イッセーside
俺はサイラオーグさんの病室に向かう。
部屋を開けると、そこには入院着に身を包むサイラオーグさんの姿があった。
傷だらけながらも普通に上体を起こして病院食を食べてる様子。どうやら傷はほとんど癒えてるみたいだ。大した回復力だな。
「……兵藤一誠か」
「ええ。お見舞いに来ましたよ、サイラオーグさん」
俺はそこにあった椅子に腰を下ろしサイラオーグさんと向かい合う。暫し沈黙が続くが不意にサイラオーグさんが沈黙を破る。
「……負けたか」
サイラオーグさんは清々しい表情で呟く。
「……悪くない。こんなにも充実した負けは初めてかもしれない。だが、途中からはよく覚えていない。気がつけばここにいた」
「……いい拳でしたよ、サイラオーグさん。俺も楽しかったです」
俺は謙遜なしに言う。実際、サイラオーグさんとの戦いは想像以上に楽しめた。どれだけ殴っても倒れないサイラオーグさんには感嘆の念を抱いたし、最後の気迫には俺も冷や汗をかいたものだ。サイラオーグさんは既に基軸世界でも戦える領域にきている。多分、俺も百回やれば一回は負けるんじゃなかろうか? 原初や師匠相手に鍛えまくった俺にここまで言わせるんだから、大したものだ。
「ああ。こんな清々しい気分はいつ以来だろうか────最高の殴り合いだった」
「ですね。俺も気分がいいや」
お互いに笑みを浮かべ、笑う。そこへ入室してくる者がいた。
「失礼するよ」
そう言いながら入ってきたのはサーゼクスさんだ。その手には花束が握られている。
「サーゼクスさん」
「やあ、イッセー君、サイラオーグ。素晴らしい試合だったよ。私も強くそう思うし、上役も全員満足してくれたよ。特にサイラオーグはよくやった。君の将来が楽しみだ」
サーゼクスさんは激励を俺達に送ると、近くの椅子に腰をおろした。
「今回の試合は本当に素晴らしいものだった。複数名に昇格の話が上がるほどにね」
「複数名……ですか?」
「グレモリー眷属からは木場君と朱乃君。バアル眷属からもフールカスやクロセルといった断絶した家の出のものに昇格の話が上がっている。これは異例であり、昨今では稀なことさ」
木場と朱乃か……確かに試合では活躍していたし、それ以前の禍の団との戦いといった実績もある。それらの実績が赤龍帝のおこぼれではなく実力で勝ち取ったものだと認められたわけだ。サイラオーグさんにしてもめでたいことだな。
「詳細は今後改めて通知しよう。きちんとした儀礼を済ましてからの昇格といきたいのでね。会場の設置や承認すべき事柄もこれから決めていかないといけないからね」
サーゼクスさんは眷属の昇格についての連絡事項を話し終えると再びサイラオーグさんに向かい合う。
「さて、前置きはこれくらいにしようか。サイラオーグ……実は君に会わせたい人がいるんだ」
「会わせたい人物……ですか……?」
サイラオーグさんは少しキョトンとした表情となる。
やっぱり外の気配はそういうことか。リムルの奴、やってくれたな。
「さあ、入ってきてくれ」
サーゼクスさんに促され、その人はゆっくりと病室に入ってきた。
それを見たサイラオーグさんは体を震わせ、傷ついた身体に構うことなく立ち上がる。
その表情からは困惑、歓喜、驚愕、様々な感情が入り混じっているのを感じる。
病室に入ってきた女性はゆっくりとサイラオーグさんに近づき、慈愛に満ちた手でサイラオーグさんの頬を撫でる。
「……私の愛しいサイラオーグ……夢のなかで……貴方の成長をずっと見続けていた気がします……」
女性は静かに微笑み、一言だけ告げた。
「……立派に……なりましたね……」
頬に触れた優しい手と言葉。ようやく目の前の光景が現実だと悟ったサイラオーグさんの目からは一筋の涙が流れた。
