問題児たちと(常識人の)幼馴染が異世界から来るそうですよ?   作:gobrin

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ちょっぴり長いかもです。


第九話 クソお坊ちゃんとのご対面だそうですよ?

コミュニティに戻った均たちは、耀が二、三日も休めば回復すると聞いて、呆れていた。

今は均、十六夜、黒ウサギが本拠の談話室で話をしている。

 

「すごいね、箱庭。あの傷が三日って………」

 

「ああ、流石は神様の箱庭だな」

 

「YES♪ただ出血が激しいので、増血を施しました。輸血となるとお金がかかるので」

 

「金がかからない方法があるならそっちでいいだろ。それで、例のゲームはどうなった?」

 

話の内容は仲間が景品に出されるギフトゲームのことだ。

均と十六夜が参加すると聞いて、黒ウサギは狂喜乱舞していたのだが、申請から戻ると泣きそうになっていた。

 

「ゲームが延期?」

 

「はい………申請に行った先で知りました。このまま中止の線もあるそうです」

 

「それ、白夜叉様に言ってどうにかならないの?」

 

「どうにもならないでしょう。巨額の買い手がついてしまったそうですから」

 

均と十六夜の顔が不機嫌なものへ変わる。

 

「チッ。所詮は売買組織か。″サウザンドアイズ″にプライドはねえのかよ」

 

「仕方がないですよ。″サウザンドアイズ″は群体コミュニティです。今回の主催は″サウザンドアイズ″の傘下コミュニティの幹部、″ペルセウス″。

双女神の看板に傷が付くことも気にならないほどのお金やギフトを得れば、ゲームの撤回くらいやるでしょう」

 

「………ねえ、それさ。さらに金額を上乗せして買い取るってのはダメなの?」

 

「「………は?」」

 

十六夜と黒ウサギがハモる。

 

「いやいや、何言ってんだよ、均。そんなのできるわけねえだろ」

 

「そうですよ。うちにはそんなお金はどこにも……」

 

「だから、お金があればできるんだよね?」

 

「それはまあ、はい……」

 

「ならいいや。ところで黒ウサギ、そのお仲間ってどんな人なの?」

 

「お、それは俺も気になるな」

 

「そうですね……一言でいえば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。思慮深い人で、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました」

 

それを聞いて、均はさらに目を細める。

 

「へえ。それって今窓の外に来た人?」

 

均の言葉に黒ウサギがバッ!と振り向く。

その視線の先――窓の外に金髪の少女が浮いていた。

 

「レ、レティシア様!?」

 

「様はよせ。今の私は他人に所有される身分だ。それにしても、よく私に気がついたな」

 

レティシアと呼ばれた少女は、均に興味深そうな視線を向ける。

 

「見たことない霊格が見えたのでもしかしたらと思って。金色が一瞬見えた気もしましたし。当たっていてよかったです」

 

「そうか。君が均か。白夜叉の話通りだな」

 

「え。白夜叉様、なにか言っていたんですか?」

 

「それは本人に聞くといい。それよりこんな場所からの入室ですまない。ジンには見つからずに黒ウサギと会いたかったんだ」

 

「そ、そうでしたか。あ、すぐにお茶を入れるので少々お待ちください!」

 

黒ウサギはとてもうれしそうに茶室に向かう。すぐにでも踊りだしそうだ。

十六夜がじっと見ているのに気付いたレティシアは、その行動に小首を傾げる。

 

「私の顔に何か付いているか?」

 

「別に。前評判通りの美人……いや、美少女だと思って。目の保養に観賞してた」

 

「確かにすごい可愛いよね」

 

「ふふ、なるほど。君が十六夜か。君もまた白夜叉の話通り歯に衣着せぬ男だな。

しかし観賞するなら黒ウサギも負けていないと思うのだが」

 

「あれは愛玩動物なんだから、観賞するより弄ってナンボだろ」

 

「僕も同感」

 

「ふむ。否定はしない」

 

「否定してください!」

 

紅茶のティーセットを持って来た黒ウサギが怒りながら言う。

ティーセットが乱暴に机に置かれ、ガチャリと音を立てた。

 

「レティシア様と比べられれば世の女性のほとんどが観賞価値のない女性でございます。黒ウサギだけが見劣るわけではありませんっ」

 

