問題児たちと(常識人の)幼馴染が異世界から来るそうですよ?   作:gobrin

16 / 21
遅れて申し訳ございません。
リアルがヤバいことになってました(センターとかセンターとかセンターとか)。

これからもまあ、ぼちぼち自分のペースでやっていこうと思います。
待たせてしまうのは心苦しいですが、すみませんとしか言えません。すみません。

では、どうぞー。


第三話 北側到着!だそうですよ?

四人が店から出ると、明らかに東側の物ではない熱い風が頬を撫でた。

 

何故か高台にある″サウザンドアイズ″支店からは、街の風景が一望できる。

そこは、均達が見知った街並みではなく――

 

「赤壁と炎と……硝子の街……!?」

 

今、飛鳥が感嘆の声を上げたように、そこには幻想的な景色があった。

 

北と東を区切っているのだろう、天を衝かんばかりに聳え立つ巨大な赤壁。境界壁。

鉱石で彫像されたモニュメントに、境界壁を削りだすようにして建築されたゴシック調の尖塔群のアーチ。

それと、外壁に聳える二つの外門が一体となった巨大な凱旋門。

巨大な境界壁によって翳る一帯はこれまた巨大なペンダントランプが数多にも設置されて暖かく照らしている。

 

キャンドルスタンドが二足歩行するという珍妙な光景を見て、均と十六夜が喜びの声を上げた。

 

「すごいな……!あれはどうやって動いているんだろう……?」

 

「へえ……!流石に九八〇〇〇〇kmも離れていると、文化様式も大きく違うんだな。歩くキャンドルスタンドなんて奇抜な物、この目で見ることになるとは思わなかったぜ」

 

「ふふ、しかし違うのは文化だけではないぞ。其処の外門から外に出ると雪原が広がっていてな。

それを箱庭の都市の大結界と灯火で、常秋の様相を保っておるのだ」

 

白夜叉の自慢げな言葉を聞きながら、均は思考に耽っていた。先ほどキャンドルスタンドに驚いた直後からである。素早い切り替えだった。

 

(しかし、どうやって白夜叉様は僕達をここまで連れてきたんだ……?転移したという感じじゃなかった。

言うなれば、店の外だけを丸ごと入れ替えたような感じかな……?)

 

そして、思考に耽っていたために、()()への反応が遅れた。

感動した飛鳥が街を見て回りたいと言い、白夜叉が許可を出した時に空から降ってきた、()()

 

 

「見ィつけた――のですよぉぉぉおおおおおおお!!!!」

 

 

(ヤバッ!!くそっ、アルルを戻したのは間違いだったか!?)

 

ドップラー効果を効かせた絶叫と共に跳んできて、爆撃もかくやという着地をしたのは、我らが同志・黒ウサギその人。

その声を聞いた瞬間に逃げる体勢を整えた均と違い、白夜叉を含む四人は跳ね上がった。

 

「ふ、ふふ、ふふふふふ………!よぉぉぉぉおやく見つけたのですよぉ、問題児様方ァ……!」

 

淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振りまくその姿は、お世辞にも帝釈天の眷属には見えない。

仁王、閻魔……何とは言わないが、そういったもののそれにしか見えない。

危機を感じ取った問題児の中で、素早く動けるのはやっぱり十六夜だ。

 

「逃げるぞッ!!」

 

「逃がすかッ!!」

 

「え、ちょっと」

 

十六夜は隣に居た飛鳥を抱きかかえ、展望台から飛び降りる。

自分が後手に回ったことを理解していた均は、黒ウサギの行動をしっかり把握するために逃げる体勢を整えたままじっとしていた。

耀が旋風を巻き上げて上空への脱出を図るが、ちょっと遅い。

黒ウサギが大ジャンプで耀のブーツをガッチリ掴んだのだ。

 

それを見届けた均は、耀が逃げようとした方から遠い方向へ飛び降りる。

耀を囮にするようで気が引けたが、これぐらいしないとあの状態の黒ウサギからは逃げられないと悟ったのだ。

そしてその途中で、あの存在を呼び出すことも忘れない。

 

「アルル、頼む!僕を受けとめてくれ!」

 

「了解しました、均様」

 

今回も均の呼び出しと同時に現れたアルルが崖を蹴って均より先に着地し、均を受けとめる。

 

「ごめん、ありがとう。助かった」

 

「いえ、均様をお助けするのは当然ですので」

 

「行こう」

 

「はい」

 

