問題児たちと(常識人の)幼馴染が異世界から来るそうですよ?   作:gobrin

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こんにちは、gobrinです。

ラスト・エンブリオを読んで、

「こんな面白い話読まされて書きたくならないわけがないじゃないか!!」

ということでいてもたってもいられなくなり空いてる時間で書いてしまった今話。
まだ他の作品が一区切り付くところまで行ってませんので、またそちらに戻ります。

まあ取り敢えず、今は問題児です。

では、どうぞ。




第六話 造物主達の決闘だそうですよ?

次の日。

 

 

白夜叉の頼みを聞き入れた均は――――耀を説得していた。

 

 

「納得できない。私は一人でも戦える」

 

「まあ、そう言わずにさ。僕もちょっと暴れたいんだよ。サポートだけでもさせてくれないかな?」

 

「そんなの知らない。私の知ったことじゃない」

 

場所は、闘技場の舞台袖。

舞台からはマイクを使った黒ウサギの進行の声と、野郎どもの野太い絶叫が聞こえてきている。

 

耀が少々気を悪くしてしまうのも仕方がないだろう。

何故なら、セコンドについたジンとレティシアが対戦相手の情報を伝え終わった直後に、同じくセコンドにつくかと思われていた均がいきなり『あ、僕もサポートとして参戦するから』などとのたまったのだから。

耀には、誰かの力を借りるつもりはない。故に、断固として拒否する姿勢を見せる。均に舞台までついてこられたら、攻撃してでも叩き出すつもりだった。

 

「……なら、こういうのはどう?もし耀が僕の助けを一切受けずに″ウィル・オ・ウィスプ″に勝つことができたら、僕は潔く退こう。土下座でもなんでもするよ。これから耀の言うことに絶対服従することを誓ってもいい」

 

色々考えて耀にそう提案するも。

 

「断る。私にメリットがない」

 

耀はまたしても拒否する。当然だ。耀の気は変わらない。――――はずだった。

 

「……ふぅん。なるほど、よくわかったよ。―――――耀は怖いんだね」

 

「……どういう意味」

 

静かで抑揚のない声音だったが、微かに怒りが滲んでいる。均もそれがわかるようになるくらいには耀と関わり、耀という人間を観察してきた。均は手応えアリと判断し、なおも挑発を続ける。

 

「いや、別に?耀が僕をサポートにしたくないわけって、恐れてるからでしょ?僕に助けられて、自分が″ウィル・オ・ウィスプ″に負けてるという事実を突きつけられることを、ね」

 

「……わかった。そこまで言うなら勝手についてくればいい。でも、私が均に助力を求めることはないし、均に助けられることも絶対にない」

 

「了解。ならそうさせてもらうよ。本当に倒せなさそうってなったら助けるけど、それ以外では手は出さないから安心していい。頑張ってね」

 

「均に言われるまでもない」

 

これは耀だけでなく、問題児全員に言えることだが……負けず嫌いにもほどがある。いずれ大変なことになりそうだ。

今回は、耀が他人を頼ることを覚えるというのが第一目標だ。なので均は、完璧に嫌われても構わないとまで考えていた。自分は頼られなくても、耀が今回のことをキッカケに他の誰かを頼るようになったのならそれでいい。故に耀に、顔も見たくないと言われてもいいやくらいの気概で耀のサポートに臨んでいた。

 

舞台の真ん中では黒ウサギがクルリと回り、入場口から迎え入れるように両手を広げた。準備が整ったのだろう。

 

『それでは入場していただきましょう!第一ゲームのプレイヤー・″ノーネーム″の春日部耀と、″ウィル・オ・ウィスプ″のアーシャ=イグニファトゥスです!!』

 

耀が撫でていた三毛猫をジンに預け、耀と均は舞台へと歩き出す。

 

 

 

 

 

 

――――時を少しだけ遡って。

境界壁・舞台区画。″火龍誕生祭″運営本陣営。

″ノーネーム″の十六夜、飛鳥は運営側の特別席に腰掛けていた。

一般席が空いておらず、舞台を上から見る事のできる本陣営のバルコニーに席を用意してくれるよう、サンドラが取り計らってくれたのだ。

 

嬉々としてゲームの開始を待ちわびていた十六夜が、ふと思い出したように白夜叉に訊ねる。

 

「ところで白夜叉。黒ウサギが審判をする許可は下りたのか?」

 

「うむ。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させてもらったぞ」

 

「そうか。けど″箱庭の貴族″に審判を依頼することにどんな意味があるんだ?」

 

ゲームの進行は″箱庭の貴族″の審判がなくても出来るだろ?と言うような表情で小首を傾げる。

この問いには、中央に座るサンドラが前に出て答えた。

 

「ジャッジマスターである″箱庭の貴族″が審判をしたゲームは、″箔付き″のゲーム。ルール不可侵の正当性は、箱庭の名誉ある戦いに昇華され、記録される。箱庭の中枢に記録される事は両コミュニティが誇りの下に戦ったという太鼓判になるから、とても大事」

 

「へえ?じゃあサンドラ……いや、サンドラ様の誕生祭は見事箔付きのゲームに認定されたわけだ」

 

