オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
代表選手が大広間の一番目立つところに着席し、そこを囲む机に続々と着席し食事が始まった。
「すごく豪華な飾り付け、いつもの大広間だとは思えないわ」
「俺のセンス気に入った?」
「とっても素敵。ほら、あっちの他校の生徒も絶賛しているわ」
「それはなにより。ボーバトンの子たちは戦いを思わせる荒々しいものは好きじゃないらしいし、ダームストラングは可愛らしいものは好きじゃないらしいから……調和が難しかったけどうまくいったようだね」
「こんなに頑張っているあなたに対価がないのって本当にどうなのって思うのだけど」
「対価は薬草と研究室をもらっているよ」
「でも時間がなくてあまり享受してないじゃない」
「忙しい分にはいいさ。最近は寮に戻る時間が少ない方が俺も嬉しいから」
「……このまま仲が良くないままでいいの?」
「これは俺の問題じゃないからね。俺の心情は変えたり殺すことができても、人を操作することはできない。そうだろ?」
「でも、あなたがこれだけ頑張っているのも全部……」
「はいはい、楽しい会場でしんみりするのは無しだ。俺のおすすめの食事はこれとこれ、今日のために最高級の肉を調達したんだ」
「……じゃあこれにしようかな?」
「うんうん。ジニーが今日を全力で楽しんでくれたら俺はそれだけで幸せだよ『ローストビーフ』」
食べ物の話が尽きると周囲の話題はパートナーの話に変化していった。
「まさかあのクラムの相手がハーマイオニーだなんて」
「てっきりルークとハーマイオニーかと思ってたからあの噂きいてビビったよ」
「俺がブラックだったらフラーを狙うのにな。だってあれだろ? 誘えば勝ち確定だったんだろ?」
「男子は本当何もわかってないのね。色々水面下の争いがあったのよ。あー後でクラムと踊る機会が来ないかしら」
「それなら私はセドリックと踊ってみたいわ」
「あら、ルークは諦めたの? 会員だったじゃない」
「だって彼とは寮が違って接点ないもの。私のこと知らないわ」
「でもチャンスがあるのは今日だけよ。次ダンスパーティーが開かれるのを待っていたら卒業しちゃうわ」
「目の前にリアルのパートナーがいる中でそんな話するなよ2人とも」
「だって、それとこれは別じゃない」
「そうよ! ファンでいることと実際付き合うのはまるっきり別。あなたたちだってフラーと踊れるって言ったら喜ぶでしょ」
「それはそうだけどさあ」
ざわざわとした会場の中で、俺がふと代表選手の方を見るとクラムとハーマイオニーは仲が良さそうに話しているのが見えた。そしてその近くにはパーバティではなくアルバスと話しているハリー。俺たちが見ていることに気がついたのかハーマイオニーはこっちに手を振り、ハリーには目線を外された。
食事を食べ尽くしてしまうと、アルバスが立ち上がりそれに続いて生徒たちも立ち上がる。杖の一振りでテーブルが壁際にずれ、中央に広いスペースが出来上がった。ドラムにギター、リュート、チェロ、バグパイプと楽器が次々設置され妖女シスターズが熱狂的な拍手と共に迎えられた。
代表選手は立ち上がりダンスフロアに歩み出た。煌々と照らされたダンスフロアでの彼らはいつもの数倍輝いていた。もちろん物理的にもだが。物悲しい曲にあわせゆっくりとダンスがはじまる。
「ねえ、私たちも踊りましょ?」
「いいね。お手をどうぞお嬢様」
手を繋ぎ光の中に足をすすめる。腰に手を回し、体を引き寄せた。一瞬周囲がざわついた気がした。それにあからさまにジニーが反応した。
「私たち代表選手と同じくらい目立っているんじゃない? みんなこっちを見てる」
軽くおどけてそう言うジニーとはこんなに近距離なのに目があわない。頑なに目線を逸らし、体がこわばっている。
「今はリラックスして。俺とのダンスを楽しんで」
「えっ、あ、そうね。うん」
「俺に任せれば全部がうまく行くから緊張しないでいいよ」
音楽の流れに合わせて簡単なステップから入りリードをしていく。何度か足を踏まれながらも次第に緊張がとれたのかリズムがあってきた。みんなだって自分のダンスが始まれば他人なんてどうでも良くなる。次第に俺たちのことを見ている人は気にならなくなった。ただし、俺たちの周りには境界線でもあるかのようにスペースは空いていたが。
