「ずっと私の手作り弁当ばっかりなんだって?」
「うわっ! お孫さん?」
「だーかーらー、その呼び方やだって言ってるのにぃ!」
「てか、どこから入ってきたんだよ!?」
「ん? あっち」
そこは居間、基本的に俺が一日を過ごす部屋である。そして
って、納得出来るかっての。
「なんで勝手に……」
「だぁってぇ、呼んでも出てこなかったし鍵開いてたしぃ」
「だからってさあ……」
「いいじゃんいいじゃん。私と
「どんな仲だよ」
「手作りのお弁当を作る方と作られる方」
タダでプレゼントされたのはあれ一度きりだ。美味いからすっかりハマってしまったが、ちゃんと代金は払っている。弁当箱だって洗って返してるぞ。
しかしまあ、開いてるからって家に上がり込んでくるのは田舎ではよくあるって聞くしな。目くじら立てても仕方ないだろうし、なにか悪さをするわけでもなさそうだから気にしないでおこう。
「雅也さん」
「うん?」
「ご飯、作ってあげようか?」
「ん?」
「お弁当じゃ冷めちゃってるでしょ」
「いや、チンすれば別に……」
「出来たての方が絶対美味しいって」
「しかしなぁ……」
と、一応は困った表情を浮かべてみたが……
なにその魅力的な提案!
俺もしかしてからかわれてる?
「ちゃんとお婆ちゃんにも許可もらってくるからさぁ。ダメかな?」
「ま、まあ、
「やった! 私の分の食器ある?」
「え? 一緒に食べるの?」
「当然!」
当然ですかそうですか。
確かに料理を作らせるだけ作らせて、食べるのはダメとか言えないよな。
手作り弁当の次は手料理、しかも一緒に食事なんて、こんな強制イベントどうやって
「余分に食器くらいはあるけど、元々独り暮らしだったから足りるかどうか……」
「分かった。じゃ、お婆ちゃんに報告ついでに自分の食器持ってくるね」
「あ、ああ……」
タタタ……と出ていってから数分後、カチャカチャと音が聞こえたから、彼女が戻ってきたのだろう。
「すまんねぇ、孫が迷惑ばかけよってからに」
地主さんを連れて。
「あ、いえいえ、そんなことは……」
「
「も、もちろんですよ」
その地主さんの後ろで、栞さんが手を合わせて謝っている。どうやら行き違いがあったようだが、俺としては女子高生と二人きりにならずに済んでホッと一息だよ。
本当は残念がってるんだろって?
まあ、残念半分、安心半分ってところかな。
その後三人で夕食を囲んだのだが、彼女の言った通り、出来たての料理は最高だった。素直に感想が言えたのは、地主さんがいたからだと思う。
はいはい、どうせ俺はヘタレですよ、悪いか。
ところで二人が驚いていたのが大画面の液晶テレビだ。栞さんも実際に映像と音声を体験したのは今回が初めてだった。
「そんなに珍しいですか?」
「こんなでっけえのは見たことねえだよ」
「音もすっごいよね!」
「分かってくれるか」
「お婆ちゃん、うちもテレビ買おうよ」
「え? まさかテレビないの?」
「あるけどちっちゃいの。映らなくなっちゃってるし」
「壊れてるってこと?」
「うーん、よく分かんない」
「
「は?」
待て待て、まさか四条家にあるのってアナログテレビじゃないだろうな。何年前の骨董品だよ。チューナーつければ観られないこともないだろうけど。
「えっと、四条さん……」
「んだ?」
「これくらいの小さいヤツですけど、使ってないんで差し上げましょうか?」
「なんっと!?」
「雅也さん、テレビくれるの?」
「地主さんには色々お世話になったし、お孫さんにも手料理とか作ってもらったからさ」
「むー、またその呼び方……でも、いいのかなあ。そんなに高そうなの……」
「大して高くなかったよ。イチキュッパだったし」
「イチキュッパって、じゅうきゅうまんはっせ……」
「一万九千八百円ね」
二十四インチのテレビが十九万もしてたまるか。どんな金銭感覚してるんだよ。
「それでも高いよ」
「女子高生ならそうかもね。でも中古だし、気にする必要はないよ」
「お婆ちゃん……」
「ホンに、頂いてもいいんだか?」
「ええ。後で運びますよ」
「なんかすまねえなぁ」
「ねえ、雅也さん」
「うん?」
「お礼にこれから毎日、夕飯作りにきてあげるね! お婆ちゃん、いいよね?」
「ちょ、ちょっと……」
それは俺が貰いすぎだってば。
「んだなぁ。それくれえはさしてもらわねばなんねえべ」
「雅也さん、もしかして迷惑?」
「迷惑なんかじゃありません」
この後俺は四条家にテレビと付属品一式を運び、設置してちゃんと映るところまで確認を終えた。二人の喜びようったらこっちが恥ずかしくなるくらいだったよ。ただ地主さんも栞さんも、一度の説明で完璧と言えるほどに使い方を覚えたのには驚かされた。
一応ハードディスク内蔵で録画機能もついてるんだぜ。そこまでバッチリだったんだから驚くだろうよ。
それはいいとして、これから毎日栞さんが夕食を作りに来てくれるだと!?
思わず迷惑じゃないなんて言ってしまったが、なにか魂胆があるんじゃないだろうな。単なる謝意だけならいいんだが……
しかしその翌日、俺はとんでもない事態に巻き込まれるのだった。