問題児たちと(常識人の)幼馴染が異世界から来るそうですよ?   作:gobrin

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お久しぶりです、gobrinです。

……この度は、作者の勝手な都合で更新をえらく先延ばししてしまい、申し訳ございませんでした。
再び少しずつ書こうと思ってます。

一週間更新は、もう無理です。色々忙しすぎです。
まあ、書けたら更新ということで……。

久々ということと、区切り的にちょうどよかったので、今回は短いです。
では、どうぞー。



第二話 サウザンドアイズに交渉に行くそうですよ?

五人は″サウザンドアイズ″の支店の前に来ていた。

店前で掃き掃除をしていた割烹着姿の店員に一礼され、

 

「お帰りください」

 

「まだ何も言ってないでしょう?」

 

「まさかの秒殺ですか」

 

「ヤハハ。嫌われたもんだな」

 

「……なんでだろう?」

 

物の見事に門前払いを受けていた。

ここにはギフトゲームで手にした商品を捌きによく来るのだが、その度にこの店員には絡まれている。

 

飛鳥が口を尖らせて抗議した。

 

「そこそこ常連客なのだし、もう少し愛想よくしてくれてもいいと思うのだけれど」

 

「常連客というのは店にお金を落としていくお客様のことを言うのです。

いつも換金しかしない者は、取引相手と言うのです」

 

「あら、それもそうね。じゃあ、お邪魔します」

 

均は一人感心していた。

女性店員の言い分はもっともだし、飛鳥のスルースキルもすごい。

 

しかし均も何も言い出さず、店に上がり込もうとする五人の前に女性店員が立ちふさがって止める。

 

「だからうちの店は!″ノーネーム″御断りです!オーナーが居る時ならともかく今は」

 

「だから嘘はよくないですよ店員さん。白夜叉様なら中に――」

 

「やっふぉぉぉおおお!!ようやく来おったか小僧どもおおおおお!!」

 

叫びを上げながら、何処からともなく白髪の和服美少女が降ってきた。

空中で何回転になるのかわからないアクセルを決めて着地した者の名は白夜叉。

今回の招待状の送り主であり、均達の目当ての人物でもある。

 

「――居る、いや、居たじゃないですか」

 

「ド派手な登場じゃなきゃ気が済まねえのか、此処のオーナーは」

 

「………………」

 

白夜叉の着地とともに舞い上がった土煙を煩わしそうに払いながら呆れの表情で言った均と十六夜に、女性店員は何も言い返せずに頭を抱えた。

一番前にいて土煙で咳き込む羽目になった飛鳥に代わり、一番後ろに居た耀が招待状を見せる。

 

「招待、ありがと。だけどどうやって北側に行くのか分からなくて……」

 

「よいよい、全部分かっておる。まずは店の中に入れ。条件次第では路銀は私が支払ってやる。……秘密裏に話しておきたいこともあるしな」

 

最後の言葉だけ真剣な声音で言う白夜叉。ジンを除いた四人は顔を見合わせ、悪戯っぽく笑った。

 

「それ、楽しいこと?」

 

「さてな。まあおんしら次第だな」

 

意味深な白夜叉の態度に、四人は嬉々としてジンを引き摺って暖簾をくぐった。

 

 

 

 

 

五人は営業中の店内を通らず、中庭経由で白夜叉の座敷に招かれた。

賑わう喧騒を横目に、耀が呟いた。

 

「この店、ギフトは売ってるの?」

 

「売っているとも。レティシアもその一つだったしの。ギフトの購入に関しては、うちの発行している貨幣に限られるがな」

 

「へえ?なんでまた?」

 

十六夜が興味深そうに尋ねる。

それを受けた白夜叉は、愉快そうな笑みを浮かべて均に話を振った。

 

「均、おんしはわかるか?以前レティシアを買い取りたいと言ったときに迷わずうちの貨幣を出していたが?」

 

