「ありません!」
「嘘です。皆さんもそう思いますよね?」
「「「「「思いまーす!」」」」」
まずはなにが起こっているのか説明せねばなるまい。
約束通り、
聞けば俺のことを話したら興味を持たれたとか。一体なにを話したらこうなるんだよ。
最初はよかったんだ。女の子たちがきゃっきゃウフフしながら台所で料理を作っている様は、俺本当は死んで異世界に転生したんじゃないかと思えるほど幸せな光景だった。
テーブルには色とりどりの料理が並べられ、六人の女子高生に囲まれての食事は、まともに味なんか分かるわけがなかった。
いや、美味かったよ。今時の女子高生ってこんなに料理が上手いんだと思ったら、作ったのはほとんど栞さんで、友達五人は盛りつけを手伝っただけだったらしい。
で、食事も終わり手際よく食器が片付けられた後、居間に戻ってきた彼女たちに迫られているというわけだ。なにをって?
「えっちなビデオ、持ってるんでしょ? 観せてよ」
大画面テレビにはブルーレイレコーダーとブルーレイプレイヤーが接続されている。別にレコーダーがあるならプレイヤーいらないじゃん、と思われてるかも知れないが……
違うのだよ。レコーダーは録画物をブルーレイに焼くのが専門。プレイヤーは当然再生が専門。別々の役割があるということだ。
ちなみに栞さんが言うえっちなビデオ、つまりアダルトな内容のディスクは持っていない。あれはパソコンのハードディスクの中……げふんげふん。
エロ本もないぞ。そういう画像も……以下同文。
「絶対あるはずだよ。ないわけないもん!」
「いや、本当に持ってないって」
「むぅぅぅ、家探ししちゃうよ」
「家探しって……皆十六か十七だよね?」
「そうだけど?」
「仮に持ってたとして、あれは成人指定だから十八歳未満は視聴出来ないよ」
「そんなの分かってるけど……観たいじゃん!」
「ダメです」
「ほら、やっぱり持ってるんじゃん! 皆、家探しするよ!」
「「「「「おおーっ!!」」」」」
そして数分後……
「あったぁ!」
「え?」
そんなわけない。本当に持ってないんだから。
「どれどれ……『柔らかい身体』……うん、絶対えっちなヤツだこれ!」
「それは……」
「むっふふー、見ぃつけちゃった!」
「いや、だからそれは……」
女の子は俺を押しのけてブルーレイレコーダーへ。
「あ、再生するなら下のプレイヤーの方で……」
「分かった」
そしてブルーレイの再生が始まる。
「んっ! んっ!」
「「「「「「…………」」」」」」
「うぅっ! あっ!」
「「「「「「…………」」」」」」
「ふあっ! かはっ!」
「「「「「「…………」」」」」」
「あのぉ……面白い?」
「「「「「「面白くなぁい!!」」」」」」
期待に頬を染めた彼女たちの表情が絶望に変わっていくのは実に見応えがあった。
なぜって、見つかったディスクのタイトルは『柔らかい身体』。内容はフィットネスクラブの教材だ。喘ぎ声に聞こえるのは気のせいでしかない。
これをアダルト動画と思い込むとは……なんとまあ想像力が豊かだこと。
「本当にないんだけど、まだ探す?」
「あぅぅぅ……男の人って絶対持ってるはずなのに……」
「なにその固定観念」
「えっと、うちのお兄ちゃんのことなんだけど……」
「え?」
その時、大人しそうなめがねっ娘がおずおずと手を挙げた。待て、嫌な予感がする。このシチュでの"お兄ちゃん"という単語は危険極まりない。
あと、君には間違いなく似合うぞ、
「お兄ちゃんもそういうのは持ってなくて」
「お兄ちゃん……も?」
「うん。そういうのは全部パソコンの中にあるって言ってた」
当然、めがねっ娘以外の五人が一斉に俺に目を向ける。まさか乗り切ったと思った先に、こんな罠が仕掛けられていようとは。
「あ、いや……」
「
「だからその……」
「雅也さんのパソコンは仕事用だもんね。あるわけないか」