マンドラに睨まれた十六夜が、肩を竦めてサンドラの呼び方を改める。

その隣では、飛鳥が珍しく落ち着きなくそわそわしていた。

 

「どうした、お嬢様。落ち着きないぞ」

 

「……昨日の話を聞いて心配しない方がおかしいわ。相手は格上なのでしょう?」

 

うむ、と返すのは白夜叉。彼女が手を翳すと、空中に光り輝く文字で対戦相手の名前が刻まれる。

 

「″ウィル・オ・ウィスプ″と″ラッテンフェンガー″。両コミュニティは六桁外門に本拠を構えるコミュニティだ。フロアマスターから得るギフトを欲してきたのだろうな。魔王の一件を抜きにしても、一筋縄ではいかんだろう」

 

「そう……白夜叉から見て、春日部さんに優勝の目は?」

 

「ない」

 

白夜叉が即答をもって返す。苦虫を噛み潰したような顔をする飛鳥。

 

「――――――だが」

 

白夜叉が含みのある言い方をし、飛鳥と十六夜が白夜叉に注目する。

 

「春日部が均を頼ることが出来れば、あるいは可能性があるやもしれん」

 

飛鳥は首を傾げているが、十六夜は思い当たる節がある様子で目を細める。

 

飛鳥が心配しているのは、耀が舞台上で魔王に襲われたりする可能性だろう。あり得ないとは言い切れない。

耀のことをとても大切な存在だと思っているのだろう。

そんな飛鳥を見かねて、白夜叉が優しげな声音で告げる。

 

「安心せい。ジャッジマスターが取り仕切る以上、殺し御法度の今ゲームで命を落とすことはない。春日部にも、無理だと思えば降参するように諭してある。大事には至らんよ」

 

「ああ。それに例の参加事項がある。あのルールを飛び越えて現れるっていうのもそれはそれで面白そうだが、今のところそんな気配もないしな。それに、均がいる。最悪の事態にはならねえだろ」

 

「そう」

 

飛鳥は小さく相槌を打つ。しかし、飛鳥の懸念は他にもあった。飛鳥は自分の膝の上に座る精霊を見つめる。

この精霊は、昨日出会った後に名前を訊ねた時、″ラッテンフェンガー″と答えた。昨夜の話通りなら、このとんがり帽子の精霊もこの一件に関わっていることになる。自分が連れてきた存在の所為でコミュニティに迷惑をかけるような事態は避けたかった。

 

 

 

 

そんな飛鳥の心配を余所に、決勝の準備が進んでいく。

日が昇り切り、黒ウサギが開催の宣言のために舞台中央に立つ。胸いっぱいに息を吸い込むと、満面の笑みを円状の観客席に向ける。

 

『長らくお待たせいたしました!火龍誕生祭のメインゲーム・″造物主達の決闘″を始めたいと思います!進行及び審判は、″サウザンドアイズ″専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギが務めさせていただきます!』

 

黒ウサギが笑みを振りまくと、観客の声が舞台を揺らした。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお月の兎が本当にきたあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「黒ウサギいいいいいいいいいいいいいいいいい!!お前に会うために此処まできたぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「今日こそスカートの中を見てみせるぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

……半分以上が奇声だった。

黒ウサギは持ち前の精神力で笑顔を保ちつつもへにょり、とウサ耳を垂れさせて怯む。

飛鳥が生ゴミを見るような冷め切った目で観客席の一部を見下ろす。

十六夜は有象無象の観客席の声を聞き、重要な事を思い出したように真剣な表情になって白夜叉に向き直る。

 

「そういえば白夜叉。黒ウサギのスカートを絶対に見えそうで見えないスカートにしたのはどういう了見だオイ。チラリズムなんて趣味が古すぎるだろ」

 

白夜叉は、双眼鏡に食いついていた視線を外して十六夜を一瞥する。その表情には落胆が浮かんでいた。

 

「フン。おんしも所詮はその程度の漢であったか。おんしは真に芸術を理解する漢だと思っていたのだがな」

 

「……へえ?言ってくれるじゃねえか。つまりお前には、スカートの中を見えなくすることに芸術的な理由があると言うんだな?」

 

「無論だ」

 

白夜叉は首肯する。そして、まるで決闘を受けるかのような気迫で十六夜に凄んだ。

 

「考えてみよ。おんしら人類の最大の動力源はなんだ?エロか?成程それもある。だが、それを時に上回るのが想像力!未知への期待!知らぬことを知ることへの渇望!小僧よ、貴様程の漢ならばさぞかし数々の芸術品を見てきたことだろう!!その中にも、未知と言う名の神秘があったはず!!乙女のスカートに宿る神秘性もそうだッ!!その(ほか)数々の神秘も含め、神秘に宿る圧倒的な探究心は、同時に至ることのできない苦渋!その苦渋はやがて己の裡においてより昇華されるッ!!何物にも勝る芸術とは即ち――――――己が宇宙の中にあるッ!!!」

 

「なッ……己が宇宙の中、だと……!?」

 

ズドオオオオオオオオン!!という効果音がバックに出そうな雰囲気の十六夜。彼は、自分の知らない境地に衝撃を受けていた。

それと同時に、サラマンドラ一同も別種の衝撃を受けていた。

 

