まどマギAlter 暁美ほむらとエルキドゥ   作:名取クス

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それはとっても嬉しいなって Bパート

まどかside

 

「提案なんだけど、しばらく私の魔女退治についてきてみない?」

 

「「え?」」

 

予想もしてなかったマミさんの提案に、私とさやかちゃんの声が一致した。

 

「ほら、魔法少女や魔女についてはキュゥべえが説明したけど実際見てみないとピンと来ないと思うの。魔法少女として活動する事がどういう事で、どれだけ危ないことか。昔の偉い人も言ったでしょ?『百聞は一見にしかず』って。」

 

「その上でそれに見合うだけの願いがあるか。じっくり考えてみたらいいと思うの。」

 

 

 ▼▲▼▲▼

 

「まどかはさー。なんか願い事見つかった?」

 

「ううん。なんだか何も思いつかなくて。さやかちゃんは?」

 

「あたしもさっぱり。願いなんていくらでもありそうなに。なんだがなー。」

 

お昼休みの校舎の屋上、青空をいっぱいに吸い込むようにくぅっと大きな伸びをするさやか。

 

「欲しいものもやりたい事もあるんだけど、命懸けって言われたらどうしてもタタラ踏んじゃうっていうか、なんか違うなって。」

 

「うん……。そうだよね。命に釣り合うお願いなんて、そうそうあるわけないよね。」

 

「君たちはちょっと変わってるね。他の子は大抵二つ返事なんだけど。」

 

キュゥべえはお座りの体勢で言った。

 

「多分あたし達がバカだからだよ。」

「思うんだけどこの世の中に命を秤にのせてでもより重い望みを持つ人って沢山いると思う。」

「だけど私達にそれが見つからないのは、そこまで思い詰めるような不幸に出会ってないってことじゃん。」

 

「恵まれすぎてバカになっちゃってんだよ、あたし達。」

 

どこか皮肉っぽい言葉。さやかちゃんは少し重くなった空気を誤魔化すように笑った。

 

「それにしてもあのテンコーセイ、今日もなんか凄かったよな!」

 

さっきとはまるっきり違うトーンで話すさやかちゃん。

 

「マミさんが言うには『魔法少女が増えるのを邪魔しようとしてる』って。しかもその目的が『強力なライバル』になる魔法少女が生まれるのを嫌がったから。同じ正義のために戦う魔法少女同士協力試合えばいいのにな。今日も思いっきりまどかにガン飛ばしてたし。まどかもなんかされたらアタシに言いなよ?アタシが華麗にぶっ飛ばしてやるからさ!」

 

「うん、心配してくれてありがとねさやかちゃん。でも暴力はダメだよ。それにぶっ飛ばすって。」

 

「あはは、さやかちゃんにお任せ!」

 

風がさらりと吹く。

 

 

「…でも、なんであたし達なんだろうね。」

 

「…さやかちゃん?」

 

「命をかけでも成し遂げたい人なんかあたし達以外にいっぱいのに」

 

「なんか不公平じゃない?なんでそのチャンスがあたし達にはあるんだろ。」

 

「さやかちゃん……。」

私にはかけるべき言葉を見つけることができなかった。

 

 

 

不意にガチャリと屋上のドアが開く。

現れたのは暁美ほむら。

ミステリアスでしかし冷淡な雰囲気を持つ謎の転校生兼ーー魔法少女。

 

 

 ▼▲▼▲▼

 

エルキドゥside

 

『さっそくまどかを探しに行くのかい?』

 

『いつからそんなにまどかと親しくなったの。……キュゥべえにタイミングは関係ないわ。隙さえあれば必ず勧誘する。まどかを魔法少女の道へ。』

 

『マスターの呼び方がうつったのさ。まどかは美樹さやかと屋上にいるみたいだね。』

 

『さすがね。』

 

足早にカツカツと歩を進めるマスター。

マスターはそれだけ鹿目まどかの事が心配なんだろう。

そしてそれはこれほどマスター恐れさせるキュゥべえという存在の脅威も高いということだね。

 

『いた。』

 

屋上に着き鹿目まどかと美樹さやかを発見する。

と同時に安心や良かったという気持ちが魔力パスを通して僕に流れ込む。

やっぱりマスターはまどかが大好きなんだね。

 

『当たり前じゃない。まどかは私の1番の親友だから。』

 

迷いなく真っ直ぐ鹿目まどかに近づくマスター。

まどかを庇うように前に出る美樹さやか。

 

『マスター。隣の校舎の屋上に巴マミだ。この場は彼女に監視されてるよ。』

 

『問題ない。』

 

マミを刺激しすぎないようマスターは鹿目まどかと少し距離をとり止まる。

 

「何?昨日の続きをしようってわけ?」

 

「いいえ。そのつもりはないわ。」

 

警戒心剥き出しの美樹さやかに冷やなかな眼差しでキュゥべえを見るマスター。

 

「そいつが鹿目まどかと接触する前にケリをつけたかったけど……それも今更手遅れだから。」

 

視線をあらためてまどかに戻すマスター。

その目は真剣さそのものだ。

 

「で、どうするの?そいつの言葉を全部鵜呑みにして魔法少女になるつもり?」

 

「強制はしてないよ。まどか達も今迷ってるからね。」

割って入るキュゥべえ。

 