「いや、全く負けちゃいねえぜ?違う方向で美人なのは否定しねえよ。好みで言えば黒ウサギのほうが断然好みだからな」

 

「僕はレティシアさんのほうが好きですね」

 

「………。そ、そうですか」

 

「………照れるな」

 

男二人の不意打ちのストレートな物言いに、女性二人が顔を赤らめて照れる。

この空気を頑張って元の空気に戻したのは、黒ウサギだった。いつでも苦労人である。

 

「して、レティシア様!どのようなご用件ですか?」

 

「あ、ああ。用件というほどのものじゃない。新生″ノーネーム″がどの程度の力を持っているか見に来たんだ。

ジンには合わせる顔がないからな。お前達の仲間を傷つける結果になってしまった」

 

「あ、やっぱりレティシアさんが吸血鬼なんですね」

 

「なるほど、だから美人設定なのか」

 

「「え?」」

 

「ああ、気にしないで続きをどうぞ」

 

十六夜の発言に止まった二人に均が続きを促す。

二人が、均たちの世界の吸血鬼美形設定を知っているはずもない。

 

「実は黒ウサギ達が″ノーネーム″としてコミュニティの再建を掲げたと聞いた時、愚かなことを……と憤っていた。

だが、コミュニティを解散させるよう説得しに行ける準備が整った時に、聞き捨てならない話を聞いた。

神格級のギフト保持者がコミュニティに参加したと。しかも白夜叉相手に一歩も引かなかった者も一緒に参加したとな」

 

黒ウサギの視線が均達に移る。

ギフトで言えば均の″均等分配″も大概なのだが、均はまだ白夜叉にしか伝えていないためかそこまで騒ぎにはなっていない。

白夜叉が約束を守ってくれているようで、密かに安心した均だった。

 

「そこで私はその新人達がコミュニティを救えるだけの力を秘めているのか試したくなったのだが……残念ながらガルドでは当て馬にもならなかったよ。どうしたものか」

 

「……アンタは″ノーネーム″が魔王相手に戦えるのかが不安なんだろ?ならその身で、その力を試せばいいじゃねえか。――どうだ、元・魔王様?」

 

十六夜の発言に、少し驚いたようなレティシアはすぐに微笑んだ。

 

「ふふ、なるほど。実にわかりやすい。初めからそうしていればよかったか」

 

「レティシアさん?乗り気なところに悪いですけど、今の貴女じゃ十六夜に勝てませんよ?」

 

均はレティシアにそっと近づき、耳元で告げる。

 

「……なぜそう言いきれる?元とはいえ魔王で、鬼種の純血の私が人間相手に遅れを取ると?」

 

「うん。貴女の霊格が小さい。それが元々の貴女の実力なのかはわかりませんけど、そんな状態で勝てる程十六夜は弱くないです。それが貴女の本来の実力とは思えませんし。まぁ、どうしてもやるというなら止めはしません」

 

「………そうか。ではやろうか、十六夜」

 

均の言葉に一瞬の躊躇いを見せたが、レティシアはすぐに気を取り直して十六夜に話しかける。

 

「おう。ゲームのルールはどうする?」

 

「共に一撃ずつ打ち合い、受け合う。受け切った方が勝ちだ。どうだ?」

 

「いいね、シンプルイズベストって奴?」

 

そう言って二人は窓から中庭に飛び降りていった。

均も木から木へ飛び移りながら後を追う。十六夜と同じように窓から直接飛び降りたら骨折すること間違いないので、当然の措置だった。

 

(どーせ十六夜は全力でやるんだろうから、なにかあったら僕が助けなきゃ……はあ。めんどくさい)

 

「へえ?箱庭の吸血鬼は翼が生えてるのか?」

 

「ああ。翼で飛んでいるわけではないがな」

 

レティシアがギフトカードを取り出す。

それを見た黒ウサギは驚愕して声をあげる。

 

「レ、レティシア様!?それは」

 

「下がれ黒ウサギ。力試しとはいえ、コレが決闘であることに変わりはない」

 

レティシアがギフトを顕現させる。

 

「互いにランスを一打投擲する。受け手は止められねば敗北だ。悪いが先手は譲ってもらうぞ」

 

「好きにしな」

 

レティシアはランスを構えると、力を溜めて十六夜に向けて打ち出す。

 