展望台から降りる方法は二つ。

十六夜の様に飛び降りるか、展望台に設置されている階段を降りるかだ。

今は一刻を争うので均も飛び降りる方法を選択したわけだが、十六夜ほど身体が頑丈ではない均では着地した時に骨折などの怪我をする可能性はある。

均も、やろうと思えばダメージをほとんど散らして着地することは可能だったが、スムーズな離脱に繋げるならアルルを呼ぶ方が早い。

街を一望にできるほどの高さの展望台なのだ。普通は、ただ単に飛び降りて無事では済まない。

そのため、格好がつかなくても均はアルルの力に頼ることを選んだわけだ。

 

 

「逃ぃぃがさないのですよぉぉおおお!!」

 

 

後ろから聞こえてきた絶叫を無視して、均はアルルと共に雑踏に紛れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、黒ウサギに捕まった耀は″サウザンドアイズ″の支店で白夜叉に事情を説明していた。

耀は捕まった時の黒ウサギのヤバい様子に抵抗する意志を捨てている。

 

「ふふ、なるほど。おんし達らしい悪戯だが……()退()とは穏やかではないな。ちょいと悪質だとは思わなんだか?」

 

「……うん、私も少しだけ思った。でも、黒ウサギだって悪い。事情を説明してくれれば、私達だってこんな強行手段には出なかったもの」

 

「普段の行いが裏目に出た、とは考えられんか?」

 

「それは………そ、そうだけど。それも含めて信頼が無い証拠。少しは焦ればいい」

 

耀の珍しく拗ねた様な物言いに、白夜叉が可笑しそうに笑う。

 

二人の歓談は続き、耀があることについて切り出した。

 

「そういえば、大きなギフトゲームがあるって言っていたけど、本当?」

 

「本当だとも。特に、おんしに出場してもらいたいゲームがある」

 

「私に?」

 

耀は座敷に着いた時に茶と共に出された和菓子を口いっぱいに頬張りつつ、小首を傾げる。

白夜叉は、先ほど黒ウサギが跳んでくる直前まで問題児達に見せていたチラシを袖から取り出して見せた。

 

 

『ギフトゲーム名 ″造物主達の決闘″

 

・参加資格、及び概要

         ・参加者は創作系のギフトを所持。

         ・サポートとして、一名までの同伴を許可。

         ・決闘内容はその都度変化。

         ・ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。

 

・授与される恩恵に関して

         ・″階層支配者″の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。

                             ″サウザンドアイズ″印

                               ″サラマンドラ″印』

 

 

「………?創作系のギフト?」

 

「うむ。誰が造ったかを問わず、製作者が存在するギフトのことだ。

北では、厳しい環境を耐え忍ぶための恒久的な創作系ギフトが重宝されておってな。その技術や美術を競い合うゲームがしばしば開催されるのだ。

そこでおんしが父親から譲り受けたギフト――――″生命の目録(ゲノム・ツリー)″は技術・美術共に優れておる。

だが、展示会は出場期限が過ぎておるしの。その木彫りに宿る″恩恵″ならば、力試しのゲームも勝ち抜けると思うのだが……」

 

「そうかな?」

 

と、耀が疑問を挟んだ。が、白夜叉はしっかりと頷きを返す。

 

「うむ。幸いなことにサポーター役としてジンも……ああ、均もいたの。まあ兎も角本件とは別に、祭りを盛り上げるために一役買ってほしいのだ。

勝者の恩恵も強力なものを用意する予定だが……どうかの?」

 

白夜叉の問いかけに、あまり気乗りしなさそうに首を左右に倒す耀。

龍などの生物的なものに興味はあっても、ゲームそのものには興味がないらしい――と、何か思い立ったように質問する。

 

「ね、白夜叉」

 

「何かの?」

 

「その恩恵で…………黒ウサギと仲直りできるかな?」

 

それを受けて白夜叉はやや驚いたような顔をしたものの、すぐに温かく優しい笑みで答えた。

 

「できるとも。おんしにそのつもりがあるのならの」

 

「そっか。じゃあ、出場してみる」

 

耀はコクリと頷いて立ち上がる。時刻は昼を廻り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、次はどうしようか?」

 

「均様の仰せのままに」

 

「………………」

 

場所は移って出店が立ち並ぶ区域。

均とアルルは並んで歩いていた。が、均が言葉を失っている。理由は明快。アルルの返答の所為だ。

 

「……あのね、アルル。このやり取り、五回目だよ?」

 

「……何かいけませんでしたか?」

 

「いや、僕はその度に訊き返してるよね?」

 

