問題児たちと(常識人の)幼馴染が異世界から来るそうですよ?   作:gobrin

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第四話 均の本領発揮だそうですよ?

(……なんだコイツ?いきなり入ってきて。タキシードが似合ってなくて気持ち悪いんだけど。……どうしようか?武力行使で黙らせる?)

 

などと物騒なことを均が考えていたら、その大男は均たちのテーブルの空いている席に勝手に腰を下ろした。

 

「貴方の同席を許可してはいません。それと僕らのコミュニティは″ノーネーム″です。″フォレス・ガロ″のガルド・ガスパー」

 

「黙れ名無しが。聞けば新しい人材を呼び寄せたそうじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させたものだ――そう思わないかい、御三方」

 

ガルドと呼ばれた巨躯のピチピチタキシードは均たちに愛想笑いを向けるが、相手の失礼な態度に三人は冷ややかな態度で返す。

 

「席に座るなら名前くらい名乗るのが礼儀だと僕は思いますが」

 

「そうね。それと一言添えるのも礼儀よ」

 

「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ″六百六十六の獣″の傘下である

「烏合の衆の」

コミュニティのリーダーをしている、ってマテやゴラァ!誰が烏合の衆だ小僧オォ!!!」

 

(お、ジンうまいな。グッジョブ。今のは面白かった)

 

ジンに横槍を入れられたガルドは怒鳴り声とともに激変する。

 

「口を慎めや小僧ォ……紳士で通ってる俺にも聞き逃せねえ言葉はあるぜ……?」

 

筋肉が肥大しているのか、ガルドのシルエットが大きくなりタキシードがミチミチと悲鳴をあげる。

 

「森の守護者だったころの貴方なら相応に礼儀で返していたでしょうが、今の貴方はこの二一〇五三八〇外門付近を荒らす獣にしか見えません」

 

ジンはガルドの脅しに怯まずに真っ向から言い返す。

この男を紳士と表する人物は、少なくともこの場にはいないだろう。

 

「そういう貴様は過去の栄華に縋る亡霊と変わらんだろうが。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてんのか理解できてんのか?」

 

「それなら推測くらいならできていますよ」

 

突然の均の言葉に全員が驚いた顔をする。

特に、ジンの驚きが大きかった。

 

(アレ?そんな驚くことかな?状況を推察できる材料は多かったよね)

 

内心そんなことを思った均だが、平然として続ける。

 

「と言っても今のガルドさんの言葉で推測できたんですが」

 

「……その推測というのをお伺いしても?」

 

ガルドが均に話しかける。

それに笑顔を向けながらの均の心。

 

(こっち向くな息が臭い。……いけない、思考がだいぶ乱暴になってる。ボロを出さないように注意しなきゃ)

 

「わかりました。……ジン、君のコミュニティは弱く……いや、まだ言葉が足りないか。衰退したコミュニティなんでしょ?」

 

均の言葉にジンが肩を震わせる。

ガルドも目を細めた。

 

「情報が少ないからさすがに何が起きたかまでは推測できませんが……かなり大きなどうしようもない何かがあったんだと思います。

″過去の栄華に縋る″ということは昔はすごかったということですよね?今こうして周りから嫌味を言われてしまうくらいには。それでも対抗できなかったのなら途方もないことが起こったのだと推測されます。そして、その再建のために僕たちを呼び出したのでしょう」

 

均は一息ついて、ジンに一度視線を向けてから口を開く。

 

「そのことを僕たちに伝えないのは、僕たちがジンのコミュニティに入らなくなる可能性を懸念しているから。つまり、僕たちはまだ入るコミュニティを選ぶことができる。恐らく、黒ウサギもグルでしょう。僕らに茶化されたとき、結構本気で怒っていたようでしたから。取り敢えず推測したのはこの辺りですが……違いますか?」

 

「いやはや、目端の利く方ですね。その通りです。ジン君のコミュニティは数年前までこの東区最大手コミュニティでした。最もリーダーは別人でしたが。ジン君とは比べようもない優秀な男だったそうです。ギフトゲームの戦績も人類最高の記録を持っており、南北の主軸コミュニティとの交流も深かった。南区画の幻獣王格や北区画の悪鬼羅刹が認め、上層に食い込むコミュニティだったというのは嫉妬を通り越して尊敬する程にすごいのです。まあ、先代は、ですが」

 

ガルドはジンを見ながら嫌味ったらしく言う。

 

(……気分が悪いな。抑えないと)

 

均は嫌悪感を覚えながらも、自制を強くしてそれを押し隠す。

 

「名と旗印というのは?」

 