「し、白夜叉様……?何か悪いものでも食べたのですか……!?」

 

「見るな、サンドラ。馬鹿が感染(うつ)る」

 

マンドラは切り捨てるようにそう言うと、サンドラの視線を覆い隠して知らぬフリを決め込んだ。だがこの場合、マンドラの判断は正しいだろう。英断と評してもいいくらいだ。マンドラの冷たい視線が白夜叉を射抜く。

だが白夜叉は一向に構わない。芸術を追い求める彼女にとって、そんな物は些事にすぎない。

白夜叉は胸の前で拳を握り、己の説法をこう締めくくった。

 

「そうだッ!!真の芸術は内的宇宙に存在するッ!!乙女のスカートの中身も同じなのだッ!!見えてしまえば只々下品な下着達も――――――――見えなければ芸術だッ!!!」

 

ズドオオオオオオオオン!!という効果音を背後に幻視させながら白夜叉が言い切る。恥も外聞もなく言い切った白夜叉は、何処(いずこ)からか取り出した双眼鏡を右手で十六夜に差し出す。好敵手を見るような清々しい眼差しだ。

 

「この双眼鏡で、今こそ世界の真実を確かめるがいい。若き勇者よ。私はお前が真のロマンに到達できる者だと信じているぞ」

 

「…………ハッ。元・魔王様にそこまで煽られて、乗らないわけにはいかねえな……!」

 

双眼鏡を受け取り、二人は黒ウサギのスカートの裾を目で追い始める。

訪れるかもしれない、奇跡の一瞬を逃したりしないように。

 

 

白夜叉から頼みを聞き入れた均が頑張って耀について行こうとしている時に、当の本人がこんなことを力説していた事を均が知る由もない。あるいは、知らない方がお互いが幸せでいられるのかもしれない。

 

 

飛鳥が生温い目で二人のことを空気として扱うことを決意した時、黒ウサギの声が響き渡った。

 

『それでは入場していただきましょう――――――――――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耀が通路から舞台に続く道に出た瞬間、彼女は後ろから引っ張られた。

 

「え?」

 

素っ頓狂な声を上げる耀が、均に一瞬支えられて体勢を立て直させられた。特に耀は力を入れていない。均が耀の身体を誘導し、勝手に体勢を整えるように仕向けたのだ。

 

そんな地味に高度な技術を使った均は、耀を引っ張った反動で前に飛び出し、左足を使って自身の右前方の空間を蹴りつける。

 

「YAッFUFUFUUUUuuuuuuuuu!?」

 

「チッ、躱されたか」

 

「え……何、今の……」

 

耀の呟きが漏れる。

 

理由は不明だが、耀が通路から出た瞬間、均は僅かながら何者かの攻撃の意思を右方向から感知した。

先方にも傷つけるつもりはないようだったが、ただ黙って先に仕掛けられるのを見過ごすのも気分が悪い。

舐められるのも癪に障るし、笑いの種にされるのはもっと腹が立つ。

故に均は、迎撃することを選んだ。まあ、それは目の前を横切ろうとしていた火の玉の超反応によって躱されてしまったが。

 

均と、状況を理解できないまま通路から出てきた耀が見上げる先には、火の玉の上に腰掛けている人影があった。

 

「へー、あんたやるね。こっちが仕掛けるの、気づいてたんだ?」

 

その少女が、均に話しかける。この少女の名は、アーシャ=イグニファトゥス。耀の対戦相手だ。

 

「ええ、まあ。そこの彼の高機動力に躱されましたけどね」

 

「その火の玉……もしかして」

 

耀もじっと火の玉を見つめている。正確には、その中身を見つめているようだ。

 

「はぁ?何言ってんのオマエ。そっちの奴はわかってるみたいだけど、アーシャ様の作品を火の玉なんかと一緒にすんなし。コイツは我らが″ウィル・オ・ウィスプ″の名物幽鬼!ジャック・オー・ランタンさ!」

 

オマエ、で耀を、そっちの奴、で均を示したアーシャが火の玉に合図を送る。

すると火の玉は自身を取り巻く炎陣を振りほどいてその姿を顕現させる。

 

 

 

 

轟々と燃え盛るランプと、実体のないマントのような黒い布の服。

そして人の頭の十倍はあろうかという巨大なカボチャ頭。

 

その姿は、飛鳥が一度でいいから見てみたいと十六夜に熱く語った、カボチャのお化けそのものだった。

 

「ジャック!ほらジャックよ十六夜君!本物のジャック・オー・ランタンだわ!」

 

「はいはいわかってるから落ち着けお嬢様」

 

本当に珍しく興奮した声を上げて、飛鳥が十六夜の肩を揺らす。それは、長年の夢が叶った少女のように愛くるしい姿だった。

 

 

 

 

「ふふ~ん。″ノーネーム″のくせして私達″ウィル・オ・ウィスプ″より先に紹介されるなんて生意気だっつの。私の晴れ舞台の相手をさせてもらえるだけで泣いて感謝しろよ、この名無し」

 

「YAHO、YAHO、YAFUFUFUUUUuuuuuu~~~~~」

 

呆然としている耀を嘲笑うアーシャとジャック。

しかしその物言いは、耀の隣に立つ少年の表情を凍らせていた。

 