「はい」

 

「ということは、最初から答えを求めてるわけじゃない?」

 

「仰る通りです」

 

「そう返すってことは、アルルは理解できてるよね?」

 

「はい」

 

「なら、最初から意見を返してくれると嬉しいな。訊き直したら答えてくれてたわけだし。欲求がないわけじゃないんでしょ?」

 

「かしこまりました」

 

アルルはどこか融通が利かない。まあちょっと前まで人化などしていなかったから当然と言えば当然だが。

言って理解できないわけではないので、その点は均も安心している。

 

「それで、次はどうしたい?」

 

「でしたら、あれを食べてみたいです」

 

「クレープか。いいね」

 

アルルが指差した先にはクレープの屋台があった。

均はすぐに屋台に行き、クレープを二つ買ってくる。

 

「ほら、アルル」

 

「ありがとうございます」

 

「歩きながら食べようか」

 

「はい」

 

それぞれがクレープを手に持ち、均は大きな口を開けてかぶりつく。

しかし、アルルは手に持ったままだ。そこで、均は食べ方を教えていないことに気づいた。

 

「ほら、こうやってそのまま齧りつくんだ。食べてごらん?美味しいよ」

 

「はい」

 

均に言われた通りに、アルルがクレープに齧りつく。そして、目を見開いた。

 

「………!……美味しいです!」

 

「そっか。気に入ったならよかったよ」

 

普段、あまり感情が表に出ないアルルがここまで感情を露にするのも珍しい。大分ツボにハマったようだ。

 

 

 

 

 

クレープを食べ終わった二人は、再び歩き出す。

二人は、黒ウサギが自分達の所に来たら大人しく投降するつもりだ。

それまでは、とことん楽しむと決めていた。

 

「さて、次はどう――」

 

「アレを見ろ!ウサギだ!″月の兎″が誰かと戦っているぞ!」

 

「………………………何してんのあいつら」

 

聞こえてきた言葉に、均の素が思いっきり出た。

 

こんな下層に、″月の兎″が二人もいるわけがない。すなわち、件の″月の兎″は、我らが同志黒ウサギ。

そしてその黒ウサギと戦いになるような人物は、均が知る限り二重の意味で一人しかいない。………………十六夜だ。

補足しておくと、二重の意味とは状況的にも戦力的にもという意味だ。

 

「………はぁ。アルル、行くぞ。何が起きてるのかは確認しておかないと……」

 

「かしこまりました」

 

疲労感を滲ませながら、均はアルルを伴って騒ぎの方へ歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し戻って。

十六夜と飛鳥は散策を続けていた。正午を過ぎて一時間といったところか。

話の過程で、ハロウィンの話題になっていた。

来た時代の関係上、ハロウィンを知らなかった飛鳥から十六夜がハロウィンへの憧れなど、色々な話を聞き終わったところで、十六夜が切り出した。

 

「ところでお嬢様、ハロウィンが元々は収穫祭だってことは知ってるか?」

 

「え?」

 

飛鳥が疑問の声を挟むも、十六夜は聞こえてないフリをして続ける。

 

「ついでに言うとだ。″ノーネーム″本拠裏手には、莫大な農園跡地があってだな。あそこを復活させればコミュニティも大助かりだと思うんだが………如何なものだろう?」

 

「え、ええ。そうね。それは知ってるわ」

 

農園をコミュニティ再建に活かすことは、今朝も耀とリリと話していたことだ。しかし、飛鳥は十六夜の質問の意図が分からずに首を傾げる。

十六夜は笑いながら飛鳥に顔を近づけ、

 

「農園を復活させて――いつか俺達で、()()()()()()()()()()()()――という提案なんだが、お嬢様はどう思う?」

 

ハロウィン、したいんだろ?と、十六夜は自身の考えを告げた。

十六夜の言葉の意味を、飛鳥は正確に理解した。

 

「私達のコミュニティで――ハロウィンのギフトゲームを主催する、ということ?」

 

「ああ。箱庭で過ごす以上、少なくとも一度は″主催者″を経験しておかないとな」

 

十六夜の提案に、飛鳥は顔を輝かせて頷いた。

 

「素晴らしい提案だわ!それならコミュニティも助かるし、とても楽しそうだもの!」

 

「ヤハハ、流石に話がわかるなお嬢様!じゃあ俺達が最初に″主催者″をするギフトゲームは、ハロウィンで予約しておこうぜ。あと、アレンジも考えておかないとな」

 

飛鳥はコクコクと勢いよく頷く。頬を緩ませながら、夢心地に呟いた。

 

