核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について 作:rikka
サブイベのうろ覚えキャラの確認とかどうすんべか……
「それで、またロストにひっついて取材? もういっそウチに引っ越したらどうなの、パイパー」
「ははは。正直、ちょっと真面目に考えているよカット。温かいシャワーを浴び放題。三日に一回は石鹸使って体洗って風呂にまで入れる。しかも酒は冷えてて飯は美味いんだからね」
ミスティックパインを拠点にして結構な時間が立った。
当初一番の悩みだった留守番役に関してはバーテンダーのマックにメカニックのイザベル、労働力兼防衛戦力のジェゼベル。
万が一何かに襲われても、タレット網も合わせれば十分に応対できる戦力だ。
実弾、レーザー双方の銃も揃っているし、クリケット姐さんが特別価格でカスタムしてくれた。
加えて定期的に訪れるキャラバン隊の数も増えたために、最近では『商品交換所』という名のちょっとした市場が出来上がっている。
最近では近くのコベナントからも住民が買い出しに来るくらいで、時折タリアという若い女性がウチの市を覗きに来ている。
クリケット姐さんやカーラの言う通り、キャラバン向けの宿泊所を作ってからは一気に人が増えた。
このまま人が増えて『住人』と呼べるくらいの人間が出てくるようなら、ジェネレーターと相談しながら大衆向けの風呂――銭湯の設営も考慮に入るくらいには。
「まぁ、最近じゃダイアモンドシティとウチを行き来する商隊も出てきてるみたいだし、良かったらまたナットを連れておいでよ。お風呂、気に入ったんだろ?」
「気に入ったって言うか……軽くショックを受けてたね」
「? ショック?」
「石鹸で身体擦った後の泡が真っ黒だった事にさ。こんなに汚れていたんだって、家に戻ったら突然家中の大掃除始めて大変だったんだよ?」
「いいことじゃないか。正直、未だに医者が染みだらけの白衣を着て平然としている今の状況が信じられないぜ」
「戦前の常識を持ってくるんじゃないよ、ロスト。ここはウェイストランドだよ?」
「土地そのものは変わってないだろうが」
ゴーーーッと軍用の強力なエンジンを吹かせながらついてくる『ガス』と共に、二人の女性を引き連れて荒れ果てたコンクリートの上を歩いている。
もはやウチの常連となりつつあるダイアモンドシティの新聞記者、パイパー。
そして我が『ミスティックパイン』の所属キャラバンとなった少女商人、カット。
たまにどのお菓子が上手いかで数時間も話し合ったりするおなじみのコンビと共に目指しているのはユニバーシティ・ポイント。
ダイアモンドシティのさらに向こう。
南東にかなり歩かねばならない、クインシーとの中間に位置する一大居住地だ。
「で、パイパー。ユニバーシティ・ポイントってどういう居住地なの?」
「知らないのかい、ロスト? そこそこ有名な居住地なのに」
「バンカーヒル時代でも、あっち側にはあんま行かなかったんだよ。たまに話で聞いたくらいさ」
アストリンと出会う事になったあの軍施設絡みの依頼が正にそうだけど、あの頃バンカーヒルは南部よりも手近な農村の安定を望んでいたからな。
だから銃を握ってもダイアモンドシティを越える事はほとんどなかった。
「ダイアモンドシティ同様、ほぼほぼ一つの居住地で成り立っている自給自足の町……かな。まぁ、それでも交易は盛んでよくキャラバンがウチと向こうを行ったり来たりしてるよ」
「外に物出す余力はあるのか。なにを交換に出してるんだ?」
「ダイアモンドシティからは大体干し肉だったかな。向こうからは、大量のレイザーグレインをもらってる」
「……麦……。あぁ、そうかヌードル用に」
「うちの主食だってのに、不思議とそこまで育ててないんだよ。……あるいは交易前提で育ててないのか?」
「ねぇロスト、ウチでも育てない? 距離的にも道中の安全的にも、いい稼ぎになる気がするよ。やろうと思えばミスティックパインでもヌードル自作出来るようになるし」
いい献策だカット。
今の所ウチの作物ってあくまで自給自足のためのものだからな。
ここからは拡張もそうだけど、外への商品用として畑を拡張してもいいだろう。
テイトとトウモロコシ、マットフルーツ。それにニンジンの四つの時点でもうかなり安定してるんだ。
ウチの主食でもある野菜スープは十分上手いし、バラモンの肉が定期的に入るようになればタンパク質も問題なくなる。
……バラモンの骨使って牛骨スープもどき作れるかな?
