Poppin'Party、通称ポピパは女子高生5人からなるガールズバンドである。彼女達はキラキラドキドキを追い求めて日夜奮闘している。今日も5人は練習場所として活用している"蔵"に来ていた。
「あーりーさー。暇!!」
そんなポピパのリーダーである戸山香澄は、ソファーに寝っ転がって叫んだ。事実、彼女の叫びは他4人の気持ちの代弁であった。
この蔵の持ち主で、キーボード担当こ市ヶ谷有咲は何やら小説を読んでおり、
パン屋の娘でドラマ担当の山吹沙綾は蔵の中のものをボーッと見ており、
うさぎ大好きなリードギターである花園たえはパジャマでアイマスク姿で夢の中で、
体はチョココロネで出来ているベース担当の牛込りみはスマホを弄っている。
現在、彼女達は練習をするわけでも遊ぶわけでもなく、ただ、グータラしていた。
「知らねーよ!」
有咲は本を読みながら香澄の言葉を突き放した。それもそのはずで、香澄を含めて彼女達がここに集まったのには理由はない。というか約束も目的もない。やることが無く、暇だったから有咲の家の蔵に勝手に来てみたってだけである。
「というか、なんで普通に入って来てんだよ。」
自室から本を持って蔵に来たら4人がそこにいた。有咲にとってそん感じであり、この家のセキュリティはどうなってんだ、と、頭を抱えた。
「えー。おばあちゃんが入れてくれたよ?」
と、香澄。
「「私も」」
と、りみと沙綾
「Z Z……。有咲が素直?どいうことっすか?。」
と、たえ。
そんな様子に有咲は深いため息をついた。既に怒っても意味などないことは分かっている。しかし、集まったのは良いものの、特にやることは無いし、暇なのは事実である。このメンバーでやることとして1番初めに思い浮かぶのはバンドの練習だが、事実上不可能である。
まず、香澄とたえ、そしてりみは楽器を持って来ていない。そして、キーボードは調子が悪いため修理中。残るはドラムと香澄の歌声だけで、こんな状態で練習は出来るのだろうか?
というか、そもそも……
「お前ら、何しに来たんだ……。」
有咲の心からの気持ちである。それに対して香澄は楽しそうに応えた。
「んー。暇だったから?」
その言葉にツッコみたい気持ちが山々だったが、それは堪えた。いや、もう、何も言う気にもならなかった。そのため、彼女のツッコミは他の方向へと向いた。
「……いや、もうそれ良いわ。それより、なんでおたえは人の家でガチで寝てるんだ?ってかなんでパジャマ。着替えはどこだよ。」
「Z Z Z Z……。りみがニンジャに?」
「……どんな夢だよ。」
寝言にツッコミを入れた有咲に、思い出したように沙綾は顔を上げた。
「そういえば、こないださ変わったお客さんがうちに来たんだ。」
◆
3日くらい前の夜、私が1人で店番をしていると、ふらっと1人のお客さんが入ってきたんだ。その人は妙に慣れた手つきでトレーにメロンパン3個、カレーパン2個、あんぱん5個を乗せてレジに来たんだ。
「ポイントカードで払います。」
その人は妙にゆっくりとした口調でお財布から10枚のポイントカードを取り出したんだ。うちのポイントカードは一枚貯まるとパンが1つ無料になる。そして、有効期限は1ヶ月。この人はそんなカードを10枚も貯めていたんだ。その事に驚きつつ、私は聞いたんだ。
「1人で全部食べるの?」
「そのつもり。」
ゆっくりと答えると、彼女は袋いっぱいのパンを抱えて店から出て行ったんだ。
◆
「「ぎゃああああああ!!」」
沙綾が話し終えると香澄とりみの2人の悲鳴が響いた。その様子は青い顔をしてぶるぶると震えており、まるで何かに怯えているかのようだ。そして、香澄は震えた声で沙彩を非難した。
「沙綾、怖い話するのやめてよ!」
「いや、怖いか?」
有咲のセリフにりみは叫んだ。
「怖いよ!それだけ買ってチョココロネを買わないなんてホラーだよ!」
「いや、どういう理屈だよ! で、香澄はなんで怯えてるんだ?」
「そんなに食べたら、次の日の体重が……。」
「……ま、まぁ、確かに、そこはホラーかもな。」
香澄の理屈にまぁ、理解を示した有咲だが、しかし、すぐに理解出来ないことに気がついた。しかし、そんな事を言っても始まらない。というよりも、既に次の話題へと移っている。
