皆様ご無沙汰しています 
かなり昔に書いて置いたままになっていた水蓮達の短い話を投稿させていただきました。
特になんて事ない3人の一コマですが 


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あの日見た夢[いつの日か…]

 「面白い夢を見た」

 

 一番そんな話をしなさそうな人物が急にそんなことを言いだし、二人はきょとんとした顔になった。

 「自分がまったく違う人物になっていたんですよ」

 驚いた二人を見てもなおそうやって話を続けたのは、飲み交わしていた酒が思いのほか強かったからなのかもしれない。

 それでも、「もしも」というような話を決してしない性分。なんとなく聞かない方がいいような気がして、水蓮は遠慮がちに言葉を返した。

 「なんか鬼鮫がそんな話するの珍しいね」

 その言葉でハッとして話をやめるのではないか。そう思った。それでも鬼鮫はただ手にした酒をあおっただけで、変わらず話を続けた。

 そうなればもう聞くしかない。水蓮が向けた視線の先でイタチも少し複雑な顔で小さく頷いた。

 

 

 暁からの任務を一つ終えて、アジトへと帰ってきた夜。

 目的の物を無事手に入れて終えたその任務で、思いがけず滞在先の住民から感謝を受ける形となり、お礼にと渡された酒を飲んでいた時のことだった。

 水蓮もイタチも普段酒を飲むことはなく、ちびりちびりと口をつけていたのだが、時折飲むことのあった鬼鮫は「悪くない」と言いながら飲み進めていた。

 その酒の強さにあてられたのか、急に数日前に見た夢の話を始めたのだ。

 「見たことのない街で別の人間になって暮らしていた。ただ普通に」

 特に表情も話し方も変えることなく淡々と話す。

 「忍びではない仕事をしていた」

 「どんな仕事?」

 単純に興味がわき水蓮が問う。

 「ガラス職人のような、そんな感じでしたよ」

 花瓶やコップを作っていたとそう話す鬼鮫に、水蓮はその姿を想像して一瞬笑いそうになったが、案外似合うのかもしれないとそんなことを思った。

 それでも夢の中で全く違う姿をしていたのなら、その想像はあまり意味がないかとそう思う。

 「過去にそんな願望でもあったのか?」

 ほんの少し酒に口をつけイタチが問う。

 自分たちに全く縁のないそんなことを夢に見るのなら、そういう事なのかもしれない。

 だが鬼鮫は「いえ別に」と返した。

 「自分でもなぜあんな夢を見たのかわからない。それでもその夢の面白かったところはあなたたちもいたことですよ」

 二人は変わらぬ姿でそこにいて、イタチは医者を、水蓮は食堂をしていたと鬼鮫は話す。

 別々の仕事をしてはいたが、なぜか同じ家に暮し、そろって食事をしていたと。

 「食べていたシチューがやたらといい味で、イタチさんはそれを難しい顔で難しい話をしながら食べてましたよ。それを聞いてあなたはただ笑っていた。イタチさんの話は何もわかっていないようでしたけど」

