まどマギAlter 暁美ほむらとエルキドゥ   作:名取クス

10 / 17
奇跡も魔法もあるんだよ Aパート

『昨日で一つ確信したわ。誰かが確実にこの三滝原に魔女の卵を運んできてる。』

 

 

「えー、た し か に!出産適齢期というのは医学的根拠に基づくものですが、そこからの逆算で婚期を見積もる事は大きな間違いなんですねー。つまり30歳を超えた女性にも恋愛結婚のチャンスがあるのは当然のことですから、従ってここは過去完了形でなく現在進行形を使うのが正解で--ー。」

 

Ms.早乙女の英語の授業ーー黒板に書かれた英文法テキストを解説している風だが内容は全く関係事ない事を喋っているーーの途中、マスターは言った

 

『そもそもそんな事をする動機があって、実行できそうなのは私が知る限りキュゥべえだけ。』

 

『キュゥべえの目的から見てもそれは十分にあり得るだろうね。さもなければこの短期間にもう2体も魔女に遭遇しているのは不自然だからね。』

 

『私は確かに2日前にこの市に住むすべての魔女を掃除した。だけど事実として魔女はいたわ。それにこれはキュゥべえの倫理にも反さない。』

 

『どこにいても魔女は魔女、魔女がどこにいても人は死ぬんだから、どこにいても関係無い。ただ死ぬ個体が変わるだけ、かな。』

 

『いかにもいいそうなセリフね…。』

 

『だけど僕もマスターも、その現場を見た訳じゃないんだ。絶対にキュゥべえと断定できる証拠もないんじゃないかな。別の線も考えられるんだよ。例えば急に魔女がいなくなった事で他の魔女がやってきやすくなったとか。』

 

『そうね、絶対にないと言い切れない。歯痒い思いね。』

 

『それにマスターにしてみれば、鹿目まどかの方の状況はあんまり安心できないだろうね。』

 

『……』

 

マスターがチラリと視線を黒板から外す。

視線の先にはピンクのツインテールが印象的な鹿目まどか。

肩にキュゥべえを乗せている。

 

『あまりにも危機感が足りないわ。…多分、まどかは本当の所で魔法少女になる事の意味、恐ろしさを知らない。』

 

『そうだね、でも進んで危険な目には合わせたくはないんだよね?こういうのは実際に体験するのが一番効くと思うけど。』

 

『まどかを救うためにまどかを危険に晒す、本末転倒ね。本当に頭が痛いわ。』

 

マスターも少しこれについては判断ができていないようだ。

僕としては演出され、管理された危険なら十分に鹿目まどかへの授業になると思うんだけど、マスターは鹿目まどかに対して真摯だ。

嵌めるような事は多分しないだろう。

 

「ーーと言うわけなんです。ところで先生と目線が合いませんね暁美さん!でもこの問題が解けたら許してあげます!」

 

He said I love you、( )( )( )

彼は愛してると言ったけど、本当は違った。

 

下の日本語訳に合うように、空白を埋めろと言うことだろう。

 

「分からなかったら先生をーー

 

but actually not(実は違う)です。」

 

頼ってもいい、早乙女先生はそう言いたかったのだろう。

マスターには通じなかったが。

 

「はい暁美さん正解です!そしてこれを世間ではデート商法、出会い系サイトの闇、もしくは美人局(つつもたせ)と言います。皆さんもお付き合いする男はちゃんと見極めましょう!」

 

やけに熱がこもっている、経験談かな?

 

『さすがだねマスター。』

 

『何回も解いたわ、この問題。』

 

『マスターが言うと重みが違うね。早乙女先生もマスター相手に躍起になってるけどこれはなかなか大変だね。』

 

『諦めてとしか言いようがないわね。』

 

『でもこの英文も日本語を知った僕から見ればなんだか不思議に見えるよ。日本語なら『愛してるLove』で終わるのに、実際英語だと『I love you』。手間のかかり方が違う。なんでなんだろうね。』

 

『難しい事じゃないわ。日本語と英語じゃ省略するものが違うから。

英語では繰り返しを、日本語では言わなくてもわかる事を省略するから。この英語の例文だって元々は

 

He said I love you、but actually (he do)not (loves me)

の形。わざわざ2回も同じ事を言うのを嫌がったから。

 

そして日本語は言わなくてもわかる事は省略する。

告白の時の『愛してる』がその典型例。

何が省略されているかなんて、それこそ言わなくてもわかるもの。』

 

『全くその通りだね。』

 

『それならさ、マスター。マスターな言葉足らずな所も考えたら分かるから敢えて省略しているのかい?』

 

『どう言う事?』

 

『マスターはたしかに鹿目まどかに警告したね。

 

「美味しい話しほど、裏も深いのよ」

 

「貴方は魔法少女になってはいけない。」

 

そしてマスターはその理由を誰にも打ち明けていない。

あの警告だけで、鹿目まどかが全てを理解して魔法少女になる事を諦めると本気で思っているのかい?

それが正しい日本語的省略の結果なのかい?』

 

ぐっとマスターが俯き、辛そうな顔をする。

 

『…真実は残酷で、それに耐えられほど人間は強くない。そしてそれは魔法少女も例外ではないわ。』

 

どうしようもないほど濁りきった諦観が深く根を下ろていた。

 

『マスター、もちろん今すぐ全てを打ち明ける必要はないんだ。ただ、もう少しまどか達の強さを信じてもいい。少なくとも、僕と会った時のまどかは、僕の手を取ったまどかは

 

ーーマスターが思うより、ずっと強かったよ。』

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。