「……まだまだですよ、母上」
俺がここにいるのは野暮だな。そう悟った俺は気配を消して静かに病室を出ていく。
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アザゼルside
ゲームの解説が終わった後、俺は要人用の観戦室に足を向けていた。
部下から「例の者」が要人用の観戦室に姿を表したという報告があったからだ。
要人用の観戦室は個室となっていて、オーディンの爺さんは「ヴァルハラ」専用、ゼウスやポセイドンのオヤジは「オリュンポス」専用、基軸世界の要人たちも専用の観戦室に護衛をつけて入室している。
俺が向かうのはその内の一つ。
部屋に入ろうとすると、タイミングよく俺がお邪魔するつもりだった部屋から「例の者」が護衛と共に出てきた。
五分刈りの頭、丸レンズのサングラスにアロハシャツ、首には数珠というラフな格好。
まぁ、その点に関しては俺も人のことは言える立場ではないがな。
俺は「例の者」────―“帝釈天”に話しかけた。
「これは帝釈天殿、ゲームはいかがでしたかな?」
「お? よー、正義の堕天使兄さん! イカしたゲームだZE! 現魔王派と癒着しているあんたにとってみれば『教え子』が勝ってよかったんだろぉ? グレモリーチーム、ありゃ常軌を逸したメンツが集い過ぎだ。並のチームじゃ相手にできんだろ」
相変わらず皮肉の効いたことを言うやつだ。
全勢力のトップ陣でも最高クラスの実力者。天帝。戦いの神『阿修羅』に勝った武神。
俺はどうしても訊きたいことがあった。先日の京都で起きた英雄派のテロに関することだ。
「訊きたいことがある」
「HAHAHA! ンだよ、正義の堕天使兄さん! 俺様で良かったらなんぼでも答えてやンぜ?」
「神滅具所有者のことを、曹操の事を俺たちよりも先に知っていたな?」
帝釈天の配下である孫悟空が曹操の事を知っていた。つまりこいつも曹操のことを知っているということだ。最強の聖槍を持つあの男とコイツは関わりを持っていたということになる。
────俺達が知らないところで。
帝釈天は意味深に口の端を愉快そうに笑ました。
「だとしたら、どうすんよ? 俺様があいつをガキんちょの頃から知っていたとして何が不満だ? 報告しなかったこと? それとも……通じていたことか?」
……この野郎、自分からバラしやがった……ッ!
「インドラ……ッ!」
俺は怒気の含んだ声でその名を呼ぶが、帝釈天は不敵に笑う。
「HAHAHA! そっちの名で呼ぶなんて粋なことをしてくれるじゃねぇか。そんな怖い顔をスンナや。それだったら、冥府の神ハーデスのやってることなんざ、勢力図を塗り替えるレベルだぜ?」
ハーデスのことも知ってるのか……。こいつ、どこまで「通じて」やがる……?
帝釈天は俺に指を突きつけてくる。
「一つ言っとくぜ、若造。どこの勢力も表面は平和、講和なんてもんを謳ってやがるがな、腹の中じゃあ『俺等の神話こそ最強! 他の神話なんて滅べ、クソが!』って思ってンだよ。オーディンのジジイやゼウスのオヤジが例外的に甘々なだけだぜ。信じる神が少なきゃ、人間どもの意思を統一できて万々歳だからな! だいたい、てめぇらの神話に攻め込まれて、民間の伝説レベルにまで落とした神々がどれくらいいると思う? ────神ってのは人間以上に恨み辛みに正直なンだぜ?」
そんなことはわかってんだよ。どこの神々も建前で協力体勢を呑んでも、腹の中では全く違うことを考えている。
だがな、今はその建前が大事な時期なんだよ! 勢力図が変われば人間界は簡単に滅ぶんだからな……!
……何よりっ!