「えっと、想像でいいなら。恐らくですが、″サウザンドアイズ″との交流の多さの目安にしているのでは?以前″サウザンドアイズ″以外のコミュニティで発行されている貨幣とここの貨幣を比較したとき、金銀銅それぞれの種類が全く同じ大きさと質量でした。つまり比重も同じだと言うこと。

また、ここで商品を捌いた時に品物の金額表記を見ましたが、一つしか明記されていませんでした。

ここは他のコミュニティの貨幣でもギフト以外の買い物ができるようですので、貨幣の価値はどこのコミュニティも同じだと考えられます。

となると、差別化できるのは交流のような使用している貨幣から推測できることだと思います。

ついでに貨幣を発行している理由ですが、何かギフトゲームでもしてるんじゃないですか?情報が少なくて、内容は僕には想像できませんが」

 

均が自説を披露すると、白夜叉が拍手した。

十六夜も納得がいったのか頷いている。

 

「均の考えがほとんど正解だの。

補足すると、ギフトとは恩恵であり奇跡の結晶なのだからして、より多くの交流、信頼を持ったコミュニティに授けるのは当然であろ?

一つだけ均の間違いを訂正するならば、発行元のコミュニティによって貨幣の価値は違うぞ。ちゃんと価値に応じた換算レートもある。

貨幣を発行している理由も均が言った通り、ギフトゲームをしているからだ。貨幣の発行元のコミュニティで、その流通と価値を競うギフトゲームをな。自らの旗印を貨幣に刻んでいるのはそのためだ」

 

「あ、なるほど。そういう趣旨のギフトゲームでしたか。納得です」

 

「ふぅん……流石は超大手の商業コミュニティ。やることのスケールがデカイ」

 

十六夜は嬉しそうに笑う。

 

「けどこれで″ノーネーム″御断りの理由もわかった。流通を淀みなく行うためには、客も選ばなきゃいけなかったってことか」

 

「ん……まあ、そういうことだの」

 

白夜叉は適当に濁して、本題に入りたい姿勢を見せる。

十六夜も納得して話を聞く体勢を整えた。

白夜叉が煙管で灰吹きを叩いて問う。

 

「本題の前にまず、一つ問いたい。″フォレス・ガロ″の一件以降、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂があるそうだが……真か?」

 

「ああ、その話?それなら本当よ」

 

飛鳥が正座したまま頷く。白夜叉はそれに頷きを返すと、ジンに視線を向けた。

 

「ジンよ。それはコミュニティのトップとしての方針か?」

 

「はい。名と旗印を奪われたコミュニティの存在を手早く広めるには、これが一番いい方法だと思いました」

 

ジンの返答に、白夜叉が鋭い視線を返した。

 

「リスクは承知の上なのだな?そのような噂は、同時に魔王を引きつけることになるぞ」

 

「覚悟の上です。それに今のコミュニティの力では上層には行けません。誘き寄せるしかありません」

 

「仇とは無関係な魔王と敵対するやもしれん。それでもか?」

 

白夜叉の鋭い追求に、十六夜が受けて立つ。

 

「それこそ望むところだ。倒した魔王を隷属させ、より強力な魔王に挑む″打倒魔王″を掲げたコミュニティ。――どうだ?こんなカッコいいコミュニティ、他にはないだろ?」

 

「……ふむ」

 

さらに、均が補足する。

 

「魔王を隷属させるっていうくだりは、僕の要望も入ってるんですけどね。

実は、すでに一人隷属させた魔王は居るんですよ。アルル、出ておいで」

 

「はい、均様」

 

「ぬおっ!?」

 

突如出現したアルルに、白夜叉が驚いて仰け反る。

しかしすぐに平静を取り戻し現れた存在を一目見て、

 

「何!?″アルゴルの魔王″だと!?均、おんし、どうやってこれを隷属させた!?」

 

再び驚愕した。と言うのも、今のアルルには拘束具が付いていなかったからだ。

白夜叉は、均が″アルゴルの魔王″を隷属できる力など持っていないことを感覚で理解している。

 

「えっと、O☆HA☆NA☆SHIしてですかね?」

 

「……は?」

 

白夜叉が素っ頓狂な声を上げる。無理もない。

 

「白夜叉様も御存知の、アレで脅しました。本能なのか、僕が本気でやったら敵わないことを理解したようですので。

アルルは、今では拘束具がなくても僕の命令には逆らわないいい子ですよ」

 

そう言いながら、均は隣で正座しているアルルの頭を撫でる。

その光景を見て、唖然としていた白夜叉が笑い始めた。

 

「ク、クク、クククク……。フハハハハハ!面白い、面白いぞ均!やはりおんしは面白い!

