問題児たちと(常識人の)幼馴染が異世界から来るそうですよ?   作:gobrin

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やっとここまできました。
時間がかかった……。

では、どうぞ!


第十話 ペルセウスと決闘だそうですよ?

あのルイオスとの嬉しくもない出会いから三日後。

 

ジンに謹慎処分を受けていた黒ウサギは外に降る雨を見て黄昏れていた。

あの後、本拠に帰ってきた後の説明で少々ヒートアップした黒ウサギ、飛鳥、耀の三人は謹慎ということになったのだ。

ちなみに均と十六夜は傍観に徹していた。

 

そんな中、黒ウサギの部屋の扉がノックされる。

 

「はーい、鍵もかかっていますし中に誰もいませんよー」

 

「……。入ってもいいということかしら?」

 

「そうじゃないかな?」

 

なんとも愉快な理屈である。

 

「あら、本当に鍵がかかってるわ」

 

「ホントだ。こじあける?」

 

「いっそ壊したらどうかしら?」

 

「そうだね」

 

「お二人とも、ちょっと待ってくださ――」

 

黒ウサギの制止虚しく、黒ウサギの部屋のドアはバキンッ!という音とともにただの壁と化した。

 

 

 

 

飛鳥達はコミュニティの子供達が作ったお菓子を持ってきていた。

あの騒ぎのあと、飛鳥達は少なからずギスギスしてしまっていたし、均と十六夜はどこかへ行ってしまっていた。

十六夜のみならず均にまで見捨てられたのかと、コミュニティのメンバー、とりわけ均によくしてもらっていた子供達は落胆した。

そんな状況の中、子供達が必死に考えたのがこれだ。

これで仲直りしてほしいという計らいらしい。

 

三人がしっかり仲直りをして、これからどうするべきか話し合っていたところに誰かの声が響いた。

 

「邪魔するぞ」

 

十六夜だった。ドガァン!という効果音を伴って、ドアを蹴破って部屋に入る。

 

「い、十六夜さ――」

 

黒ウサギが何か言いかけたところで、

 

「お邪魔しますね」

 

と、言葉遣いだけは丁寧な均が、傘をさしたまま窓を蹴り割って入ってきた。

最早やってることが賊以外の何者でもない。

 

「な、均さんも!貴方達今まで何処に、って破壊せずに入れないのでございますか貴方達は!?」

 

「だって鍵かかってたし」

 

と、十六夜。

 

「こっちからの方が近かったので」

 

と、均。

 

「あ、なるほど!じゃあ黒ウサギが持ってるドアノブは何なんですこのお馬鹿様!!!そして均さんもノックするとかあるでしょう!」

 

「ノックのつもりだったんだけど」

 

「もう手に負えません!!」

 

黒ウサギはキレてドアノブを十六夜に投げつける。

十六夜が持っていた風呂敷でそれを均の方に打ち返すと、均も似たような風呂敷でドアノブを外に打ち出した。

ココーン!と、妙に軽快な音がしたのが尚更腹立たしい。

 

「危ないなあ。何するんだよ十六夜」

 

「文句は黒ウサギに言ってくれ」

 

「何するんだよ黒ウサギ」

 

「誰のせいでこうなったと思ってるんですか!?」

 

「「「「黒ウサギ?」」」」

 

「そのくだりはもういいです!!」

 

四人で黒ウサギをからかってから、耀が尋ねる。

 

「それで、その風呂敷には何が入ってるの?」

 

「ゲームの戦利品。見るか?」

 

耀が十六夜の風呂敷を覗き込み、驚きに目を丸くする。

 

「………これ、どうしたの?」

 

「だから戦利品だって言ってるだろ」

 

「僕の方もだよ。飛鳥、見る?」

 

飛鳥は均の風呂敷を覗き込む。

少ししてそれが何なのか理解した飛鳥は小さく噴き出して、笑った。

先ほど黒ウサギが言っていた物ではないか。

 

「もしかして……貴方達、これを取りに行ってたの?」

 

「ああ。均と競争してたんだけどな。負けちまった」

 