「あんたらも元々は一つだったんだろ……? だったら建前だけでも協力しやがれよ……っ!」
俺の言葉に帝釈天は初めて真顔となる。
「……確かにな。俺達は元々は一つの意思のもと集っていた。だがな、それはヴェルダナーヴァ様というカリスマがいたからこそだ。だが、あの御方はもういない。仮にあの御方と同等の力やカリスマ性を持つものが現れたとしても、俺が従うのは創造神様だけ。俺たちは好きにさせてもらうぜ。……あの御方の娘だろうが、あの御方の友だろうが、あの御方を倒したスライムだろうが、関係ねえ。俺に指図する権利はねえ」
そう一言付け加えると、帝釈天はくるりと背を向け手を振る。
「ま、安心しな。表向きは協力してやんよ。確かにオーフィス達は邪魔だからな」
オーフィス達、か。
そこには曹操も入っているのか?
「あー、そうそう。あの乳龍帝に言っておいてくれ。最高だったぜってな。……だが、もしもこの世界の脅威になるのならばギィのお気に入りだろうが関係ねえ……魂ごと消滅させてやるってな。『天』は俺達がヴェルダナーヴァ様に与えられた称号。名乗るのは俺達だけで十分だ」
帝釈天はそう言って、去っていった。
……ヴェルダナーヴァとやらは話にしか聞いてねえ。だが、まさかあの帝釈天があそこまで慕っているとはな。
オーディンの爺さんにしろ、天照にしろヴェルダナーヴァを語る時はとても楽しそうに感じた。それだけのカリスマがあったんだろうな。
その竜の顛末については粗方リムルから聞いている。それでも考えてしまうな……。
もしもソイツが生きていれば、物事はいい方向にいったのだろうか……。俺は意味のない仮定を振り払い、踵を返した。
帝釈天……ハーデス……まだまだ世界は揺れそうだ。
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イッセーside
「一列になってお並びくださーい!」
ウェイトレス姿の可愛らしい格好のアーシアが、廊下に並ぶ生徒達を整列させていた。喫茶店に並ぶ長蛇の列だ。
「はーい、こちら占いの館とお祓いコーナーですよー。小猫ちゃんと朱乃先輩が占いとお祓いしてくれまーす」
旧校舎を丸ごと使った出し物は大盛況だな。我が部の美少女達に憧れるのは男子だけじゃなく、女子もいるから、男女ともにかなりの数だ。
なにせ、呼子をしているイリナの姿が、人混みに隠れて見えないほどの客数なのだから。
「はーい、チーズ」
と、喫茶店で写真を撮っているのはウェイトレス姿のリアス。
部員と写真を撮れるシステムを作ったら、それがまた大当たりでソッコーで話題の的に。好きな部員と一緒に写れる写真撮影は大盛況だ。まあ、俺は指名されないんだけど……。
「あ、ありがとう。ミッテルトちゃん……ね、ねえ、イッセーなんかよりも俺の方が……」
「はーい、次の方どぞっす!」
勿論こうしてこの機に距離を縮めようとしたり難破したりするような奴もいるのだが、皆軽くあしらっている。
それにしても、その彼氏の前でわざわざそんな事言うか? あの野郎は後で少し痛い目見せないとな……。
「お兄ちゃん! このお菓子をちょうだいなの!」
「おう、セラ。みんなで仲良く食えよ」
『『『はーい!』』』
そう言いながらお菓子を頬張るのはセラと魔国の教え子、そしてミリキャスだ。すっかり仲良くなったコイツラは皆してお菓子を食べながら談笑している。
特に最近変わったのはセラだな。昔は着やすいシャツとかばっかり着ていたのに、最近はオシャレにも気合いを入れている。
元々セラは記憶を失った魔神とのことだが、その力も徐々にコントロールする術を身につけようとしている。
うんうん、いい変化だ。
ミリキャスも同年代と関わることが少なかったから楽しそうだしな。
「イッセー君、そろそろこっちに」
「おう」
