魔弾が打ち砕くは 作:キルシュトルテ
見習いオペレーター
「ふあぁ……」
時間とともに目が覚める。外に通じる窓は無いけども、太陽の光に近いギミックがあるのか、廊下に通じる窓が明るくなる。
布団を蹴って起きると、支給された青いラインの入った上着に袖を通す。その上から、一度洗濯されたボロボロのマフラーを巻く。
それから、起きてぼんやりしているイーノを横目にまだ寝ているサーシャを起こす。
「サーシャー、多分朝だよ」
「ん、うぅ……」
「ごはん食べようよ?イーノも私も、もう起きてるよ」
ガバッとサーシャが起き上がる。そのままテキパキと、青いラインの入った黒い外套を羽織る。
それからくるっとこちらを向いて。
「おはよう、ジュリア、イーノ。」
「おはよう、サーシャ。イーノもね」
「ん……ふたりとも、おはよう……」
ぼやぼやっとしながら、白い上着に袖を通すイーノ。ところでそれ、裏表逆だと思うよ、イーノ。
イーノをもう少しだけ覚醒させて上着をなおしてもらうと、部屋を出て、食堂(と、私は勝手に呼んでいる)場所へと向かう。
さて、ブレイズさんに助けられてロドスに拾われてから、約2週間が経った。
私達は、オペレーターとして働くこととなった。まだ見習いだけど。
それぞれ、私は前衛で、サーシャは狙撃、イーノは医療のオペレーターの見習いとして、研修を受けつつ働いている。
その話を……特に、私やサーシャが戦場を走ることになるオペレーターになることの話をすると、ブレイズさんはなんとも言えない表情をしたが、トロさんと、CEO……アーミヤちゃんが説得してくれた。まあ、ブレイズさんも働くこと自体には肯定的だったし。
だから、研修の間は離れ離れになる。その事に最初、意外にも特にイーノが嫌悪感を見せていた。
サーシャがイーノを説得している光景は、久しぶりに見る珍しい光景だった。
朝食のパンとスープを平らげる。コンソメスープに近い味で、個人的に好物かもしれない。
「今日はなんだっけ?」
「僕は実習だって言われたよ」
「俺も。メタトロン先生が、今日は現地に行くって」
「2人も?私も実習だよ」
そういえば、トロさんは狙撃オペレーターなのらしい。だから、サーシャに撃ち方を教えているのだとか。
エリートオペレーターの中でも、割と正統派な狙撃オペレーターとかなんとか聞いた。私の先生のオペレーターさんから。
「へえ。それじゃあ、僕達今日もお互いに頑張らないとだね」
「うん。それじゃ、また後でね」
「ああ。今日の晩飯はいいものだって聞いたから、揃って食べようか」
食器を返して、互いに手を振ってわかれる。
◆◆◆
「っちゅーわけでや。今日は伝えた通り実習や。グレートヒェン、忘れモンはないな?」
「はい!マッチセーラー先生!」
赤髪のアスランの女性は、コードネーム『マッチセーラー』先生。エリートオペレーターの1人で、前衛オペレーター。関西弁で溌剌とした人物だ。
「おっしゃ。今回は辺境の街までの輸送の警護や。たまに強盗が出るっちゅう話やから、死なんようにな!言うて、んなドンパチやらんと思うけど。大丈夫か?グレートヒェン」
「大丈夫です!」
そう答えて、艇に乗のる。
ロドスは、仕事中等は職員……オペレーターをコードネームで呼ぶ。中には普通に本名で呼ぶ時とか人もいる。
私が選んだコードネームが、『グレートヒェン』。2人のコードネームにあわせてみた。
2人のコードネームが何かって?それは────
「早いけど着くでー」
そこまで目的地が遠くなかったのか、あっという間に着いた。
そこには、先に着いていた人物達が……って。
「ふっ、2人とも?!」
「ジュリア?!……じゃなくて、グレートヒェン!」
「グレートヒェンも同じ場所での実習だったんだね」
そこに居たのは、いつもの2人。それと、それぞれの先生にあたるトロさんや医療オペレーターさんだった。
「なんや、言っとらんかった?」
「聞いてないです」
「うっかりや、すまんすまん!」
マッチセーラー先生はテヘペロっといったふうにそう言う。
「まっ、ちゅーわけでや。3人は輸送護衛を担当するんや。概要は聞いとるな?」
マッチセーラー先生の言葉に、私達は頷く。
「ジブン達は緊急時には動くですが、基本的には御三方の任務です。分かってますね?」
トロさんは釘を刺すかのように忠告してくれる。初めての任務だからって興奮してはいけない。
「……ええな?よし。んじゃあ、護衛対象が来たら出発や。グレートヒェン、ファウスト、メフィスト。ちゃんとやりいや」
「「「はい!」」」
私────『グレートヒェン』と、サーシャ────『ファウスト』と、イーノ────『メフィスト』。
最初の実習で任務は、「輸送護衛」。やってやろうじゃないの!