「運悪く、十六夜が選んだ方が十六夜がそんなに得意じゃないゲームだったんだよ。これで十六夜に何か一つ命令できるんだ。やったね」

 

均は嬉しそうに笑う。それに対して十六夜は少し悔しそうだ。

 

「なるほど。でもねぇ均君、十六夜君。こういう面白いことを企むなら、次からは一声かける事。いい?」

 

「そりゃ悪かったな。次は一声かけるぜお嬢様」

 

二人は悪戯っ子のように笑う。

そして最後に均は黒ウサギに声をかける。

 

「これで準備はできた。後は黒ウサギがどうするかだよ」

 

十六夜から風呂敷を受け取って、二つとも黒ウサギに渡す。

風呂敷の中身をすでに察している黒ウサギは、声を震えさせながら均に尋ねる。

 

「……あの短時間で、本当に?」

 

「うん。まあ一番時間かかったのはどっちが短い時間で倒したかの確認だったけどね」

 

均は何でもないことのように微笑む。

だが、黒ウサギはこれらを手に入れるためのギフトゲームがどんなゲームかを知っている。そこまで楽ではなかったはずだと確信した。

 

「ありがとう……ございます。これで″ペルセウス″に戦いを挑めます」

 

「いいって。僕のは憂さ晴らしも兼ねてるから」

 

「………憂さ晴らし?」

 

「うん。倍額出してまで買い取るって言ってあげたのに断ったあのクサレお坊っちゃんに思い知らせてやりたくてね」

 

一瞬で均の柔らかい微笑みが怖い笑顔に変わる。

均の怒気にあてられて、黒ウサギは先ほどとは別の理由で涙が出そうになっていた。

 

その涙が溢れる前に拭き、黒ウサギはしっかりと宣言する。

 

「ペルセウスに宣戦布告します。我らが同士、レティシア様を救い出しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに三日後、均達はペルセウスの本拠で均達が集めた宝玉――ペルセウスが指定したこれをペルセウスに提出すると、伝承になぞらえたギフトゲームを挑める――をルイオスの前に突き出し、ギフトゲームを開催させた。

 

 

 

 

 

 

 

『ギフトゲーム名 ″FAIRYTALE in PERSEUS″

 

・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

         久遠 飛鳥

         春日部 耀

         平 均

・″ノーネーム″ゲームマスター ジン=ラッセル

・″ペルセウス″ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

・クリア条件 ホスト側のゲームマスターを打倒

・敗北条件  プレイヤー側のゲームマスターによる降伏。

       プレイヤー側のゲームマスターの失格。

       プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

・舞台詳細・ルール

 *ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

 *ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

 *プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない。

 *姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。

 *失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事はできる。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、″ノーネーム″はギフトゲームに参加します。

                                  ″ペルセウス″印』

 

 

ペルセウス本拠の扉に貼付けられている″契約書類″を見て、十六夜が呟いた。

 

「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろってことか?」

 

「なら伝承通りに寝ててくれればいいんだけどね。そこまで簡単じゃないよなあ」

 

均が望んでもいない希望的観測を口にする。

均はルイオスを直接倒したくてウズウズしているのだ。

 

「YES。伝承と違い、ハデスのギフトを持たない黒ウサギ達には綿密な作戦が必要です」

 

「これは――大きくわけて三つの役割分担が必要ね」

 

「うん。ジン君と一緒にゲームマスターを倒す役割。見えない敵を感知して撃退する役割。それと、失格覚悟で囮と露払いをする役割」

 

「春日部は鼻が利く。耳も眼もいい。不可視の敵は任せるぜ」

 

「黒ウサギは審判としてしかゲームに参加できません。ですからゲームマスターを倒す役割は、十六夜さんにお願いします」

 

「僕は全体のサポート兼十六夜の控えってところかな」

 

「あら、じゃあ私は囮と露払い役なのかしら?」

 

少し不満そうな飛鳥。

自分の力がルイオスに効かないことはわかっていても不満なものは不満なんだろう。

 

「悪いなお嬢様。俺も譲ってやりたいのは山々だけど、勝負は勝たなきゃ意味がない。あの野郎の相手はどう考えても俺が適してる」

 

