NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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うちはの集落

 

 シャナが入院してから数日。ナルト達がサスケ奪還のために、大蛇丸の手がかりを手に入れに里を出た後、シャナは自宅に帰っていた。

 

 骨折も直ぐに治癒し、日常生活に問題なしと判断されたためだ。

 ただ任務に就くには、早々という事で休暇を満喫している。気分的には、サスケ関連の任務に出たヤマト率いる第七班を追いたいところではあるのだが、無断で里を出る訳にもいかない。

 

 仕方ないので家の掃除をし、時間が余っていたので久々に映画館に足を運んで堪能していた。

 丁度作品を見終わったので、劇場のスタッフに声をかける。

 

「おじさん。また公開期間終わったら、表のポスター頂戴ってばね」

「あぁ。いつも見に来てくれるから、取っとくよ」

 

 木ノ葉の里の大人が嫌いなシャナでもよく利用する施設の住人とはコミュニケ―ションはとっている。極僅かなコミュニティーにしか関らない事には変わりないが、それでも大きく成長した部分かもしれない。 

 

「後はどうしよう。買い物でも行こうかな。お米とかはあったけど、野菜のストックが無くなって来てたっけな」

 

 映画の鑑賞を終え、帰路に就く間に他の用事を思い出そうとしていたシャナ。 

 

「お、シャナ姉ちゃんだコレ」

「ん? 木ノ葉丸か。どうしたんだってばね」

 

 シャナに声をかけてきたのは、木ノ葉丸だった。いつもの3人組ではなく今日は一人の様子。泥だらけで先程まで任務だったのかと尋ねるが首を横に振る。

 

「修行だコレ」

「おぉ。いつものエロ忍術?」

「今回はナルト兄ちゃんから伝授された、影分身の練習だコレ」

 

 シャナはナルトが随分と難しい術を教えているなと感心した。影分身は有用で便利な術だ。ただ習得難易度が高く上忍クラスの忍術だ。シャナとナルトのうずまき姉弟が多用する術の為、必然的にナルトを師と仰ぐ木ノ葉丸が習得しようとしていても違和感はない。

 

「シャナ姉ちゃん、今時間あるんかコレ?」

「あるってばね」

「だったら、修行見てほしいんだ。ナルト兄ちゃんに見せる前に姉ちゃんに見てほしんだコレ」

 

 木ノ葉丸の願いをシャナは承諾した。ナルトが師匠という段階で、詳しい説明がない修行をしているはず。感覚派のナルトだけでは細かい部分の修正は出来ないだろう。ナルトの師の一人としてその弟子の面倒も見てやろうという考えだった。

 

ーーーーーーーー

 

 木ノ葉の外壁付近まで移動したシャナと木ノ葉丸。一通りの少ない場所で木ノ葉丸の影分身を見せられる。だがどれもお粗末でまともな分身がない。

 

「そんなのじゃ足手纏いをチャクラ使ってつくってるだけだってばね。さっき教えた方法でより精巧に仕上げるってばね」

「難しいぞコレ! こうかコレ」

「さっきよりひどい! 真面目にやるってばね」

 

 シャナは結構細かく説明しながら術の指導をしていく。だが1時間近くダメ出しばかり受けた木ノ葉丸が、若干の苛立ちを覚えるのも仕方がないと言える。やがてシャナが休憩を指示する。

 

「全く進歩なしだってばね」

「酷いぞコレ」

「酷くありませーん。事実ですー」

「くっ、こうなったら!」

 

 絶対的強者であるシャナに一矢報いてやろうと木ノ葉丸がおいろけの術を使おうとした。強い相手にはもれなく効果のある術であり、過去にナルトがこの術でシャナを倒したことがあると豪語していた。一流のエロ忍術使いの木ノ葉丸のおいろけの術はナルトにも劣らない。

 一泡吹かせようとしたが、シャナは目にも留まらない速さで多重影分身を行い木ノ葉丸を取り囲む。数十人近い人数で囲まれた木ノ葉丸が硬直する。

 影分身は全員で印を結び煙が発生する。そして煙が晴れた時、木ノ葉丸の前には。

 

「え」

 

 多種多様のセクシーなお姉さんがカラフルなバニーガール姿で木ノ葉丸を取り囲んでいた。そして最大限に色気を振り撒いた。

 

「バニーハーレムの術だってばね」

「う、え、あ、ぶーー」

 