均の目は細められたまま、口と同様に緩やかな弧を描いている。明らかにキレている時の表情だ。

 

(どうやって泣かせてあげようかな……この女の子)

 

均がそんなことを考えているとは知りもしない彼女らは、未だに耀とついでに均を嘲笑っている。

至近距離でそんなやり取りを見ていた黒ウサギが、審判の役目のために怒りを爆発させることは出来ないものの、親しい者ならわかる怒りのオーラを振りまきながら少し厳しい口調で注意する。

 

『せ、正位置に戻りなさいアーシャ=イグニファトゥス!あとコール前の挑発行為は控えるように!』

 

「はいは~い」

 

人を小馬鹿にした様な態度で舞台上に戻るアーシャとジャック。

均は手で舞台を示して耀を促した。

 

「ほら、耀。早く舞台に上がろう」

 

「うん。……さっきは、ありがとう」

 

「ああ、あれは気にしないでいいよ。ちょっと舐められたくなかっただけだし」

 

耀の謝礼をあっさりと躱し、耀が舞台に上がるのを待つ均。

耀は少しだけ複雑そうな顔をしながらも舞台に上がり、その円状の舞台を見まわした。最後に、バルコニーにいる飛鳥に手を振る。

均も耀に続いて舞台に上がり、バルコニーに向けて一応、軽くだが手を上げておいた。

 

飛鳥がそれに気づいて二人に手を振り返す。

十六夜も面倒臭そうにしながらも軽く手を上げてそれに応える。

 

「大した自信だねーオイ。私とジャックを無視して客とホストに愛想ふるってか?何?私達に対する挑発ですかそれ?」

 

皮肉気にアーシャがそう言うや否や。

 

「うん」

 

耀が即答する。アーシャはカチンと来たようで唇を尖らせる。

 

負けず嫌いな耀のことだ。馬鹿にされた態度が気に入らなかったのだろう。あと、僅かに八つ当たりも入っているように見受けられる。均に助けられる結果になってしまったじゃないかどうしてくれる、といったところだろう。

 

そのやり取りを見て溜飲が下がったのか、黒ウサギは宮殿のバルコニーに手を向けて厳かに宣言する。

 

『―――それでは第一ゲームの開幕前に、白夜叉様から舞台に関して説明があります。ギャラリーの皆様はどうかご静聴の程を』

 

その瞬間、ギャラリーの声がピタリと止んだ。

バルコニーの前に出た白夜叉は静まった会場を見渡し、一つ頷く。

 

「うむ。協力感謝するぞ。それではゲームの舞台についてだが……まずは手元の招待状を見て欲しい。其処にナンバーが書いておらんかの?」

 

観客が一斉に招待状を取り出し探し始めた。持ってくるのを忘れたのか、頭を抱える者まで出る始末だ。

 

「ではそこに書かれているナンバーが我々の出身外門――″サウザンドアイズ″の三三四五番となっている者はおるかの?おるのであれば招待状を掲げ、コミュニティの名を叫んでおくれ」

 

観客席がどよめく。するとバルコニーの正面の観客席で、樹霊(コダマ)の少年が招待状を掲げていた。

 

「こ、ここにあります!″アンダーウッド″のコミュニティが、三三四五番の招待状を持っています!!」

 

おおおおっ!と歓声が起こる。白夜叉はニコリと笑うと、バルコニーから姿を消し、次の瞬間にはその少年の前に立っていた。

 

「ふふ、おめでとう。″アンダーウッド″の樹霊の童よ。あとで記念品でも届けさせてもらおうかの。よろしければおんしの旗印を拝見してもよろしいかな?」

 

少年が勢いよく頷く。彼は白夜叉に腕輪を手渡した。そこには、巨大な大樹の根に囲われた街が描かれている。

白夜叉はそれを見て一、二度頷くと少年に微笑みながら腕輪を返し、次の瞬間にはバルコニーに戻っていた。

 

「今しがた、決勝の舞台が決定した。それでは皆の者。お手を拝借」

 

白夜叉が両手を前に出す。全ての観客も倣って両腕を前に出した。

 

パン!という乾いた柏手の音が揃って響く。

 

 

――その瞬間、世界が一変した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バフン、と着地した均は、すぐさま周囲を確認する。

 

そこは、樹木に囲まれた場所のようだった。

均の隣では、耀が鼻で何かの匂いを嗅ぎ取りながら呟く。

 

「この樹……ううん、樹だけじゃない。此処、樹の根に囲まれた場所?」

 

「あらあらそりゃあどうも教えてくれてありがとよ。そっか、ここは根の中なのね~」

 

小馬鹿にしたような物言いはアーシャだ。この少女、余程耀のことが気に入らないらしい。

 

「………」

 

しかし、耀は顔を背けて無視。

恐らく耀の今の行動に面倒だったから以上の理由はないと思うが、受け手はそうは受け取らなかったらしい。

隣にいるジャックと共に臨戦態勢に入る。

しかし、耀が冷静な声音で制した。

 

「まだゲームは始まってない」

 

「はあ?何言って」

 

「勝利条件も敗北条件も何も提示されていない。これじゃゲームとして成立しない」

 

「ま、当然のことだね」

 

