まどマギAlter 暁美ほむらとエルキドゥ   作:名取クス

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夢の中であったような Aパート

覚醒。

 

寝ぼけた体をクリアな思考が叩き起こす。

 

 

「これを最後にする………このセリフも何回目かしらね…」

 

「数えるのもイヤになるほど、じゃないかな」

 

私の独白に応える声がする。

先ほどの出来事では決して幻では無いらしい。

 

「そうね。その通りだわ。全く持って度し難いわね、キュウベえも、魔法少女というシステムも。」

 

そんな惨劇を強いる世界も。

 

「マスター、確認したいのだけど、僕の任務は鹿目まどかの魔法少女化の阻止だね?」

 

「その通りよ。それ以外は一切何も考えなくていいわ。」

 

「ところでマスター。最後にこの道具()の性能について話ておくよ。

僕は神の泥。後に人と神と繋げる鎖になった。だけども本質は変わらない。ゆえに僕は『ありとあらゆる物になる事ができる』力を持っている。どうか存分に、使い潰してよマスター。」

 

「…あらゆる、とは大きく出たわね。私がこの世で最も憎む存在(ホワイトデビル)も似たような事を言っていたわ。」

 

「話を続けるけど、『ありとあらゆるものになる』というのは、その物質への構造の完全な理解から成り立つ。つまり対象を精査する能力にもたけているんだ。そしてそれを全方位に向ければ高性能レーダーのように使えるんだ。マスター、それによると白いタンパク質の群れが、突然現れた僕と言う超巨大魔力源に集まっているんだ。どうする?」

 

「そのタンパク質は、キュゥべえを自称する害悪よ。だから今すぐその魔力を仕舞いなさい。あなたという切り札をまだ知られたくはないの。そして迅速に離脱しなさい。集合場所は……「その必要はないよマスター。」

 

「僕は魔力の塊のような存在だ。だからそれを極限まで薄く伸ばしてしまえば、存在するのに存在しない。何も感じることはできないけど確かにそこにいる、なんて状況を作り出せるんだ。」

 

「ややっこしいわね。つまり透明化できるのね。さっさと離脱しなさい。」

 

「仰せのままに、マスター」

 

空気に溶けてゆくように、その存在が消えてゆく。

そこには初めから誰も居なかったかのようだ。

 

そして私も動き出す。

全てはまどかを救うために。

 

『ところで、マスター。今から各所から武器の類を収奪するみたいだけど、僕の体の一部を銃火器にしたほうがよっぽど効率的で効果的だよ。』

 

…出鼻を挫かれたわ。しかもテレパシーで。

コイツ実はキュウベえじゃないでしょうね。

 

でも、保険はいくらあっても足りないわよね。

自衛隊の大型重火器とc4、大口径ライフル、各種銃火器くらいは揃えておきましょう。

 

 

 

 

誰も未来を信じない。誰も未来を受け止められない。

だからもう誰にも頼らない。誰に分かってもらう必要もない。

 

その決意にも似た信念が揺らぎ始めている事に、彼女はまだ気づかない。

 

 

ほむら side out

 

▼▲▼▲▼

 

まどかside

 

壊れた逆さ人形の殺戮。

荒れ果てた荒野にかつての町の面影はなく。

 

懸命に破壊者に抗うほむらちゃん

 

だけどそれは圧倒的な暴力の前にに儚く散る。

倒れ伏した彼女から目を離すことができない。

 

同時に頭に()ぎる2人の姿。

二度と立ち上がることもないマミさんとと杏子ちゃん。

 

もう、どうすればいいのが良いのか分からなくて、ぐちゃぐちゃで、目の前が真っ暗になった。

 

「ひどい…」

 

「仕方ないよ。彼女1人では荷が重すぎた。でも、彼女も覚悟の上だろう。」

 

キュウベイは告げる。

 

満身創痍、それでもなおヨロヨロと立ち上がる姿は痛々しすぎて。

どうして、私はここで1人、棒っキレのようにつったているのだろう。

自分の無力さに怒りさえ湧いてくる。

 

「そんな…あんまりだよ!こんなのってないよ!」

 

まどかは痛哭する。

 

「諦めたら、それまでだ。でも君なら運命を変えられる。」

 

キュウベイは告げる

 

「避けようもない滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。そのための力が君には備わっているんだから。」

 

キュウベイは告げる。

 

「……本当なの?」

 

受け入れがたい光景が脳髄を揺さぶり、彼女の心を弛わせる。

だくだくと血を流しながらもほむらは必死に叫ぶ。

「〜〜〜!!〜〜〜!!」

 

もう何も聞こえない。何もわからない。

 

「私なんかでも、本当に何かできるの?こんな結末を変えられる?」

 

「もちろんさ」

 

キュウベイは告げる。

 

だから僕と契約して魔法少女になってよ!(宇宙のために、死んでくれ)

 

どこまでも残酷に。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーー

ーーーーー

 

リリリリリりりりりり ガチャン…

 

「…くぅ、ふわぁ〜。夢落ちぃ〜?」

 

なんだか、不思議な夢を見た。

みんな苦しそうで辛そうで、みてられないような。

でもそんな時、私がみんなの助けになればなぁ。なんて思った。

そういえばみんなって誰だったんだろう。早くもあやふやだよ。

やっぱり夢だからかなぁ。

いつもとはちょっぴり違った目覚め。

 

でもそれからは普通だ。

 

いつものように、パパは家庭菜園に励みおいしい朝食を作ってくれる。

 

タツヤとママを起こし、たわいない話をして、一緒にリボン選びをする。今日もママはリクルートスーツをピシリと決め、パンを加えたまま明るい日差しに飛び出してゆく。

 