「ハァア!!!」

 

空気を割るほどのスピードで迫るランスを前にして、十六夜は――

 

「カッ――しゃらくせえ!」

 

 

それを殴りつけた。

 

 

「「――は………?」」

 

レティシアと黒ウサギの声が重なる。

 

打ち返されたランスは砕けちり、無数の破片となってレティシアが避けられないスピードで向かっていく。

避けられないと悟り、ダメージを覚悟したレティシアに、衝撃が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こなかった。

それどころか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え?」

 

「大丈夫ですか、レティシアさん。怪我とかはないと思いますけど」

 

均にお姫様抱っこされていた。

 

「ぇ、ええ、え、っと……?」

 

均がレティシアを助けたようで、レティシアもそれを理解したからこそ、声が出なかった。

第三宇宙速度に匹敵する速度で迫るあの鉄の嵐をただの人間が躱せるわけがないのだ。

それも、自分を抱えたままなど。

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

「…………」

 

「おい、均。いつまでお姫様抱っこしてるつもりだ?」

 

「え?だってレティシアさんが全く降りようとする素振りを見せないから。落とすわけにもいかないし」

 

「え!?う、うわぁ!?す、すまない!」

 

レティシアが慌てて均の腕から転げ落ちた。

焦りすぎである。

 

「ああ、大丈夫ですよ。それより怪我はありませんか?」

 

「あ、ああ。心配いらない。助かった。でも、どうやって……?」

 

「十六夜が何をするかなんて予想つきますから。レティシアさんが槍を投げた直後に動いたんですよ」

 

「うそだ!仮に私が投げた直後に動いたとしても間に合うはずがない!

私は確かに打ち出した後の体勢で、迫り来る鉄の塊を見ている!

あそこから間に合うためには何か秘密が――」

 

レティシアが動揺もあって早口でまくしたてている最中、黒ウサギはレティシアに近づくとその手からギフトカードを引ったくった。

 

「く、黒ウサギ!何を!」

 

レティシアはすぐに抗議の声をあげるが、黒ウサギはそれには反応せずにレティシアのギフトカードを見つめて震えながら言った。

 

「……やっぱり、ギフトネームが変わってる。神格が残っていない」

 

「なんだよ。もしかして元・魔王様のギフトって吸血鬼のギフトしか残ってねえの?」

 

「……はい。武具は残してありますが自身に宿る恩恵は……」

 

「ハッ。どうりで歯ごたえが無いわけだ」

 

「レティシアさん、わかりました?勝てないって」

 

「……ああ、そうだ、な」

 

「さっきの耳打ちはそのことを言ってたのですか……。それにしても、どうしてこんなことに……!」

 

その問いに対し、レティシアは口を開き、閉じることを繰り返した。

 

「まあ、あれだ。なんか話すなら中に戻ろうぜ」

 

「そう、ですね……」

 

そのとき、遠くから褐色の光が射し込んだ。

いち早く気がついたのは、レティシア。

 

「あれは、ゴーゴンの威光!?まずい、見つかった!」

 

レティシアは三人を庇うために前に出る。

均と十六夜は咄嗟に構えた。

黒ウサギが光を見て、驚愕の声をあげる。

 

「ゴーゴンの首を掲げた旗印……!?だ、駄目です!避けてくださいレティシア様!」

 

 

黒ウサギの叫びも虚しく、レティシアに光が届く―――

 

 

寸前で、均が光を蹴りつけた。

ついでにレティシアを守りやすいように抱きかかえる余裕も見せる。

 

「「「……は?」」」

 

均以外の三人の声が揃う。

光が来た方角からも光を撃ったと思われる騎士風の男達が押し寄せ、慌てる。

 

「ど、どういうことだ!?吸血鬼が石化してないぞ!?」

 

「わ、わからん!仕方ない、もう一度だ!」

 

「例の″ノーネーム″もいるようだが、どうする!?」

 

「邪魔するようなら構わん、斬り捨てろ!」

 

「吸血鬼を抱いてる奴は!?」

 

「まとめて石化させろ!」

 

それらの発言で十六夜が普段の調子を取り戻した。

 

「まいったな、生まれて初めておまけに扱われたぜ。手を叩いて喜べばいいのか、怒りに任せて叩き潰せばいいのか、どっちだ?」

 

