猿人類となった男と見える子ちゃん 作:好きな領域は【誅伏賜死】
ちなみにストックはもうないから悪しからず!!
セトさん、見える子ならぬ聴こえる子さんなんですかね?にしても普通の霊的存在の声は聴こえてなさそうだしなぁ……なんかあの甘いもの大好き告げ口クラブの人たちと個別に契約して辛うじて声だけ聞き取れる人?分かりませんなぁ…
「……みこちゃん。ちょっと待ってくれるかい?」
依頼をこなし――特に見どころもなく普通に圧殺した――地元へと戻り、みこちゃんから相談があるとカフェで話を聞いた私は内心頭を抱えるのを我慢しながらも、眼の前でオロオロとするみこちゃんの衝撃発言を反芻する。
『呪霊を祓ってもらうため神社にいったら神とは思えない存在が出てきて、呪霊はその神に食われたがその後自分に「さんかい」と言って消えた』
簡単に言えばそれだけのこと、だがその中には大きな問題があった。どうしたものか…
「そ、その。軽率なことをしちゃったのは分かります。ごめんなさい…でもほっとけなくって……」
「いや、友人を助けたい。それは間違いなくいいことで美徳なんだけど…ちょっと頼った相手がマズいね」
どこの誰かは知らないが、随分とナメたことをする。見つけ次第ブッ祓ってやろう…とは思うのだが「見つけ次第」という言葉の通り見つからないと勝負にすらできない。
「拳威さんが自分から出てこなかったので、恐い相手なのは分かります。ですけど、冬月さんの方が…」
「うん。私は目の前でよーいドンで戦うなら、どんな相手にも負けるつもりはないけれどね……けれど、やっぱり祓う相手がいないのはどうにもならないね」
「……ナビで案内は出来ますよ?」
みこちゃんは手元のスマホを操作し地図アプリを開くと、ナビの履歴を読み込み。神社が
「えっ!? な、なんでっ…!」
「落ち着いてみこちゃん。ほら、飲み物でも一口どうかな」
「は、はい……ほんとうになんで…?」
そこに写されていたのは神社どころか周囲に建物一つない完全な野山。周囲の地名からそこが神隠しの起こる地として定められている場所であることが分かる。
私は直接戦闘能力なら絶対と言っていい自信がある。しかしそれ以外の…調伏した呪霊でカバーできること以外は少々苦手だ。
特に結界術やそれを見破る目の良さとなるともうてんでダメで、それが不要なトラブルに発展したことは一度や二度ではない。
(霊能力者の知り合いがいない訳じゃないが、みんな今繁忙期だし。そもそも私だいたい一人で出来るから横の繋がりがあまりないんだよなぁ……)
ふと頭にヨシエさんがよぎったが、あの人はもう引退している。話す仲ではあったが連絡先は交換していなかったので連絡を取る手段はなかった。
「…今取れる手段。ないわけではないんだけどね」
「えっ!? あるんですか!!」
ぼやくように言ったその言葉がみこちゃんに聞こえてしまったのか。心なしかキラキラした目をこちらに向けてくる。――さすがにこれで誤魔化すのも悪いので、正直に伝えさせてもらおうか。
「うん。相手は今“木を隠すなら森の中”という感じで、あの山のどこかに潜んでいるわけなんだ」
「はい」
「私は木を探せないから“ならば森ごと焼き払おう”ということで山を丸ごと吹き飛ばせば万事解決だね」
「はい……はい!?」
「まぁ、山を吹き飛ばしたら下手したら土砂崩れとか起きて近隣住民に迷惑がかかるし。何より騒ぎになるからしないけど」
「……あの、それだと山を吹き飛ばすことは出来る。みたいに聞こえるんですけど」
頬をヒクつかせるミコちゃんに曖昧に笑って見せる。…多少は緊張も解れただろうか?
