新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作)   作:高橋ヒナタ

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「天才少年シンジ君」最終回でございます。

途中何度も失踪しかけましたが
何とか最後まで走り切ることが出来ました…!
初投稿からここまで約3年
長い間ご愛読ありがとうございました!



NEON GENESIS

 

 

 

「…アダムとリリスは人として生きる事を望む…か」

 

 

キールが、自身の敗北を悟ったような声で呟いた。

 

 

「えぇ。私達はヒトとしての道を選ぶわ」

 

「心の壁があるからこそ得られるものというのを

僕らはシンジ君達から教えて貰ったんだ。

確かに、煩わしさというものもあるかも知れないけれど

それがあるからこそ、ヒトは強くなれるともね」

 

この星に降り立った2柱の始祖が味方に付いた時点で

たとえSEELEと言えど抗うことは不可能だ。

かつて契約を交わしたリリスの化身たるレイから

ハッキリと意志を告げられたこともキールにとっては

自身の負けを認識する大きな要因になったのだろう。

 

 

 

「第3の少年…いや、碇シンジ」

 

キールは、バイザーを外してシンジと向き合う。

バイザーの下はひび割れ虚空の中に光が浮かぶという

おおよそヒトとは思えない状態になっていたが…。

 

 

「…我らの願いは、人類の安寧と永続」

 

「分かってますよ。人類補完計画もその為だと」

 

キール・ローレンツは人類を滅ぼそうとした極悪人である

最近改定された歴史教科書などではそう書かれているが

彼もまた形は違えど人類の未来を憂いていたのだ。

繰り返される争いに環境問題、そして逃れられぬ運命。

 

シンジとキールは、人類の未来を良いものにする為に

様々な対策を打ってきた事に違いは無かった。

 

 

「ならば、託す。我らの願いを。」

 

キールがそっとシンジの胸元に手を添える。

 

 

「…!」

 

「この命が人類の安寧の礎となることを願う…」

 

 

直後、彼はL.C.L.となって消えていった。

 

しかしシンジには分かった。

真に彼が人類のことを想っていたことを。

…己の中に秘める命がひとつ増えたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………時が来たね」

 

初号機のエントリープラグに戻ってきたシンジ。

 

「やろう!シンジ君!」

 

「力を貸すわ」

 

その両隣にアダムとリリスを連れて。

 

 

「行こう。ガフの扉の先…マイナス宇宙へ」

 

シンジがそう言うと、初号機は全身から輝きを放ち

光の翼を広げ、頭上に光輪を浮かべると

白き月の頂上に開けられていた穴──ガフの扉へ

真っ直ぐに飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

しばらくマイナス宇宙を飛び、3人が見つけたのは

十字の先端に更に十字を繋ぎ合わせたような形状の

不思議な物体。

 

「あれがゴルゴダオブジェクトだね」

 

キールの魂が記憶していた情報を元にすれば

あの妙な物体がゴルゴダオブジェクト。

世界を書き換えられる存在がいると思われる場所だ。

 

 

 

「………ここは…ドグマの最深部?」

 

「マイナス宇宙は僕らの感覚器官では認識できない。

それをL.C.L.で視覚化した結果なのだろう」

 

ゴルゴダオブジェクトに飛び込んだ3人を出迎えたのは

NERV本部にあったターミナルドグマと同じ光景だった。

 

広大な空間にL.C.L.のプール、赤い巨大な十字架

そしてそれに磔にされている存在──

 

 

「黒い…リリス…?」

 

「いや…違う。これがエヴァイマジナリーだ」

 

彼らの中でも特に縁があり馴染み深い存在

第2使徒の姿を取るエヴァイマジナリーがそこに居た。

それは、18年前のSEELE施設への強制捜査の際に

得られた情報の中に記されていた存在。

人類だけがその存在を認識できるのだという。

 

 

 

 

 

「じゃあ、始めようか」

 

シンジ達は一度初号機を降りる。

 

体内に眠る力を解放してふわりと浮かび上がると

誰も乗っていない初号機が再び動き始める。

自身の主たるシンジの意思のまま、初号機は槍を握りしめ

1本になっていたヴィレの槍を元の姿へと戻す。

 