そうしたら現代日本バリのラーメン戦争時代を切り拓けるんだが。
「ただ、少し前までちょっと治安が悪かったらしい」
「レイダーか?」
「いや、タダのチンピラさ」
「……レイダーじゃないチンピラってこの世界にいるのか?」
「あぁ……うん、まぁ、言いたいことは分かるし、確かにレイダー崩れみたいなものだったけどさ」
先日ウチの設備で服一式を洗濯して、少し綺麗になったお決まりのコートと帽子を羽織っているパイパーは、前より綺麗になった首周りを撫でながら煙草をふかす。
「人造人間狩りなんて真似をする連中がいたのさ」
「俺襲われるじゃん」
「襲われた所でアンタなら返り討ちさ。ガンナー十人の中に突っ込んで一発も食らわないまま全員仕留めたんだろう? イザベルがアンタの活躍、一から十まで話してくれたよ。興奮しっぱなしで」
「……アイツ、未だに俺の事シュラウドって呼ぶんだよな」
「こんな恰好してるからでしょ」
カットが俺のシュラウド・コートをクイクイッと引っ張る。
……むしろこの格好してから色々上手く行ってるんだけどな。
まぁまだ危険視する所はするけど。
コベナントの連中とか。
唯一心を開いてくれつつあるのは、こちらにまで足を運んでくれるタリアだけだ。
正確には、同じく機械いじりが好きなイザベルに心を開いたついでっぽいけど。
「まぁ、そいつらも結局仲間割れかなんかで壊滅して……今は特に目立つ話題はないね」
なるほど。
海沿いの町と聞いて、マイアラーク襲撃なんかでヤバイ事になっているんじゃないかと思ったがそう言うわけでもないらしい。
俺はまだ見たことがないが、クイーンと呼ばれるデカブツによって町どころか戦前の要塞ですら破壊されると聞く。
ミニッツメンのプレストンからそんな話を聞いた物だから、独立する時は絶対海沿いは避けようと決めていたくらいだ。
とにかく固いからに覆われた上で、人を襲うには十分なマイアラークの幼体を次々に生み出しながら強酸吐いてくる化け物。
嫌だ。
絶対に嫌だ。
もし戦うならグッドネイバーのクレオに頭を下げてヌカランチャーと小型核弾頭数発もらった上で奇襲かけてやる。
「おっと。ロスト、見えて来たよ。あれが目印の戦前の通信タワー」
「……アンテナは立ってないんだな」
「帰りに調べてみたらいいんじゃない? アンタは手先器用なんだろ? 印刷機直してくれたし」
今俺達はダイアモンドシティでパイパーと合流してからずっと真っ直ぐ南下している。
遠回りではあるが、これが一番安全な道だからだ。
DCからユニバーシティ・ポイントまで真っ直ぐ突っ切ろうとすると、レイダーがそれなりの数集まっている危険地帯の近くを突破する必要があるらしい。
なんでも、昔のサルベージ場を改造したちょっとした基地だとか。
下手に近づくとミニガンでミンチにされると、キャラバンは全員避けて通る道らしい。
正直、俺と『ガス』がいれば装備が良いだけのレイダー集団なんざ消滅させて見せるが、それでもカットとパイパーがいるなら必要以上の危険を冒す意味もない。
(日頃ミスティックパインで毎日湯浴みと歯磨きをさせてるせいか、DCの中に入った時も注目されてたからな)
服も洗濯している。
洗濯用洗剤であるアブラクシオクリーナーも、無事なのが見つかったらたまに少しだけ使って洗った結果、そこにいるだけでいい匂いがするようになった。
……おかげで変な意味込めて目を引いてしまう羽目になった。
(……カット本人が狙いのレイダーもいたしなぁ)
まぁ、だからこうして俺が護衛としてカットのミスティックパイン所属初仕事に着いて回っているわけだが。
「ここからなら見晴らしの良い場所を進んで行けるから奇襲の可能性は少ないけど、逆に言えば見つかりやすいって事でもある」
「野生動物やレイダーもそうだけど、スーパーミュータントに警戒だな。最近南部じゃ目撃情報増えてるし」
「その時は任せてよ、ロスト。今の『ガス』なら全部やっつけちゃうわ。依頼のマイアラークだって一ひねりよ」
ふんすー、と威張ってみせるカットの後ろを突いてくるセントリーは、持ち込まれる前にはなかった脚部追加装甲に加えて、その背後には簡単な迫撃砲まで付いている。
防御力は当然、その殲滅・制圧力もかつてとは段違いとなった。
いや、本当に。
