長促進系、ステイタスの上昇率が上がるであろうスキルな訳だが、

 早熟するだの、懸想(おもい)が続く限り効果が持続だの、懸想の丈により効果向上だの、まるで、あの小娘(アイズ)に惚れたから早く追いつけるようにしたいというベルの思いがそのまま発現したようなスキルが発動した訳だ。うん。

 

 

 まああれだ。要するにベルがアイズに惚れたわけだ。説明終了。

 

 ……

 

 …………

 

 …………

 

 ………………

 

ふざけるなッッッくそぉぉぉぉぉぉっっっ!?!? 

 

 

 まあね!! なんとなく察してはいましたよ!! 何かベル素振りしてる時も、

 

「早く…………アイズちゃんに……!」

 

 とか言ってましたからね!? まあいいですけどね!? ベルは強くなりたいと願ってる訳だし!! 最大限このスキルは使わせていただきますけどもね!! 

 

 だが、その先は許さん。付き合うとか許さん。結婚とか許さん。

 

 ただでさえオラリオに行ったらどんなに純粋無垢な少年少女でも若干汚されるのにさあ? 

 

 特にベルとかみっともない万年レベル2の有象無象に影響されないか不安だったのにさあ? 

 

 きっとオラリオに行ったらあっという間にレベル10くらいまであがってそんでもってアイズちゃんと付き合うことになりましたとかいう内容の手紙が来てその半年後くらいに結婚しますみたいな内容の手紙が来て更に半年後子供との写真とともに手紙が…………

 

 

ふざけろクソがァっっっっっっっっっ!!!?!?!? 

 

 

 フ──ーッッ、少し動揺しているな。落ち着け私。落ち着けアルフィア。ステイステイ。

 

 さて、これからどうする? まずあの小娘に嫁の作法を……っておい何考えてんだ私は。違うだろ。それ一番駄目だってわかってるだろ。

 

 とりあえずお話だ。お話をしよう。ゆっくりじっくり腹を割って話すとしよう。よし決定。

 

 そうして私はオラリオに走り出した。若干気持ちが昂ぶったからか、走っている最中に何度も何かにぶつかったがぶっ壊してやった。フハハ。最早この私に敵はなし。早くシバ……話し合いをしに行こう。

 

 〜〜〜〜

 

 ザルドは絶望した。妻の暴走を本能で悟ってしまったザルドは頭を抱え、泣いた。というのもアルフィアが暴走すると何かしらが壊れるからだ。一度目は村。二度目は山。三度目はオッタルをと、それぞれ例外なくペシャンコにしている。勿論オッタルもだ。

 

 オッタルのペシャンコになって絶望している姿を見た時、オッタルの次はお前だみたいな目で見られてちょっと恐ろしくなってしまったのをザルドは思い出す。

 

 おそらくザルドはこの後急いでアルフィアを止めにかかるが、恐らく暴走している為、容赦ない魔法を浴びせられ再起不能になりかけるのだろう。ザルドは自身の運命を静かに見てしまう。

 

「お……おとう、さん?」

 

 隣にいた息子ベルが心配そうに顔を覗いていた。その姿を見てザルドは決心する。

 

「ベル、オラリオに行き、戦いに出なければならなくなった」

 

「えっ!?!? なんで!?」

 

「お前の未来を守るためだ」

 

「えっ????」

 

 恐らくアルフィアがキレている原因はベルの新しいスキル、つまりは発動の原因であるアイズにあるのだろう。

 

 つまりザルドがすべき事。それはアイズを守護すること。今アイズが殺されてしまったら色々駄目だと長年の経験がそう言っていた為である。

 

 特にベルの今後に関わってくるであろうファミリアを敵に回すわけにはいかないのだ。

 

 恐らく数十年ぶりであろう涙を拭い、ザルドは走った。

 

 そして、その後ろについてきている人物がいることなど、気づいてはいなかった。

 

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