俺と木場、ギャスパーはこの時間お化け屋敷のお化け役を担当している。ちなみに俺はフランケンシュタイン役。専用のメイクもしている。
ちなみにギャスパーはドラキュラ役だが怖いどころか可愛くなっていた。
俺と交代で木場は喫茶店の手伝いに戻る。大盛況なのはいいが、皆行ったり来たりと忙しそうだ。
そう思いながら、俺はお化け屋敷のなかに移動した。
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「サイラオーグさんを支援していた上層部が手を引いた?」
休憩時間、俺は先生から後々の顛末について聞かされていた。
帝釈天とやらの話は置いといて、今はサイラオーグさんだ。
どうやら、サイラオーグさんを支援していた上役が何人か手を引いたらしい。
「ああ。まあ、一部はまだパイプを守ってるらしいが、八割方の上役がサイラオーグから手を引いたらしい。馬鹿なやつらだぜ」
まあ、確かに馬鹿だ。サイラオーグさんから手を引いた上層部は「たかが人間に負けた悪魔の面汚し」と蔑みの言葉を口にしていたらしい。
……正直何を見ていたのやらと突っ込みたくなる。俺とやりあえるだけの力を持つ悪魔が果たしてこの世界に何人いるというのか? しかもあの人はアレでまだ発展途上。いずれは間違いなく基軸世界の上位陣とも渡り合えるだけの素質を持っているというのに。勿体ないな。
まあ、何はともあれこれでサイラオーグさんは上へのパイプをいくつか失ったことになるのか……。
「大王次期当主の座は?」
「そこは変動なしだ。滅びを持たないとはいえ、あれだけの実力者だ。民衆からの支持もある。そう簡単には無下にできないさ」
なるほどね。ちょっとホッとした。
サイラオーグさんと基本敵対みたいな関係にあるバアル家がどう動くかだけが懸念だったからな。
上役のパイプにしても、機会はいくらでもあるのだ。サイラオーグさんならすぐに取り戻せるだろうな。
「あ、やっと見つけたぞイッセー! オカルトの館どこも入れないんだが!?」
「占いもお祓いも喫茶店も長蛇の列だ! イッセー、友人枠の特別招待券とかないのか!」
「ない。諦めて並べ」
物思いにふけてると松田と元浜の馬鹿二人が姿を現す。
全く、あの程度の長蛇の列がなんだというのか。俺だったらどんなに混んでても並ぶ。根性がないな。
「イッセー様、そろそろ休憩時間も終わりですわ。新しいチケットができましたの」
「おっ、サンキューレイヴェル」
もともと今の時間の俺のシフトはチケット売り場の受付。この休憩時間はチケット完売に合わせてできた時間だ。レイヴェルがチケットを作っている間に休憩するという話だったが、どうやらチケットの追加生産が完了したらしい。
早速俺はチケット売り場の売り切れ札を取り払う。勿論最初の客は目の前にいるこの二人────ではなく、この瞬間を今か今かと待ち構えていた生徒たち。ヌーの大群のように群がってきたソイツらは松田と元浜を轢きながらドタドタと群がってきた。
全く、どんだけ楽しみにしてたのやら。
「はい、占いの券ですね」
まあいいか。レイヴェルは学園祭を楽しめているようだしな。
レイヴェルがチケットを売りながら言う。
「……イッセー様」
「ん?」
「試合、感動しました……。最後、相手選手を抱き締めるイッセー様を見ていたら、私もつい泣いてしまって……」
頬を赤くするレイヴェル。ど、どうした、突然……。
「いや、俺も気分が盛り上がっていたというか何というか……。改めて言われると恥ずかしいな」
「そ、そんなことはないと思います! そ、そうですわ! 私、打ち上げのケーキを作ります!」
「おっ、いいね。レイヴェルのお菓子は美味いからな。楽しみにしてるよ」
俺がそう言うと、レイヴェルは顎に手をやり大胆に言う。
「と、当然ですわ! 特別でしてよ!」