つい先日、一度トンボっぽい虫の大群が襲ってきたが、視界に入った次の瞬間にはガスの両手のミニガンで粉々に砕かれ、背中の榴弾で燃やし尽くされていた。
セントリーヤバイ。
ガスのおかげで基本パーツの設計図は揃っているし、資材揃ったらウチでも作るか。
今のウチのロボット戦力は修理してAIをリセットしたアサルトロン一体と、作れるパーツを無理やり繋ぎ合わせたプロテクトロンベースのジャンクボット二体のみ。
この三体を警備員として外周部をパトロールさせることでウチの治安は維持されている。
「あぁ。道中期待してるよ、カット」
「だけどマイアラーク狩りは俺に任せろよ? セントリーの『ガス』じゃあ、多分中には入れないからな」
「………………………………あっ」
「お前、『ガス』の図体のデカさ考えてなかったな?」
それから二日かけて、俺達は目的地に辿り着いた。
さすがにダイアモンドシティ程のではないけど、立派な壁に囲まれた立派な居住地。
中に入ると立派なレイザーグレインの畑が実っていて、それを囲むように各種商店が揃っている。
「……パイパー、カット」
「ああ」
「うん。ロスト……」
だが、本来いるはずの店番はいない。
どこも『Close』の札が掛けられている。
まぁ、それはいい。時刻はもうすぐ夜なんだ。
少々早すぎる気はするが、まぁいい。
だけど、離れているとはいえレイダーの拠点がある地域なのだ。
見張りくらいいて然るべきなのだがそれもない。
その上で、全員の住居兼施設なのだろう一番奥の白い建物の向こう側からは、罵声やら怒声やらが響いている。
「なんだか……空気がピリピリしてるね」
「だよなぁ。うぅわ、嫌な予感」
どちらにせよ、依頼があった以上最低限話を聞く必要があるのだが……。
「お?」
さて、今まさに空気が最悪と見られるあの中に飛び込んでいくか、凄く迷う中。
右側に見える、やはり白い建物の中に、女性らしき誰かが駆け込む姿がちょうど目に入った。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「だから何度も言っているだろう! インスティチュートがわざわざ名乗ると思うか!? くだらん詐欺だ!!」
「そういう問題ではない! 武装している奴らが実際に来たんだぞ!?」
多くの人間が見守る中、二人の男が怒鳴り合っている。
「奴らはお前の娘が見つけた物を寄越さなければ攻撃すると行っている。期限までもうすぐなんだぞ!?」
「そのデータはそもそも存在しないんだ! 娘のジャックが調べ尽くして痕跡は出なかった!!」
二人を取り巻く人間達の顔は様々だ。
状況に恐怖している者、怒っている者、二人の対立に怯えている者。
「大体、本当にそのデータとやらは見つからなかったのか!? ジャクリーンが自分だけ助かろうとして、隠し持っているんじゃないのか!!?」
「そ、そうよ……大体なんでインスティチュートが欲しがるようなものが都合よくここから出てくるの!? おかしいじゃない!!」
「ジャック……そうだ、ジャクリーンの姿がない! ヤツはどこに行った!!?」
「落ち着けと言っている!! 娘に非はない!!」
「例の
――そうだ! ジャクリーンは怪しい!!
――あの娘を捕まえろ!
――データだかなんだかの知識を一番持っているのは、あの娘なんでしょう!?
――ジャクリーンをインスティチュートに差し出せ!
――娘一人の命の為に、町全体を危険に晒す気か!!?
――お待ちなさい! 女の子一人を差し出そうなんて……っ
――だったら他に町を救う方法があるのか!?
もはや内部は恐慌状態に陥っていた。
糾弾されている男と、数少ない彼に同調する者を取り囲むように、多数の老若男女が今にも銃を抜きかねない雰囲気で、顔を真っ赤にして喚き散らしている。
「今すぐジャクリーンをここに連れて来い、ジェラルド!!」
「インスティチュートが来る前に、お前の娘の身柄をこちらに寄越せ!!」
「そのために採決を取るのではなかったのか! ピート!!」
「ふざけるな! この状況を見ろ!」
「お前の娘を渡す以外に選択肢などあるものか!!!!」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
――ギ……ィィ……ッ
他の建物が銅かは知らないが、この比較的小さな建物は余り使われていなかったようだ。
――っ! 誰!!