 シャナの術を受けた木ノ葉丸は鼻血を流し、その場で頭から煙を吹いて気絶した。シャナの開発したエロ忍術の威力に幼気な少年の許容量が耐えられなかったのだ。

 木ノ葉丸がダウンしたのを確認したシャナが術を解除する。

 

「おいろけ系の術は、私もナルトから教わってるってばね。暇なときに新術を開発してたけど、中々の威力だったわね」

 

 木ノ葉丸が知らない真実。シャナは、おいろけ系の忍術の使い手だという事。元々、エロ忍術に嫌悪感がなく、自分にも効果的だった術を教えてもらってた。そこで独自の進化を遂げたのがシャナのおいろけの術、コスプレ系である。

 結構真面目においろけの術の研究をしていたシャナの術は、エロに耐性のない木ノ葉丸には効き過ぎたのだ。

 

「私に勝とうなんて百年早かったってばね。ひひ、おかしい顔」

 

 気絶した木ノ葉丸を近くのベンチにまで運び、彼が持っていたメモ帳に影分身のコツを書き込んだ上で寝かせるシャナ。ついでにとスケベと額に書いて遊んでいた。そして後三十分もすれば起きるだろうと、当初の目的である買い物に行こうとした。

 

 だが、ふと木ノ葉の関所である門付近に視線が吸われる。特に意識はしていない。まるで導かれるように関所の方向を振り向いてしまう。

 

――――――――

 

 木ノ葉の関所内で今日も里を訪れる観光客や商人などを相手していた中忍のイズモとコテツ。今日は物珍しい人物が訪れていた。

 

「えーと、間宵メイズさんですね。登録証を確認させていただきます」

「はい、どうぞ」

   

 コテツに登録証を提出したのは、深紅の杖を持ち、藍色の着流しを身に纏った金髪の女性だった。金色の髪をハーフアップにしており、右目のあたりに火傷の跡があるが、それでも整った容姿をしている。実際に登録証を受け取ったコテツは彼女に微笑まれた際に、顔を赤くして照れていた。

 美人に微笑まれ今日は役得だなと思いながら、関所の手続きを進めていく二人。

 

「登録場所は、鉄の国ですか?」

「はい。ご縁があって鉄の国に、身元の保証をしてもらってるわ。一応、登録は侍になっているはずよ」

「確かに。侍という事は、武器の所持は」

「これです。で、これが武器の登録証です」

 

 女性は、自分の持っていた杖を受け付けの机の上に置き、さらに登録証を提出した。

 

「仕込み刀ですね。銘は、多襄丸……え!? これって鉄の国の宝刀なんじゃ」

「大将のミフネ殿から、正式に譲り受けいるので、盗品とかじゃないから、心配しないで頂戴」

「すいませんが、失礼して検めさせてもらいます」

 

 他国の有名な宝刀。その価値は、山一つや二つでは済まない代物。それを傷付けてはいけないと慎重に扱いだすコテツ。さやから刀を抜いた時、その赤い波紋に目を奪われ、吸い寄せられそうな感覚に陥る。すると、女性が掌を叩いて気を紛らわせる。

 すると息をするのを忘れていたのか、コテツがむせる。

 

「見るのはいいのだけれど、それ曰くつきの妖刀だから、あまり眺めてたら魅了されるわ」

「お、おい、大丈夫か」

「あ、ああ」

 

 非常に危ない武器であるが正規の方法で登録されている為、持ち込みを禁じる事も出来ない。なので、仕方なく質問を続けていく。

 

「木ノ葉に訪れた理由は?」

「観光と知り合いに会いに来たの」

「知り合い?」

「えぇ。あの子よ」

 

 女性が指をさした先には、呆然としているシャナがいた。コテツ達もシャナを見て、どういう関係かと考えるが、シャナがずかずかと歩いてきて女性に詰め寄る。

 

「お前、何してるんだってばね」

「お姉さんは、シャナに会いに来ただけよ。それに手紙で近いうちに木ノ葉に行くって書いてたじゃない」

「そんな手紙来てないってばね。何しに来たんだってばね」

「観光よ、観光。それに、前に言ってた、いたたた、首絞めないの」

「あの、お二人? 入国審査はもう結構なので、検問で騒がないでください」

 

 シャナは、好き勝手言う女性にヘッドロックをかけて尋問する。その様子から、二人が知り合いなのは間違いないと判断した二人は、シャナ達を行かさせることにした。許可を受けた女性とシャナは、木ノ葉の中央に向かって歩みを進める。

 

――――――

 

「で、ラビリンス」

「ここでは、間宵メイズって事になってるから、その名で呼ぶのは厳禁よ」

 