「……ふん。いいわ。今回は譲ってあげる。負けたら承知しないから」

 

了解、というふうに肩を竦める十六夜。それに対して、黒ウサギは真面目な顔で懸念を言う。

 

「残念ですが、必ず勝てるとは限りません。油断しているうちに倒せねば、非常に厳しい戦いになると思います」

 

「……あの外道、そんなに強いの?」

 

「いえ、ルイオスさんご自身の力はさほど。問題は彼が所有するギフトです。黒ウサギの推測が外れていなければ、彼のギフトは――」

 

「「隷属させた元・魔王様」」

 

「そう隷属させた――って、え?」

 

「もしペルセウスの神話通りなら、ゴーゴンの生首がこの世界にあるはずがない。あれは戦神に献上されているはずだからな」

 

「なのにあのクズ共は石化のギフトを使ってる。――星座として招かれたのが箱庭の″ペルセウス″。てことはクサレお坊っちゃんの首にぶら下がっているのは、アルゴルの悪魔ってとこかな?」

 

均と十六夜の話が分からないようで、飛鳥と耀は首を傾げている。

それに対して、黒ウサギは戦慄していた。

 

「均さん、十六夜さん……まさか、箱庭の星々の秘密に……!?」

 

「うん。ちょっと前に十六夜と星を見てたことがあったんだけど、その時に推測して、アイツを見て確信したよ」

 

「その後手が空いた時に考えを固めたってところだな。白夜叉も機材は貸してくれたし、調べるのは楽だったぜ」

 

「で、十六夜。アルゴルの悪魔なんだけど、僕がリタイアしてなければやらせてくれない?どんなものか知りたくて。もちろん、不可視の奴らも相手にするから安心して」

 

「わかった。ていうか、オマエならそう言うと思ってたしな」

 

十六夜が不敵に笑う。

その様子を見ていた黒ウサギが少し口角をあげながら話しかける。

 

「均さんはなんとなくわかりますが……十六夜さんってば、意外に知能派でございます?」

 

「何を今さら。俺は生粋の知能派だぞ。黒ウサギの部屋の扉だって、ドアノブを回さずに開けられただろうが」

 

その言葉に、黒ウサギの頰がヒクついた。

 

「いや、ドアノブが付いてませんでしたから。扉だけでしたから」

 

「僕なんて手すら使わずに部屋に入れたしね」

 

「あれは不法侵入も同然です!」

 

「あはは。さ、十六夜。そこの扉開けちゃってよ。もちろんドアノブを使わずに」

 

「おう。任せとけ」

 

ヤハハ、と笑いながら十六夜が扉の前に立つ。

その様子を黒ウサギが冷ややかに見つめる。

 

「………。参考までに、方法をお聞きしても?」

 

「そんなもん、こうやって開けるに決まってんだろッ!」

 

十六夜が扉を蹴ってぶち破り、ペルセウスとのギフトゲームの火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥はしっかりと囮をやってくれてるみたいだね」

 

敵地のど真ん中にいるのにのんびりとした雰囲気の均。

耀が五感を使って不可視の敵の位置を探る。

 

「人が来る。隠れて」

 

三人が隠れた後、耀が近づいてきた不可視の敵をぶん殴って倒し、兜を奪う。

 

「これが不可視のギフトみたい」

 

「助かるよ。さっそくそれ貸してもらえる?」

 

「?うん。はい」

 

「じゃあやるね」

 

″模倣投影″を発動させる。それで均の持つ不可視のギフトが二つになった。

 

「できた。これはジンに渡しておくね。かぶってて」

 

均はコピー品の不可視のギフトをかぶって倒されたペルセウスのメンバーに近づき、″均等分配″を発動させた。

均の霊格が僅かながらに上がり、姿だけでなく気配も消えた。ただし匂いはまだあったようだ。

 

「わっ。ありがとうございます」

 

「お?いきなり均の気配が消えたな」

 

「匂いはある。元のより性能がよくなったみたい」

 