「コミュニティは箱庭で活動する際、″名″と″旗印″を申請しなくてはいけません。特に旗印は、コミュニティの縄張りを示す重要なものです。この店にもあるでしょう?」

 

ガルドは六本傷の旗を指して言う。

 

「例えばですが、もしここを自分のコミュニティ下に置きたいのであれば、あの旗印のコミュニティに両者合意でギフトゲームをすればいいのです。実際に私のコミュニティはそうやって大きくしました」

 

均は目を細めた。今の発言と黒ウサギの説明を統合して考察すると、不審な点がある。

均の瞳は絶対零度の冷たさを湛えているが、ガルドはそれに気づかない。

 

「旗を賭けてギフトゲームをしたの?それでこんなに君の胸元のマークと同じ旗を掲げた店が多いんだね」

 

均は今のガルドの発言から、敬語を使う必要がないと判断。猫かぶりをやめる。

些細な口調の変化に気づいたのか。ジンが、チラリと均を見た。

 

「はい、そうです。残っているのはここの店のように本拠が他区か上層にあるコミュニティか奪うに値しない名もなきコミュニティぐらいですよ」

 

ガルドが下卑た笑みをジンに向ける。均が口調を変えたのに気づかなかったようだ。

 

「それで?ジンのコミュニティが″ノーネーム″と呼ばれる理由はわかったよ。じゃあ、何が起きて″名″と″旗印″を失ったのかな?」

 

均の様子が徐々に変わっているのに気づかず、ガルドは意気揚々と続けた。

 

「箱庭の天災″魔王″に奪われたのですよ。名も旗印も主力も奪われ、名誉も誇りも失墜したコミュニティ。それがジン君のコミュニティです。唯一できるギフトゲームに参加しようにも戦力がいないから参加する意味がほとんどない。戦力を補充しようにも、優秀な人材が失墜したコミュニティに加入すると思いますか?」

 

「誰も加入したいとは思わないだろうね」

 

「そうでしょう?それに、彼はコミュニティの再建を掲げていますが、実際のところ黒ウサギにコミュニティを支えてもらっているだけの寄生虫ですよ。ウサギはコミュニティにとって所持しているだけで大きな″箔″が付きます。どこのコミュニティにも破格の待遇で愛でられるんですよ。なのに彼女は毎日毎日糞ガキどものために身を粉にして走り回り、僅かな路銀でやりくりしている。本当に不憫ですよ」

 

(うわ、頭に手を当ててヤレヤレとかやってるよ、ワザとらしい。キモいなぁホント。……素が出まくってる。気をつけなきゃ。……まだバレてないみたいだし)

 

「なるほどね。ガルドさんが声を掛けてきた目的も読めたよ」

 

「ほぅ、それは?」

 

「多分、僕たちと黒ウサギを引き抜きたいんじゃないかな?もっとも、僕たちはまだ正式にコミュニティに所属しているわけではないから、引き抜きとは少し違うけどね」

 

パチパチパチ、と。乾いた拍手の音が一名(匹?)分響いた。

 

「本当に素晴らしい。まさにその通りです。黒ウサギ共々私のコミュニティに来ませんか?」

 

「な、何を言い出すんですガルド=ガスパー!?」

 

ジンは怒りのあまりテーブルを叩いて抗議する。

 

「黙れ、ジン=ラッセル。そもそもテメェが名と旗印を改めていれば最低限の人材はコミュニティに残ってたはずだろうが。それを貴様の我が儘でコミュニティを追い込んでおきながらどの顔で異世界から人材を呼び寄せた」

 

「そ……それは」

 

「何も知らない相手なら騙せると思ったか?その結果、黒ウサギと同じ苦労を背負わせるっていうなら、こっちも箱庭の住人として通さなきゃならねえ仁義があるぜ」

 

ガルドの言葉にジンは何も言い返さない。ガルドのこの言葉には正当性が感じられる。だがガルドの言葉以上に、均たちに対する後ろめたさと申し訳なさがジンを怯ませていた。

 

(僕たちに後ろめたさを感じているんだろうね。そういう風によくないことをしているっていうことをしっかり自分で認識して受けとめることができるのは、ジンの美点かな。………そこのクソ野郎とは違って。……でも、少しキツく注意しておこうかな?)