 女性は、過去にシャナを追い詰めたラビリンスだった。以前までの鎧姿とは打って変わり、この大陸でも違和感のない装いをしている。だからこそ馴染めたのだろうか。

 

「その偽名とか、登録証とか、何処で手に入れたの?」

「鉄の国よ。私個人で旅をしててね、こっちの大陸で色々人助けとかしてたの。その時に護衛した血継限界マニアの大金持ちの武器商人と娘さんとかの関係を修復してあげて、そのまま護衛として、鉄の国にたどり着いて、そこで剣術を競い合うみたいな催しがあって、参加したら優勝しちゃって、その時に大将さんに気に入られて、武器商人のお墨付きもあって登録証を作ってもらったの。見て見て、剣聖なんて称号貰っちゃってるんだから」

 

 シャナは質問の答えにげんなりしながら、彼女の辿った経緯を思い浮かべていた。

 とんでもない運と力技だったようだ。侍大将も、シャナ達姉妹の中でも抜きんでたラビリンスの剣術に惚れこんでしまったらしい。そこで宝剣も受け継いだというんのだから、どれだけ高い基準にいるかが窺い知れる。

 

「ずっと前に、うちは一族の集落を案内してくれるって言ってたじゃない」 

「言ったけど。全部事故物件の集落だってばね」

「それでもいいのよ。間宵一族の跡地にも行ったけど、そこも戦争で潰えた廃屋しかなかったわ」

 

 ラビリンスの目的は、自分のルーツの確認だった。間宵一族とうちは一族のハーフである彼女は自分のルーツを辿るために旅をしているのだ。そして、最後に残ったのがうちは一族の集落という事らしい。

 何かを得たいわけではないが、何も知らないまま生きたくないのだという。

 

「それだけが目的だってばね?」

「後はそうね……、ここじゃできないわ。もっと落ち着いた場所で話す」

「そっか。とりあえず今日は暇だし、付き合ってやるってばね」

「元からそのつもりよ。だからあえてあなたが居るタイミングで来たんだから」

 

 何か後ろめたそうに言うラビリンス。無理に聞き出す訳にもいかず、それに観光に来たのも事実の様子の為、仕方ないので案内を買って出る。

 

ーーーーー

 

「なんで商店?」

「卵がお一人様一つ限りで安く買えたの思い出したから、頭数に」

 

 シャナは何故かラビリンスを連れて、行きつけの商店に向かい、二人で卵を購入していた。他にも元々買い物に行こうとしていた食材などを購入して、ラビリンスに半分持たせながら家に向かっていく。

 

「食材買い過ぎじゃないかしら?」

「全部使うから大丈夫」

「見たこともない食材が多いわね」

「最近は中華に嵌ってるから、それ用の買ってるってばね。辛いの食べられる?」

「ご馳走してくれるのね。あんまり辛いのじゃなければ大丈夫よ」

 

 シャナはラビリンスの好みを聞きながら、献立を決めていく。里の人々はシャナが見慣れない人物と歩いているのを見て疑問に思っていたが、二人は気にせずシャナの部屋に向かって歩いて行く。

 

「所で、ずっと後をつけてきている人たちって何なのかしら」

「たぶん、暗部だってばね。私の知り合いってことで警戒されてるんじゃないのかってばね」 

「ふーん。まぁ別に可笑しなことするつもりもないから放っておきましょうか」

 

 シャナとラビリンスは背後からつけてくる気配を感じ取ってはいたが、気にしないことにした。仮にラビリンスが木ノ葉で暴れるつもりなら、シャナ以外にはどうする事も出来ないだろう。シャナですら再戦は遠慮したいのがラビリンスなのだ。

 だが彼女に敵意がない上に、自分を訪ねてきたのなら、可笑しなことはしないだろう。とはいえ、暗部が余計な事をすれば、ラビリンスの怒りに触れない確証はない。

 

 そうなった場合は、何時ものように暗部育成機関『根』に攻め込めばいいだけである。もう何度も襲撃している為、暗部絡みで余計な手出しはないともいえるが。

 

 仮に本気で機嫌の悪いラビリンスを止める事と、ダンゾウ一派が壊滅するリスクを考えれば後者を選ぶ。 

 

(今やれば勝てるか? あの頃よりも遥かに強くなった自覚はある。けど、こいつと戦って勝てるイメージが浮かばない)

「お姉さんもただ旅をしてたわけじゃないのよ」

 

