「巴マミ死亡候補日の中の一つ。それが今日。」
予言のようなその言葉も、マスターが言うなら充分な説得力を持つ。
『穏やかじゃないね。死亡要因は?』
「ほとんどが魔女との交戦によるもの。それもたった一体、『お菓子の魔女』との戦闘。」
『つまりここはこの世界における重要な分岐点な可能性があるんだね。そして鹿目まどかを救うには巴マミが生きていた方が都合が良い。』
「その認識で合ってるわ。」
『ただ戦いに行くのを止めても言うことを聞いてくれないだろうね。』
昨日のマスターと巴マミの会話を思い出す。
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鹿目まどかと美樹さやかの両名と別れ、家路を歩く巴マミ。
そしてそれを監視していたマスターに振り返る巴マミ。
その目はマスターをはっきりと認識していた。マスターも黙ってはいられなかった。
「分かってるの?貴方が今している事は、無関係な一般人を危険に巻き込んでいるの。見込みがある人を連れてきて兵士として戦場に投げ込もうとしている、それが貴方のしている事よ巴マミ。」
「彼女たちはキュゥべえに見込まれた時点で無関係じゃないわ。それに私はあくまで彼女達の意思を尊重しているわ。それに望むと望まざると魔女は向こうからやってくるわ。」
マスターと巴マミの間の雰囲気が鋭くなる。
「貴方は2人を魔法少女へ誘導している。」
「それが面白くないわけ?」
「ええ迷惑よ。特に鹿目まどか。」
「貴方も気づいていたのね、鹿目まどかの素質に。」
マスターの視線がさらに険しさを増す。
鹿目まどかの魔法少女としての才能はあまりにもの途方がない。破格の力。
それゆえに、魔女化した時の被害は甚大だ。それこそその時が来た地球が最後だ。
「彼女だけは、魔法少女にだけはしない。」
それが、その無限試行の先に求めたマスターの願いだ。
しかしその言葉に込められた覚悟は巴マミには伝わらない。
「ふぅん。自分より強い子だけは魔法少女にしないってわけ?競争しても自分が勝てないから。」
「でもそれって、完全にいじめられっ子の思考よね。」
パスを通してマスターの荒れ狂う感情が入ってくる。
それほどまでにマスターの心は怒りに猛っていた。
「貴方とは戦いたくないのだけれど。」
極めて冷静さを保ちつつ、マスターの意思を伝える。
遠回しな決意も含めて。
「そうね。最近英語の授業でやったそうじゃない。『
それだけ言い捨てると巴マミはマスターの反応も待たずに帰り始めた。
事態が思うように行かず歯噛みするマスターだけが、その場に残された。
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『言葉だけで止められる様子じゃなかったね。』
「ええそうね。だから巴マミより先に魔女を潰す必要がある。」
「お菓子の魔女だけは、マミに任せておけないから。」
会話しながらも緊張はマスターの張り続けたままだ。
感を尖らせている。
『…マスター。今魔力の反応があったよ。まず間違いなく魔女だろうね。』
「⁉︎場所はどこ?付近にそれ以外の魔力反応は?」
『見滝原病院。すぐ近くに巴マミ、キュゥべえ、鹿目まどか。そして美樹さやかもいるだろう。揃い踏みだね。』
「…ッ!」
瞬時に魔法少女に変身し走り出すマスター。全力全速。
一陣の風のように市中を駆ける。。
『駐輪場の裏。そこに魔女がいる。』
そんなに離れた場所ではなく目的地はすぐに見えてきた。
「…まずい。出遅れた!」
遠目から見えたのは今まさに展開された魔女結界に歪んで消えていく巴マミ達。
わずか数秒差、しかし現場にマスターがついたときその場に彼女らの姿はない。
「追いつかないと…!」
マスターもまた、躊躇なく魔女結界に飛び込む。
悪夢はまだ序章にしか過ぎない。