山に引きこもる神と、山ごと吹き飛ばせる知り合いの術師。どちらに軍配が上がるか……みたいな感じで恐怖心が和らいでくれれば幸いなのだが。
「申し訳ないけど…力業ができないとなると、正直私が今どうこうするのは不可能だ」
「そうですか…」
基本やられたらやり返すスタンスだったのが災いした。これからはもっと探知系や特殊な手法を取り入れたほうがいいんだろうか…と頭を悩ませる。
「正直、すぐにどうにかなるようなことはないと思うけどね」
「そうなんですかね…」
「神とその眷属の会話がまったく聞き取れなかったのに、『さんかい』という言葉だけが鮮明に聞こえたんだろう? そして、その直前に神は曲がりなりにも呪霊を祓ってくれた。なら…『さんかい』の言葉の意味も大方読み取れる」
私の言葉にみこちゃんが目線を下にし考え込む――ここで脳死で私に聞こうとせずに自分の頭で考えようとするあたり、改めて聡明な子だなと思う。
「3回までなら…呪霊から助けてくれる?」
「神の言う事だから、助けてやる。ぐらいのほうが正しいかな」
みこちゃんの回答に満足しながらも神を名乗ってるやつなんて大体はクソであることを思い出す。その正体が本物であろうが偽物であろうが上位存在にかまけてるようなのはロクなのがいない。自らの領域である境内に呪霊を入れ放置させといて、「助けて」と願われたらハイ喜んでと飛びつき回数を決めるなんてまぁロクデナシと考えた方が良い。
「この世界において契約、縛りとは。私達が普段しているものに比べれば凄まじい強制力が発生するからね…その3回がなくなるまで取り立ての類いは発生しないと思うよ」
「け、契約に縛り…?」
「……わざわざその手を借りなければ大丈夫じゃないかなって意味」
そのうち時間をとって、その『さんかい』をとっとと達成して取り立てに来た瞬間を祓う…恥ずかしい話だが力押ししかない私にはこのぐらいの手段しか思い浮かばなかった。
「これまで通りに呪霊に注意して過ごして、もし拳威を出している時に神が来たらすぐにしまうことを意識していこう。万が一に拳威まで『さんかい』にカウントされたらたまらないからね」
「なるほど……」
頷くみこちゃんの様子を見て、この調子なら大丈夫そうだなと思った。元より聡明な子のようだし一度脅威であることを知れれば二の轍を踏むようなこともないだろう……もちろんだからといって放ったらかしにはしないが。
「…もしかしたら、みこちゃんには私じゃなくてほかの霊能力者の方がいいのかもしれないね」
「え」
「いやほら。これが仮に聖なる力〜とかだったら虫除けみたいな感じでそもそも呪霊から遠ざけられるんだろうなと思ったのさ。私はどうしても後手に回らざるを得ないから…むしろ不向きだね」
イメージしているのは結界とか破邪の首飾りとかその手のものだ。そもそも呪霊を拒絶するあれなら今ほど厄介なことにはなっていなかったのかもしれないなとも思う。
(なら、適任もいないことはないか。何人かにアポを――)
「――、うん?」
そこまで思考を巡らせたところで、対面にいるみこちゃんの様子の変化に気付いた。
細い体を更に縮め、両手を重ねて膝の上に置き更にコンパクトにしており、伏せられた顔。そして髪によってその表情を見ることはできない。
「………。」
「…みこちゃん?」
思わずそう声をかけると、彼女はピクンと小さく体を震わせたかと思えばゆっくりとその顔を上げた。
その黒い目は僅かに潤んでおり、また少し揺れていた。小さなその口は唇をキュッと短く結んでおり簡潔に言えば――泣き出す5秒前のような表情だった。
「!?!?!?!?!?」
声には出さなかったが思いっきり狼狽えた。
(な、なんでそんな泣き出しそうな
呪霊トップに間違いなく食い込む筈なのに噛ませの印象が強い自然呪霊のような言動をしながらも思考を回すがてんで思い浮かばない。いやいやこんな時は案外問題の核はそうして論じている自分自身にあるとも言う。ここは一つ自分の先ほどの発言を顧みてみるか………。
『…もしかしたら、みこちゃんには私じゃなくてほかの霊能力者の方がいいのかもしれないね』
『いやほら。これが仮に聖なる力〜とかだったら虫除けみたいな感じでそもそも呪霊から遠ざけられるんだろうなと思ったのさ。私はどうしても後手に回らざるを得ないから…むしろ不向きだね』
…いや、私ではないな。
私の言葉に不都合なものはなに一つとしてないし、なんならみこちゃんにとっては利になることしか言っていない。
発言の内容は至極真っ当なもののはずだし、最後の評価だって客観的に見ればそうだ。自分だけならともかく私自身は予防するのは不得手なのは確かだし。
くっ…相手の心情をある程度察するのは、曲がりなりにもクセの強い奴らを相手にしていたから得意だと思っていたが、どうやら思い違いだったらしい。仕方ないが本人に聞くしかないか……
「み、みこちゃん。どうかしたのかい?」
ぐし、と鼻をすする音が僅かに聞こえたので少し迷ってハンカチをポケットの中から取り出しみこちゃんの前に差し出す。おずおずとした手つきで彼女はそれを受け取り目元に当てる……普通に泣いていたようだ。本当にどうすればいいのかいよいよ見当もつかないぞ、これは。
「そ、その……」
意を決したみこちゃんが口を開く。私も一瞬身構えるが、彼女が口に出したのは罵倒でもなければ拒絶でもなかった。
「冬月さんがいなくなってしまうのかとおもったら、怖くて……」
「……うん?」
その言葉とともに、ようやく私の灰色の脳細胞が動き出した。
「あぁ、あぁそうか……ごめんねみこちゃん。私の言葉が足りなかった」
「で、でも『他の人の方がいい』って…」
みこちゃんはどうやら、私がみこちゃんの側から離れると思ったから不安になってしまったらしい。
「あくまで『他の人の方が向いてるかも』ってだけだよ。仮にその人が今この場にいて、みこちゃんを任せなさい! って言ってくれても私がみこちゃんの側から離れようだなんて思わないさ」
…いや、この回答は少し違うか。
みこちゃんからすれば私は霊的存在が見えるようになってから初めて現れたそれに対処できる霊能力者。曲がりなりにも大きな安堵を与えてくれたその存在がいなくなること――他の者が代わりにくる。と言っても他の霊能力者を見たことのない四谷みこからすればいなくなるも同義なのだろう――それ自体に強い忌避感と悲壮感を抱いた。とか?