「絶望と希望の槍が互いにトリガーと贄となり

虚構と現実が溶け合う」

 

ロンギヌスの槍とカシウスの槍を取り込んだ

エヴァイマジナリーは、黒かった体色が白く──

つまりはリリスと全く同じ姿へと変わる。

それ即ち、エヴァイマジナリーが実体化した証。

その力を手にした者が自身の認識を書き換えることで

その想像が、虚構が現実のものとなる状態である。

 

 

「僕らの力を手にしたシンジ君ならば」

 

「ヒトもシトも関係ない世界に作り替えられる」

 

カヲルがシンジの肩に手を添えてひとつになり

レイがシンジを抱きしめながらひとつになる。

 

 

 

「…これが最後の仕事だ。エヴァ初号機。

もう少しだけ、僕に力を貸してくれるかい?」

 

シンジは、初号機の前に立つ。

 

初号機はゆっくりとしゃがみ込み、彼と視線を合わせる。

 

 

 

「……………」

 

 

 

「………そうか。ありがとう」

 

 

 

己の意志を視線に乗せて伝えた初号機は

差し出された彼の手に自身の人差し指を触れさせた。

 

 

 

──バシャァッ!!!

 

 

 

初号機もまた、L.C.L.となって彼とひとつになった。

 

 

 

「………行くよ。みんな」

 

 

 

背には3重の光輪が浮かび、瞳は紫に輝く。

 

シンジはエヴァイマジナリーともひとつになった。

 

 

 

 

 

そしてついに"新世紀(ネオンジェネシス)"が始まる──

 

 

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「…状況は?」

 

「全ての計器は未だ計測不能を示しています」

 

「私達ではマイナス宇宙には干渉出来ないわ」

 

突然再起動した初号機がSEELEエヴァを撃破して数分。

ミサト達はヴンダー級2隻の応急処置を急がせながらも

初号機が飛び込んで行った先を観測しようと

様々な計器を動かしていたが、結果は見ての通り。

 

あらゆる法則が通用しないマイナス宇宙は

人類の技術で観測出来るものでは無いのである。

 

 

「シンジ君…」

 

ミサトが心配そうにガフの扉の先を見つめる。

 

否、ミサトだけではない。多くのWILLE構成員が

それぞれの形でシンジと初号機のことを気にかけていた。

 

「碇。自分の息子の事を信じてやらんか」

 

「そうよ。私と貴方の子供だもの」

 

「………そうか…。……戻ってこい。シンジ」

 

それはゲンドウやユイ、冬月も例外では無かった。

 

 

 

そんな時。

 

 

 

『ガフの扉より超高エネルギー反応!!来ます!!!』

 

「何っ?!」

 

 

ガフの扉から、何かが出てこようとしていた。

 

ヴンダー級よりも遥かに巨大な何か。

第3使徒と同じ仮面を押し退けて出てきたのは

ヒトのようなカタチをした何かだった。

色こそ違えど、その姿はまるで──

 

 

「シンジ…くん…なの…?!」

 

「い、碇艦長?!」

 

碇シンジそっくりであった。

 

 

 

「あれがエヴァンゲリオンイマジナリーか」

 

「SEELEの仮説にあったが…まさか実在するとはな」

 

 

完全に姿を現したエヴァイマジナリーこと碇シンジが

慈しむような仕草でその手を白き月に添えると

ファイナルインパクトによって世界中に現れていた

エヴァインフィニティ達が一斉に白き月へと還っていく。

 

シンジがインフィニティ達の還った白き月を掲げると

それはまるで花火のように弾け、インフィニティ達は

無数の命に分かれながら雪のように地球に降り注いだ。

赤く染まっていた大地が、海が、元の姿に戻っていく。

ヒトも、動物も、植物も。自転車も、家も、ビルも。

そうしてあるべき場所に戻って行った生き物達は皆

何事も無かったかのように再び営みを再開させるだろう。

 

エヴァイマジナリーの力とは、虚構を書き換えることで

現実すらも書き換えてしまうもの。

浄化された世界を元の姿に戻す事など容易い事なのだ。

 