均が余計な一言を付け加えた。アーシャが明らかにむっとする。しかし、発言に正当性は感じたのかぎゃーぎゃー騒ぐことはなかった。

 

その時、耀とアーシャの間の空間に亀裂が走り、輝く羊皮紙を持った黒ウサギが現れた。

ホストマスターによって作成された″契約書類″の内容を、黒ウサギは淡々と読み上げる。

 

 

 

『ギフトゲーム名 ″アンダーウッドの迷路″

   ・勝利条件 一、プレイヤーが大樹の根の迷路より野外に出る。

         二、対戦プレイヤーのギフトを破壊。

         三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)。

   ・敗北条件 一、対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。

         二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

                                           』

 

 

「――――″審判権限(ジャッジマスター)″の名において、以上が両者不可侵で有ることを、御旗の下に契ります。御二人とも、どうか誇りある戦いを。此処に、ゲームの開始を宣言します」

 

ゲームの火蓋は切って落とされた。だが、両者共に睨み合ったまま動かない。お互いの出方を探っているようだ。

 

しばしの空白の後、アーシャが先に口を開く。

 

「睨み合ってても進まねえし。先手は譲るぜ」

 

「…………?」

 

耀が理解ができないという表情でアーシャを見つめる。

アーシャは肩を竦めながらそれに答えた。

 

「ま、さっきの一件があるしね。後でいちゃもん付けられても面倒だし?」

 

ツインテールを揺らしながら、アーシャは余裕の表情だ。自信があるのだろう。

耀は無表情で少し考えた後、おもむろに口を開いた。

 

「貴女は……″ウィル・オ・ウィスプ″のリーダー?」

 

耀の質問の意図を察し、均がいそいそと準備を進める。ギフトカードからヘルメスの靴を取り出し、クリアブーツと履き替える。耀が全力で走ったら、今の均では追いつくことが出来ない。なら、空を飛べばいいじゃん!という発想である。これはあの腐れお坊ちゃんとの戦闘の時に、どさくさに紛れてコピーしておいた物だ。本物はルイオスが持っているはずである。

 

一方、耀の意図を知る由もないアーシャは、嬉しそうに返答する。

 

「あ、そう見える?なら嬉しいんだけどなあ 残念ながらアーシャ様は、」

 

「そう。わかった」

 

リーダーに間違われたことが余程嬉しかったのか、愛らしい笑みを浮かべ身体をくねくねさせながら質問に答えるアーシャ。

しかし、耀は聞いていない。思いっきり会話をぶった切ると、背後の通路に疾走を開始した。

耀が何をするつもりか予想できていた均は、遅れず耀についていく。

アーシャはしばし唖然とする。だが、自分が無視されたと理解するや否やわなわなと震え、思いの丈をぶちまけた。

 

「オ……オゥゥゥゥケェェェェェイ!そっちがその気なら容赦なんざしねえ!行くぞジャック!木の根の迷路で人間狩りだ!」

 

「YAHOHOHOhoho~」

 

アーシャは怒りを露わにして猛追する。耀は背中を向けて通路と思しき根の隙間を次々登る。均は空中で器用に回転しながら木の根の尽くを躱し、耀に遅れずについていく。

アーシャは二人の背中に向けて叫んだ。

 

「地の利は私達にある!焼き払えジャック!」

 

「YAッFUUUUUuuuuuu!!」

 

アーシャが左手を翳すと、ジャックの右手に持つランタンとカボチャ頭から悪魔の業火が吹き出し、木々を焼き払って耀と均を襲う。

しかし耀は、最小限の風を起こして炎を逸らした。

 

(今の回避……耀は気づいてるみたいだね、あの炎の秘密に。でも、何か嫌な予感がするなぁ……)

 

均は炎を散らした耀に感心しながら、しかし直感が齎した嫌な予感を拭えずにいた。

耀は均の予想通りに、ジャック・オー・ランタンの秘密に気が付きつつあった。

 

(あの炎……ジンの話していた″ウィル・オ・ウィスプ″のお話通りだ)

 

耀は試合前に、ジンに教えられた知識を思い出す。

 

――――Will(ウィル)o'()wisp(ウィスプ)Jack(ジャック)o'(オー)lantern(ランタン)の伝承。

前者は鬼火と云われる現象で、後者は幽鬼と云われる逸話。この二つの伝承には、それぞれに共通した逸話が残っている。

その一つが、『二度の生を受けた大罪人の魂に、名もなき悪魔が篝火を与えた』という点。

伝承では、生前のジャックは二度の生を大罪人として過ごし、永遠に生と死の境界を彷徨うこととなる。それを哀れに思った悪魔が与えた炎こそ、ジャックのランタンから放つ業火。

――――″伝承がある″ということは″功績がある″ことと同義。つまり、″ウィル・オ・ウィスプ″のコミュニティのリーダーは『生と死の境界に現れた悪魔』のはずだ。

 

(だけど……彼女はリーダーじゃない。なら別の悪魔か種族のはず)

 

耀はそう思考を進めながら樹の根の空間を駆ける。

 

(仮にアーシャの正体が、生と死の境界を行き来できる程の力を持った悪魔なら、耀に勝ち目はなかった。でも、彼女は違うと答えた。なら、耀にも勝ち目はあるはずなのに……うーん、何だろう、この嫌な感じ……)