「よし、じゃあ次は私の番だね。」
香澄はそう言うと周りの反応を無視して話し始めた。
◆
昨日の話。私が学校から帰ると何となく小腹が空いてたから冷蔵庫を開けたんだ。そこには、プリンが一つだけ入ってたんだ。そう言えば、少し前にオヤツ用にプリンを沢山買った事を思い出した。
(全部食べたつもりだったけど、一つだけ残ってたんだ。)
そう思った私は何の疑問もなく食べた。
暫くするとあっちゃん……、妹が帰って来たんだ。
「ただいまー。あ、沢山買ったプリンまだ残ってたんだ。私も食べよう。」
あっちゃんは、私のプリンを見てそう言った。ここでふと、思ったんだ。冷蔵庫に残っていたプリンは一つだけだった。そして、あっちゃんは「私も食べよう」と言った。
その時、背筋に寒気が走った。心臓はバクバクなって、汗は滲むのに指先がかじかんだようだった。
「私のプリン知らない?」
あっちゃんは冷蔵庫を探しながらそう言った。しかし、その言葉に私は答える事が出来なかった。震える手でプリンの蓋を見てみると、そこには黒のマジックで書いてあったんだ。
『あすか』
って
◆
「「---------っ」」
香澄の話を聞いて、りみと沙綾は絶句し、2人は抱きしめ合いブルブルと震えてしまった。まるでこの世の終わりが迫っているかのような2人に有咲は苦笑いしか浮かばなかった。
「いや、何がそんなに怖いんだよ。」
その言葉に震える2人が反論した。
「ひとりっ子の有咲ちゃんには分からないんだよ!」
「戦争が!戦争が起きる!」
そんなブルブル震える2人をどうしたものかと有咲は頭を抱えた。そろそろツッコミの許容量を超えてしまいそうである。
(というか、沙綾までボケに回っているし、おたえまで起きたら、手が回らない……)
「定時制沙綾!三・千・世・界!」
蔵にたえの絶叫が響いた。
「だから、どんな夢だよ! いや、絶対起きてるだろ!」
「zzzz」
寝息を立てるたえに有咲は深いため息をついた。そんな有咲に香澄は元気よく声をかけた。
「次は有咲の番だね!」
「は? これ、そういうシステムだったのか?!」
有咲は驚いたが、しかし、幸にして家業のおかげでその手の話には事欠かない。その中でも最近起きた事を話す事にした。
◆
だから、ウチで販売している商品の多くが、なくなく、本当は手放したくないけど仕方なく手放したモノが多いんだ。ほら、こないだ香澄が遊んでた指輪。あれも、きっと、誰かの結婚指輪だったんじゃないか?
おい、香澄!元の持ち主に返そうとすんな!そんなことしてたら、私ら生活できなくなる!
……。
香澄の気持ちも分かるよ。けも、質屋ってのはそういう店だ。
ここは、誰かがなくなく切り捨てた大切なモノを売ってるんだ。だからなのか、ヤバエものも引き寄せるんだ。
例えば、勝手に棚から移動する人形、どんなに頑張っても指にハマらない指輪、消したデータが復活するデジタルカメラ。とかな。
ただな、そういうモノを買いに来る人もいるんだ。こないだも、ふらっと店に現れたと思ったら、ピンポイントで
ばあちゃんに聞いても、「知らない方が良い」って答えるだけで、分からないままなんだ。
◆
「へぇ」
話し終わると思いの外、香澄からの反応は薄かった。ついでりみや沙綾の方を見るが、反応が薄い。有咲の中ではとびきり怖い話のつもりだったこともありかなりショックである。
しかし、そんな事を隠そうと話を続ける。
「じゃ、じゃあ、私は話したし次はりみだろ?」
有咲はこの時、りみへふった事を一生後悔する事になる。
「……うん」
◆
………みんな、牛の首って知ってる?
◆
「「「ぎゃああああ!」」」
りみが話し始めて数分間、蔵には悲鳴が鳴り止まなかった。香澄が懇願しても、有咲が揺さぶっても、沙彩がコロネを渡しても、りみはどういう訳か話すのを止まなかった。蔵から出ようにも出入り口は動かず、耳を塞いでも、りみの声が頭の中まで響いてくるようだった。
そして、りみが話し終える頃には香澄達3人は泡を吹いて倒れてしまった。それを見てりみも気絶するかのように倒れた。
「………あれ、みんな寝てる?」
たえは伸びをした後、床で倒れている4人を見たあと首を傾げてもう一度横になった。