「凄い…!」

 

その光景は、南極に居ても分かるものであった。

むしろ南極の方が分かりやすかったかもしれない。

 

「これが南極大陸だったんですね」

 

「そうよ。ここは元々一面の銀世界だった」

 

今の若者達はここを南極"海"と教えられているが

セカンドインパクトよりも前はここに大陸があったのだ。

分厚い氷に覆われた白銀の世界があったのだ。

それが今、エヴァイマジナリーの力によって

再生されていっている。

 

ただのエヴァンゲリオンでは決して出来ない

出来事の書き換え。それが今目の前で起きている。

 

 

 

(さあ帰ろう。僕らの街へ!)

 

 

 

「シンジ君?…えぇ!そうね!帰りましょ!

第三新東京市へ!」

 

「…あぁ。」

 

正しく神の御業と言うべき光景が収まると

シンジが皆の心に語りかけてくる。帰ろう、と。

 

最初にそれに応えたのは、ミサトだった。

それにゲンドウが続き。ユイが。リツコが。

WILLEクルーの中にはパリで乗り込んだメンバーもいるが

ひとまずはかつてZUKUNFT本部があった第三新東京市へ

帰ろう、と。そう声が上がる。

 

WILLEメンバー全員の乗艦確認が取れると

シンジはヴンダーとホフヌングを自身の力で浮遊させ

SEELE戦艦群やSEELEエヴァの残骸、白き月など

エヴァンゲリオンに関するあらゆるモノを伴って

第三新東京市へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

──………静かな水の音が聞こえる。

 

 

 

………そよ風が、彼女の頬を撫でた。

 

 

 

…鳥たちが鳴き、羽ばたいていった。

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

彼女──葛城ミサトが目を覚ます。

 

 

「ここは…?」

 

ゆっくりと体を起こせば、ミサトは湖畔にいた。

青々とした山に囲まれた美しい草原と

深い青色の水を湛えたどこか見覚えのある湖。

 

 

「…綺麗ね」

 

思わずそう呟いたミサト。

何故だろうか、この何の変哲もない緑の大地と

青い水がとても綺麗だと思えて。

湖の近くには謎の巨大な構造物が佇んでいたが

それらも含めて綺麗だと感じた。

 

 

「ミサト!ここにいたのか」

 

「リョウジ?みんなも…!」

 

草原の方から聞こえてきた声に振り返れば

そこにはミサトもよく知っている面々がいた。

愛する夫に、大学以来の親友に──。

ついさっきまで、それが何だったかは思い出せないが

自分と一緒に"何か"に乗っていた面々がいた。

 

「シンジよ。きっとシンジが成し遂げたんだわ」

 

「ユイ…?……そうか。シンジがか…。

だが肝心のシンジが居ないぞ」

 

「あら?どこへ行ったのかしら…」

 

しかし、何人か足りない。

 

 

 

 

 

バシャッ

 

 

 

何かが湖に飛び込んだような音が響いた。

 

 

 

「何かしら?」

 

「行ってみるか」

 

「あなた。私達も見に行きましょう」

 

「あ、あぁ」

 

ミサトとリョウジ、ゲンドウとユイが

その音の元へと歩み寄る。

 

湖の方から歩いてきたのは──

 

 

 

「──まさかキール議長に救われるなんてね」

 

「カヲル君。その件、レンとシイには黙っててくれよ?」

 

「私からもお願い。時には嘘も必要」

 

「そうだね。結果として僕らは死なずに済んだのだし」

 

 

 

「シンジッ!レイッ!」

 

いつもと変わらない柔らかな笑みを浮かべた碇シンジと

母親らしい暖かな微笑みを浮かべる碇レイ

変わらぬミステリアスさを纏う渚カヲルの3人だった。

 

 

「ただいま。父さん、母さん」

 

「おかえりなさい、シンジ」

「よくやった…よくやったぞシンジ…っ!」

 

ゲンドウとユイには。そしてミサトにもリョウジにも。

目の前の青年が神話にすら残るような偉業を

成し遂げたのだと、どこかで理解出来た。

頭でも心でもないどこかで。

 

