問題児たちと(常識人の)幼馴染が異世界から来るそうですよ? 作:gobrin
″六本傷″のカフェテラスを陣取っていた均達は、黒ウサギの言葉に耳を疑った。
十六夜が呟くように尋ねた。
「ギフトゲームが……全面禁止?この一帯で?」
「YES!これはちょっとした緊急事態でございますよ!」
黒ウサギはちょっとした、と言ったが、そんな甘いものではない。
「どういうことだ?ギフトゲームが開催されないってことは、流通が止まるのと変わらないだろ?金銭でのやり取りがあるとはいえ、メインはギフトゲームによるもののはずだ」
飛鳥が緊張した面持ちで黒ウサギに問う。
「もしかして……魔王が現れたの?」
飛鳥のその問いに、黒ウサギが慌てて首を振る。
耀と均が思うところを述べる。
「街はそんな雰囲気じゃない。怖がってるというよりも、困ってる感じ?」
「そうだね。昔の飢饉の時とかってこんな様子だったのかな?って感じ」
「YES!魔王ほどの脅威ではありませんが、困った事態になったのは事実です。実は箱庭の南側から東側に、干ばつがやってくるそうなのですよ」
黒ウサギの発言に十六夜、飛鳥、耀の三人はそろって、はあ?と声をあげた。
均は、何かを思案するように静かにしている。
代表して飛鳥が眉をひそめながらも尋ねる。
「………どういうことなの?まさか干ばつに手足が生えて向かってくるとでも?」
「YES!正確には手足が一本ずつ生えていたそうですけども」
「なにそれ奇抜」
飛鳥と耀は何が何だかわからないという風に首を傾げる。
そんな中、十六夜は何かに気づいたような反応をし、均は合点がいったというように頷いていた。
「なるほど、やっぱりね。″魃″が現れたってことでいいんだよね?」
「腕一本に足一本の干ばつ……。やっぱりそういうことなのか?」
「多分ね。黒ウサギ、当たってる?」
「YES!流石ですね均さん、十六夜さん。正確には、遠い系譜の怪鳥ですけど」
″魃″とは、中国神話に登場する干ばつを呼ぶ神獣である。
黄帝の血筋である″魃″は、生まれつき陽の光を呼び込み、雨を消し去る力を持っていたという。
魔王″蚩尤″との決戦のときにその力を使った″魃″は、穢れをあびて天に還れなくなる。
だが、いるだけで干ばつを呼ぶ″魃″を地上に放置しておくわけにもいかず、黄帝は迷った末に箱庭で保護することにしたのだ。
そして長い月日が流れてもなお天に還ることを望み続けた″魃″の末裔は、姿を怪鳥に変え、箱庭を彷徨っているのだという。
話を聞き終えた均と十六夜は、それぞれの感想を残した。
「うーん、ちょっと可哀想な末路だね……」
「……ギリシャ神話の″ペルセウス″。仏話の″月の兎″。そして中国神話の″魃″ときたか。流石は神様の箱庭だぜ。もう何でもありだな」
均と十六夜で感想が違いすぎる。
個性が如実に表れていた。
「それはNOですよ十六夜さん。″月の兎″も″ペルセウス″も、外界での功績が認められたからこそ箱庭に招かれているのです。
″恩恵″は読んで字のごとく、神仏から与えられた恩恵!″伝承がある″ということは、″功績がある″ということなのです!」
ムンッ、と力を入れて力説する黒ウサギ。
「まあ、中には″魃″のような理由で箱庭に招かれる者もおります。穢れによって神格をなくし、神気も衰え、知性らしいものも残ってはおりません。残っているのは、何世代も受け継ぐ故郷への想いだけでございましょう……」
「なんだ、神気が衰えちゃってるのか………。利用できるのかと思ったんだけどな………」
明らかに自分の力を強化することを企んでる均。
″魃″を
少々怖い笑みが浮かんでいた。
黒ウサギはそれを見ないように全力で均から視線を逸らしながら、明るく言った。
「なので今二一〇五三八〇外門に住むコミュニティは、これから訪れる干ばつに備えて大忙しということなのでございますよ!これは我々″ノーネーム″にとっては備蓄を増やす大チャンスでございます!」
均達の四人は察したように、均は苦笑いを浮かべ、残りの三人はニヤリと笑って言った。
「なるほどな。俺達には″水樹″がある。しかも均の持ってるコピーも合わせて二つもだ。他の連中がどれくらいの水源を確保しているかは知らないが…………この様子を見る限り、多くの蓄えがあるとは思えないな」
「そうね。これを機に、他のコミュニティと契約して定期収入にするのも悪くないわ」
「うん。あの宝物庫もいつまでもガラガラだと寂しいし」
「そうだね。ちょっとセコい手だけど」
