魔弾が打ち砕くは 作:キルシュトルテ
P.S. 7-9が抜けられない
次の日。天気は快晴、雨が降る様子も全くない。私達は、いつもの場所でイーノが来るのを待った。
「………」
「………」
イーノが来るまでの時間が、いつもより長く感じてお互いに何も話さなかった。そんな空気の中に、イーノがやってきた。
「ごめんね、遅れちゃったかも……」
「大丈夫だ。それよりも、怪我は大丈夫か?」
「うん。いつも通りだったから。それに、怖かったけど……ここから解放されるんだって、頑張ったよ」
「それじゃあ、行こうか。忘れ物はないよね?もう戻って来れないよ?」
2人とも頷いたのを確認して、出発した。
ルートは頭に叩き込んでいる。私が、外に動物をとりに行く時に使っているルートを使う。念の為予備のルートも想定してあるけど、多分使わない。
下水道に沿って、外に出るルート。下水道は町の様々なところに繋がっているだけでなく、町の外にも繋がっている。勿論そこには壁とか扉とかもあるのだけど、杜撰すぎる管理のおかげで経年劣化していて、簡単に開く。その先は人っ子一人居ない森だか林だかだ。その先は知らない。
でも、どうにかなるとなんとなく思う。だって、1人じゃなくて3人で行くんだもの。
「……なあ、イーノ、ジュリア」
「なあに?」「なに?」
「行きたいところって、ある?」
ふとサーシャが聞いてきた。行きたいところかあ……と、悩んでみる。イーノをちらりと見て見たものの、似たような感じだった。
「僕は、2人と居られるならどこでもいいよ。ううん……2人と居たいんだ」
「私も、これといって行きたいところは無いからね……。いっその事、世界全部を見て回ることでも目標にする?」
「面白そうだ。それから、最後に住む所を決めればいいか」
「僕も賛成!とっても、とっても……楽しみ!」
ウルサスから近いところって、どこだっけ。ま、後で考えればいいか!
それからもう少し歩いたところで、サーシャが突然止まった。
「どうしたの……?」
「……誰かいる」
足音を忍ばせて、そっと扉へと近づく。劣化した扉の横の壁には穴が空いていて、そこから外が見える。
荷物をサーシャに預けてからそっと除くと、普段はない人影があった。
ウルサスの……なんて言ったっけ?忘れたから、とりあえず暫定で兵士と呼ぼう。兵士らしき人影が3つ。手には武器らしきもの……ボウガンらしきものを持っている。
『……で、俺たちはここの見張り?』
『そうそう。こんなとこから出るとは思わないけど、万一ってな』
『しっかし、家出お坊ちゃんなあ…』
話し声を聞く限り、人探しをしているらしい。家出お坊ちゃん、か……ん?もしや?
もう少し聞き耳を立てる。
『で、どういう特徴だっけ?』
『白髪の坊やだってさ。名前は……』
『イーノ、だったかな』
「!」
音を立てないように、2人の所へと戻る。それから、小声で情報共有する。
「……ボウガン持った兵士が3人。多分イーノの元家からの依頼だと思う」
「……!僕を、探して……?嫌だ、怖い、怖いよ……」
「ジュリア、他の道は?」
「引き返すと時間がかかりすぎるし、外の人通りが1番ないのがここだよ」
「……そうだな」
サーシャはイーノを見てから、一つ息を吐いてから、覚悟を決めた目をした。
「イーノ、ジュリア。走れるか?」
「走れるけど……」
「もしや、サーシャ……強行突破するつもり?」
サーシャは頷いた。確かに、まだ手薄なうちに突破しないと動けなくなるだろう。
危険だけど、やる価値はある……と思う。
「分かった。イーノもいい?」
「うん。やるよ、僕」
「それじゃあ、合図したら、走り抜けて。できる限り木の陰に紛れるようにね」
私は荷物の中から『あるもの』を取り出して、右手に握りしめた。
扉へと近寄り、タイミングを伺う。
兵士たちが完全に気を抜いてボウガンを地面に置き、手を離した瞬間。
「GO!」
「なっ、なんだ?!?!」
全力で、走り抜ける。ボウガンが放たれるまでにラグがあるとは言えど、矢に当たってはひとたまりもない。
兵士たちは慌ててボウガンを構えつつ追跡してくるが、子供の身軽さには敵わない。
そのまま逃げ切れる。そう思った時だった。
「あっ……!」
「イーノ!!」
イーノが転んだ。木の根にひっかかった。サーシャが叫んだその名前に、兵士たちが反応した。
「イーノ?そうか、ターゲットだ!確保するぞ!」
「!」
サーシャはイーノを助けようとするが、ボウガンに牽制されて動けない。
「俺たちは坊やのおばさんから頼まれてるんだ。すまないけど、来て貰えないかな?」
「いっ……い、嫌だ……」
イーノは抵抗しようとするが、とうとう捕まりそうになってしまう。
仕方ない。やるしかない。
私は握りしめた『それ』にチカラを込める。すると、虚空から放たれた液体が、勢いよく兵士の1人を襲った。
「ぐあっ?!」
その衝撃で隙ができ、イーノは起き上がってサーシャのもとまで走ることが出来た。
「こっ、この!」
「やらせない!」
放たれたボウガンの矢にも、液体を当てる。そのまま間髪入れず、私は残りの兵士にも液体を放った。
異変は、すぐに起こった。最初に液体を当てられた兵士は、突如悶絶して苦しみ出した。
「あ、あ゛あ゛あ゛?!灼ける、灼゛け゛る゛う゛う゛う゛、あ゛つ゛い゛い゛い゛い゛!!!」
追い打ちとばかりに、もう一度液体をかけた。
「く、くそっ……ぼ、ボウガンがっ……!」
ボウガンも、兵士も、溶けていた。
兵士たちは絶叫しながら、少ししたら完全に静かになった。見るに堪えない状態になっている。
私は疲れからか、へたりこんでしまった。そこに、サーシャとイーノが駆けてきた。
「ジュリア!大丈夫?!」
「うん、私は大丈夫。イーノも大丈夫だった?」
「う、うん……僕は大丈夫、だけど……今のは……?」
私はため息をつくと、正直に話すことにした。
「アーツだよ、私の。隠してたけど、私、鉱石病なの。初期だけどね」
私のアーツは、液体。水から強酸まで、私が分かるものならなんだって放てる。
ただ、水以外を放つととてつもなく疲れてしまう。水ならいくらでもどうにでもなるんだけど、緊急時だからと強酸を使ってしまった。
鉱石病だと知ったら、嫌われてしまうかもしれない。そんな考えから、ずっと隠してた。
私は、嫌われると思っていた。だって、イーノをいじめていた奴らと同じ感染者なんだもの。
それでもいいや、と諦めかけていた私にかかった言葉は、全く違ったものだった。
「そうだったのか……気がつけなかった、ゴメン」
「僕も、ごめん。でも、ありがとう。立ち上がれる?」
2人ともそう言って、手を差し出してくれた。
「……嫌わないの?」
「まさか!だって、その、あれだ……」
「うん。ジュリアは、親友だもん。僕にとっも、サーシャにとっても。それとも、ジュリアは違った?」
「ううん……ありがとう」
私は2人の手をとって、立ち上がった。なんでか分からないけど、ちょっと泣いていた気がする。それだけ、嬉しかった。
「それじゃ、追っ手が来たら大変だ。急いで離れよう」
サーシャの言葉に私とイーノは頷いて、町を離れるように森を進み出した。