 シャナの考えを察したのか、ラビリンスは肩をすくめる。そう言いながら、シャナの反応できない速度で背後に回り込んでいる。明らかに以前より速い動きに、成長しているのは自分だけじゃなかったと自覚する。グライアも見たこともない術を身に着け、仙人モードに容易く対応してきた。

 結構厳しい修行をしたのに、他の奴らが平気で自分を上回っていくような感覚に陥る。

 

「ま、今はそんなこと忘れて、おうちに行きましょ。お姉さんお腹ペコペコよ」

「押したら、卵が割れるってばね!」

 

 ラビリンスに押され、家までほとんど駆け足で帰ったシャナ。

 部屋に入るなり、部屋を眺めるラビリンスを傍目に買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞い、今から作る材料だけ取り出す。色々と必要な調理器具も取り出して調理を始めるシャナ。

 

「意外と綺麗な部屋ね」

「意外って何だってばね。木ノ葉一部屋がきれいな私に向かって」

 

 冗談で言っているが、シャナの掃除スキルはかなり高めである。ストレス発散が基本的に家事に結び付く都合上、家事スキルは軒並み高いのが彼女である。

 

「服もいろいろ持ってるのね。これ、可愛いわね」

「物色するなってばね」

「妹の生活がどんなのか気になるのは、仕方がない事じゃない」

(わかる気がする……ぐぬぬ)

 

 ラビリンスがそういうと、シャナもナルトの生活が気になって勝手に部屋に入った事があったため、反論できない。部屋をあらかた見終えたラビリンスは、シャナの部屋にあった雑誌を読んで時間を潰していた。一度手伝おうともしたのだが、シャナが厨房に入ることを許さなかった。

 シャナが、あまりキッチンを他人に使われるのを好まないからだ。

 

 流し目にシャナの動きを見るラビリンスはてきぱきと調理をする彼女の技術に驚いてた。

 

(家庭料理というか、もはやお店ね)

 

 プロ顔負けの調理技術を持って、次々に完成品がテーブルに並べられる。

 

「麻婆豆腐と水餃子、それとエビチリにフカヒレの姿煮。ご飯はおかわりできるってばね」

「すっご。家庭料理のレベル超えてるじゃない」

「趣味でやってたらこうなったってばね」

「お姉さん、料理なんて郷土料理くらいしかできないわよ? うわ、味も絶品」

 

 シャナの料理に舌鼓を打ちながら、堪能しているラビリンス。その顔を見て満足しながらシャナも食事をはじめ、今日の予定を立てていく二人。目的であるうちは一族の集落を見に行った後、どうするかと話し合っていた。

 

 シャナも改めて観光などしたことがないので、ラビリンスの持つパンフレットを見ながら考えていく。

 

「夕飯はお姉さんが奢ってあげるわ。できればお酒が美味しいお店がいいんだけど」

「お酒飲んだことないからわからないんだってばね」

「え、ないの? いや、そうね。まだ飲んじゃダメな年齢よね。けど、そんなの気にしないで飲んでそうなのに」

 

 シャナの性格を考慮すると律義に未成年だから飲酒経験がないと言われると違和感を覚えた。そのことを察したシャナが口を尖らせながら文句を言う。

 

「八雲がタバコもお酒もダメって怒るんだってばね。本気で怒られるから、手出せないの」

 

 ぞっとする思い出を語るシャナ。八雲に注意されて以来、手を出す事が出来ない。ふと、八雲の居ないときに手を出してみようかとも思うが、後が怖いのだ。

 

「そうね。それがいいわ。お酒抜きで美味しいお店に行きましょ。お姉さん、こう見えてお金持ちだから」

「じゃ、高級料亭にでも連れて行ってもらうってばね」

「楽しみにしてていいわ」

 

 食事を終えたラビリンスとシャナは、食休みの後にうちは一族の集落に足を運んだ。

 

ーーーーーー

 

 もう人のいない集落。ただ管理だけはシャナが休日に多重影分身を使って行っているので、綺麗に保たれている。しかし、現状うちは一族はシャナ一人。誰も帰ってこない集落を管理し続ける事に疑問を覚えていた。

 

「こんな生活風景なのね。のどかそうな集落」

「特別変わった生活はしてないってばね。名物もお煎餅とかそこら辺しかなかったし」

「ここには嫌な思い出ばっかだった?」

 

 シャナの表情を見てラビリンスは質問する。その言葉に少しだけ悩んだシャナ。

 