「そうですね。本当はこんなヤラシイ手段など使わず、堂々と契約者を募りたいのですが……。我々″ノーネーム″は、組織の″名″も″旗印″も奪われている身分。広報しようにもできない状態です。が、干ばつ期に水源があることをアピールできれば希望者もあらわれるはず!ということで皆さんには″魃″の現在の状況を確認してきてほしいのです」
「ああ、暇だしいいんじゃない?」
「幻獣の情報収集なら春日部の得意分野だな。頼んだぜ」
「そうね。頑張って」
「うん。確認するけど、腕一本、足一本の怪鳥でいいんだよね?」
「YES!″左右の足の大きさが違う怪鳥″を探していただくとよろしいかと。あと、常に高温を発生しているそうですので、不自然に陽炎が発生している場所を探してもいいですね。ですが、くれぐれも気を付けてください。危険を感じたら帰ってきてもかまいませんから」
黒ウサギの言葉を背に受け、問題児四人は″魃″を探しに行った。
四人は平野を歩いていた。
前方にあるものを見て、耀が皆に知らせる。
「あの辺で陽炎が出てる」
「あ、ホントだ。………ん?ねえ耀。あの陽炎の近くにいるのはなに?」
「え?……あ!大変!ユニコーンが襲われてる!」
「なんですって!?」
耀の衝撃的な報告に問題児たちに一瞬動揺が走る。
そして全員が即座に動いた。
「出てこいアルル!僕をあそこに向かって投げろ!」
「かしこまりました」
均が呼んだ瞬間にアルルが顕現し、均を″魃″に向かって投げつける。
「『止まりなさい』!」
飛鳥が力を使い、″魃″を足止めする。
その隙に耀が旋風で十六夜を上空へ押し上げた。
「十六夜、任せた」
「任されたッ!!」
アルルの投擲のおかげで十六夜よりも早く″魃″の下へ辿り着いた均は、″魃″を一瞥した後″均等分配″を使う。
今の均よりも″魃″の方が霊格が高いのがわかったからだ。
衰えたとはいえ元・神格持ち。そこはさすがだった。
そして、十六夜に向かって蹴り上げる。
「はい、十六夜。パース」
「からのシュートッ!!!」
十六夜の胴回し回転蹴りが″魃″に炸裂し、″魃″を一撃で葬った。
四人はユニコーンの下へ集まっていた。
アルルはすでにギフトカードに収納済みである。
「お怪我はありませんか?ユニコーンさん」
『ええ。おかげで助かりました。どうもありがとう』
「いえいえ。困った時はお互い様ですよ。では、お気を付けてお帰りくださいね」
『いえ、助けられて何も礼をしなかったとなれば一族の名折れ。何かお礼をさせてほしいのですが………』
別れようとした均をユニコーンが呼び止めた。
「うーん、ちょっと待ってください。耀はどう?」
「別にいい。お礼がほしくて助けたわけじゃないから」
「十六夜と飛鳥は?ユニコーンさんがお礼をしたいって仰ってるんだけど」
「俺も別にいらねえな」
「私も。お礼をされるほどのことじゃないわ」
「とまあこんな感じなんですよ」
均は肩を竦めてユニコーンを見る。
『ですが、貴方達は私の命を救うだけではなく一族の仇敵を倒してくれた恩人。何もしないわけにはまいりません』
話によるとユニコーンの一族は″魃″に散々苦しめられ、また″魃″を討伐しようとした他のユニコーンの中には命を落とした者もいたと言う。
「うーん、このままじゃ平行線ですね。………あ、なら一つお願いがあります」
『なんでしょう?私にできることなら善処します』
「僕達のことを知り合いに広めてください」
『………と言いますと?』
ユニコーンは狙いがわからないという風に首を傾げた。
中々シュールな光景である。
「僕達は″打倒魔王″を掲げています。魔王関係のことで何かありましたら、″ジン=ラッセルのノーネーム″までお知らせください。このことを貴方の仲間にも広めてほしいのです」
『……それだけでいいのですか?』
「はい、それをお願いします。僕たちは今、致命的に知名度が足りないのです。では、帰り道気を付けてくださいね」
均達はユニコーンと別れ、コミュニティに戻るため歩き出した。
「でも、″魃″を倒しちゃったね」
「そうだな。黒ウサギが怒るのが目に浮かぶぜ」
「あのユニコーンを助けるためには仕方がなかったとはいえ………」
「それを言うのも照れくさいよね」
均の言葉に四人で頷き、今のことは言わない方向に決まった。
そして、黒ウサギの下へ戻った問題児達は仲良く正座させられていた。
「お馬鹿様ッ!お馬鹿様ッ!!このっ……お馬鹿様方ッ!!!いいですか!?黒ウサギは″魃″の情報収集をしてきてほしいと頼んだのです!それが!どうして!″魃″を倒してくる結果になるのですか!!」
