問題児たちと(常識人の)幼馴染が異世界から来るそうですよ?   作:gobrin

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第三話 コミュニティのリーダーと胡散臭い奴に出会うそうですよ?

「ジン坊っちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」

 

黒ウサギが手を振りながら一人の少年に近づく。

 

(……子どものように見えるな。ローブがダボダボだし。髪の毛が跳ねてる。癖っ毛かな?可愛らしい)

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの御三方が?」

 

「はいな、こちらの御四名様が――」

 

クルリ、と振り返る黒ウサギ。

ピシリ、と固まる黒ウサギ。

 

「……え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、性格と口がかなり悪くて、全身から″俺問題児!″ってオーラを放っていた殿方が」

 

「ああ、十六夜君のこと?彼なら″ちょっと世界の果てを見てくるぜ!″と言って駆け出していったわ。あっちの方に。均君、誘われてなかった?」

 

「はい、″一緒に行くか?″って聞かれたけど断りましたよ。僕じゃあ十六夜のスピードについていけませんから」

 

あっちの方に。と指を指すのは上空四千mから見えた断崖絶壁。均たちの呑気な会話に、黒ウサギがウサ耳を逆立てて怒る。

 

「な、なんで止めてくれなかったんですか!」

 

「″止めてくれるなよ″と言われたもの」

 

「というかああなった十六夜は基本止まりませんし」

 

「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」

 

「″黒ウサギには絶対言うなよ″と言われたから」

 

「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう御三人さん!」

 

「「「うん」」」

 

特に均は心から頷く。

 

(黒ウサギさん?あいつを止めるのは疲れるんだよ?僕はそれをずっとやってたんだから、断言する。……というか息が合うな、僕たち)

 

ジンが全力で叫ぶ。ついでに黒ウサギが前のめりに倒れた。

 

「大変です!″世界の果て″にはギフトゲームのために野放しにされている幻獣が」

 

「幻獣?」

 

「幻獣というと、ペガサスとかユニコーンとかのイメージですね。その類がいるんですか?」

 

耀が反応し、均が尋ねる。

 

「は、はい。″世界の果て″付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ちできません!」

 

「あら、ということは、もう彼はゲームオーバー?」

 

「ゲーム前にゲームオーバー?……斬新?」

 

「うーん、十六夜なら大丈夫だと思いますけど。あ、迷子にはなるかもしれませんね」

 

「縁起でもないこと言わないでください!あと、貴方は貴方で肝が据わった方ですね!」

 

「十六夜とは幼馴染ですし……。その経験から言いますけど、十六夜は心配するだけ無駄ですよ?」

 

「……ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

ゾンビのように黒ウサギがユラリ、と起き上がる。

 

(……すごい迫力だ、怒ってるっぽい。……心配するだけ無駄だと思うけどなあ)

 

「わかった。黒ウサギはどうする?」

 

「問題児を捕まえに参ります。ついでに――″箱庭の貴族″と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります!」

 

黒ウサギの髪の色が変わる。綺麗な緋色だ。感情が昂ると変わるらしい。均は一応忠告する。

 

「心配するだけ無駄だと思いますが……あ、帰り道がわからないかもしれないので十六夜の道案内はお願いしますね」

 

それを聞いた黒ウサギは飛び上がりながら、

 

「なんですかそれ!一刻程で戻ります!皆さんはゆっくり箱庭ライフを御堪能くださいませ!」

 

と言って均たちの視界から消えた。飛んでいって。

 

(速いなあ。……というか忠告したら怒鳴られた。理不尽だな。もう黒ウサギでいいや、敬語はやめよう)

 

均は心の中で一人そう決めると、あの二人のことを意識の隅に追いやった。

 

「箱庭のウサギは随分速く飛べるのね」

 

「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさなければ大丈夫だと思うのですが……」

 

「取りあえず、十六夜君のことは彼女に任せて箱庭に入りましょう。貴方がエスコートしてくださるの?」

 

「あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。御三方のお名前は?」

 

「久遠飛鳥よ」

 

「春日部耀」

 

「僕は平均。均と呼んでください。先程も言いましたが、十六夜の幼馴染です。君のことはジン君と呼べば?」

 

ジンが礼儀正しく自己紹介し、飛鳥と耀はそれに倣い一礼する。均は友好の印に握手を求めた。

 

「ジンでいいですよ、均さん。それと、敬語でなくて大丈夫です。よろしくお願いします」

 

均とジンは握手を交わす。

 

「わかった。こちらこそよろしくね、ジン」

 

「それじゃあ、箱庭に入りましょうか。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」

 

飛鳥はとても上機嫌な様子でジンの手を取り、箱庭の外門をくぐった。

 

 

 

 

「これはすごいな……」

 

均が呟く。

飛鳥、耀、均、ジン、三毛猫の四人と一匹は箱庭の幕下に出る。天幕に覆われているのに、中は日の光が降り注ぐ。

 

『お、お嬢!外から天幕の中に入ったはずなのに、御天道様が見えとるで!』

 

(三毛猫がなんか鳴いてる。視線の向きと意識の向け方からして……多分、耀さんに話しかけているんだろう)

 

「……本当だ。外から見たときは箱庭の内側なんて見えなかったのに」

 

(やっぱり会話が成立してるみたいだ。いいな、僕にもできるかな?)

