ブロワイエ「Allez ! Magnum !! (かっとべ!マグナム!!)」 作:Mak
原作:ウマ娘プリティーダービー
タグ:クロスオーバー 爆走兄弟レッツ&ゴー!! ブロワイエ 声優ネタ キャラ崩壊 ミニ四駆
ウマ娘、彼女たちは走るために生まれてきた。時に数奇で時に輝かしい歴史を持つ別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで走る神秘の存在。
だけどもしかしたら、彼女たちが受け継いだ魂は一つだけではないかもしれない。私たちの知る馬がいる世界とは別の世界の魂も受け継いではいないとは誰にも判らないのだ。
あの伝説的なジャパンカップが終わってからしばらく経った頃、ブロワイエは未だ日本に滞在していた。その理由は互いに国の威信を賭けて競い合った日本総大将であるスペシャルウィークに負けた事実よりも、彼女のキャリアでワーストの成績である4位という結果で終わってしまったことが彼女の心に重く圧し掛かっていた。彼女の地元フランスでもそのことは大きく報じられ、彼女の限界説を論じる記事すら現れる始末だった。
たった一度の敗北だけで今までの功績すら無視して好き勝手言われてしまう、そんな厳しい現実を目の当たりにした彼女はこうして直ぐにはフランスに戻らず、せっかく極東の島国まで来たのだからとレースをしばし忘れ日本観光を楽しんでいたのだ。そしてこの物語は、そんなレースに鬱屈した想いを抱いてしまったブロワイエが偶然模型屋の前である物に目が触れてしまったことから始まる。
『ん? これは……おもちゃ屋か? いいや、自動車や航空機のミニチュアが置いてあるということは模型屋か』
ブロワイエは特に模型と言うモノに興味はなかった。しかしそんな彼女でも日本製の模型は高品質、高精度であることは知っていたし、その模型を更にディティールアップして仕上げられたプロのモデラーによる拘り抜かれた作品は素晴らしいものだと理解する感性は人並に持ち合わせていたのだ。
普段であればこのような店には絶対入ることの無い彼女だったが、異国の地を探索すると言うワクワク感がそうさせるのか、一体どのような模型が売られているのか気になった彼女は店内へと入って行った。彼女は日本語が読めない。その店の看板には佐上模型店と書かれていた。
佐上模型店の中にはショーウィンドウで飾られていた模型意外にも様々な模型が展示されていた。艦船、航空機、レーシングカーなどのメジャーなものは勿論、ブロワイエには馴染みのないロポットやアニメのキャラのプラモデルなど、どれも見事な出来栄えの完成品が飾られていたのだ。中にはウマ娘の精巧な模型まで存在し、かつて見たことあるような名ウマ娘のフィギュアまであることに驚きを隠せないでいた。だが彼女にはそれより目を引くモノがあった。それは模型店にいる自分意外の客が小学生ぐらいの少年少女ばかりという事実であった。
本日は土曜ということもあってか佐上模型店はたくさんの子どもたちで賑わっていた。てっきり模型というのは大人のホビーだとばかり思っていたブロワイエは少しばかり驚く。そして、彼らの年代でも作れるようなイージーモデルでもあるのかと気になった彼女は少年少女たちが一心不乱に品定めしている棚に陳列されている箱を一つ手に取る。その箱には鮮やかな色彩で描かれたレーシングカーの絵と、英語で書かれた商品説明文があり、彼女はそれを読み上げる。
『1/32フルカウルミニ四駆……? 何々……組み立て簡単、接着剤不要、レーシングタイヤとスリックタイヤ付き。タイプ130モーターと単三電池2本必要……。つまりこれは走るプラモデルなのか! しかし、どうやらラジコンではないようだが、そんなものどうやって走らすのだ?』
これがどのような商品なのかは大体わかった。しかしそれだけではどのようにして遊ぶのかまでは想像できなかったのだ。そもそも彼女に限らずウマ娘というのは自らの足で車より早く走れる存在であるためか、こういったホビーに興味を示す者は稀であり、とてもではないがラジオコントロールしないただ直進するだけのおもちゃの何が面白いのか理解しづらいのは仕方ないと言える。
「ねえねえ、金髪のお姉ちゃんもミニ四駆に興味あるの!?」
「……え? えっと……」
ブロワイエが懸命に箱の説明文を読んでいるところ、それを見た少年少女たちが彼女に話しかけてくる。ブロワイエは曲がりなりにも超がつくほどの有名人ではあるが少年少女、中には同い年ぐらいのウマ娘の子も居たが流石に彼女がどれほどの有名人か知らず、知っていたとしてもまさかこんな場所にそれほどの有名人が居るとは想像もつかなかったためか、彼らには自分たちの好きなものに興味を示してくれた外国人のお姉さんのように見えたのだ。
ブロワイエは戸惑った。言葉が通じないのは致し方がないし普段であれば無視しても特に気にしない彼女ではあったが流石にキラキラした目でこちらを見上げてくる無数の子どもたち目には抗い難いものがありどう対応すればいいのか悩ませた。
