魔弾が打ち砕くは 作:キルシュトルテ
森の中をかなり進んだと思う。いつの間にか日は落ちて、夜の帳が降りていた。
幸いにも良さそうな木の洞があったので、今日はそこで寝ることにした。
木の洞の中で火を起こすわけには行けないので、木の洞の前の空間に焚き火を焚いた。
晩御飯は、イーノが持ってきてくれていた柔らかいパンを3人で分けて食べた。硬いパンや干し肉はまだ保存が効くけど、柔らかいパンはそこまで長くない。なら、先に消費してしまおうということで。
「……そういえば、荷物の確認してなかったね」
「そうだな。一応、確認しておくか」
それぞれ持っていた荷物……ボロ布風呂敷とか、色褪せた鞄をひらく。
サーシャの荷物は、いくらかの食べ物と本。いつぞやに、イーノが持ってきた「理想」について書いてる本だったと思う。多分。
私の荷物は、干し肉とナイフ、それと、アーツを使うのに『使ったもの』。干し肉自体は2週間程度はもつと思う。
イーノは私の持っている『それ』を見て、首を傾げた。
「そういえば、さっきも持っていたけど……それは?」
「これ?いわゆるアーツユニットってやつだよ。とはいっても、簡易なものだし、出力低いけど……」
カプセルがついたネックレス。ガチャガチャのカプセルを透明にして、空気穴をなくしたようなカプセルがペンダントトップとしてついている。
このカプセルが源石の加工品らしいんだけど、純度はあまり高くない上に量も少ない。だから、これに触れていても別に鉱石病はほぼほぼ進行しないし、アーツも出力が低い。さっきの強酸みたいにごく稀に上手くいくこともあるけど。
「アーツって、さっきやってた水みたいなやつか?」
「うん。私のアーツは液体をこう……ぽーんってやるやつなんだ。普通の水ならいくらでも出せるから、そこの心配はないと思うけど……」
飲んで大丈夫なのかなあ、アーツの水。
と、イーノの荷物に目を移す。家から持ってきたといういくつかのパンと、水筒、一冊の本となにかの小箱。かなり厳重な箱だ。
「それは?」
「家だった場所にあったんだけど、慌てて逃げてきたから……なんだろう?」
ロックは簡単に開いた。ゆっくりと開くと、そこには黒く半透明の鉱石が……純正源石があった。
「!」
ばたん、と慌てて箱を閉じた。それからお互いに顔を見合わせてから、そっと鞄の中へとしまっ……いやしまっちゃダメじゃ?!
「イーノ?!」
「多分、この箱に入ってるなら大丈夫だから……何かの時のために、置いておこう」
譲る様子は無さそうだ。こういうとき、イーノはテコでも動かない。
まあ、ちゃんと箱に入れてれば……大丈夫なのだろうか?心配だけど、仕方ないか。
「でも、身を守れるのがナイフくらいなのが心細いな……」
「まあ、どこかで武器も調達できるだろうし、今日はもう寝よう?」
「そうだな。おやすみ」
「「おやすみ」」
焚き火の日を消して、木の洞の中で眠りにつくことにした。
◆◆◆
日が昇り、目を覚ます。土の上というのは、コンクリートよりも柔らかい。虫がいるのがちょっと嫌だけど、まあ下水道に比べればまだマシだと思う。ほら例えば黒くてカサカサした……これ以上はやめよう。
2人も目を覚まして、大あくびをしている。
そのまま、パンをひとつ3人で分けて食べて、荷物を纏めた。ペンダントは首にかけておくことにした。
さあ出発。また、私達は森を進む。