「元々僕の方が霊格が下回ってたからだね。ところで、僕と耀でもう一つギフトを手に入れてくるよ。耀の分もほしいけど、欲を言ってしくじったら意味がないからね」

 

「気にしなくていい」

 

「ごめんね。埋め合わせは必ずするから。黒ウサギが」

 

「わかった。期待してる。黒ウサギに」

 

そのとき、どこかから「なんでですか!」という謎の音声が聞こえてきた。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「うん」

 

耀と、不可視のギフトを使用中の均が飛び出す。二人は次々と敵をなぎ倒していく。

そんな中、均は耀に近づく不可視の敵を発見した。なぜか耀は気がついていない。

 

「耀!」

 

つい叫んでしまったが構わず敵を蹴り飛ばす。

その敵は壁に叩き付けられ、不可視のギフトを落とした。

 

「耀、無事?」

 

「え?あ、私、危なかった?」

 

「うん。本物を使ってる奴がいたみたいだね。あそこで伸びてる奴」

 

そう言って均が耀の顔を向けると、その方向に倒れている男がいた。ルイオスの側近だ。

レプリカと違い、本物は匂いも気配も隠せるようだ。

 

「よっと。このギフトはもらっていきますよ」

 

「待て……。お前、どうやって私の居場所を感知した?」

 

「僕の眼は特別製でして。気配がなくても存在していれば見えるみたいですね。耀の近くに何かがいると思って全力で蹴らせてもらいました」

 

「……そうか。見事。お前達にはルイオス様に挑む資格がある」

 

側近はそれだけ言うと、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十六夜にも不可視のギフトを渡し、三人は最奥に辿り着く。

そこは闘技場のような造りになっていた。

 

「ふん。ホントに使えない奴ら。今回の一件でまとめて粛清しないと」

 

(一番使えないのは君だろうに)

 

均は言葉に出さないで、そんなことを思っていた。言葉にしない理由は言ったら面倒くさそうだと思ったからである。

ルイオスはブーツから生やした羽を使って飛び、均達の前に降り立つ。

 

「ま、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。……あれ、この台詞を言うのってはじめてかも」

 

その発言に均は眉を顰め、使うつもりがなかった″恩恵″を使うことにした。

均は本気で集中し、ルイオスの意識と呼吸の合間を縫ってルイオスに肉薄して″均等分配″の力を解放した。

 

いくら親の七光りとはいえ、そこそこの霊格を持っていたルイオス。

その霊格を糧にして、均の霊格が増大する。

 

ルイオスは均を振り払う。

 

「なっ、お前、何をした!?」

 

自身の霊格が縮小したことにルイオスが驚愕を露にする。

 

「さてね。ほら、早くやろうよ」

 

「くっ……!」

 

ルイオスは空に飛び上がり、ギフトカードから炎の弓を取り出す。

 

「炎の弓?ペルセウスのギフトで戦うつもりはない、ということでしょうか?」

 

「当然。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま″ペルセウス″の敗北に繋がる。そこまでリスクを負う決闘でもないだろ?」

 

「余裕ぶってるけど、アイツ自身は雑魚になってるから気にしなくていいと思うよ」

 

その言葉にルイオスは激昴し、ギフトカードが強く光り輝いた。

それを受けて均と十六夜が構える。

 

「ゴミが、僕を侮辱したことを後悔しろ!目覚めろ――″アルゴールの魔王″!!」

 

「ra……Ra、GEEEEEEEEEYAAAAAAAaaaaaaaaaaaa!!!」

 

現れた女は体中に拘束具と捕縛用のベルトを巻いている。

女は両腕を拘束するベルトを引きちぎり、絶叫をあげ続ける。その声に黒ウサギが耳を塞ぐ。

そのとき異変が起こった。

 

「うわ、これ僕にはカバーできない!悪いけど十六夜、二人は任せた!」

 

「おう!避けろ、黒ウサギ!」

 

チラリと頭上を見た均は一瞬で判断を下し、ジンと黒ウサギを十六夜に任せる。

十六夜がジンと黒ウサギを助け出す。

頭上からは、石化した雲が降ってきていた。

″アルゴールの魔王″はこの世界の闘技場にいるメンバー以外の全てを石化させたのだ。

 