テンプレの貴族令嬢みたいなこと言うな。まあ、それでこそレイヴェルか。
そんなことを思っている間にも、お客さんは増える一方。チケット売り場に並ぶ列は長蛇の列と化していた。
こりゃ、しばらくは忙しくなりそうだ。
「イッセー! 裏のお店はないか!」
「倍の金額出すから!」
殴るぞ二人とも。
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学園祭も終盤に差し掛かる。
チケット販売を終えた俺は部室に戻っていた。
校庭ではキャンプファイヤーを焚いて、その周囲では男女が楽しそうに踊っている。
俺も参加したかったけど、部室の後片付けがあるからな。喫茶店にお化け屋敷、占いの館にお祓い。いろんな企画をやった分ゴミも結構出てる。こういうのは後々めんどくさくなるから早いうちにやったほうがいい。多分これは教師時代の癖だな。
それにしても今日は大勢のお客さんが来ていたな。サーゼクスさんやセラフォルーさんも来てたし……まあ、顔を見せてからすぐにグレイフィアさんと会長に引きずられていったわけだけど。
とりあえず、部室に入る俺。中には部長の姿があった。いつの間にかウェイトレス姿から制服に戻ってる。
「あら、イッセー。お仕事お疲れさま」
「まあ、大したことはしてないけどな……リアスはキャンプファイヤーの方に行かなくていいのか?」
「ええ。三年生だから、最後でしょ? ちょっとここに戻りたくて……」
なるほど……そういえば、リアスと朱乃は三年生だから今年が最後になるんだな。
取り敢えず俺はリアスは隣に座る。暫し無言となる二人。
……このまま言っちまおうかな? 以前、この話をミッテルトにした時は呆れられたけど、一応許可はもらっている。
正直言う機会が今までなかったのだが、今は二人きりだしちょうどいいかもしれねぇ。
「……リアス、話がある……」
「……話?」
俺は一旦深呼吸をして、改めてリアスに向かい合う。正直最低なことだとは分かっている。だが、俺は常日頃からハーレム目指すと公言してるし、周囲から変態呼ばわりされるくらいだし、今更だ。
「まず、前提として俺にとって一番はミッテルトだ。多分、これはずっと変わらないと思う」
俺の言葉にリアスは哀しげに目線を下げる。その瞳は涙に潤んでいるようにも見えた。
「……でも……」
「……でも?」
「リアスも俺の中で大切な女の子だっていう気持ちもある」
俺の言葉にリアスはハッと顔を上げる。俺はリアスとしっかり目線を合わせ、ハッキリと伝える。
「正直最低だとは思うけど、俺はリアスのことも好きだ! 一番はミッテルトってことは譲れないけど、その気持ちもまた本物だ。だから……俺とお付き合いしてください!」
「────っ!」
言葉を詰まらせ、大粒の涙をポロポロ流すリアス。
やべえ、泣かした! そう思うも束の間、リアスは涙を拭い、真正面から自身の思いを吐露する。
「ありがとう……イッセー、私、貴方のことを愛してる。ミッテルトの次だって構わない。私にとってはイッセーが一番なんだから……」
リアスはそう言いながら、俺と唇を交わそうとする。その時だった。
ガタッ!
……扉の方で音がした。おかしいな……俺の索敵には何もなかったはずなんだが……。
「ちょ、ちょっと、押さないでよ、ゼノヴィア!」
イリナの声。あれ? なんでイリナの声がするんだ?
今頃イリナはキャンプファイヤーやってるはずなのでは?
「お生憎様。うちの“
ミッテルトの声に俺はとうとう現状を認識し、顔を真っ赤に染め上げる!
の、覗かれたぁぁぁぁぁっ!? この場面を覗かれたのか!? いつから!? ずっといた!?
み、ミッテルトの言う通り、俺が本気で解析鑑定したらそりゃ見破れる。でも、こんなところで覗きに究極能力使われるなんて想定してねえよっ!?