 

「「──ありがとう、シンジ君」」

 

「ミサトさん?リョウジさん?」

 

「何でかしら。そう言いたくなったのよ」

「そうだな。俺もそんな気分だ」

 

ミサトは。リョウジは。何故か凄く嬉しく感じた。

この世界でシンジ達と何気ない話が出来る事が。

何故かは分からなかったが、ともかく、嬉しかった。

 

きっとそれは、かつて成し得なかった事だから。

かつて全てが終わった時、そこに居られなかったから。

今こうして全てが終わり、共に居られるから。

 

 

 

 

 

「帰りましょうか。僕らの家へ」

 

 

 

シンジがそう言うと、その場にいた人達が少しずつ

自分達の居るべき場所へと帰っていく。

徒歩で、車で、鉄道で、飛行機で。

 

「次会った時は俺のギターと君のチェロで

セッションしようぜ!じゃ、またな!」

 

「シンジ君から貰ったこのレシピ帳、大切にするわね!

いつかまた洞木さんと女子会しましょ!」

 

「僕か?僕はあんまり君と接点が無かったからな…。

そうだ、今度僕のオススメの雑誌をいくつか紹介するよ」

 

ここ箱根に留まる人は殆どいなかった。

東京へ、大阪へ、仙台へ、福岡へ、札幌へ。

人によってはフランスへ、アメリカへ。

 

「近々京都大学で討論会が開催されるそうよ。

シンジ君、貴方も来るでしょ?楽しみにしているわ」

 

「さて、私もこの辺でおいとまさせてもらうとするかな。

シンジ博士の新発明を楽しみにしているよ!」

 

親しい人々も少しずつ互いに別れを告げて帰路に着き

湖畔から1人また1人と姿を消していく。

 

 

「じゃ、ワシらもこの辺で帰らせて貰うとするわ。

ほなまたなセンセ。ほれ行くぞサクラ」

 

「もうちょっと碇さんとお話しててもええやんけ!

お兄ちゃんのアホ!ドアホ!離してやー!!」

 

「ふふっ…変わらないわね。それじゃ碇さん、またね」

「またねー!」

 

 

「本当はしばらくこっちに残っていたいんだけど

ユーロの事とか、あたしの実家の事とかも心配だし。

ま、そのうちまた戻ってくるから。その時は宜しく」

 

「俺はそうだなぁ…アスカと行く事にするよ。

こっちはお前に任せておけば大丈夫だろうし。

じゃあ、元気でな碇!」

 

「私も姫と一緒にユーロに戻ることにするよん♪

ユイ先輩と冬月先生によろしく言っといてね〜!」

 

 

 

 

 

そうして皆が待っている人達の元へと帰っていき

新生した天使達もまた世界各地へ散っていった頃

シンジ達もまた帰路に着く。

 

「──たとえ全ての神が居なくなった世界でも。

もう二度と福音が鳴らなくなった世界でも。

生きていこうと思えばどこだって天国になるさ。

どんな時にも、希望は残っているんだから」

 

彼らの笑顔には、ひと欠片の曇りも無かった。

 

彼らは──人類はもう赤ん坊ではなくなったのだ。

神の生んだ子としての時期は終わりを迎え

自らの足で地に立って歩く時期に入ったのだから。

 

 

 

 

 

「さようなら。全てのエヴァンゲリオン」

 

 

 

シンジは空を見上げ、そうとだけ告げると

全ての始まりとなったその地を後にした。

 

 

 

 

 

 

──時に、西暦2033年。

 

神の時代は終わり、新たな世紀が幕を開けた。

かつて少年だった彼は。碇シンジは。歩み続けるだろう。

彼が信じた人達と共に。

 

 

 

 

 

シン・天才少年シンジ君 FIN

 

 

 





これにて、天才少年シンジ君は完結となります。
これ以上の続編はありません。

…まぁ要望があれば各キャラのその後とかを
短くまとめたパートくらいは出すかもですが。
少なくとも"3期"は無いです。



改めてご愛読本当にありがとうございました。
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