魔弾が打ち砕くは 作:キルシュトルテ
高い壁が、目の前にある。比喩とかそんなじゃなくて、物理的に。
「……どうやって入るんだ、これ」
「どうしよう」
歩いて歩いて、移動都市のすぐ近くまでは来た。しかし、入口が分からない。まあ、入口があっても入れて貰えないと思うけどさ。
とはいえ、食べ物とか補充したりもしたい。金銭?……最悪ほら、ね?うん。
いや、一応ある程度の金銭はある。あのあと一度、また賊に襲われた。でも、アイツらほど強くない上に少なかったから、こう、ちょちょいーっと……カツアゲしました。はい。
「排水口とかないかな?僕たちが逃げてきたのも、メンテナンスの出入口だったよね」
「うーん……ここからは見当たらないね。というか、あったとしてもメンテナンスしっかりしてるなら当たらないかも。多分そういうのは、酸でも溶けないような素材だろうし」
「そっか。そうなると……」
また見上げて、3人思ったことは同じだろう。
「「「登るか(な/ね)……」」」
パッと見たところ、壁(基礎?)自体の高さも、よくよく見れば登れなくない気がしてきた。絶対正常な判断じゃないよねコレ!
「って、まって、2人とも!落ち着こう。さすがに、道具もなしで登るのは危ないよ」
ココ最近で、イーノが私達の中でもストッパー役になってきている。悪ノリはしたりするけど、あまりにも危険なこととかはイーノがこうやって止めたりしてくれる。
「あ、うん、そうだよね。そうすると、うーん、本当にどうしよう?」
首を傾げて考える。
ふと、視界の端に穴が見えた。3mくらい登った位置に、都合よく穴があいている。しかもそのそばに、大きめの岩が落ちている。都合よすぎない?
でも、利用しない手はない。
「ねえ、あれ!あれから入れないかな」
「あれ?分かった、少し見てくるよ。俺の荷物持っててもらっていいか?」
「おっけー」
サーシャの荷物を預かると、サーシャは岩を登って穴の様子を見に行った。
私達の中で、一番身軽なのがサーシャだ。私よりも長く下水道で暮らしていたのもあってか、狭いところとかも易々と動く。なんなら感覚、特に聴覚も鋭い。力も強い。
戦ったりする時、私が一番前に立つんだけど、下手したら私よりも前衛出来るんじゃないのかな、サーシャ……。まあ、基本的にサーシャは後ろからボウガンで支援してくれるんだけど。
「ジュリア、イーノ!この穴、下水道に繋がってる!来れるか?」
少しして、サーシャが顔を出してそう言った。これは幸運だ。
イーノと顔を見合わせて頷くと、私達は穴の方へと向かった。
「今行くー!」
◆◆◆
下水道はあの町よりも綺麗だった。いや下水道だから臭いのは臭いのだけど、定期メンテナンスがしっかりしているのか、荒れ荒れとかそんなのでは無い。
出られそうなところはないかと、定期的にある梯子を見上げるものの、出入口のマンホールにはロックがかかっている。そりゃそうか。
「出られそうなところがないね」
「最悪、私のアーツで溶かしてもいいけど……やるにしても、夜になってからかなあ」
真昼間にやることじゃない。一応、多分これ不法侵入だし、見つかったらどうなるか分かったもんじゃない。しかも、見た目には分からないとはいえ感染者なんだし。
ハシゴの上、マンホールの小さな穴から差し込む光はまだ白い。
多分、入ってから数えて20といくつか行ったくらいのマンホールだったと思う。
そのマンホールは、触ると、ゴトッと音を立てて開けることが出来た。
そのまま少しだけ顔を出して外を見る。多分路地。誰もいない。
私たちは、そこから都市の中へ出た。
こっそりと、路地から外を見る。
するとここは、スラムだとひと目でわかった。プレハブ小屋や、ボロっボロのビルや建てかけの建物の中で暮らしている人々が目に入ったからだ。
「どこにでもあるものだけど、ここにもあるんだね」
「だから、鍵が弱って開いてたのかな?」
そっと通りに出てみたものの、誰も気が付かない。人が多いからか、多分侵入してきたんだとかは気が付かないのだろう。私たちの服装もとってもボロボロだし。
「とりあえず休みたいね」
「そうだな。よさそうな場所、あるといいけど」
「雨風凌げりゃ私はそれでいいかなあ」
結局、別の路地に腰を落ち着けた。ひさしがあったし、誰もいなかったしまあいっか、って。
少しの間ここをメインに準備してから、また旅立とうって話をした。
事件は、その日の夜に起きた。