ラプラス憲章が0079年に使われていたとしたら。
ギレンがラプラス憲章を使うのか、ラプラス憲章にギレンが使われたのか。
サイド3をザビ家が掌握する間近、月面で事故が起こり、デブリをサイド3の業者が片付けていた。そこにギレン・ザビの姿もあった。表向きは労働者の味方の彼はアピールの為にこの自体を使った。
「ムッ、古ぼけた厳重そうなコンテナか。」
デブリの中で見つけたコンテナ、開かれた時に見た文章。手に取った自分の運命そしてその価値。運命の石、アークと名付けられたそれをギレン・ザビは政治活動に利用する。効率が良いからだ。
ザビ家による独裁制は行われなかったこの世界、代わりに真の共和制サイド連邦を掲げて地球連邦に圧力をかける。地球に置けるゲリラ演説は人々に地球連邦建国の理念を伝えて回る平和な物だったが次々に地球連邦により、取り締まられ、彼らの多くが資源衛星に送られる。そんな0079の半ばに事件は起きた。
「もはや、地球連邦は形骸化した!なぜならば平和活動やデモすら弾圧され、サイド3監視部隊設立の名目で税金は引き上げられ、コロニーはサイド1を始めとする老朽化したものすら、更新されない!宇宙移民は宇宙移民ではなく、宇宙棄民に成り下がった!今こそ、民主主義を共和制を取り戻す時だ!宇宙移民も関係はない、人類による人類の為の人類の政治をする段階に入った!宇宙移民を武力で弾圧し、搾取する地球連邦に怯える時間は終わり、我々こそが人類政府として成り立つときが来た!サイドの1つ1つは弱くても、団結すれば宇宙は独立できる!」
一拍、それを置くのが演説名人の彼の技だ。
「そして、我々には選ぶ手段がある!地球連邦による植民地支配からの脱却を!植民地として生き続けるか名誉ある死を選ぶかはサイド次第ではあるが、このまま地球連邦やコロニー主の気分次第で空気税や水税を取り立てられ毎日が生きるのがやっとであるのを許せるのか!いや、許せない!諸君らは宇宙を切り開いた開拓の精神を持つ人類なのだ!ならば、立ち上がるのは今であろう。このままでは搾取の搾取が続き、生きれない家畜農場に入れられることになる!地球選民主義からの脱出をすべきである!我々は地球連邦と戦争はしない!地球連邦市民としてあるべき姿に戻すだけの反地球連邦政府運動である。では諸君らの良心を願ってユニバース!」
ジーク・ジオンではなく、ユニバースと叫ぶことにより、宇宙世紀の中ではリベラル議員として知られたギレン・ザビ。
地球連邦議会はそれを許しはしなかった。約四年後に事件が起こる。0083年、サイド3に共鳴したサイド1、サイド4、サイド5に対して地球連邦軍はルウムにおける決戦に繰り出した。世に言うルウム騒乱である。
マゼランの中で嫌な役目に着かされたとティアンム提督は茶を飲む。お目付け役のグリーン・ワイアット特務中将監査役も茶飲む。彼から借りたガディ・キンゼー大佐だけが救いであった。そして、レビル派閥からはバスク・オム中佐が来ている。
全員がつかれた顔をしている。それはそうであり、サイド3協力者がいつゲリラ攻撃を仕掛けてくるかわからないとろくに寄港もしてないのだ。特にジャマイカンやリードと呼ばれる余り実経験が少ない文官上がりの艦長には堪えているようだった。
「ルウムでこいつのお披露目か。」
マゼラン級とは名前がついているが初期のマゼラン級とは別物でマゼラン級改であり、その名前はバーミンガムと呼ばれ、示威行為の為、この艦隊は全て白塗りに塗装され、ホワイトフリートと呼ばれていた。サイド2とサイド6を根拠地としたホワイトフリートがいたからこそ、サイド2とサイド6の離脱を防げたのだ。そして何より、ホワイトフリートの恐ろしさはメガ粒子砲によるアウトレンジ戦法、マゼラン級改バーミンガム級と言われる旗艦を始め、初期型マゼラン32隻、サラミス級が120隻とアンティータム級正規空母も12隻引き連れてきている。負けはないだろうが宇宙移民に口では勝てないから暴力で黙らせるやり方は植民地支配と訴えるサイド3に力を与えてしまうのではなかろうか?