………他の者も本気のようだし、これ以上は老婆心というものだな」

 

均も十六夜も表情は笑っているが、目は笑っていなかった。

それを白夜叉は、しっかりと理解していたのだ。

 

「ま、そういうことだな―――で、本題はなんだ?」

 

「うむ。実はその″打倒魔王″を掲げるコミュニティに、東のフロアマスターから正式に頼みたいことがある。此度の共同祭典についてだ。よろしいかな、ジン殿?」

 

「は、はい!謹んで承ります!」

 

白夜叉は、子供に対してではなく組織の長に対しての物言いに変えた。

少しでも認められたことに、ジンが表情を明るくする。

 

「さて、どこから話そうかの……そうだ、北のフロアマスターの一角が世代交代したのを知っておるかの?」

 

白夜叉はしばしの間思案して、そんなことを言った。

 

「え?」

 

「いえ、情報がありませんでしたから。そうなんですか。一体なぜ?」

 

飛鳥は碌な反応ができなかったが、均がしっかり反応して返した。淀みない模範的解答と言える。

 

「急病で引退だとか。まあ歳だったからのう。此度の大祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭でな」

 

「「龍?」」

 

龍というフレーズに、十六夜と耀が反応した。

白夜叉は苦笑しつつ説明を続けた。ちなみに均も苦笑いである。

 

「五桁・五四五四五外門に本拠を構える、″サラマンドラ″のコミュニティ――それが北のマスターの一角だ。

ところでおんしら、フロアマスターについてはどのくらい知っている?」

 

「私は何も知らないわ」

 

「私も何も知らない」

 

「僕はある程度ですね。十六夜と同じくらいでしょうか」

 

「おう、俺らはそこそこ知ってる。要するに、下層の秩序と成長を見守る連中だろ?」

 

階層支配者(フロアマスター)″とは、箱庭の秩序を守り、下位のコミュニティの成長を促すために設けられた制度だ。

彼らは箱庭内の土地の分割・譲渡や、コミュニティが上の階層に行けるかどうかを試す試練を行うなどの様々な役割がある。

そして天災・魔王が現れた時は率先して戦う義務がある。

彼らはその義務と引き換えに、膨大な権力と最上級特権・″主催者権限(ホストマスター)″を与えられているのだ。

 

「しかし、北には複数のマスター達が存在します。精霊に鬼種、それに悪魔と呼ばれる力のある種が混在した土地なので、その分治安もよくないですから……」

 

ジンの言葉を聞いて、均はワクワクしてきた。これからその北側に行くのだ。面白そうな種族がいると聞けて何よりである。

 

「けど、そうですか。″サラマンドラ″とは親交があったのですが、頭首が替わっていたとは知りませんでした。

それで、どなたが頭首を?やはり長女のサラ様ですか?それとも次男のマンドラ様が?」

 

「いや、頭首は末の娘――おんしと同い年のサンドラが火龍を襲名した」

 

は?と、ジンが小首を傾げる。それと同時に、均は瞬時に考察した。

 

(ジンの今の言い方だと、サラって人は相当優秀なんだろうね。マンドラって人はそこそこって感じかな?男だから候補に挙げた、そんな感じがするね。にも関わらず、サンドラって子が選ばれた。これは訳アリだな)

 

次の瞬間、ジンは驚嘆の声を上げて前のめりになった。

 

「サ、サンドラが!?ちょ、ちょっと待ってください!サンドラはまだ十一歳ですよ!?」

 

「あら、ジン君だって十一歳で私達のリーダーをやっているじゃない」

 