しかしそんなことは子どもたちに関係なかった。言葉が通じないのは彼らも同じだが好きなモノを共有したいという素直な気持ちの前には言語は不要とばかりに彼女にもっと自分たちの好きなモノを知ってもらおうと行動へ移すのであった。
「ほらお姉さん! こっちこっち! 面白いモノを見せてあげる!」
そうやって連れられて行かれたのは模型店の横にある扉の前であった。そして子供たちは何の遠慮も無しにそのドアを開け中へと入って行ったのだ。勝手に入るのはまずいのではと思いレジカウンター近くにいた店主と思わしき人物の方へと顔向けるとジェスチャーでどうぞ言われてしまう。促されるままドアを開けると彼女の耳に不思議な音が聞こえてくる。甲高いモーターの音を響かせ、何かが高速で走っているかのような音が聞こえてきたのだ。
『これは……! ミニチュアサイズのサーキットか! なるほど、このプラモデルは専用のコースで走らせて遊ぶものだったのか』
ドアの向こうは模型店の敷地と同じ面積の空間が広がっていた。違うのは商品は陳列されておらず壁際には机や椅子などの作業スぺースと、真ん中には大きなレーシングサーキットが鎮座していたのだ。そしてよく見ればそのサーキットは先ほどまで見ていたミニ四駆が丁度収まるサイズであり、既に部屋の中にいた別の子どもたちが楽しそうに自分たちのマシンを走らせていた。友達に勝って喜び、負けて悔しがる。おもちゃを使った遊びとは言え、そこにはブロワイエが馴染み親しんだレースがそこにはあった。
そうなるとブロワイエは止まらない。たとえ子どもの遊びであろうとも、彼女がウマ娘である以上どのようなレースであってもその熱気を肌で感じてしまえば心が躍り血肉が湧きたつ感覚には抗えないのだ。
それからの彼女の行動は早かった。すぐさま隣の模型店へと戻るやいなや、マシンを適当に一台選び購入する。ニッパーやドライバーなどは店長のご厚意で借り、すぐさまマシンの制作へと取り掛かったのだ。彼女にとっては初めての模型作り、しかも海外製ということもあって一抹の不安もあったが組み立て説明書は図解で分かり易く描かれ、しかもありがたいことに彼女の母国語であるフランス語の他に英語、ドイツ語併記だったためか直ぐに組み上がったのだ。
完成して直ぐさま彼女は子どもたちとレースを開始した。ミニ四駆を使ってのレースは初めてであったが彼女は世界最強のウマ娘、レースそのものにはこの場にいる誰よりも精通していた。いざ尋常に勝負! 流石の貫禄で見事なスタートを決めあとはそのまま進むのみ!……といきたいところであったが結果はコースアウトによるリタイア。それからなんどレースに挑んでもコースアウト2回、周回遅れ3回、完走出来たのはたったの1回、しかもビリと散々な結果であった。
じつはレース前に子どもたちはブロワイエに止めといたほうが良いよと忠告していた。子どもとはいえミニ四駆に限れば彼女よりもベテランである彼らには素組みのブロワイエのマシンでは上級者向けであるここのコースを完走すること自体難しいことは最初から見えていたからだ。しかし言葉が通じないという弊害と所詮はおもちゃのレースと高を括っていたブロワイエが醸し出す絶対王者の雰囲気が少年少女たち無意識のうちに挑発した形として現れ、それを生意気と感じ取った子どもたちがつい本気になってしまったという悲劇を引き起こしたのだ。
地面に手をつき項垂れる凱旋門賞ウマ娘。その悔しがり様は先日行われたジャパンカップでの敗戦以上に悔しそうに見えた。
とはいえ、所詮はお遊び。まだまだ未成年とはいえブロワイエは大人で紳士的なウマ娘である。たとえレース前に失礼な物言いをされた上で負けても相手の勝利を称え、ほんのちょっとだけやり返す程度に済ます。しかも今回の相手は小学生たちだ。負けても良い思い出として今日の事を忘れずにいただろうが、たまたま彼女に引き継がれたウマ娘としてではなくもう一つの別の世界の魂が彼女に彼女らしくない行動をとらせたのだ。
『La victoire est à moi!!!』
涙目でそう捨て台詞を吐くと彼女は脱兎のごとく、いや、逃げウマ娘のごとく佐上模型店を後にした。自分で作ったマシンを忘れずに。
いちど滞在先の高級ホテルへ戻ったブロワイエはすぐさまミニ四駆に関する資料を集めた。ミニ四駆の基本知識、改造の仕方、コースに合わせた理想なセッティングを調べ上げ、閉店ギリギリの時間を狙って佐上模型店へ再度訪れパーツを大人買いし、しかも公式サーキットまで購入し部屋へと帰る。ホテルの調度品は隅に集められ部屋の真ん中に組み立てられたコースを使って改造したマシンをひたすら試験走行させる。その姿はレーサーだった。自分の足で走ることはないがその姿は正しくミニ四駆レーサーそのものだった。
一週間後の土曜日、子どもたちは今日も佐上模型店へと集まり一週間の間で試行錯誤してセッティングしてきた自慢の愛機を走らせるの楽しみに来ていた。だがそんな平和な一日を波立たせる奴が現れたのだ!