「「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」」
「黙らっしゃい!!」
スパパパパーン!!と、黒ウサギのハリセンが炸裂する。
「うぅ………。ようやくコミュニティ再建の大きな足がかりができたと思ったのに………。なぜ倒してしまったのですか………?」
「諸行無常」
「弱肉強食」
「世道人心」
「天理人道」
「ええい、言い訳するならせめて一つに絞ってください!」
黒ウサギに文句を言われても問題児達は頑なに理由を話そうとはしない。
その後、″サウザンドアイズ″で″魃″を買い取ってもらった五人はコミュニティに戻った。
黒ウサギとは別れ、均、十六夜、耀の三人は本拠に向かう。
その三人を出迎えたのは年長組の、狐耳と割烹着が特徴的な少女、リリだった。
「お帰りなさいませ均様、十六夜様、耀様………あれ、飛鳥様は?」
「先に風呂へ向かったよ。汗を流したいんだと」
「″魃″が近くにいたせいでずっと蒸し暑かったから」
「でも、″サウザンドアイズ″で買い取ってもらえてよかったよ」
「買い取り……?あ、そうでしたか!ご苦労様でした!」
リリの耳が元気に立つ。
均達の成果を期待したようだが、すぐにはしたないと思ったのか、耳を伏せて顔を赤らめた。
「大物を狩ってきたからね。しばらくは食料には困らないよ」
「″サウザンドアイズ″にいっぱい食料を注文したから。明日の朝には届く」
「受け取りと保存の管理、頼んだぜ」
三人の言葉を受けて、リリは元気よく返事をする。
「はい!承りました!御三人様はどうされますか?食事でしたらすぐにでも用意できますけど」
「いや、お嬢様が風呂を上がったらでいいや。均は?」
「僕もそれでいいかな。ちょっと読書もしたいし。耀は?」
「私は………ん」
耀が珍しく歯切れを悪くして言葉を切る。
そして何かに気づいたのか厨房のほうをじっと見つめてリリに問いかけた。
「懐かしい匂いがする。筍の灰汁抜きでもしてた?」
その言葉を受けて一瞬リリが固まる。
そして気まずそうに答えた。
「ええと………はい。耀様が『和食が恋しい』と呟いていたのを聞いて、サプライズのつもりで色々と用意していました」
「え」
「あっちゃあ」
今度は耀が固まった。均も思わずといった様子でうめく。
耀の鋭い五感が仇となった形だ。
二人ともとても気まずそうにしているのを見かねて、十六夜が助け舟を出した。
「それで?ラインナップはなんなんだ?」
「は、はい。いい若鶏と筍、山野菜が手に入りましたので、合わせて天ぷらにする予定です。筍は収穫したてなのでいい具合に甘みが出ています。他にも裏手の小さな菜園で育てた菜の花をお吸い物にして――」
「ごめん十六夜。私先に食べる」
「ごめんね十六夜。僕もお先に。読書なんてしてる場合じゃない」
「気にすんな。俺も先に食べる。――ところで、その筍余ってるか?余ってるんなら筍飯もリクエストしたいところだが」
「あ、それいい提案。お願いできる?」
「は、はい!すぐに用意いたします!」
「さらにおいしそうなメニューになったね」
三人のわかりやすい反応に嬉しそうな反応を返すリリ。
その後、風呂から上がってきた飛鳥に三人は先に食べていたことに関して激しく文句を言われた。
さらにその後。
問題児四人は黒ウサギに謝られていた。
「確認もせずに怒鳴ってしまって申し訳ございませんでした!!」
「「「「はい?」」」」
四人の疑問の声が揃う。
黒ウサギがその疑問を解決してくれた。
「先ほどユニコーン様がこちらにいらっしゃいました。お礼を言いにきたと」
その言葉を聞き、問題児達が居心地の悪そうな顔になった。
「あー、なるほど。聞いちゃった」
「はい」
「ユニコーンさん、それは余計だ…………!」
均が天井を仰ぎ見て呟く。
「ですが、そのおかげで黒ウサギ達は皆さんの優しさを再確認することができました。よかったです。そんな皆さんがコミュニティの仲間でいることに誇りを感じます」
「やめろよ。そんな大層なことをしたわけじゃない」
「そうよ。当然のことをしただけだわ」
「困ってる人を助けるのは当然」
「てなわけだからこの話終わりでいいよね?お休み黒ウサギ!」
問題児四人はその場から足早に立ち去る。
そこにはニコニコした黒ウサギが本当に嬉しそうに立っていた。
この話書きづらかった……。
次回からは魔王襲来編です。
やっとあのロリが出てくる!
やったね!