「そ、そんなことより今は均さんを!」

 

「そこの吸血鬼を持ってる奴!逆らわずに吸血鬼を渡せば貴様に手荒な真似はしない!」

 

「そ、そうだ均!私のことはいい!放すんだ!」

 

騎士風の連中の先頭にいる男とレティシアから次々に声をかけられるが、均は頷かない。

というより、そんなことそっちのけで内心とても感心していた。

 

(すごいな、このクリアブーツ。本当に恩恵を打ち消せるのか。手応え的に、限界はありそうだけど……)

 

ゴーゴンの威光という単語、レティシアの行動から石化に関わる攻撃が行われると推測し、行動し始めたのはよかった。

しかし、どうにかするための手段が白夜叉が譲ってくれたクリアブーツしかなく、石化するのも覚悟して光線を蹴りつけたのだ。

ぶっちゃけ半信半疑だった。白夜叉とその友人に感謝だ。これは、とても使える。

 

「遠慮します。ところで貴方達に相談があるんですけど」

 

「ハッ、なにが相談だ!石化のギフトを準備しろ!準備できしだい――」

 

ペルセウスのメンバーの聞き耳を持たない態度を、均の声が遮る。

 

「―――僕がレティシアを買い取ります」

 

「―――なに?」

 

均の発言に場が静まる。

 

「僕が、レティシアを、買い取る、と言いました。確かレティシアに買い手が付いたからギフトゲームが中止になったんですよね?どうせ見知らぬ他人に取られるくらいなら、僕の物にします」

 

「……クッ、クハハハハ!!″ノーネーム″などにそんな金があるわけがないだろう!寝言は寝て言うんだな!」

 

「″ノーネーム″にじゃない。″僕″にその金があるんです。貴方達のリーダーに会わせてくれませんか?」

 

均はペルセウスのメンバーの嘲笑をにこやかに流し、静かに笑って返す。

すさまじい怒気を放ちながら。

そのただならぬ気配にペルセウスのメンバーがたじろぐ。

 

「……君らのリーダーは、今どこにいる?まあ、予想はつくけどね。大方、白夜叉様のところにいるんだろう」

 

ペルセウスのメンバーに動揺が走る。

リーダーの場所を完璧に当てられたからだ。

 

均としては、その予想を立てることは難しくはなかった。

レティシアは、現在″サウザンドアイズ″の所有物だ。その所有物が、逃げ出してくるなど容易なことではないだろう。協力者がいるはずだ。そして、″ノーネーム″とレティシアのために協力してくれそうな者と言えば………。

 

ペルセウスのリーダーが余程の間抜けではない限り、白夜叉のところでレティシア捕獲の報告を待っているに違いない。

 

「当たりか。十六夜、黒ウサギ。他のみんなを呼んで来て。白夜叉様のところに行くよ」

 

「お?おうわかった。ちょっと待ってろ」

 

「え?お、お待ちください十六夜さん!」

 

その一言で全てを理解し本拠に戻る十六夜と、それを追う黒ウサギ。

 

「じゃあ、僕は直接交渉に行きますので。そのときにレティシアも返しますし、貴方達はもう帰って大丈夫ですよ」

 

「そ、そんなことできるわけがないだろう!馬鹿なことを抜か――」

 

「か・え・れ」

 

「だ、だま――」

 

「……帰れと言っているのが聞こえませんか?では、そんな耳は要りませんね?ついでに、命もまとめてここに置いていきますか?貴方達百人程度なら、殺すことは簡単ですが」

 

ハッタリか事実か。

均が笑顔で平然と宣った内容に、ペルセウスのリーダー格の男が怒りに肩を震わせる。

 

「わ、我々を愚弄するのもいい加減にしろ!石化のギフト、撃て!」

 

光が飛んでくる。

均は宣言してくれるなんて優しいなぁと思いながら、光を蹴り返した。

 

「「「なっ!?」」」

 

「……今の僕に石化のギフトは効きません。貴方達の実力ならレティシアを抱きかかえたままで十分対処できます。だから、か・え・れ」

 

「くっ……」

 

「それとも、やりますか?貴方達から吹っかけてくることになりますから正当防衛ですけど」

 

「そ、そうか!証拠がなければ正当防衛にはならない!後で口裏を合わせればいい!お前ら、かかれ!」

 