 

均は奇しくも耀と同じことを考えながら、正体のわからない嫌な予感を感じ続けていた。最近、この手の感覚が多い。しかもそれが中々外れないのだからタチが悪い。

均がそんなことを考えている間に、アーシャが次の行動を取った。

 

「あーもう、ちょこまかと避けやがって!三発同時に撃ち込むぞジャック!」

 

「YAッFUUUUUuuuuuu!!」

 

アーシャが再び左手を翳し、ジャックが右手のランタンから業火を放つ。

それを耀は、鷲獅子のギフトを使うことなく避け切った。

耀は、業火の正体を確信する。

 

(やっぱりそうだ。あの炎は、ジャックが出してるんじゃない。あの子の手で、可燃性のガスや燐を撒き散らしてるんだ)

 

これが、″ウィル・オ・ウィスプ″の伝承の正体である。大地から溢れ出た、可燃性のガスや物質の類なのだ。

 

(そうで間違いない。耀の嗅覚が、僕では捉えきれない違和感を感じ取っているようだし……正しいはずなのに、なんでこんなにも嫌な予感が続くんだ!?)

 

均も考察だけで同じ結論に行きついていたが、それでもまだ嫌な予感は拭えない。それどころか、どんどんと増してきていた。

 

アーシャは種を見破られたことに気が付いた。

 

「くそ、やべえ……!このままじゃ逃げられる!」

 

しかし、走力は耀と均が圧倒的に上。さらに、耀の五感は外からの僅かな気流を捉えている。迷路の意味はなかった。

その見る見るうちに離れていく二人の背中をアーシャは見つめ――――諦めたようにため息を吐いた。

 

「……くそったれ。悔しいが後はアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、ジャックさん」

 

()()()()()()

 

その瞬間、均の身体を怖気が駆け巡った。

え?と耀が振り返ったのを横目に見ながら、自身も振り返り体勢を整える。

遥か後方にいたカボチャ頭の姿はなく、耀のすぐ前方に霞のごとく姿を現した。耀が驚愕して足を止めてしまう。

 

「嘘」

 

「嘘じゃありません。失礼、お嬢さん」

 

ジャックの真っ白な手が強烈な音と共に耀を薙ぎ払い、樹の根の壁に叩き付ける。

 

「貴方も、失礼して」

 

次いで、ジャックは均をも吹き飛ばそうとする。耀ほど頑丈ではない均としては食らうわけにはいかない。

 

「フッ!」

 

「ほう……?………貴方、やりますね」

 

鋭く息を吐き、ヘルメスの靴の効果で飛びながら器用に攻撃を回避した均は、警戒を最大にしてジャックと距離を取る。ジャックは自身の攻撃を回避した相手に感嘆の声を上げた。

 

「さ、早く行きなさいアーシャ。この方々は私が足止めします」

 

「悪いねジャックさん」

 

悔しそうにそう言い残し、アーシャが三人に背を向けて走り去る。きっと自分の力だけで勝ちたかったのだろう。

 

「ま、待っ」

 

「待ちません。そして貴女は此処でゲームオーバーです」

 

追い縋ろうとする耀をジャックが止める。そして、ランタンから篝火を零す。

その小さな火種は瞬く間に樹の根を燃やし、轟々と唸る炎の壁となった。

先程までとは比べ物にならない、圧倒的な熱量だ。

 

「……貴方は」

 

「はい。貴女の御想像はきっと正しい。私は、アーシャ=イグニファトゥス作のジャック・オー・ランタンではありません。貴女が警戒していた存在―――生と死の境界に顕現せし大悪魔!ウィラ=ザ=イグニファトゥス製作の大傑作!世界最古のカボチャお化け、ジャック・オー・ランタンでございます!」

 

明確な意思と魂と威圧感を、そのカボチャの奥の瞳に灯したジャックが堂々と名乗りを上げる。口調はふざけていても、その存在感は本物だ。

それを上空で聞き、均は嫌な予感の正体を理解した。

 

(そういうことだったのか……。僕が感じていたのは、()()()。アーシャの作品というわりに、ジャックの霊格は大きかった。確証はなかったからスルーしてたけど、やっぱり″ウィル・オ・ウィスプ″のリーダーの作品だったわけだ……)

 

別種の嫌な予感が身体の中で渦巻いているのを感じながらもそれを無視し、均は思考を進める。眼下では、耀とジャックが何か話していた。

 

(あのジャックは間違いなく嘘は言っていない。今のままじゃ、僕でもアレは倒せないだろうし。耀なら尚更だ。()()()()()を倒すのに必要なのは、純粋な力じゃないからね。つまり、耀がこのゲームに勝つには、僕の力を頼るしかないってことになる……。勝てないまでも、僕にジャックの足止めをさせて、自分は先に進むべきだ。それが最善策だけど……耀が素直にやるかな?)