ルウム宙域に着いた途端に計器がおかしくなり、艦隊行動は麻痺し、そして、艦内に聞いたことがある声が響く、これは‥‥。
「初代大統領!?」
リカルド・マーセナスがラプラスの憲章などを読み上げて、その憲章の中身をサイド3協力者が世界同時電波ジャックをして流し、ルウムに地球連邦艦隊が武装してやってきたのを非難した。一部の艦艇は動きを止めたがルウム側から大量の船影が現れた途端に、艦隊の統率が崩れ去った。
「な!何をしている!バカをやめさせろ!」
ワイアットが叫ぶが無駄だ。ジャマイカンやリードを始めとするナイーブな艦長らは敵と捉えてメガ粒子砲を放ってしまった。それはこの旗艦のカメラならわかる。それは地球連邦軍へのウェルカムと書かれたバルーンだ。そして、メガ粒子砲はその勢いを失わずにコロニーへと突き刺さり、その映像が地球圏に放送された。一夜にしてホワイトフリートは地球連邦軍の持ってて嬉しい自慢のおもちゃから虐殺者へと変貌した。
「ワイアット監査役、もう無駄です。我々が戦争の引き金を引いたんだ。ルウムを占領しましょう。手ぶらで終わらせてくれるほどサイド3は甘くはない。」
直様、立て直してルウムを占領したはいいものの世論は地球連邦政府による蛮行と激しく非難が続き、月面では宇宙移民人権運動と称し、ブレックス・フォーラ大佐を始めとする月面艦隊が離反をしたとニュースが流れた。そして、アフリカ大陸とインド大陸でも激しいデモ活動が行われ、それを取り締まる組織としてティターンズが即時に結成され、ジャミトフ・ハイマン少将が就任をして物議を醸した。
一方で、ホワイトフリートの蛮行により正当性を得たサイド3は地球連邦の政府としてのあり方を信じるとして非武装宣言を行い、サイド3にはリカルド・マーセナスの銅像を象徴として建設をし、それらにより帝国主義の終焉を告げるとしたギレン・ザビの高潔さ、清廉さに共鳴した各サイドの有力者が非暴力、不服従を選択し、地球連邦への税金の供給を止め、その資金でサイドのコロニーを修繕すると言う前代未聞の脱税事件が起きてしまったのだ。
徴税のために地球連邦軍はなくなく、サイドに61式戦車を満載したコロンブス級を多数派遣する羽目になり、61式戦車が少なくなった地上のロシア、アジアで大規模なデモ活動が起こり、地球連邦議会は塩と穀物を専売と禁酒令をする形で彼らを制圧しようとしたのだが、ルオ商会などが塩や穀物の密売を行い、富を得て、地球連邦議会議員を抱き込み、密売カルテルが形成され、地球連邦の威信が下がるばかりであり、疲弊した地球連邦軍はルナツー艦隊を反乱を起こした月面艦隊の制圧に向けた。
率いる、ルナツー艦隊は月面の近くで決戦を行うが、彼らに同情的なパオロ・カシアス少将は月面の宙域とその外側で突入と離脱を繰り返すモグラたたきのモグラのような船体運動を採り、それに対するブレックスも同じ動きをした為、ダンス戦役とも揶揄される茶番を行ってしまった。
ギレン・ザビはそれをモニターで見てニヤリと笑みをこぼす。
「ラプラス憲章は役に立ったな。」
シャンチーと囲碁、将棋、チェス、ドラフツ、リバーシを見ずに背中側に置いて、戦うギレンは満足であった。自分の非凡性、天才さを自らの手で証明したのだ。最良のタイミングで地球連邦にダメージを与えたのだから。
「フッ、宇宙移民が選挙権を持ってみろ。私が首相に選ばれる。それを認めずにサイドによるコロニー連合国家が出来ても私が首相の座に座る。詰みだよ。」
宇宙世紀を宇宙移民の力により、地球連邦の本部を月に移行させる。これこそが天才のみが作り上げられる行為なのだ。
「軍備に割く予算を全て内政に注ぎ込んだかいがある。」
劇的なまでに内政は良くなり、農業改革・工業改革が進み、地球に頼らない経済活動を形成し、水と酸素の生成を自活出来るようにしたのだ。
「勝ったな。」
後ろにあるすべての盤面がギレン・ザビの勝利を示していた。
ホワイトフリートはルウム占領の治安維持活動に終始して、動けず、月側の戦線は膠着、ソロモンから出たサイド連合の輸送艦が大量に出発をした。
彼らは地球の上空で電波を送りすべてがリカルド・マーセナスの発言であり、ラプラス憲章のリピートであった。リカルド・マーセナスは地球派の議員により暗殺されたとし、地球派の不穏さを訴えて市民たちは説明を求めた。しかし、返ってきたのはティターンズによる暴徒鎮圧であり、人の道に背いたと陸上部隊の多くに戦慄が走り、地方支部からの中立宣言が出る中でついに、地球連邦首相は非常事態宣言を表明した。
表明された非常事態宣言は多くの人間の動きを拘束し、デモ団体などは地下に潜り、地上民による地上民の階級闘争が巻き起こる。
満足する中でジオン共和国首相となったギレン・ザビは引退を表明し、車に乗りこむ。
「我々の勝ちだな。」
ギレン・ザビの呟きに運転手は笑う。
「そうですね。私の勝ちです。」
あのラプラス憲章の原版を手に入れる前に弾圧したジオン派が運転手として潜り込み、ギレン・ザビと自らを車のエンジンをかけることで爆発で吹き飛ばした。
ギレン・ザビの死により秘匿されていた証拠たるラプラス憲章は地球連邦による暗殺の証拠となり、ジオン共和国は武装路線にひた走り、地球連邦が内乱を終えきる前にジオンによるギレンの死による報復により月の地球連邦、地球連邦、ティターンズ、ジオンによる戦争が続く中、サイアム・ビストはその自らの人生をおわりにした。
ラプラス憲章は今も人々を動かす呪詛となり戦争は続く。