それだ!と言わんばかりに顔を輝かせるペルセウスのメンバー。

 

「なっ!や、やめろ!」

 

レティシアが均を庇うために声をあげる。

だが、そのことに触れたのが均だという事実を忘れてはいけない。

 

「会話は録音してますけどね。それでもいいならどうぞ?」

 

均の言葉にペルセウスの面々が止まる。

自分で言っておいて、対応するための準備をしていないわけがない。

 

「……はぁ。そんなことで躊躇うくらいなら無駄に頑張ろうとしないでよ。ほら、帰って」

 

ペルセウスのメンバーは悔しそうにしてその場を立ち去った。

だが――。

均は怜悧な殺気を庭の一画に放つ。

 

「おい、そこに隠れてる奴。帰れよ。ふざけたことしてると本当に殺すよ?」

 

「チッ!」

 

「な、あれは不可視のギフト!?」

 

不可視のギフトで姿を消していた者がいたのだ。

均は霊格が見えるのでバレバレだったが。

 

「はあ、やっと全員いなくなった」

 

「均、よかったのか……?私なんかのために……。そ、それよりそんな大金をどこから……?」

 

「え?ああ、大丈夫だよ。レティシアは仲間だったんだし。それにさっきも言ったけど、こんな可愛い娘を他人に取られるくらいなら僕が買い取るよ。そうすればコミュニティにも貢献させられるでしょ?お金は心配しなくていいよ。諸事情であるから」

 

「………」

 

均にさらっと可愛いと言われたレティシアは赤面して照れる。

そこで、十六夜達が飛鳥を連れて戻って来た。

 

「この人は?」

 

「昔の仲間の元・魔王様」

 

「ま、話は道中でね。じゃあ、行こうか」

 

 

 

 

 

″サウザンドアイズ″の支店に着いた均達は店員に中に通された。

白夜叉と、″ペルセウス″のリーダーのルイオスという者が待っているという。

″ペルセウス″のリーダーは″余程の間抜け″ではなかったらしい。

 

「うわお、ウサギじゃん!うわー実物初めて見た!ミニスカにガーターソックスって随分エロいな!ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」

 

ぺらぺらとまくしたて黒ウサギの脚をねぶるように見るルイオスに、嫌悪感を感じ脚を両手で隠す黒ウサギ。

その黒ウサギの前に出た均がレティシアを自分の横に立たせて切り出す。

 

「貴方がルイオスさん?貴方のところの商品であるレティシアを連れて来たよ」

 

十六夜とルイオス以外のメンツは、均が敬語じゃないことに違和感を覚える。

そして十六夜が言っていたことを思い出した。

 

――均は敬語をつける価値もないと思った相手には最初から砕けた言葉で話す――

 

ルイオスの態度を見て、納得したメンバーだった。

 

「ん?ああ、どうも。こっち持って来て」

 

「うん。でもその前に貴方に言いたいことがあるんだ」

 

「なに?早くしてよ」

 

「僕にレティシアを売ってくれ」

 

「――はい?」

 

ルイオスが目を困惑の色に染めて訊き返す。

 

「だから、レティシアを売ってくれって言ったんだ」

 

「なに言ってんのお前?ソレにはもう買い手が――」

 

「その買い手以上の額を出せばいいよね?」

 

「え?本当になに言ってんの?頭大丈夫?お前達″ノーネーム″にそんな大金あるわけ――」

 

「……なんでこの話聞く人間は全員、コミュニティが買うと思い込むわけ?僕が買うって言ってるよね。それで?その買い手はいくら出したのさ」

 

「――これぐらいだけど」

 

ルイオスが契約書の金額の欄のみを見せる。

それをチラリと一瞥した均は、

 

「え?そんなものなの?それならその倍は余裕で出せるけど」

 

などと言い切った。

 

「―――は?」

 

「信じられないなら見る?」

 

「で、でも、サウザンドアイズで買物をするならコミュニティが発行してる硬貨じゃないと――」

 

「疑り深いなあ。ほら」

 

均はおもむろにギフトカードを取り出すと、金を顕現させる。

もの凄い枚数の硬貨が床に散らばった。

 

「はぁ!?」

 