十六夜がジンに声をかける。

 

「下がってろよ御チビ。守ってやる余裕はなさそうだ」

 

「すみません……。本当に何も出来ず……」

 

「別にいいさ。それより、例の作戦は覚えているか?」

 

「目論見が外れちゃったよね。レティシアの力を借りて魔王に対抗する予定だったんでしょ?」

 

「………はい」

 

確かに元のレティシアの実力なら、魔王に対抗することもできたのだろう。

しかし、彼女は多くの魂を削っていたのだ。

 

「どうする?例の作戦は止めておくか?」

 

十六夜は真摯にジンに尋ねる。

しかしその言葉に、ジンは首を横に振った。

 

「均さん、十六夜さん。僕らにはまだ貴方達がいます。貴方達が本当に魔王に打ち勝てる人材だというのなら――この舞台でそれを証明してください」

 

「OK。よく見てな御チビ」

 

「わかった。直接倒せるかは微妙だけど、全力でやるよ」

 

――″均等分配″は使わずに――その言葉を、均は飲み込んだ。

 

「さ、それじゃ準備はいいかよゲームマスター」

 

「ん?三人でかかってこないのかい?後ろの子がリーダーなんだろ?」

 

「寝言は寝て言いなよ、クサレお坊っちゃん。君ごとき、うちのリーダーが手を出すまでもない」

 

均はお得意のさわやかな柔らかい笑顔を浮かべる。完全にルイオスを馬鹿にしていた。

 

「――はっ。名無し風情が、精々後悔するがいいッ!!」

 

ルイオスとアルゴールが叫び、臨戦態勢に入る。

 

「じゃ、約束通り、僕にアルゴールの相手をやらせてね」

 

「ああ、俺もやりたいけどな。譲ってやるよ」

 

「さんきゅ。お礼にルイオスをあげるよ」

 

「いらねえよ」

 

十六夜が苦笑いを返す。

その二人を狙ってルイオスが炎の矢を放つ。

それを十六夜がものともせず弾き返したのを見て、均はアルゴールの下へ向かう。

 

「さあやろうか、アルゴールッ!」

 

「GEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!」

 

アルゴールはまるでその声が聞こえたかのように今までで一番強い叫びを返し、両腕を振り下ろす。

だがそれは、白夜叉ほど洗練されたものでもなく、十六夜ほど速いわけでもなかった。

そんなものを均が躱せないはずはない。

 

「―――ほっと。じゃあ、少し寝ててね!」

 

躱すどころでは済まなかった。

均はアルゴールの横に回り込み、片腕に自分の手を添えて、相手の力を利用して地面に叩き付ける。

合気道の要領だ。

 

「いぃぃよぉぉっとぉぉ!!!」

 

地面に伏せたアルゴールの脳天に渾身の力で踵落しを食らわせる。

人の身で出来るかぎりの体術を極めた均の一撃は、地面を少し陥没させた。

十六夜が規格外すぎて印象が薄いが、十分に化け物だ。

 

だが、その程度の一撃では元・魔王を倒すことなど出来はしない。

 

「RaaaAAAAGYaaaaaaAAAAAA!!!!!」

 

延長戦になりそうな雰囲気が流れる。

だが、均は今の攻防で気分が高揚していた。

 

「すごいなあ!僕、この悪魔使役してみたい!――ねえ、黒ウサギ!!」

 

「え?な、なんですか?というか、集中してください!!」

 

「大丈夫!これくらいなら躱せるから!ところで、聞きたいことがあるんだけど!」

 

均の言葉の通り、本当に楽そうに躱していた。元とはいえ魔王を前にして、なんとも余裕である。

 

「もう!それで、なんでございますか!?」

 

ちなみに二人の位置が離れているので、大声での会話である。

 

「僕、コイツを隷属させたくなったんだけど、後で個別にギフトゲームを挑んでルイオスから奪えばいいのかな!?」

 

「はい、それで大丈――って、ええええっ!!?」

 