タツヤは少しあぶなっかしそうにご飯を食べ、パパと一緒に幼稚園服を着る。

私も遅れないように家を出る。

 

通学路でさやかちゃんや仁美と合流してからは、仁美のラブレターやまどかの真新しいリボンの事を仲良くお喋りした。

 

教室でいつものように、先生のノロケ話を聞かされると思いきや、今日は目玉焼きの硬さについて熱弁し出した。

わけがわからないよぉ。

でも、先生はたぶん彼氏さんとうまくいかなかったんだろうなぁ。

ごしゅう傷様です。

 

「こほん、では気を取り直して。今日は転校生を紹介します。

暁美さん。入ってきて〜。」

 

転校生より、目玉焼きの焼き加減の話なんて、先生は本当に色恋にあついなぁ。

 

 黒髪ストレートの美少女転校生に、男子が沸いた。

 「………うわー、スッゲェ美人。」

 さやかちゃんも口が丸く空いてる。かわいい。

 

 

うわぁ、すごい美人さんだぁ。なんかこうクールでリンとしていて憧れちゃうなぁ。…やっぱりああいう人がモテるのかなぁ。

 

………なんだろう、この胸のもやもやは。

   私、この人とどこかで…?

 

「はーい、それじゃ自己紹介行ってみよー!」

 

「暁美ほむらです。よろしくお願いします。」

 

沈黙。

 

  暁美ほ、まで書いて先生の手が止まる。続きは?と言うふうに目配せしている。

  暁美さんは自分で、暁美ほ の後に むら を足して名前を完成させる。あんまり伝わってなかったようだ。

 一拍置いて

 

「好きな事は読書です。ちなみに目玉焼きの好みは完熟です。」

 

「あっ、暁美さん!もう!」

 

 どっと笑いが起こる。クラスが和んだ。

 

 少しだけ目があった。

 その時、まどかの頭に鮮やかにフラッシュバックする夢のカケラ。

 

 『うそ、……まさか…』

 

 一瞬の彼女の心を射抜くかのような鋭い眼光。

 それはすぐに別の色に変わったが、しかし、その視線はこちらに固定されたままだった。

 

 胸が、ざわめく。

 意図せずたじろいでしまう。不安げに視線が二転三転して、おずおずと伺うように彼女をみると、ゆっくりと頭を下げており、先ほどまでの鋭利さはなかった。

 暖かい拍手が彼女を包んだ。

 

ーーーーーー

 

 

 「暁美さん、どこからきたんですか?」

 「どんなジャンプー使ってるんですか?」

 「好きなアーティストは誰ですか?」

  「暁美さん」「暁美さん」「暁美さん」

 

 さっそく暁美さんは大人気になっていた。

 彼女の席だけ人口密度が半端ではない。

 

 しかし彼女もさるもの。矢継ぎ早な質問を難なく捌いてゆく。そこには落ち着いた大人っぽさがあった。

 

すごいなぁ、まるで私よりずっと年上さんみたい。

 

 するとさやかが顔を近づけて

「それにしても、まどか、なんか転校生にガン飛ばされてなかった?」

「いや…あの、その…」

「なんだか、不思議な人ですのね、暁美さん」

 と仁美も彼女について掴みかねているようだ

 

だって、夢の中であったなんて、そんな…

 

 不意に彼女が、立ち上がる。

「ごめんなさい。今ちょっと緊張しすぎちゃったみたいで」

 

 「私が案内してあげようか?」と、クラスメイト。

 「いえ、保健委員の人に頼むから大丈夫よ」 

 「ふーん、そっか」

 

 そして、コツコツとまどかの席まで歩み寄ってきて

 

「鹿目まどかさん、あなたこのクラスの保健委員よね?」

「えっ、えっと」

「連れて行ってもらえる?保健室」

 有無を言わせぬものが、そこにはあった。

   

 

私より一歩先を歩く暁美さん。

ふぐぅぅ、みんなはジロジロ見てくるし、暁美さんはなんか怖いし、今日はなんだかうまくいないなぁ。

 

「あ、あの…私が保健委員だってどうして…」

 

「…」

 

「…」

 

………

 

「早乙女先生に教えてもらったの。」

 

「そぉ、そうなんだ。…そうだよね、あはは…」

 

…つらい。

 

「えっと、暁美さん。保健室は…」

 

「こっちよね。それに…ほむらでいいわ。」

 

「えっ、ええ?…じゃ、じゃあ ほ、ほむら…ちゃん?」

 

「それでいいわ」

 

……

 

保健室が見えてきた。

ほむらちゃんはずっと私より前にいた。

私が連れてくはずだったのに。

 

「鹿目まどかさん」

 

 その瞬間、空気がピンと張り詰める。自然と背中を伸ばしてしまいそうなかんじだ。

 

「あなたに大切なものはある?」

 

「………え?」

 

ほむらちゃんはとても真剣な顔でこちらを見ていた。

 

「…あるよ。私にも大切なもの。家族とか友達とかみんな、とっても大好きでーー大切な人だよ。」

 

「本当に?」

 

「本当だよ!嘘なわけないよ!」

 

「そう…それなら、私から一つ忠告するわ。美味しい話しほど、裏も深いのよ。」

 

「待ってほむらちゃん、それってどういう…」

 

ほむらちゃんは、振り向く事無く、保健室に入っていった。

 

「わけがわからないよぉ…」

 

その場には途方に暮れたまどかだけが、1人ポツンと取り残された。

しかし、その背中は確かに…

 

「ああ、でも、やっぱりどこかで、まるで、そう ーー夢の中であった、ような」 

 




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