 少し馬鹿にしたような口ぶりに水蓮はむっとして口を尖らせた。

 「なんか私のイメージ悪くない?」

 ジトリとした睨みを向けるが鬼鮫は特に気にもせず酒を注ぎ煽り飲む。

 「それだけの夢だった。もしかしたら他にもあったのかもしれませんがね。覚えているのはそこだけだ」

 そう言って話を終え、鬼鮫はただ酒を飲み進めた。

 水蓮もイタチも特にそれ以上は何も聞かず、ただ静かに時間は過ぎた。

 どれくらいそうして黙って酒を飲んだか、鬼鮫が不意に水蓮に問いかけた。

 「あなたはどうですか」

 「どうって?」

 「夢を見たりしないんですか?」

 「夢かぁ」

 少し考え、そう言えばと思い出す。

 「私はあんまり夢を覚えてないんだけど、この間夢の中で食べたおにぎりがすごくおいしかった」

 それを聞いた二人が噴き出して笑う。

 「笑うことないでしょ」

 いじけて酒を飲む。

 「ご飯がおいしいっていい事でしょ。体も心も健康な証拠なんだから」

 「そうはいっても夢ですしね。まぁあなたは夢の中でも能天気なわけだ」

 「またそうやってバカにする!」 

 苛立ってグイッと酒を煽る。

 「おい、お前そんな飲み方したら…」

 水蓮の手をイタチがつかんで止めるがすでに飲み干された後で、そこに鬼鮫がすかさず継ぎ足した。

 「鬼鮫、あまり飲ませるな」

 水蓮が酒に強いのか弱いのかは分からない。

 それでも普段好んで飲むことはないのだから慣れてはいないだろうと、イタチが制止をかける。

 だがその制止を水蓮が拒んでイタチの手をほどく。

 「これくらい平気だから!」

 とは言う物の、一気に煽った今の酒ですでに酔いが回ったのか、イタチに向けた目は完全に座りきっていた。

 バカにされた怒りが混じってやけになっているのか、新たに注がれた酒にも躊躇なく口をつける。

 「ま、まて。一気に飲むな」

 慌ててなだめるイタチとは逆に、鬼鮫は面白そうに笑ってさらに飲み進める。

 「それで、あなたはどうなんですか?」

 今度はイタチに向けてだった。

 酔いが回った水蓮でもさすがに息を飲んだ。

 イタチにとって夢は良いイメージの物ではない。過去の痛みを思い出す物。

 幾度となく見続け、そのたびにうなされ苦しむ。そういうものなのだ。

 鬼鮫とて内容は知らないものの、うなされるイタチの姿を幾度も見ている。

 そうでありながらこうも平然と聞いたのは、見た目よりも酔いが回っているのかもしれない。

 イタチは少し呆れたように息を吐いた。

 「お前、それをオレに聞くのか」

 怒りはない。ただただ呆れた声だった。

 鬼鮫はやはり平然と返す。

 「何もそんな夢ばかりでもないでしょう。他には見ないんですか?」

 普段ならイタチが拒めばそれ以上は聞かない鬼鮫が今日はそうではない。

 「一番最近見た夢でも、昔見た夢でも」

 何でもいいから話せと言わんばかりにイタチを見つめる。

 その妙に絡んでくる鬼鮫にイタチの眉間にしわがよる。

 「おまえ、絡み癖があったのか?」

 言われた鬼鮫は否定せずに「そのようですね」と笑って返してまた酒を飲んだ。

 そしてまた問う。どんな夢を見るのかと。

 あまり見ないしつこさにイタチはついに折れたのか、それともただこれ以上は面倒だと思ったのか酒を少し飲んで口を開いた。

 「そうだな…。しばらく前に見たのは、特に変わった物でもない日常の夢だ。オレ達が調達した物を水蓮が調理して食べる。そんな夢だ」

 「それだけですか?」

 「それだけだ。そういう夢は何度か見る」

 そっけなく返され、鬼鮫は面白くなさそうに「そうですか」と答えた。

 そんな鬼鮫とは逆に水蓮は小さく噴き出して笑った。

 その笑いはなかなか収まらず、鬼鮫が顔をしかめた。

 「笑い上戸ですか…」

 しかし水蓮は首を横に振った。

 「違う違う。そうじゃなくて、私たちの夢って食べ物ばっかりだなと思って」

 そう言って笑いの止まらない水蓮につられるように、鬼鮫が笑い声を上げた。

 それを見てイタチも少し笑いをこぼした。

 「確かにそうだな」

 そうして笑いながら各々に酒で喉を潤した。

 

 もしも…

 

 強い酒にその全ての責任を押し付けて

 

 遠い未来にそんな日常を夢に見て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆本当にお酒に酔っていたのか
鬼鮫はお酒強そうですよね
イタチなんて飲んでるふりをしてるのかも
案外水蓮が一番強かったりして

そんな事考えながら書いてました 

翌朝には3人とも少しも触れない
また戦いの日々

少しでも、なんて事ない時間を過ごしていてほしいな


まだまだ落ち着かない日々ではありますが、皆様どうかお体に気を付けてお過ごしください 

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