 

均が足元に意識を向けると、ちょうどジャックが腕を広げ、声高に叫んだ。

 

「いざ来たれ、己が系統樹を持つ少女よ!聖人ペテロに烙印を押されし不死の怪物―――このジャック・オー・ランタンがお相手しましょう!」

 

 

――アーシャが先行した今、耀が勝利するにはジャックを破壊するか、ジャックを誰かに任せて自分も全力でアーシャを追うしかない。

相手は不死存在。ならば、壊せないと思った方がいい。しかも相手は、耀の″生命の目録″の力さえ見破っている。ただでさえ勝ち目がないのに、それがどんどん薄くなる。

ジャックを任せる存在と言えば――――――。

 

対峙する二人を見下ろしていた均と、チラリと上を見上げた耀の目があった。

交錯は一瞬、耀は視線を逸らし自身の首にかかったペンダントを見つめる。

その喉がゲームの終了を宣言する――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ!!」

 

前に、均の上空からの飛び蹴りがジャック・オー・ランタンを襲った。

ジャックには、攻撃がわかっていたかのように躱されてしまう。

 

「え……」

 

「……耀、早く行きなよ。ここは僕が抑えるから」

 

均はジャックと対峙したまま、振り返らずに言う。

耀は、動かないまま言葉を紡ぐ。

 

「ど、どうして……」

 

「どうして?そんなことは決まってる。僕は言ったはずだよ。本当に倒せなさそうになったら助けるって」

 

「………頼んでない」

 

「……」

 

そっぽを向いて拗ねたような表情をしているんだろうな、などと考えながら、均はため息を吐いて耀に言葉を叩き付ける。

 

「……春日部耀。お前はそれでもプレイヤーか?」

 

「……どういう意味」

 

「どういう意味も何も、そのままの意味さ。勝てるかもしれない手段があるのに、それを使おうともせずに負けを認める。それのどこがプレイヤーなんだ?…………勝ちの目が潰えたわけでもないのにそのゲームを諦めるなんて、ゲームに対する冒涜だ。そんな奴にゲームプレイヤーを名乗る資格はない。――――――――恥を知れ」

 

絶対零度の冷たさを孕んだ言葉に、耀の動きが固まる。正論を叩き付けられて羞恥に顔を歪めるも、均の言葉に正当性を感じたようだ。鷲獅子のギフトを使い、出口に向かって飛び去って行く。

その気配を背中で悟った均は、ジャックの炎の瞳を見つめて言った。

 

「行かせてよかったのですか?ジャック・オー・ランタンさん?」

 

「ヤホホ、ジャックでいいですよ。なに、彼女を行かせた方がアーシャの成長に繋がると考えてのこと。それに、貴方とはお話したいと考えていたのです」

 

「奇遇ですね、僕もです。躱された時からもしや、とは思っていましたが。やっぱりそうだったんですね」

 

「ああ、バレているのではないかという私の推測は正しかったのですね。アーシャは気づいていなかったようですが」

 

均がジャックの正体について疑いを持ったのは、最初に耀を脅かそうとした時だ。

半信半疑ですらない、もしかしたら?程度のものだったが、合っていたらしい。それに、ジャックも何かを悟っていたようだ。

 

――『そこの彼』。均の発言にあったこのフレーズは、無意識下でジャックの正体を見破っていたから出てきた言葉だ。アーシャは、均が火の玉ではなくジャック・オー・ランタンだと気づいての発言だと思ったようだが。

 

「貴方の名乗りはしかと聞きましたので、今度はこちらから。″ノーネーム″所属にして春日部耀のサポート、平均です。以後お見知りおきを」

 

「これはこれは御丁寧に。ウィラ=ザ=イグニファトゥス作のジャック・オー・ランタンでございます。……それにしても」

 

「はい、何でしょう?」

 

小さく問いかけてきたジャックに、均が首を傾げて返す。二人を囲っていた業火の壁は、徐々に勢いを失いつつあった。

 

「何故今になって援護を?貴方程の腕前ならば、あのお嬢さんが攻撃されるのを防ぐこともできたと思うのですが」

 

全くもってジャックの言う通りである。業火による攻撃でさえなければ、均なら受け流すくらいのことはできただろう。

均は軽く肩を竦め、ジャックの疑問に答えた。

 

「……それが、耀との約束でしたので」

 

ジャックはカボチャ頭をゆっくりと縦に振ると、

 

「……やはり彼女は、人に頼ろうとしないのですね」

 

わかっていたように呟いた。それが少々意外で、均は驚きを少し露わにして訊ねる。

 

「……わかるんですか」

 

「ええ、まあ。あのお嬢さんの瞳を見れば。少々物寂しいものでしたからね」

 

「そうですか……ジャックさん、貴方に一つお願いしたいことがあります」

 

「ヤホホ、お聞きしましょう」

 

朗らかに笑うジャック。

 

「耀に、何か助言してやってください。僕が言っても、恐らく劇的な効果は見込めません。お願いします」

 

均は真摯に頭を下げる。恥も外聞もなく、などと付ける必要はなかった。均自身が、コミュニティの仲間のために頭を下げることが恥だとは思っていないからだ。

 

「……はい、承りました。微力ながら、やらせていただきましょう」

 

「ありがとうございます。……こんなお願いをした後に何ですが」

 

「――何でしょう?」

 

これは少し非常識だと思っているのか、均はばつが悪そうにしながらも自分の伝えたいことを口にする。

 

「まだゲームは続いています。……世界最高のジャック・オー・ランタンに、お手合わせ願いたい」

 