「どうだろうね。少しくらいは良い思い出もあったかな」

「それならよかった。どこ行くの?」

「うちは一族だけの秘密の場所。お前もうちは一族なら一度は見とくと良いってばね」

 

 シャナはラビリンスを連れ南賀ノ神社本堂に足を運ぶ。そして、本堂に入ると右奥から七枚目の畳の下にある一族のものだけが知る集会場に足を踏み入れた。

 

「物々しい雰囲気ね」

「実際曰くつきだと思うってばね。この石碑が一族の真相だとかなんとか」

 

 シャナがうちは一族の代々祀ってきた石碑を指さす。その石碑はうちは一族のものにしか解読できない。何故なら、写輪眼を持つ者だけが、隠された真実を見る事が出来るからだ。

 

「写輪眼で見ると、別の文字が浮かび上がるのね。それに万華鏡写輪眼を使えばさらに……なんなのこの、意味不明な伝承」

「お前もそう思うってばね。私も昔から、意味不明だなって」

 

 石碑を読んだ二人はそういうが、その石碑を見た瞬間。妙にその場所への親近感を覚えた。シャナは何度か足を踏み入れているが、初めて来たはずのラビリンスも、何度も見たことのあるような既視感を覚える。

 まるで生まれた頃から脳裏に焼き付いているかのように。

 

「なんかこういうの見ると、私たちの一族って、面倒な人多かったのね」

「いい読みしてるってばね」

 

 実際の所、その面倒な性質が原因で壊滅したのだ。

 シャナはうちは一族の辿った末路について解説しながら、もう残りは数える程しかいない一族の辿る未来についても語った。

 

 どうあっても衰退しかない。純血のうちは一族は二人しかおらず、その二人は里を出ている。シャナが居なくなれば、もう誰も管理する人間が居なくなる。

 哀愁漂うシャナの表情に、ラビリンスは彼女の肩に手を置いて慰める。

 

 一族の集合墓に足を運び、墓掃除とお祈りを終えた二人。

 うちは一族の集落の案内を終え、シャナ達は、約束通りラビリンスの奢りで高級料亭に向かい、そこで料理を堪能。

 満腹になったことで家に帰ることになる。

 

「これからどうするの?」

「宿は?」

「まだ取ってないわ。ずっと一緒に居たじゃない」

「了解。今日は家に泊めてやるってばね」

「あら、ありがとう。あなた、私のこと思ってたよりも好きみたいね」

「野宿させてやろうか」

 

 元より話したい事は山ほどあった。シャナの提案は、まさに渡りに船であり、心底喜んだラビリンスが彼女の肩を押して家へと急がせた。

 

ーーーーーーーーーー

 

 風呂に入り、後は眠りだけという状況で二人は天井を眺めながら会話していた。同じベッドで眠る二人。

 

「木ノ葉にはどれくらいいるの?」 

「一月か二月よ」

「そろそろ木ノ葉に来たもう一個の目的教えてくれない?」

 

 シャナの疑問はもっともだと思ったのか、ラビリンスが小さな声でつぶやいた。

 

「プロポーズされたのよ。テムジンに」

「ふーん。……え、は、え!? あのナイトくんだってばね?」

 

 口を咎らせながら、顔を真っ赤にして枕で顔を隠すラビリンス。耳まで真っ赤な様子から、本当である事が窺い知れた。

 

「いやまって、なんで、今一人旅してるんだってばね」

「それよ。すぐに答え出せなくて、旅の間に答えを探してくるって、村を出ちゃったのよ……」

「返事もせずに放置したの? 最低じゃない?」

「そんなこと言われても、だって、だって、お姉さん、ずっと弟だと思ってたのよ。なのに本気でプロポーズされたら、パニックになっちゃうわよ。外堀も全部埋められてたし」

 

 そこまで話し、ラビリンスの真の目的が、シャナに対する恋愛相談だったという事実を突きつけられる。同じく弟を持つシャナにどうしても相談がしたかったのだという。それを聞いたシャナは呆れ半分、彼女に告白した白馬の王子サマが気の毒半分といった心境になった。

 ただ飄々としていたラビリンスの反応を見るに、本気で助けを求めている事が解る。

 

(まぁ相談位になら乗ってやるのも悪くないってばね)

「とりあえず明日話そうってばね」 

「あ、ちょっと。お姉さんもシャナの恋愛状況について聞きたいんだけれど? 恋バナしましょうよ~」

 

 シャナは狸寝入りを決め、それを起こそうとするラビリンスとの攻防が繰り広げられたのだった。

 

 

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