思った以上の音がするボロボロのドアを開くと、一人の美人が蒼褪めた顔でパイプ銃をこちらに突き付けている。
「あぁ、驚かせてすまない。ケントのラジオを通して依頼を受けたのでこちらに足を運んだんだが……あちらの大きなホールは内部の空気が最悪っぽくてね、まずは偶然目に入った君に声を掛けようと思ったのさ」
「ヘイ、ロスト。レディが入っていった部屋を前にノックも出来ない程ウェイストランドに染まったのかい? シュラウドの名が泣くよ?」
「……入ってすぐだったろう?」
「逢引だったらどうするのさ」
「…………」
確かに、その可能性は考えてなかったな。
ごめんパイパー、ごめん美人さん。
「ロストって必死に紳士ぶろうとして、でも変な所で落とすよね」
カット。
お前はお口にチャック。
「ロスト……。ぁ……あぁ……アナタ、アナタがラジオの!?」
一方で美人さんは、俺が何者かに気付いたようだ。
震えながら構えていた銃を下ろして、その場に膝を付いている。
「あぁ。連邦の便利屋、ロストだ。こっちはDCで新聞記者をやってるパイパー。それに行商人のカットだ」
ここはなにか……銀行のような施設だったのだろうか。
頑強なカウンターの向こう側に違う空間が広がっているが、こちら側からは絶対に入れないという形になっている。
「わ、私はジャック。ジャクリーン・スペンサー」
一瞬「ん?」となったが、別段おかしいことはなかった。
単に俺の日本人マインドが「ジャック=男の名前」と認識しているだけだ。
「わ、私……あ、アナタを呼んだ者だけど……私、待ち切れなくて……だから……っ」
確か、ケントからのラジオによると俺を呼んだのはユニバーシティ・ポイント評議会っていう話だったはずだが……。
評議会とやらの関係者……にしては、これも偏見かもしれないが若すぎる。
十代後半――高く見積もっても二十歳其処らだろう。
「お願い! た、た、助けて欲しいの!」
「もちろん。そのつもりでここに来た」
この様子だと、内部のマイアラークがあふれ出したのか?
待ち切れなくて、とか言ってたし、あるいはすり抜けて結構な数が漏れたか?
銃声らしき音が全くなかったから安心していたのだが、ひょっとしたらどこかに立て籠もっている最中なのだろうか。
(クソッ、それなら四の五の言わずにドア蹴り破って突入するべきだったな)
「カット、念のため『ガス』に外を警戒をさせておいてくれ。これだけ海辺に近いんなら、地面掘っていきなり飛び出す奴がいても驚かん。特に、今は見張りが手薄だからな」
「ん。わかったわ」
すっかり俺のやり方に慣れたカットが、手慣れた様子でガス――AIも調整して、より命令を聞き分けやすくなったセントリーに指示を出す。
「マイアラークの数は? 居住区画にまで侵入されているのなら、どれほど?」
「違う――違うのミスター・シュラウド!」
君もそう呼ぶのかよ。
「私、私のせいで――!」
「
――タァァ……ンッ!!
ジャックという美人がそう叫ぶのと同時に、音が鳴り響いた。
もう散々聞き慣れた、この世界ご用達のパイプ銃の安い発砲音だ。
「ロスト!」
「分かってる。パイパー、カットを中に」
音がしたのは、多分怒鳴り声がしていた建物の中からだ。
パイパーが素早く使い古しの10mm拳銃を引き抜き、外に向かったカットの元に走る。
恐らくカットも『ガス』の後ろで銃を抜いただろう。
クリケット姐さんに無茶言って作ってもらったカスタム10mm。
専用の弾丸をそのまま使えばカットには衝撃が強すぎるので、あえてパイプ銃と同じ38弾が撃てるようにグレードダウンした一品。
それでも殺傷力は十分だ。
「ジャック、今の銃声に心当たりは?」
ジャックの顔色が更に悪くなる。
インスティチュートが来ると言っていたが、今の発砲音は違うものだろう。
やつらの武器は変わったレーザー銃だと耳にした事がある。
聴覚センサーのレベルを上げると、不特定多数の人間のざわめきが起きる中、複数の人間が慌ただしく走り回る音を拾えた。
(……遠いな。やはり向こう側の壁の中か。ちらほら、ジャックの名前を叫んでいるのが聞こえるが……)
――時間がない! ジャックはどこだ!
――マイアラーク共が入り込んだ区画に隠れているかもしれん!
――えぇい、鍵はどこだ!
――やっぱりジャクリーンよ! ジャクリーンはこの町をインスティチュートに明け渡すつもりなのよ!!
インスティチュート。
俺の死に掛けの身体を回収して今の身体に記憶をぶち込んだ奴ら。
なにがしたいか分からなさすぎて、だが確実にウェイストランド人にとって害となる存在。
そのあやふやな所が、ここでも悪い方に働いているようだ。
「すまない、ジャックだったか。とりあえず向こうの連中も、外に出て完全武装のセントリー見りゃ落ち着くだろう。それまでの間に、簡単に状況を説明してくれ」
さて、どうすりゃいいんだが。