 

「……で、どうですか御三方。貴方たちは箱庭で三十日間の自由が保証されています。彼のコミュニティと私のコミュニティを視察してからでも――」

 

「その前に、一つジンに聞きたいことと、言いたいことがあるんだ。いいかな?」

 

「……ええ、どうぞ」

 

「……な、なんですか?」

 

ガルドは余裕のある態度で承諾し、ジンは恐る恐るといった感じで尋ねる。

 

「もしかして、どうせならさっきの話がバレるのがコミュニティ加入後だったら、とか思った?」

 

「……」

 

「この場合沈黙は是也、だよ。ならジン、次は言いたいことだ」

 

均はにこやかに笑いかけながら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あまりふざけたことはするなよ?僕たちから色よい返事が聞きたいなら、相応の礼儀でこい。あまり人を舐めたことをするな。信用を失うぞ。もう重要な隠し事は二度とするな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺気を全力で放ちながら言う。均の殺気に同席していた全員が震え上がり、周囲の野鳥が全て飛び立った。これでジンは二度と馬鹿な真似はしないだろう。

ガルドは殺気に当てられたせいで、誘いを断られたことに気づかなかった。

なので、均は親切丁寧に返事をしてやる。

 

「……んで、さっきのガルドさんの話だけど――その必要はないよ。

僕は自分のやってる悪事を棚どころか屋根の上にぶん投げて、偉そうに他人に説教するクソ野郎なんかがいるコミュニティに入る気はないからね。ジンのところにさせてもらうよ」

 

「なッ……!言いがかりはやめてもらってもいいですかねぇ……。何を根拠に」

 

「謎解きはもう少し待ってね。まだ二人の意向を聞いてないから。それで、飛鳥さんと耀さんはどうするんですか?」

 

「私もジン君のコミュニティで間に合ってるわ。春日部さんは?」

 

「どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだから」

 

「あら、じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?私たち、意外に仲良くやっていけそうな気がする」

 

「なら、僕は二号に立候補していいですか?貴女たちと一緒にいると、面白くなりそうなので」

 

「……うん。飛鳥は私の知る女の子とはちょっと違うから大丈夫かも。均はなんか……不思議な人だから大丈夫。あと均、敬語やめていいよ」

 

「あ、私も敬語はやめてもらっていいかしら?」

 

「ん……わかったよ。これからよろしくね、飛鳥さん、耀さん」

 

リーダーたちをそっちのけで盛り上がる三人。

ジンは喜びと困惑が同居したような微妙な表情をしている。

ガルドの青筋がピクピク震えている。相当怒っているのだろう。

 

「……失礼ですが、理由を、お尋ねしても?」

 

「あ、それなら僕がさっき言ったことの根拠を示せば十分だと思うな。それでいい?多分拍車をかけて行く気が失せるけど」

 

「任せるわ」

 

「……ご自由に」

 

「じゃあ説明するね。ここに来てから聞いた黒ウサギの話とそこのクソ野郎――いや、クソ虎の話を合わせて考えるとおかしな点があるんだ」

 

「……それは、何なん、でしょう、かねぇ……?」

 

さらりと混ぜられる罵倒の句にガルドの顔が引きつっている。

ブサイクすぎて笑えない。

 

「黒ウサギはコミュニティが開催するギフトゲームにはチップが必要だって言ってた。そしてそのチップはなんでもいいとも。双方の合意があればね。

さて、こんな緩いルールだ。ゲームを開催したとき、相手が持ちかけて来たチップがどんなに魅力的だったとしても、自分たちのコミュニティの存続に関わるようなものを普通賭けるかな?賭けないよね。そうならないように上手くやるんだろうし、そもそも相手の話に乗らなきゃいい話なんだ。相手が開催したゲームなら尚更だ。コミュニティ存続に関わるものをチップにして賭けるわけがない。

するとここで疑問点が浮かび上がる。ねぇネコ科の畜生。さっき旗を賭けたゲームに勝って支配下に置いたって言ったよね。なんで相手は乗ったんだろう?

賭けるものがそれしかなかったから?違う。そうなる前に降りるんだ、コミュニティを運営する者なら。

賭けるものがそれしかなくなるまで畜生のコミュニティにボコボコにされたから?これも違う。相手の力量がわかって、負ける可能性が高いなら、相手のゲームに乗るべきじゃない。また、一回でそこまでやられてしまうような大勝負を未知の力量の相手にやるわけがない。

まあ、支配下に置かれてるのが一つのコミュニティだったらリーダーが馬鹿だったんだなってなるけど、ここら一帯全部がっていうのはあり得ない。これらの推測から導きだされることは何か?」

 

均が一息つく。空気はかなり張りつめていた。均の余計な煽りが主な原因だが。

ガルドが緊張でゴクリと喉を鳴らす。

 

「その結論は一つ……。ねぇ、ガルド。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……お前、何を脅迫材料にした?」

 

 




長かったので、微妙なところで切るはめに……orz

均は理詰めで相手を黙らせるタイプです。
頭はかなりいいです。
十六夜と同等かそれ以上にインテリです。
でも性格が悪いのでホントもうね。
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