『待たせたな! もう一度勝負だ! 今度こそ私が勝つ!』
最早自分のキャラと口調を忘れ、フランス語でそう小学生に啖呵を切るブロワイエが子どもたちにリベンジマッチを申し込みに来たのだ。相も変わらず子どもたちにはフランス語は通じない。しかしミニ四駆レーサー同士伝わるモノがあったのか、この懲りないお姉さんに勝負の厳しさを教えてやるとばかりに我先に彼女の挑戦を受けて立つのであった。
「用意はいいダスな! レディー……ゴー!!」
カウントダウンを任された子どもレースの開始を告げる。ターフで鍛えた集中力を活かし前回と変わらず好ダッシュを決めるブロワイエのマシン。彼女の勝負服と同じ鮮やかな青色でカラーリングされた機体はどんどん加速してゆき後続のマシンを引き離していく。
「は、はやい!」
「へッ! だけどやっぱり素人だぜ! この先はカーブだ! あのスピードじゃあまたコースアウトさ!」
その子が予言した通り、ブロワイエのマシンはカーブに差し掛かった瞬間車体が浮き上がり宙を舞う。またコースアウトだ! しかもあのスピードでは地面に激突した瞬間マシンが壊れてしまう! だれしもがそう思っていたが、ただ一人、マシンの持ち主であるブロワイエだけは諦めていなかった。おのれのマシンを信じ、共に戦うために彼女はマシンに声援を送る。
『Allez ! Volez comme un Magnum !! 』
すると不思議な事が起こった。宙を舞い成す術の無いマシンが高速回転し空中で推進力を生み出す。まるで弾丸のライフリングの様にマシンの姿勢を安定させながらカーブが連続するコースを飛び越え自分のレーン内へと着地したのだ。ブロワイエのマシンはその勢いのままトップでゴールイン! 見事初勝利を挙げたのだ。
「すげーよ姉ちゃん! どんな改造したんだ!」
「あ、ずるい! 僕にも見せてよ!」
その後はもう大騒ぎであった。つい先週までは素人だったお姉さんが1週間でその腕を磨き、しかも劇的な勝利を収めたのだ。その後もパーツを変え様々なセッティングを試しながら時には勝ち、時には負けるを繰り返しながらたくさんの子どもたちとレースを楽しんだのであった。
「ねえねえ、そう言えばこのマシンって何て名前なの?」
『名前…?』
そう言えば名前を付けていなかったなとブロワイエは今更ながらそのことに気が付いた。折角作った自分だけのミニ四駆、自分も子どもたちのようにマシンの名前を呼んで応援すれば楽しいだろうなと考えていると最初のレースで自分が思わず言ったフレーズを思い出す。
『そうだ! あのとき私はマグナム弾のように飛べと応援した! ええ、不思議としっくりくる! このマシンの名はマグナム! レースを楽しめないでいた私の鬱屈した気持ちを
こうしてブロワイエはビザが切れるギリギリまで日本に滞在しミニ四駆レースを楽しんだ。そして半年後、ジャパンカップの次走であるアイルランドのG1レースでは途中不利な場面があったにもかかわらずその名の通り不利を打ち砕き見事1着で入線! 凱旋門賞ウマ娘は健在であることを世界中に見せ付けその2か月後、凱旋門賞と同じく世界最高峰のレースと並び評されるKGVI & QESでも見事勝利を収めたのであった。その強さの秘密は……日本が生んだ走るプラモデルなのかもしれない。
声優さんって凄いなと改めて思いました。
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