ならかけるべきは……
「みこちゃん。大丈夫だよ」
少しだけ身を乗り出して真っ直ぐにみこちゃんの目を見つめる。みこちゃんの瞳には、私自身の姿が大きく映し出されていた。
「私は呪術師で、呪術師は非呪術師…つまり一般人を守って助けるのが使命なんだ」
まぁみこちゃんは見えているけど、対抗策がないならほぼ非呪術師の括りでいいだろう。
「私の目の前に呪霊の脅威に晒されそうになっている
「ほっぽりだしませんか…?」
「うん。だから心配しないでいいよ」
「……ありがとうございます冬月さん」
そこまで言葉を重ねてようやく表情が柔らかくなったみこちゃんに、内心深い息を吐く。
(しかし、まさか私がいなくなることをそこまで恐れていたとは…まぁ身近に霊能力者は私しかいないのなら無理はないか……)
正直言って意外だったし、同時に嬉しくもあった。が、そうなったこと自体はいただけない。
(やはり、霊能力者の知り合いの紹介が急務なのは変わりないか…そもそも今回の事態は私が預けた呪霊の力不足と、その時みこちゃん自身に私以外に相談できる人がいなかったから起きた事態)
…予期せぬ一度目ならともかく、二度目を起こすつもりはない。
「まぁそれはそうと、私の知り合いの霊能力者のみんなを紹介しようと思っていたのは本当だよ。きっとみんな頼りになる」
「そう、なんですかね……」
ん? なんだか不安そうな表情だが…
「なんだい、もしかして。霊能力者を騙る偽物にでも会ったことがあるのかい?」
「あー、いえ…いやでも……」
みこちゃんの視線が右へ左へと移るが、しばらく考え込む意を決したのか私に向き直った。
「その、前に数珠の相談をしたの。覚えてますか?」
「もちろん。確かみこちゃんにそもそも呪霊を貸しているから無意味、という結論で終わったと思うけれど」
「そうですね。…それで実は相談する前に、拳威さんをしまった状態でおばあさんから数珠をもらったんです……ちょうどなぜかついてくるのもいたので」
「それはそれは…それで?」
「身につけてみて、ついてきてた呪霊が吠えた瞬間弾け飛びました……」
「あー、それはモグリに違いないね」
普段は低位の呪霊に絡まれる比率が高いみこちゃんの近くにそうそうタイミングよく高位呪霊がいるわけがない。大方霊験あらたかなを謳った詐欺師の類だろう。
「安心していいよ。手際や実力は私が保証するから――」
「そうだ。一応砕けた数珠の欠片を持ってきました」
「あっソレは見せてもらえる?」
「これです」
さーて、美術の審美眼はないが、こうした呪具や礼装なら覚えはある。どれどれどんなヤツがでっち上げて作った……の、か…。うん?
………うん。………???
「みこちゃん。そのおばあちゃんって◯◯商店街にお店構えてた?」
「え? は、はい」
「ひょっとしてゴッドマザーだとか名乗ってたりしてない?」
「……あ、看板にそんな名前書いてあったかも」
「…だよねぇ、えっマジで?(素)」
「冬月さん……?」
おっとあぶない。
「みこちゃん。さっきとは逆になるのだけど…私はさっきみこちゃんが困ってる限り助けるって言ったの、覚えてるかい?」
「…言ってくれましたね。嬉しかったです」
「ありがとう。私に迷惑かけちゃうかも、と優しいみこちゃんなら考えるのかもしれないけど、一旦そういうものはほっぽって答えてほしいのだけど」
「みこちゃんのご家族とか、もしくは友達に………よく霊を引き寄せる体質の子っていたりしないかい?」
「…!」
うーん大当たりか。何だろうかこの子は、責任感が強いと言うか……いや、単に呪霊に関しては1人でずっと我慢していたから「喋らない」のが当たり前になったいるのだろう。そこのところの意識改革も…考えることが多いな。
いや、とりあえず目の前の問題か。
「その様子だと、いるみたいだね?」
「えっと、その……伝えるの忘れていました! ごめんなさい!」
「フフッ。ミスは誰にでもあるから、気にしないようにね? じゃあせっかくだから、その子のお話。聞かせてもらっていいかな」
なに、こちらは気の短い神様の『さんかい』ではない。それこそまだまだ『いくらでも』あるのだ。
ゆっくりと、みこちゃんをこれからもどう守っていけるかを考えよう。
そう決意を新たに、私は乗り出していた身を引いた。……ひょっとしてだが、距離が近すぎたりしていないだろうか。
コクデイ様は犠牲になったのだ。作者のモチベとテンポ…その犠牲にな……。
せっかくならパクったり考えたりした霊能力者出してえよなぁ!?出そう!!(見知り発車)