ルイオスが急いで手に取って確認する。

確かにそれはサウザンドアイズが発行している硬貨だった。

ルイオスが確認したのを見届け、均は全てギフトカードに収納する。

 

「僕はこれで、レティシアを――正確に言うとレティシアの権利を買い取りたい。どう?」

 

「──権利?権利なんて買い取ってどうするのさ」

 

レティシア本人ではなくレティシアの権利という妙な言い方をした均を不審に思うルイオス。

 

「それで再びレティシアをギフトゲームの賞品にしてもらおうと思ってね。やっぱりちゃんとギフトゲームをしてほしいなーと思って――」

 

「断る」

 

「――え?」

 

聞き間違えたかと思い均は訊き直す。

 

「それならお前との商談は不成立だ。さっさと返せよ」

 

聞き間違いなどではなかったらしい。

この拒絶の言葉を受けて、均は即座に道中で話していた作戦に切り替える。

 

「へえ。こっちから金を払ってまで穏便に済ませようと思ったのに。なら仕方ない。白夜叉様、お話ししたいことが」

 

「うむ、なんだ?」

 

均はみんなと決めた、『レティシアが″ノーネーム″の敷地で暴れ、取り押さえるときにも様々な暴言を吐いた』という作り話を、さも本当のことのように語る。

 

「と、いうわけです。ご理解いただけましたか?」

 

「う、うむ。確かに受け取った。ヴァンパイアよ、相違ないか」

 

「……私はやっていない」

 

事実だ。それでもこういう場合は、口裏を合わせるものである。

だが、均はあえてこう言わせるようにした。

均は心の中でレティシアに再度謝りながら――道中ではもう何度も謝っている――半ば吐き捨てるように――もちろんこれも演技だ――レティシアの発言をぶった切る。

 

「やった奴はみんなやってないって言うものですよ」

 

均の底冷えするような声音に、白夜叉が少々たじろぐ。

 

「そ、そうか。では、謝罪を望むのであれば後日」

 

「いえ、それでは僕たちが受けた屈辱の割に合いません。双方のコミュニティの決闘によって決着をつけるべきかと思います。″サウザンドアイズ″にはその仲介をお願いしたくて参った次第です。″ペルセウス″が拒むようなら″主催者権限″の名の下に」

 

「いやだ」

 

唐突にルイオスが声をあげた。

 

「は?」

 

「決闘なんて冗談じゃない。それにそこの吸血鬼が暴れたっていう証拠はあるの?それに口裏を合わせているだけかもしれない」

 

「いやいや合ってない口裏合ってないから」

 

たまらず均はツッコむ。

 

「そもそもそいつが逃げ出した原因はお前達だろ?実は盗んだんじゃないの?」

 

その言葉に黒ウサギが反応し声を荒げる。

 

「な、なにを言いだすのですか!そんな証拠がどこに」

 

「まあいいけど。どうしても決闘したいならちゃんと調査しないとね。もっとも、調査されて一番困るのは別の人だろうけど」

 

「そ、それは……」

 

黒ウサギは言葉に詰まる。

今回のレティシア脱走を手助けしたのは間違いなく白夜叉だ。

白夜叉にはノーネームを支える上で世話になっている。

黒ウサギはこれ以上白夜叉に迷惑をかけたくなかった。

それゆえ二の句が継げなくなってしまったのだ。

 

「しっかし可哀想だよねーソイツも。箱庭から売り払われるだけじゃなく、恥知らずな仲間のせいでギフトまで魔王に譲り渡すことになっちゃったんだし」

 

黒ウサギは箱庭の外に出されるという発言に腹を立てた。

吸血鬼は、箱庭の中でないと陽の光を浴びることができない。

だが、それよりも動揺のほうが強かった。

ルイオスはそれを見逃さずに畳み掛ける。

 

「報われない奴だよ。″恩恵″は魂の一部だ。それを馬鹿で無能な仲間の無茶を止めるために捨てて、他人の所有物っていう屈辱を耐えてまで駆けつけたのに、その仲間はあっさり自分を見捨てた!