「私達が主催するハロウィンか……ふふ、じゃあ収穫祭を行うためにも、農地を復活させておかないとね」

 

「応とも。それにこの案なら白夜叉にも借りが返せて一石二鳥だ」

 

「黒ウサギは兎も角、白夜叉へのお礼にもなるの?」

 

「ん?ああ、ハロウィンは元々、太陽に一年の感謝をする収穫祭でな。元はケルト民族の祭りで――いや、それはいいか。そんなことを気にする奴じゃないだろ」

 

飛鳥は相槌を打つ。よく理解はできなかったが、白夜叉には自分達のみならず黒ウサギもお世話になっていたらしい。感謝してもしたりない。お礼をするには打ってつけだろう。

 

「そうね。何時かお礼をするために、白夜叉を招くに相応しい″主催者″を目指しましょう」

 

「とはいえ、今は無理だけどな。まずはギフトゲームに勝って力をつけないと」

 

「もちろん。こんなに大きな祭りなんだもの。凄いギフトが貰えるゲームがあるはずよ」

 

「YES!祭典では創作系のギフトを競い合う二大ゲームが進行中なのですよ!」

 

「創作系?何か作るのかしら?」

 

「はいな。耀さんの持つ″生命の目録″のように人造・霊造・神造・星造を問わず、様々な創作系ギフトを持つ者達が参加できるギフトゲームなのでございますよ♪」

 

「へえ?よくわからんが、凄いギフトが貰えるのか?」

 

「それはもう!新たにフロアマスターとなったサンドラ様から直々に貰えるとなれば、よっぽどのものでございますよ!」

 

「そう。なら春日部さんに連絡して出場してもらおうかしら。黒ウサギ、伝言を頼める?」

 

「YES!任されたのですよ♪それではそれでは御二人様!今から向かうので黒ウサギニオトナシク捕マッテクレマスヨネ?」

 

途中から見事に会話に入ってきていた黒ウサギが壮絶な笑顔で問う。二人は即答した。

 

「「断る!!」」

 

そう言うや否や、十六夜が地面にクレーターを作る勢いでスタートダッシュ。

飛鳥は反対方向へ逃げようとするが、空から跳びついてきたレティシアに捕まる。

 

「きゃ!?」

 

「ふふ、観念してもらうぞ、飛鳥」

 

抱きついてブラブラぶら下がるレティシアに、両手を上げて降参の意を示す飛鳥。

最後に、十六夜に向かって叫んだ。

 

「十六夜君!均君はどこにいるかわからないけど、貴方も簡単に捕まったら許さないわ!!」

 

「了解、任せとけお嬢様!」

 

飛鳥に叫び返し、高笑いしながら赤窓の歩廊を走り抜ける。黒ウサギも負けじと追従した。

 

「逃がさないのですッ!!今日という今日は堪忍袋が爆発しました!捕まえたら黒ウサギの素敵なお説教を長々と聞かせて差し上げるのですよ――ッ!!」

 

緒が切れたのではなく堪忍袋そのものが爆発したというところに、普段の黒ウサギの苦労が窺える。

 

「ハッ、そりゃ素敵な申し出だ!帝釈天の眷属のご説法、聞かせたいなら捕まえてみな!」

 

十六夜が逃げる軌道を直線から三次元的に変えて、建造物を蹴り上がるようにして尖塔群の頭部に躍り出る。

黒ウサギも壁を垂直に走ってすぐに追いつく。

 

騒ぎを聞きつけた野次馬の一人が、黒ウサギを指差してこう叫んだ。

 

「アレを見ろ!ウサギだ!″月の兎″が誰かと戦っているぞ!」

 

「″箱庭の貴族″がこんな最下層に!?」

 

「まさかサンドラ様の就任式のためにわざわざ上層から祝いに来たのか!?」

 

黒ウサギも屋根に登り、十六夜と睨み合う。

 

「………ルールを確認するぜ。黒ウサギは、俺と均を捕まえれば勝ちだが――もう均は逃げる気はないみたいだな」

 

「はて?」

 

黒ウサギが、何のことやらという顔をする。

十六夜は、眼下のある一点を指差した。

 

「ほれ、あそこ」

 

「え?―――な、均さん!?」

 

黒ウサギもそちらを見やると――均がギャラリーを掻き分け、こちらに向かって歩いて来ていた。

その顔には、思いっきり面倒くさいと書いてある。恐らく、ギャラリーか誰かの言葉を聞いて、状況確認だけでもしようと思ったのだろう。

 