それもワルツが終わって早いテンポの曲に変わった瞬間に消え去り元気に踊り始めた。
「あははっこれすっごく楽しい。幸せ」
ジニーは言葉通りに全力で笑っている。
さすがに全力で踊れば喉も渇く。ジニーをソファに座らせ飲み物をとりに向かった。
「ルーク、アルコールはまだじゃぞ」
「アルバス、俺がそんな面倒になることをやるわけないじゃないですか」
「一応じゃ一応」
「俺知ってますよ。どうせ未成年が飲もうとすると蒸発する魔法でもかけているんでしょ」
「それは面白い魔法じゃ。今度教えてほしいものじゃ」
「そんな意味のわからない魔法を開発している暇はないですよ。知っているでしょ」
「そうじゃな。君の努力のおかげでホグワーツの株が上がっておる。大臣にもさっき褒められたばかりじゃ。誇らしい」
「それはどうも。俺ができることは俺がやっておくのでさっさとあれを解決してくださいよ」
「……うむ」
「大人って、というかアルバスって本当にしがらみが多くて大変ですね」
飲みものをとって、ベンチに戻るとなんだかいろんな人が勢揃いしていた。
ハリーと話すジニー。ロンと口論しているハーマイオニー。ペアに放置されて他校の生徒にダンスを申し込まれているパチル姉妹。
「敵とベタベタしている! 君のやっていることはこれなんだ!」
「バカ言わないで! 敵ですって? 全くあの人が到着した時に大騒ぎしたのは誰? サインを欲しがったのは? 寮にミニチュア人形を持っているのは?」
「二人で図書館にいる時にでも誘われたんだろうね」
「ええそうよ。それがどうしたって言うの?」
「君は騙されたんだ。あいつは君がいつも誰と一緒か知っている。あいつはハリーに近づこうとしているだけだ、内部情報を知っているやつだったら誰でもよかったんだろ」
なにがどうなったらこうすぐに仲が良くなくなるんだ。まったく。
「ジニー、飲み物を持ってきたよ。せっかくだしこれを飲んだらハリーと踊ってきたらどうだい?」
「ありがとうルーク、ねえやっぱりもう一度話し合った方がいいんじゃない?」
「それは双方が望んだ時にね。おい、ロンは楽しい会をぶち壊しにきているのなら部屋に戻った方がいい。そうじゃないならなんでもいいけど。あとハーマイオニーを借りてもいいかな? じゃ、楽しい夜を」
後ろから「あいつすかしてる」とかなんとか聞こえてきた気がした。
「あっ、ルーク。私ビクトールに飲み物をとってきてもらっているところだったの」
「知ってる、さっきバーカウンターで彼を見かけたからね」
「だからあそこにいないと」
「そう言われて俺がそうですかって君をあの場所に戻すと思う? 何があってもそれだけは絶対にないかな」
「ロンに言われたことは本当に最悪だったけど私は大丈夫よ?」
「ハーマイオニー、君本気で言ってる?」
「何が? 私なにもふざけてないわ」
「あー、うん。OK。改めて、俺と一緒に踊ってくれませんか?」
「あっ、えっ、ああそうね、いいわよ踊りましょ」
「本当にいい? もう今日はクラムのところに返す気はないよ俺」
「……うん」
俺はハーマイオニーの手をとり歩き始めた。
「えっ、ダンスホールはあっちよルーク?」
「俺は激しい曲よりもワルツの方が好きなんだ。次ワルツが流れるまで時間があるだろ? ついてきて」
玄関ホールを抜けてバラの園に向かって歩く。目眩し術をかけたせいで体が少しひんやりしている。バラの園の奥の方に行けば流石に人の姿は見えなくなった。適当な魔法をかけて簡単な人避けをする。
「ここに座って。少し話を聞いてもらえる?」
「ええ」
俺は最近の話から思い出話までいろんな話をした。最近話せていなかった時間を取り返すかのように。それをハーマイオニーは適度な相槌を打って聞いてくれている。