黒ウサギが驚愕の声をあげる。

それもそうだ。他人が隷属している魔王を自分も隷属させたいなどと言いだしたのだから。

だが、それを聞いて均は嬉々とした表情を浮かべる。

 

「やったね!ていうか、コイツ十分に力を発揮出来てないみたいだから、いずれ全力で暴れさせたいな!どーせクサレお坊っちゃんの力じゃアルゴールをコントロールしきれないんでしょ!?偉そうにしておいて所詮その程度かあ!!」

 

ルイオスに聞こえるように声を大にしてこれみよがしに言う。

均の狙い通りにルイオスは怒り、均を先に倒そうとする。その手にはいつの間にか炎の弓ではなくいつぞやの鎌を持っていた。

 

「黙れっ!名無しのゴミが、僕を侮辱するな!」

 

「ゴミにゴミなんて言われたくないね!」

 

アルゴールと同時に鎌で攻撃するルイオス。均を対象にした挟撃だ。

両方を難なく躱し、ルイオスに回し蹴りによる強烈な一撃を叩き込む。

ルイオスが血を吐きながら吹っ飛んだ。

ルイオスは苦しそうにしながらもアルゴールに命令する。

 

「クソっ、アルゴール!宮殿の悪魔化を許可する!奴らを殺せ!」

 

その命令が出た瞬間、白亜の宮殿が黒く染まり、床から怪物が湧き出る。

 

「ああ、そういえばゴーゴンにはそんなのもあったな」

 

「うわぁ……これはめんどくさそうだな……」

 

「この宮殿はアルゴールの力で生まれた新たな怪物だ!貴様らの相手は魔王とその宮殿の怪物そのものだ!このギフトゲームの舞台に――」

 

ヒートアップするルイオスの言葉を均が遮る。

 

「なら、この宮殿ごと壊せばいいんだね?僕には無理だから十六夜よろしく。僕はその辺の怪物殲滅してるよ」

 

「おう。わかった」

 

さらりとすごいことを言う均と十六夜。

瞬時に嫌な予感が体中を駆け巡ったジンと黒ウサギが反射で体を寄せ合い、危険に備える。

そして、十六夜が実行に移した。

 

魔宮となったものを殴って、四階部分を粉々に打ち砕く。

すでに生まれていた怪物達は、崩れゆく足場をものともせずに跳び回る均によって細切れにされていた。

その手にはホワイトダガーが握られている。

途中から十六夜も怪物の殲滅に加わり、二人して崩れる足場から足場に跳び移って怪物たちに何もさせなかった。

 

 

 

 

数秒後。悪魔化によって生まれた怪物たちの姿はなくなっていた。

 

「おい、ゲームマスター。これで終わりってことはないよな?」

 

十六夜が少し退屈そうに声を出す。

十六夜を潰さなければ万に一つも勝ち目がないと悟ったルイオスは、アルゴールに静かに指示を出す。

 

「――もういい。終わらせろ、アルゴール」

 

アルゴールの石化のギフトを解放する。

 

 

その石化の光を十六夜は――――踏みつぶした。

 

「「「は?」」」

 

ジン、黒ウサギ、ルイオスの声が重なる。

 

「こらこら、ダメじゃないか。そんなつまらないことをしたら」

 

平時のような穏やかな声音で、均がアルゴールに向けてダガーを振るう。

均の攻撃は、少しずつだが確実にアルゴールを傷つけていた。

 

 

その光景に呆然としていたルイオスだが、何とか気を持ち直し、叫ぶ。

 

「仕方ない、アルゴォール!そこのゴミだけでも石化させろ!」

 

再度ルイオスの指示を受け、今度は均に石化の力が襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

が、均も光を蹴りつけて、何事もなかったかのようにアルゴールへの攻撃を続ける。

 

「僕にもギフトは効かないよー」

 

均はのんびりとした口調でルイオスにさらなる絶望を与える。

 

 

 

「さあ、続けようぜゲームマスター。″星霊″の力はそんなもんじゃないだろ?」

 

「いや、十六夜。コイツはこれで打ち止めだよ」

 

「なに?」

 

均はアルゴールを切り刻み続けながら十六夜と会話する。

 