 

均は箱庭の神秘に感嘆しながらも、冷静に周囲の状況を観察していた。

 

「天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。あの天幕は太陽光を直接受けられない種族のためにあるので」

 

「へえ?ならこの都市には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」

 

「え、居ますよ?」

 

「……そう」

 

なんとも複雑そうな顔をする飛鳥。その隣で、均は顔には出さず、驚いていた。

 

(へえ、そうなのか。師匠のおかげでいろんな人と出会ったけど、純粋な吸血鬼は居なかったな。ぜひとも会ってみたいね)

 

 

 

 

四人と一匹は″六本傷″の旗を掲げるカフェテラスに座り、軽食を摂ることにした。

 

「いらっしゃいませー。ご注文はどうしますか?」

 

注文を取るために店の奥から素早く猫耳の少女が飛び出てくる。

 

「えーと、紅茶を二つと緑茶を二つ。軽食にコレとコレと」

 

『ネコマンマを!』

 

「はいはーい。ティーセット四つにネコマンマですね」

 

……ん?と飛鳥とジンが不可解そうに首を傾げる。均は予想していたようで、特に気にした様子はない。だが、耀は信じられない物を見たような目で猫耳の店員に問いただす。

 

「三毛猫の言葉、分かるの?」

 

「そりゃ分かりますよー猫族ですもん。お歳のわりに随分綺麗な毛並みの旦那さんですし、ちょっぴりサービスさせてもらいますね」

 

『ねーちゃんも可愛い猫耳に鉤尻尾やな。今度機会があったら甘噛みしに行くわ』

 

「やだもーお客さんったらお上手なんだから♪」

 

猫耳店員は機嫌が良さそうに店内に戻る。

その姿を見送り、耀は嬉しそうに三毛猫をなでる。

 

「……箱庭ってすごいね、三毛猫。私以外にも三毛猫の言葉を分かる人がいたよ」

 

『来てよかったなお嬢』

 

「え、ちょっと待って。貴女、もしかして猫と会話ができるの?」

 

珍しく動揺した声の飛鳥に、耀はコクリと頷く。ジンも興味深かったようで、質問を続けた。

 

「もしかして猫以外にも意思疎通は可能ですか?」

 

「うん。生きているなら誰とでも話はできる」

 

「それは素敵ね。じゃあそこを飛び交う野鳥とも会話が?」

 

「うん、きっと出来……る?ええと、鳥で話したことがあるのは雀や鷺や不如帰ぐらいだけど……ペンギンがいけたからきっとだいじょ」

 

「「ペンギン!?」」

 

「う、うん。水族館で知り合った。イルカたちとも友達」

 

耀の声を遮るように飛鳥とジンの二人が声を上げる。まさかペンギンと会話する機会があるとは思わなかったのだろう。

均は静かに三人の話を聞いていた。

 

「しかしそれなら心強いギフトですね。この箱庭では幻獣との意思疎通が難しいですから」

 

「そうなんだ」

 

「はい。幻獣と同一種か、相応のギフトがないと意思疎通は難しいというのが一般ですね。

箱庭の創始者の眷属たる黒ウサギでも、全ての種とはコミュニケーションはとれないはずです。

先ほどから驚かれていませんが、均さんはどうなんですか?」

 

「いや、今の僕には無理だよ。耀さんの、すごいギフトなんですね」

 

()()。その言い方に、疑問を覚えた者はこの場にはいなかった。

 

「本当に……春日部さんは素敵な力があるのね。羨ましいわ」

 

飛鳥にそう言われ、困ったように頭を掻く耀。それに対して、飛鳥は憂鬱そうな声と表情で呟く。

均と耀は出会って数時間の間柄でも、飛鳥の表情が彼女らしいものではないと感じた。

 

「久遠さんは」

 

「飛鳥でいいわ」

 

「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」

 

「私の力は……まあ、酷いものよ。だって────」

 

「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュニティ″名無しの権兵衛″のリーダー、ジン君じゃあないですか。今日はお守り役の黒ウサギは一緒じゃあないんですか?」

 

品が無いくせに上品ぶった声が会話に乱入し、飛鳥の話を遮った。

四人がそちらを見やると、ピチピチのタキシードを着た大男が立っていた。

 

冷たい風が、その場を通り抜けた。

 

 




均の言葉遣いが最初、年下のジンにも敬語だったのは均の性格のためです。後々話すことになります。

彼は猫を被っています。実際の性格は十六夜にそれなりにクズを足した感じです。
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