「お、おめでとうイッセー、部長! これで私も気兼ねなく言い寄れるな!」
ゼノヴィアさんもギクシャクしている。流石に少し気恥ずかしい様子だ。
「あ、あの、おめでとうございます! わ、私もこれでお姉様の後を追えます!」
アーシア!? いや、アーシアだけじゃねえ! これ、オカ研全員集合してねえか!?
「あらあら、リアスに第二夫人の座を先に奪われてしまいましたわね。……次は私の番ね」
朱乃さん!? いきなり何言ってんの!?
「……ここからが本番だったりしますよね」
小猫ちゃんも何を言ってるの!?
「ちょ、ちょっと待ちなさい! わ、私の方が先に知り合ってたのに……ず、ずるいわよ!」
「そうにゃん! 基軸世界からずっと一緒だった私達よりもリアスが先なんて明らかにおかしいにゃん!」
「…………」
トーカが黒歌の影から飛び出し、ジウは殺気の籠った目で俺とリアスを睨みつけている。お、お前らもいたのかよ……。
「ごめん、僕も見てた」
「か、感動しましたぁぁぁっ!」
木場とギャー助もか! お前らマジでふざけんなよ!?
「今日だけは不純異性交遊も認めてあげましょう」
余計なお世話ですよロスヴァイセさん! てか、あんた教師だろ!?
「家庭科室をお借りして、ケーキが完成しましたわ!」
そう言いながら、レイヴェルがケーキを持って入室してくる。この様子だと、覗いてなかったのはこの娘だけか……。
チラリと隣を見ると、リアスはプルプルと恥ずかしそうに全身を震わせている。
そこにミッテルトがやってきて、俺の隣に座る。
「まあ、イッセーにしてはよくやったんじゃないすか? ハーレムなんて女泣かせな夢を肯定する寛大な彼女に感謝するんすよ」
ミッテルトはそう言いながら、少し不機嫌そうにしながらも誇らしげな笑みを浮かべる。
まあ、そうだな。俺はミッテルトとリアスの二人と手を重ね、騒がしくなった部室を眺めていた。
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??? side
『……何? 呪いが解かれただと?』
冥界の奥深く。不気味な髑髏姿の死神────ハーデスが怪訝そうに問いかける。
『はい。我が眠りの呪いが何者かに解かれました。下手人は恐らく基軸世界の者かと』
ハーデスの側近である死神────ヒュプノスはそう答える。
それを聞いたハーデスは暫し思案する。
ヒュプノスのユニークスキル“
死神陣営はその力を利用し、対象から魂と魔力を奪い、自らの戦力の糧とする計画を制定し、悪魔の上層部との間で取引をしてきた。そのおかげで十分な魔力をためることができたし、ユニークスキルに目覚めた者もいる。
だが、もしも呪いが基軸世界の存在に解かれたとするのならば、逆探知で自分にたどり着く可能性が高い。ギィを初めとした基軸世界の強者の力を知るハーデスはこれ以上は危険であると判断した。
『ファファファ、ならば今後は冥界上層部からの依頼を全て断るがいい。元々簡単にマーキングを施し、呪いを増やすために利用していただけのこと。眠りの呪いが解かれたというのであれば、足のつく可能性は排除せねばならんからな』
『御意。今現在、眠りの呪いをかけている対象はいかがなさいましょう?』
『……ほっとけ。どの道、貴様が表に出なければ知らぬ存ぜぬで通せる。何より、遠隔からの解除を逆に辿られる方が問題だ。念のため、魔力の抽出は取りやめ、接続を断ち切るがいい』
当初デモンストレーションでランダムに呪いをかけていた低級・ハーフの悪魔、そして冥界上層部からの依頼により、意図的に呪った存在。その者の呪いに関しては現状維持の方針となった。
数万年ぶりに基軸世界との道が再び開かれたことによりやりにくくなった。だが、その間に抽出した魔力はすでに膨大なものとなっている。
ハーデスは魔力を蓄えた貯蔵庫を眺め、恍惚な笑みを浮かべる。