今ソイツはどんな気持ちなんだろうねえ!?」

 

レティシアは自分の力を失った理由を暴露され、唇を噛んでうつむく。黒ウサギ達には知られたくなかったのだろう。

黒ウサギはみるみる蒼白になっていった。

 

「そこでだ、黒ウサギさん。取引をしよう。吸血鬼を″ノーネーム″に戻してやる。代わりに、君は生涯僕に隷属するんだ」

 

その言葉に飛鳥は憤慨し、黒ウサギを連れて席を立とうとする。

が、黒ウサギは動こうとせず、その瞳は困惑に揺れていた。

それに気付いたルイオスは、厭らしい笑みを携えてまくしたてる。

 

「ほらほら、君は″月の兎″だろ?君達にとって自己犠牲って奴は本能だろ?ウサギは義理とか人情とか好きなんだろ?箱庭に招かれた理由が献身なら、安い喧嘩を安く買っちまうのが筋だよな!?ホラどうなんだ黒ウサ」

 

「『黙りなさい』!」 

 

飛鳥が言葉に力を込める。

 

「貴方は不快だわ。『頭を地に伏せてなさい』!」

 

ルイオスの身体が徐々に下がる。

だが、何が起きたのか理解したルイオスは強引に身体を起こし、言葉を紡ぐ。

 

「おい、おんな。そんなのが、つうじるのは――格下だけだ、馬鹿が!」

 

ルイオスは激昴し、ギフトカードから鎌を取り出し、飛鳥に向かって振り下ろす。

その鎌を、側で静観していた十六夜が止めた。

 

「な、なんだお前……!」

 

「十六夜様だよ色男。喧嘩なら利子付けても買うぜ?」

 

そう言って鎌を押し返そうとした十六夜と、未だに振り下ろされようとしているルイオスの鎌を、均が同時に抑えた。

そして白夜叉に声をかける。

 

「ねえ、白夜叉様……。アレ、やっちゃっていいですか?」

 

アレ、が何を指しているのか理解した白夜叉は、慌てて全員を止めにかかる。

均は結構キレていた。

 

「ならん、やめんか戯け共!話し合いで解決出来ぬなら門前に放り出すぞ!」

 

その言葉に一応は場が静まる。

 

「ねえ、ルイオスさん。黒ウサギの件だけど、こっちで話し合う時間をくれないかな?黒ウサギも今この場で即決、というのは難しいだろうし」

 

「ちょっと均君!」

 

均は飛鳥を無視する。

 

「オッケー。こっちは取引ギリギリの日程――一週間だけ待ってやるよ」

 

そしてその場はお開きとなった。

 

 

 

 

コミュニティへ帰る途中。

先に出ていった飛鳥と黒ウサギが大声を上げて喧嘩している。

均と十六夜が追いつくと、飛鳥が食ってかかってきた。

 

「均君!なぜあんなことを言ったの!」

 

「一つは黒ウサギに馬鹿なことをさせないように説得するため。もう一つはあの場を仕切りなおして時間を稼ぐため。あそこで話してても埒があかなかったから」

 

均は冷静に根拠を述べる。

飛鳥はぐうの音も出なかった。

 

「それで、飛鳥と黒ウサギの性格を考えればお互いの言い分は容易に想像出来るけど――これは黒ウサギの考えが間違ってると僕は思うな」

 

「な、なぜですか!」

 

「レティシアは″ノーネーム″の本拠に来た時覚悟を決めてたはずだよ。あの目は助けを求めてる目じゃなかった。まあ僕は石化は許せなくてつい助けちゃったけど」

 

「た、助けを求めないから助けないというのは詭弁でございます!」

 

「それはそうさ。でもレティシアがギフトのことを黙ってたのは黒ウサギに身代わりになってほしくないからだと思うな。理由が暴露されたときも黒ウサギに知られたのを悔しがっていたみたいだったから。十六夜はどう思う?」

 

「俺も同感だ。それとお嬢様も言い方が悪いな。もっと素直に気持ちを伝えろよ」

 

(あ、十六夜には会話の内容聞こえてたのね。やっぱすごいな、十六夜)

 

二人の言葉に黒ウサギが黙る。

飛鳥はわたわたしていた。

 

飛鳥と黒ウサギがひとまず仲直りしたところで、何はともあれジンや耀にも話さねばならないということで、四人は本拠に戻った。

 

 




ここに明記しておきます。

均はロリコンじゃありません!
断じて違います!
ただ、これからも色々やっていきます。
その結果ロリコン疑惑は何度もかかるはめになります。
それが彼の運命なのです。

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