「……ヤホホ、いいでしょう。不肖このジャック・オー・ランタンがお相手いたします!」

 

均はギフトカードからホワイトダガーを取り出し、構える。ジャックは軽く腕を広げた。

 

――業火の壁が消滅する。

 

「シッ!」

 

「ヤホホホホ!」

 

均は彼我の距離を一瞬で詰めてジャックに斬りかかる。ジャックはそれを軽々と躱し、炎を連射してくる。

均は樹の根に手をついて目を瞠るような動きで回避すると、再びジャックに斬りかかった。

 

「ヤホホホホ、貴方も中々の使い手のようですが……まだ甘いッ!」

 

「なっ!?」

 

均は気を抜いたわけではない。

にも関わらず、ダガーが均の手から弾き出されてしまった。ジャックを見れば、左手が振り抜かれている。

 

「チッ」

 

今の攻撃が見えなかったことへの怒りを舌打ち一つに詰めて吐き出し、右手のみにダガーを持った戦闘に頭を切り替える。

一気に距離を詰め、カボチャ頭に斬り上げるような一撃。

それを頭を振って回避した僅かな隙を見逃さずに、ランタンに強烈な右の蹴りを叩き込む。

 

「ヤホッ!?」

 

「取った!」

 

ランタンを吹き飛ばし、カボチャ頭に突き刺すように攻撃を仕掛け――――。

 

「残念でしたね」

 

「くっ!?」

 

ジャックの左手に強烈な平手打ちを叩き込まれた。

ヒットの直前に何とか左に向かって跳び、衝撃を受け流すと共に受け身を取ってダメージのほとんどを散らす。

 

「ヤホホ……今のは少々焦りました。ですが、私は純粋なヒトではありません。人間とは違う動きで攻撃が飛んでくることは念頭に置いておいた方がいい」

 

「……ご忠告、感謝します」

 

今のタイミングなら、本来は決まるはずだった。

人間相手なら、余程の化け物染みた能力を持っていない限り蹴りの一撃でのけ反らされ、ダガーの一撃を食らうことになっていただろう。

しかし、自分はそうではないと、ジャックは言っているのだ。

 

警戒を解かずに均が二、三歩跳び退り、弾き出されたダガーの下まで行きそれを拾う。

 

「行きます!」

 

再び双短剣を構えなおした均がそう言って跳びかかろうとした時――――会場の舞台はガラス細工のように砕け散り、元の円状の舞台に戻ってきていた。

黒ウサギのアナウンスが響く。

 

『勝者、アーシャ=イグニファトゥス!』

 

割れんばかりの歓声が舞台を包む。

均は感情を伺わせない表情で短剣を消失させジャックに一礼すると、周囲を見回す。

目的の人物を発見し、そちらに歩いて行った。ジャックも耀の方に行ってくれたようだ。

 

「やあ、アーシャさん」

 

「……何だよ、アンタか」

 

「……なにか、不機嫌そうですね」

 

「んなことねえよ!んで、何か用か?」

 

明らかに不機嫌な口調のアーシャ。しかし言及すれば面倒なことになるのは目に見えているので特に何も言わない均。

 

「いえいえ、ちょっとお話したいなーとか思っただけですから」

 

「私には話すことなんて特にな……いや、アンタ名前は?」

 

「名前ですか?平均です」

 

「……タイラ、ナオね……サンキュー、覚えとくよ」

 

そう言って、アーシャはジャックの下に向かっていく。

話を切り上げられてしまった均だったが、別に不機嫌になるわけでもなく呟く。

 

「うーん、ジャックさんとやってみてわかったけど、まだ鈍ってるなあ……こりゃ鍛錬が足りないね。あと鍛え方も悪いのかな」

 

頭をポリポリと掻いて反省していた均は、何かを感じて上空を仰ぐ。

そこから降り注ぐ、黒い封書。均は靴の飛行能力を使って空へ舞い上がり、手に取って開けた。

 

笛を吹く道化師の印が入った封蝋を開封すると、中から出てきたのは黒い″契約書類″。

そこには、こう書かれていた。

 

 

『ギフトゲーム名″The PIED PIPER of HAMELIN″

 

   ・プレイヤー一覧

         ・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に

          存在する参加者・主催者の全コミュニティ。

 

   ・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

         ・太陽の運行者・星霊 白夜叉。

 

   ・ホストマスター側 勝利条件

         ・全プレイヤーの屈服及び殺害。

 

   ・プレイヤー側 勝利条件

         一、ゲームマスターを打倒。

         二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                      ″グリムグリモワール・ハーメルン″印』

 

 

「これは……!」

 

均が事態を理解するのと同時に、観客の誰かが叫びを上げた。

 

「魔王が……魔王が現れたぞぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」

 

 

 

ついに魔王が、現れた。

 

 

 

 

 




……てなわけで、ここで切りました。
マジかよって感じですね。自分でそう思います。

耀と均の関係が何やら微妙な感じに……大丈夫なのかしら。
僕はキャラが動くままに話を書いてるんで、均が加わることでこんなことに……原作からかけ離れないことを祈るばかりです。

次回から本格的に魔王との戦いですね。
しばらくしたら書けると思います。

では、また次回。


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