『ククク、邪魔なカラスや蝙蝠共を始末するには十分な魔力になりそうだ……』
そもそもの話。冥界は他ならぬハーデスがヴェルダナーヴァのために管理していた世界である。
それを後から現れた悪魔や堕天使が我が物顔で過ごすことにハーデスはただならぬ屈辱を感じていた。
本来であれば、即座に軍を仕向け、殲滅してもいいところ。
しかし、戦争当時は強大な力を持つ初代魔王やルネアスを警戒し、迂闊に動くことができず、それと変わるように現れたサーゼクスにアジュカといった超越者の存在がハーデスに待ったをかけていた。
だが、それももうすぐ終わる。
『待っておれ。冥界は儂らのものなのだ……』
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三人称side
サイラオーグは病室から抜け出し、鍛錬を重ねていた。
イッセーと戦いに敗北した今の自分にはまだ魔王たる器はないと断じ、さらなる強さを求めていたのだ。
すでに傷は“自己再生”で癒えている。全快となった今じっとすることなどできはしない。サイラオーグはすさまじい風圧とともに拳を空に放っていた。
「ふふ、やってるじゃないか」
ハッと声の下方向を振り返る。人の気配など一切しなかった。サイラオーグの研ぎ澄まされた野生の感すらも欺いて、何者かが彼を見下ろすように立っていた。
それは金色の髪と軍服を纏った自分と同年代の女性。そして、美しい桜金色とツインテールが特徴的な可愛らしい少女だった。
「お前、なかなかいい試合だったぞ。気に入ったのだ!」
「同感だ。イッセーとあそこまで殴り合えるだなんて……
只者ではない。間違いなく二人とも自分よりはるかに上の実力者。下手したら兵藤一誠……いや、サーゼクスをも上回っている。そう直感したサイラオーグは呆然としながら二人の話を聞いていた。
金髪の少女が何かを飛び出す。それは神器状態。戦斧となったレグルスだった。
どうやら同意の上らしく、レグルスに反抗の意思は感じられない。訝しげに思うサイラオーグに金髪の少女は告げる。
「だが、少しもったいなくも思うんだ。戦術の幅を広げるためにも、破壊力を追求するためにも、たまには武器を持つのも悪くないんじゃないかな?」
実際、彼もその点については少し嘆いてるようだしね、そう付け加えながら金髪の少女はレグルスを投げる。
そう言われてレグルスを受け取るサイラオーグ。そういえば、レグルスを戦斧として振るったことは一度もない……今更ながら彼はそのことに思い立った。
ふと意識を離した隙に桜金色の少女が自分の目の前に立つ。
レグルスに意識を向けている間も油断したつもりはない。にも関わらず、彼女はサイラオーグすら気づかぬ速度で移動してみせたのだ。そのことに思い立ったたサイラオーグは警戒度を上げる。
そんなサイラオーグを知ってか知らずか少女は楽しそうに口を開く。
「なあ、お前。私の弟子にならないか? お前ならきっと強くなれるぞ!」
「おいおい、それを言うなら私達だろ、ミリム。私もヴェルドラ様みたいに弟子を取ってみたいな〜と思っていたし、何より君は────“
突如現れた二人の少女────原初の黄“カレラ”と竜皇女“ミリム・ナーヴァ”の口から出た予想外な言葉にサイラオーグは呆気にとられる。
サイラオーグは唐突すぎるこの状況にどうしたものかと頭を悩ませるのだった。
眠りの病については完全な捏造です。
どうもはんたーです
これにて、第十章 学園祭のライオンハート編を終えたいと思います。
次章、第十一章はいつも通り書き溜めができ次第投稿したいと思います。
いつも通り多分続きは数カ月後とかになるかと。
神祖関連もどうしようかまだ悩み中な所も多いし、色々考えたいなと思いますのでもしかしたら年またぐ可能性もありますが、エタル気はないので気長に待ってもらえると幸いです。