「……?」
これは助かったと思っていいんだろうか。仕事に使うノートパソコンとは別に、プライベート用のデスクトップもある。ただ、あまり使わないので開梱していないだけだ。
「でも、どうしていきなりそんな動画を観たいってなったの?」
「実はあの子なんだけど……」
六人の中ではとりわけ胸の大きな少女が、上目づかいに俺を見ながら小さく手を挙げた。
「彼氏に、勉強になるから一緒に観ようって誘われたらしくて……」
「彼氏っていくつ?」
「十八歳、うちの学校の先輩なんです」
R指定は守らなきゃダメじゃないか、先輩。
「で、それがなんでこんなことに?」
「その時の先輩がなんだか怖くて……栞ちゃんに相談したら、ちょうどいい人がいるから相談してみようってことになって……」
「お孫さん!?」
「雅也さん、呼び方!」
「そんなことはどうでもいいでしょう!」
「いくない!」
「ま、それはさておき、俺は一緒に観るのはオススメしないかなぁ」
「どうしてですか?」
「うーん、多分襲われるよ。あ、本人が望んでるなら別にいいんだけど」
「お、襲われる!?」
なにその意外だ、みたいなリアクション。今時の高校生なら、その辺は進んでると思ってたんだけど。
ところで、アダルトな動画は性欲を誘発させる効果が絶大だ。それを猿年代の男子が観たらどうなるか想像に難くない。というか一目瞭然でしかないだろう。
と説明すると……
「先輩が……そんな……!」
「まあ、多くのオトコなんてそんなもんだし」
「もしかして雅也さんも?」
「否定はしないよ。ただし一応これでも三十近いからね。分別はあるつもり」
経験はないけどな。あと数年で魔法使いの称号も得られるはずだ。
「雅也さん、そいうい時って男の人はちゃんと将来のこととか考えてるの?」
「うーん、その彼氏の気持ちまでは分からないけど、多分そこまでは考えてないんじゃないかな」
「じゃ、万が一妊娠したら……」
「逃げようとするかもね」
彼氏の悪口は言いたくなかったので濁したが、そもそもアダルト動画を観ようと誘うなんて、自分の欲望しか考えていない証拠だ。しかもおっぱいが大きくてそそるカラダ、とくれば十中八九ヤリモクでしかないと思う。
最悪は別に本命の彼女がいるとか……
「あの先輩、女ったらしで有名だもん」
「そうだよ小百合、別れた方がいいよ」
「おいおい、なにもそこまでは……」
「決めた! 私、先輩と別れる!」
「「「「「おおぉっ!」」」」」
「それで雅也さん、でしたよね?」
「あ? ああ」
「私、雅也さんを好きになります!」
「はっ!?」
「ちょぉっと待ったぁぁぁっ!」
小百合さんのとんでも発言の後、勢いよく手を挙げたのは栞さんだった。
「雅也さんはだめぇっ!」
「え!? まさか雅也さんって栞の彼氏なんですか?」
「いや、そんなわけないよ。お孫さんは……」
「なら問題ないですよね? 雅也さん、時々遊びに来てもいいですか?」
小百合さん、その表情は反則だよ。そんな目で見られたら断れるわけないじゃん。
だが、ふと栞さんの方を見てみると、なにやら半泣きになっているご様子。これはさすがに女性経験がない俺でも、軽はずみな言動が生死を左右することくらい容易に想像出来た。
だから答えはこれだ。
「ダメ、だね」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
「この家には普段俺しかいないわけだし、そこに未成年の女の子が一人で遊びに来るのはさすがにNGかな。俺だって捕まりたくはないし」
「でも……」
「諦めて。しかし俺みたいな男のどこにそんな価値が……?」
なんとなく栞さんがホッとしたように見えたのは気のせいだと思う。いや、君も本当は勝手に上がり込んできたりしたらダメなんだからね。
夕食とか夕食とか夕食とかのことがあるから言えないけど……