「ルイオスが未熟なんだよ。アルゴールが拘束具に繋がれてたのがその証拠。本来の力を発揮できるならまだまだ終わらないだろうけど、この状態だとね」

 

ルイオスは憤怒と憎悪を瞳に宿して均を睨みつける。

が、唇を噛んで何も言い返さない。否、言い返せない。均の言葉が事実だからだ。

 

「ハッ。所詮は七光りと元・魔王様。長所が破られれば打つ手なしってか」

 

勝敗は誰の眼にも明らかだった。黒ウサギが宣言しようとした、その時――――。

 

均は晴れ晴れとした、十六夜はこの上なく凶悪な笑みでルイオスを追いつめる。

 

 

 

「ああ、そうだ。もしこのままゲームで負けたら……お前達の旗印。どうなるかわかっているんだろうな?」

 

「な、何?」

 

「レティシアを取り戻すのは後でも出来るでしょ?まずは旗印を盾にしてもう一度ゲームを申し込もう。――そうだね。次は名前をもらおうかな」

 

ルイオスの顔が蒼白になる。そしてやっと周りの惨状に気がついたようだ。

仲間は石化し、宮殿は崩壊。アルゴールは切り刻まれてズタズタ。自分もかなりのダメージを負っている。

 

「その二つを手に入れた後″ペルセウス″の名も、旗印も徹底して貶め続ける。お前らがコミュニティの存続そのものが出来ないほど徹底的に、だ。……まあ、それでも縋っちまうのがコミュニティってものらしいけど?だからこそ貶めがいがあるってもんだよな?」

 

「や、やめろ……」

 

ルイオスは、自分たちのコミュニティが崩壊の危機に瀕していると理解した。

 

 

そこに、悪魔の提案が投げかけられる。

 

「そこで、僕からの提案。僕は今の僕たちの勝利をなかったことにする権利をかける。君はアルゴールをかけて、僕と勝負しろ。嫌ならいいよ?十六夜が言ったことをするだけだし」

 

「ちょ、均さん!?何を言っているのですか!?」

 

「うんとね。実は僕、まだ怒ってるんだよ。僕を馬鹿にするのはいいけど、レティシアの気持ちを踏みにじる発言をしたコイツを許す気はないんだ。コミュニティの仲間まで下に見てるしさ。ちょうどコイツをボコボコにできるチャンスだし、コイツは逃げられない。アルゴールもほしいし。なら、餌に食いつくしかない状況で殴りたいなって。こういうのは一回思い知らせた方がいいと思ったんだけど、ダメかな?」

 

「え、ええっと……」

 

黒ウサギは困惑する。

ジンの方をチラリと見るが、ジンは何も言わなかった。

 

「いいじゃねえか、やらせてやれよ。均がここまで我が儘を言うなんて中々ねえぞ?」

 

「…………いいでしょう。均さんの行動を許可します」

 

「ジン坊っちゃん!?」

 

黒ウサギが驚愕の悲鳴を上げる。本当に許可を出すとは思わなかったのだろう。

 

「ありがとう、十六夜、ジン。さあ、どうするルイオス?あ、ちなみにアルゴールを使うのは禁止ね」

 

「くっ、くっそぉぉぉおおお!!!やってやるよ、やればいいんだろぉ!?」

 

「そ。じゃあやろうか」

 

「うぉぉぉおおおお!!!」

 

ルイオスが絶叫しながら均に殴りかかる。

均も拳を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別口で開催されたギフトゲームは、一瞬で均の勝利に終わった。

それに伴い、ギフトゲームは″ノーネーム″の勝利で幕を閉じた。

 

 




最後の均の我が儘は、確実に勝てる勝負で自分の願いが全て叶えられる状況だったため言いだしたものです。

本来の彼はここまで我が儘ではないです。多分。
もはや常識人の皮は剥がれていますが、ここまでではないはずです。恐らく。
猫被りが酷いですが、根は真面目なはずです。


……自信がなくなってきましたが。
何はともあれ、ペルセウスとの戦いは決着です。

感想、質問その他、お待ちしております。
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