「というかあいつ、最初から逃げる気なかったな?まあいいや、確認の続きだ。

黒ウサギは俺を捕まえれば勝ち。俺は今日一日逃げ切れば勝ち。そうだな?」

 

「YES。黒ウサギは十六夜さんを捕まえてお説教します。十六夜さんが逃げ切れば―――」

 

「そう、それだ。実は手紙に書いたのは冗談半分だったんだが」

 

「ほ、ほほう?ほほほ〜う?コミュニティ脱退を賭けた勝負を冗談で持ちかけた?それはそれは、随分と笑えない話でございますねえ」

 

黒ウサギの額に怒りの象徴が何本も浮かぶ。黒ウサギの怒りの原因は、どうやらここにあるらしい。

確かに組織の脱退を軽々しく口にするというのは、十六夜達の悪ふざけにしては悪質すぎた。

十六夜もその自覚はあったのか、肩を竦めて言葉を発する。

 

「まあ、確かにな。冗談にしては質が悪い。悪戯ってのは、後で笑って誤魔化せるくらいじゃないとな。そこは認める」

 

「…………では、大人しく降参すると?」

 

「まさか。ここまで盛り上げといて何もしないなんて、ギャラリーが許さねえよ」

 

再び眼下を指差す。野次馬の数は膨れ上がり、大きな歓声を上げていた。

″月の兎″を生で見られることなど滅多にないためだ。

均も、野次馬を掻き分け終えて十六夜達を見上げていた。

 

「そこで提案なんだが、俺と黒ウサギだけで、短時間別のゲームをしないか?」

 

「え?」

 

「そうだなあ。謝罪代わりに、そっちのチップは無しでいい。こっちのチップは―――ん、どうする?一回分の命令権(くびわ)とか?」

 

「は――――!?」

 

黒ウサギは仰天していた。二人には見えていないが、均も地上で凄い勢いでアルルの方を向き、何事か問いただしている。

この、何者にも縛られない、一つ間違えれば傍若無人な男に一回分の首輪を付けることができるなら願ってもないことだ―――が、黒ウサギは苦笑気味に首を横に振る。

 

「そ……それはダメでございますよ、十六夜さん」

 

「そうか?なら金品か?」

 

「い、いえ、そうではなくてですね。十六夜さんの謝意は伝わりました。まあ、黒ウサギの頭が少々固かったことも認めます。

ですからやはり………ギフトゲームをするなら、それは対等の条件でなければ」

 

今度は十六夜が驚く番だった。つまり黒ウサギも、一回分の首輪を賭けるということだ。

 

「ギフトゲームは対等の条件でのみ行われるべきです。ペナルティーのあるゲームで得たギフトなんて貰っても、達成感は得られません。

なのでやるならば正々堂々!そして真正面から、黒ウサギは十六夜さんにお説教をするのです!」

 

「………ハッ。黒ウサギのくせに生意気言いやがって」

 

十六夜が獰猛に笑う。互いの自由を賭けた、対等な勝負。

それを挑まれて手を抜くほど、十六夜は人として終わってはいない。

十六夜から、遊び心が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………はぁ、なんであんなことになってるんだ………」

 

地上では、均がため息を吐いていた。周りはギャラリーが五月蝿いため、均の呟きを聞いているものなどいない。

均はこんなことを言っているが、事情は理解している。アルルに上の状況を教えてもらっていたからだ。

均なんかでは比べ物にならないくらいのスッペクの元・魔王様には、そんなことは朝飯前である。

 

「十六夜が首輪を賭けた所為で、ややこしいことになってるし……」

 

これには均も吃驚した。思わず二度見ならぬ二度聞きしてしまったほどだ。

 

「まあ、止めるのは無理だし……被害が少しでも小さくなるように、頑張るか……」

 

「均様、私も微力ながらお手伝いさせて頂きます」

 

「ああうん、かなり力を貸してもらうことになると思うからよろしく」

 

「仰せのままに」

 

アルルの返事を聞いてから、均は億劫そうに頭上を見上げる。

 

 

 

問題児と黒ウサギの追いかけっこは、最終局面に移ろうとしていた。

 

 




とまあこんな感じです。追いかけっこは次回決着ですね。

楽しんで頂けていれば幸いです。感想とかもらえたら嬉しいな。


と、ここで一つお知らせが。
アンケート取ります。詳しいことは活動報告に書きますが、この作品のある要素についてです。
ご意見頂けると嬉しいです。

では、また次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。