「──毎年毎年なにかしらが起こって、それをロンとハリー、そして君と解決して。初めは賢者の石、次はバジリスク、その次は俺の父親、そして今年は対抗戦。そしてそのたびに俺は何かしらの課題に挑戦し、自分のキャパの小ささと、精神的な弱さを実感してる。大概自分の中で考えすぎて理想と現実の差にきつくなって。強迫観念に囚われて余裕がなくなって。まあハーマイオニーには結構ダメなところを見せてると思う。そんな俺を気遣ってくれて、尊重してくれて、時にはアドバイスをくれて、いつもすごく感謝してる。俺はブラックだから常に人の前では完璧でいる必要があると思っている。でも君の前だったら素直でいられる気がするんだ。君の隣にいることがとても心地よいって思っている。ただそれと同時に心が躍っている」
「……好きだよハーマイオニー」
ハーマイオニーの顔は耳まで赤くなった。
「……」
「もう少しここにいるか、それとも会場に戻るかは君が選んでくれ」
「……私もあなたにすごく感謝しているわ。あなたが私をトロールから助けてくれた時からあなたはずっと特別な人」
「それって、期待してもいい?」
「ええ」
俺は座っている場所を左に少しずれた。太ももと太ももの距離がなくなった。頭に手を回して徐々に近づいていく。
鼻先がぶつかった。そして唇を塞ぐ。
時が止まった。
彼女と何度も時を戻ったことはあったけれど時が止まったのは初めてだ。
ハーマイオニーが愛おしくて、可愛くて堪らない。
「ルーク、好き」
「ああ」
熱のこもった目でそう言われたら、何かくるものがある。
ただ、楽しい時間はすぐに誰かに邪魔される。
「誰かの声が聞こえる。そろそろダンスホールに戻ろうか」
「そうね」
行きとは違いハーマイオニーの方から俺の手を握ってきた。
会場に戻るとロンとハリーはダンスフロアから離れた遠くのテーブルに座って何やら話している。その他の生徒も踊っていたり、飲み食いしていたり、ただ会場の混み具合を見る限り俺たちみたいに抜け出した生徒も少なくないのだろう。
俺たちも踊ったり、飲んだりと残りの時間を楽しく過ごした。
「ラストのダンスだ。お姫様、俺と踊ってくれませんか」
「喜んで」
ゆっくりとしたダンスはロマンチックだと思う。相手と真剣に向き合っているところとか、お互いの動きを合わせるところとか。踊り終えた時の心の充足感が違う。
最高のクリスマスだ。
◆
クリスマスが終わった次の日はハーマイオニーのおねだりの結果、俺はハリー、ロン、そしてハーマイオニーの四人で過ごしていた。
相変わらず俺とハリーの間に会話はほとんどないが、まあ情報の共有をするくらいの理性はどちらも持ち合わせていた。むしろ昨日あんなことを言ったロンは八つ当たりだったと朝ハーマイオニーに謝ったらしく仲良くやっている。
これは裏話だが、ロンにはダンスパーティー後の夜少し悪いことをしたとは反省している。後悔はしていない。だって彼女のためなら、ね。
「もちろんハグリッドが純巨人じゃないことはわかってた。だって本当の巨人なら6mは身長があるはずだもの。だけど巨人のことになるとヒステリーになるなんてどうかしているわ。全部が全部恐ろしいわけじゃないのに狼人間に対する偏見と同じことね。単なる思い込みだわ」
ロンは何か言いたそうな顔をしていたが俺の顔を見て頭を振るだけで終わらせた。
巨人に対して魔法社会が抱いている思いもわかるし、ハグリッドの気持ちがわかる分俺たちにとってこの問題はそう簡単に解決できそうな問題ではなかった。
残りの休暇はほとんどをハーマイオニーと一緒に過ごした。宿題を一緒にやったり図書館で本を読んだりとまあいつも通りのことも、クリスマスの前と後では楽しさが違った。
そのせいで色々仕事やらをほっぽり出している。閉心術なんてまだ文献を読む段階で放置している。レポートを書くまで個人レッスンを開かないと言われているからさっさと書かなければなのだけど。
雪だるまを作ったり、湖でスケートをしたり、森で薬草を摘みに行ったりもした。ただ二人でいるだけで心が躍るのは不思議なものだ。友達と恋人の違いを毎日実感している。俺も彼女もお互いを甘やかしにかかっている。
ハリーはまだ卵の謎が解けずに焦っているようだ。寝室で奇妙な音を流すものだから俺も真似ができるくらいになってしまった。もちろん真似した後の喉はしばらく使い物にならなくなるが。毎回毎回同じ音を出しているから何かメッセージを伝えているようなのだが、三十丁の鋸楽器には詳しくなくて何も思いつかない。
色々迷いましたがとりあえずこの段階ではまあ満足しています。