「そ、それはそうですけど……!いや、だけど……」

 

「なんだ?御チビの恋人か?」

 

「え、そうなの?ジンもすみに置けないね」

 

「違っ、違います!失礼なことを言うのは止めてください!」

 

今回は均も悪ノリしてジンをからかう。

全く興味のない耀が白夜叉に先を促した。

 

「それで?私達に何をしてほしいの?」

 

「まあ、そう急かすな。実は今回の祭だが、次代マスターであるサンドラのお披露目も兼ねていてな。

しかしサンドラはまだ幼い。故に東のマスターである私に共同の主催者を依頼してきたのだ」

 

「あら、それはおかしな話ね。他にいる北のマスターにお願いして共同主催すればいいだけじゃないかしら?」

 

飛鳥が当然の疑問を口にする。

 

「うむ……。それはそうなのだが……」

 

しかし、急に白夜叉の歯切れが悪くなる。

それで大方の事情を推測した均と十六夜が助け舟を出す。

 

「幼い権力者をよく思わない組織がある――とか、そんな在り来たりなところだろ?」

 

「だろうね。どこの世界もそういうことはくだらない」

 

半ば吐き捨てるように言った均の言葉に、飛鳥が露骨に嫌そうな顔をする。

飛鳥は元の世界でそんなことを何回も経験してきたのだろうし、そういった方面で他の三人より多くの物を捨てて来ただけに、落胆も大きいのだろう。

 

「……そう。いくら神仏が集う箱庭とはいえ、その長達の思考回路は人間並みなのね」

 

「うう、手厳しい。だが全くもってその通りだ。

私に話が持ちかけられたのも、様々な事情があるのだ」

 

白夜叉も今の状況を快く思っていないのか、苦い表情だ。

話を続けようとした白夜叉を、しかし耀が遮った。

 

「ちょっと待って。その話、まだ時間かかる?」

 

「ん?そうだの、あと一時間程度はかかると思うが」

 

均もそこで耀の質問の意図を理解したのか、ハッとなって続けた。

 

「そうか、それはまずい。追っ手が」

 

「「「あ」」」

 

十六夜、飛鳥、ジンの三人も気づいたのか、揃って呟きを漏らした。

今、四人と黒ウサギは追いかけっこの最中だ。一時間もここに留まれば、見つかるのは必至。

それに気づいたジンが、

 

「し、白夜叉様!どうかこのまま」

 

「ジン君、『黙りなさい』!」

 

飛鳥がジンの言葉に被せて叫び、ジンの口が勢いよく閉じた。

飛鳥の支配の力だ。

 

「白夜叉様、今すぐ北側に!お願いします!」

 

「お、おう?別に構わんが、何か急用か?それと、内容を聞かずに受諾してよいのか?」

 

「構わねえから早く!事情は説明するし何より――()()()()()()()!俺が保証する!」

 

「―――そうか、面白いか。それなら、ジンには悪いが仕方ないのう?娯楽こそ我々神仏の生きる糧なのだからな」

 

白夜叉は朗らかに笑い、頷いた。ジンが必死に首を横に振っているが、すでに遅い。

十六夜が嬉々としてジンを羽交い締めにし、白夜叉は彼らを横目に柏手を打つ。

 

そして白夜叉が柏手を打ち終わった瞬間、均がバッと入り口の方を向いた。

 

「……これは?」

 

「お、均は気づいたかの?おんしは本当に面白いな。御望み通り、北側に着いたぞ」

 

「「「――――は?」」」

 

均を除く状況が呑み込めていない問題児三人は、揃って素っ頓狂な声を上げた。

かく言う均も、状況を正確に把握できたわけではない。

 

「――白夜叉様の言う通り、さっきの一瞬で外の気配が変わった……?」

 

三人にも疑問はあったが、白夜叉に断言されかつ均がそれを肯定するような発言をしたので、ひとまず疑問などは置いて期待を胸に外に駆け出す。

もちろん、均も疑問を携えつつも追従した。

 

 

 

 

 

 

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