「それにこれは私達が決めることでアンタにとやかく言われる筋合いはない。」

 

マスターは何も答えない、ただじっと美樹さやかを見ただけ。

その視線に自然と美樹さやかが一歩後ずさる。

 

「まどか。昨日言ったこと覚えてる?」

 

「…うん。」

 

「なら貴方は魔法少女になってはいけない。」

 

マスターはハッキリと告げた。

遠くの巴マミの顔が不快げに曇る。

 

「貴方が魔法少女になれば周りの人が悲しむ事になる。それをよく考えて。美樹さやかもね。」

 

「私の忠告が無駄にならないことを祈っているわ。」

 

警戒されすぎている。

そう思ったのかマスターはそれだけ言うとクルリと踵を返した。

 

「あたし達を脅したつもり⁉︎」

 

「いいえ全く。」

 

半身だけ振り返って、何か勘違いしたらしい美樹さやかの追及をバッサリと切り捨てる。

いつも通りのお人形のように整った、それでいて感情の読み取れない表情で。

 

「ほむらちゃん。ほむらちゃんは……魔法少女になるとき、何をお願いしたの?」

 

そのまどかの言葉に再び振り返ったマスターの顔はあまりにも複雑で痛切で悲哀な感情が混ざり合いぐちゃぐちゃに歪んだ顔だった。

 

その無知ゆえの無垢な質問は、今のマスターにとってあまりにも残酷すぎた。

 

マスターは今度こそその場を後にした。

その(まなじり)に溢れそうなほどの涙を溜めて。

 

  ▼▲▼▲▼

 

 

『場所はこのビルで間違いないかな。魔力の濃さが段違いだからね。』

 

「気は抜かないで。」

 

『もちろんさ。』

 

今にも廃ビルの屋上から飛び降りようとしていたOL。

マスターが魔力をぶつけて失神させる。気を失い倒れた彼女の首筋には

くっきりと残る刻印。魔女に魅入られた犠牲者の証。

 

マスターがソウルジェムの力を解放すると、異界への扉が露わになる。

迷いなくその先へ。

マスターと僕は魔女結界に踏み入れる。

途端に広がるグロテスクな世界。

子供がクレヨンでぐちゃぐちゃに塗り潰したような歪な世界。  

 

不躾な来訪者に使い魔が群がる。

 

「使い魔は任せてもいいかしら。」

 

「ようやくだねマスター。でもこれじゃーー」

 

ようやく霊体化を解き限界する。

と同時

 

「ーー試運転にもならないね。」

 

エルキドゥの足元から四方八方に線が地を這うようにかけ、使い魔達の足元で剣とし実体化しその群れを貫く。

 

一様に串刺しにされた使い魔達は力なく消え去る。

 

「嬉しい誤算ね。」

 

まるで障害など存在しないかのような自然な歩み。

それはいっそ無人の荒野を行くような。

 

「お出ましだね。それにもう一つのツアーグループも。」

 

魔女結界の奥、その中心にいたのは蝶のような羽にドロドロとした粘性の頭、そこに黒ずんだバラをつけたこの異界の主、魔女。

 

「そう、それなら後はわたしがやるわ。霊体化して。」

 

『理解したよマスター。』

 

僕が霊体となると同時、マスターが瞬間移動のような手際で魔女の体に爆弾を仕掛ける。

 

魔女も黙っていない。俊敏な動きでマスターに攻撃を仕掛ける。

 

 

「ーーいたわ。あれが魔女、呪い撒き散らす災厄の形。」

「うわぁ。意外とグロい」

「あんなのと……戦うんですか?」

 

遅れてやってきたのは

魔法少女化した巴マミに美樹さやか、そして鹿目まどかとキュゥべえ。

 

「そうよ。でも、今回は先客がいたみたいだけど。」

その言葉でようやく巴マミ以外の2人も暁美ほむらの存在に気がついたようだ。

マスターも巴マミに向き直る。

 

直後、次々と起きた大爆発によって薔薇の魔女は悲鳴と共に爆炎に飲まれ消えていった。

後に残された小さくて真っ黒な球体ーーグリーフシードーーをマスターは拾い上げる。

 

『マスター提案だ。必要最低限だけグリーフシードを使って残りを巴マミに譲る事を提案するよ。後々のワルプルギスの事を考えれば、協調する意思をみせておくのも一つの手だと思うよ。それと少しグリーフシードを調べてもいいかな?』

 

『変化は必要ね。採用するわ。グリーフシードは素早く調べて、詳しくは後ですればいいわ。』

 

『それじゃ素早くやるよマスター。』

 

僕の体の一部が実体化し、一瞬だけグリーフシードを覆い解析する。

マスターの体が死角になって、ちょうど見えない位置。

そのグリーフシードでマスターはソウルジェムの汚れを除去し、まだほとんど使ってないグリーフシードを巴マミに投げ渡した。

 

「デモンストレーションには使えるわ。」

それだけ言ってマスターは踵を返す。

    

「今回はありがたく受け取ろうかしら。こうして貴方と協力し合える『お友達』になれたらいいと思うわ。」

 

「そうね。私もよ。」

 

マスターは振り返ることなく、その場を後にした。




読了感謝感激雨霰
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