銀魂の世界に蓬莱のお姫様が迷い込んだ話   作:芋けんび

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月のお姫様は月を眺めて微笑む

 

「退屈ね」

 

私、蓬莱山輝夜はそう呟く。自室の和障子の窓を開ければ、代わり映えのしない絵画のような風景が見える。時を幾ら刻もうと、色褪せない綺麗な満月を眺めながら何度目かのため息を吐いた。

 

夜空は嫌いではない。

そこに浮かぶ綺麗で神秘的な満月も、だ。

 

月の都の住人である私は、地上には前から興味があった。地上の民達は一体どのような生活をしているのか。何を食べるのか。どんな遊びが流行っているのか。考えれば考えるほど興味は尽きない。

 

「綺麗な満月…」

 

死ぬ事も老いることも無い私にとって、日常は退屈そのもの。加えて飽き性でもある私は何をやっても続かない。てゐから貰った漫画も鈴仙から強引に奪い取った千枚パズルもすぐ飽きてしまった。

 

「姫様。何を見ていらしたのですか?」

 

「誰かと思えば鈴仙じゃない。隣座る?」

 

「宜しいのですか?」

 

「勿論よ」

 

隣におずおずと言った感じで座り込む。

 

「あー、そう言えば。鈴仙から貸してもらった千枚パズルなんだけどね。あれ、つまらなかったわ。完成した絵は幻想的で凄かったけどね」

 

「勝手に強奪しといて酷くないですかそれ!?」

 

作ってる時は完成するのが待ち遠しいって思ってたのに、いざ完成してみれば私の胸に残ったのは「ああ、終わってしまった」と言う何とも言えない喪失感だけだった。あんなに早く出来上がらないかな〜って思ってたのに。不思議なものよねぇ。

 

「他に何か娯楽は持ってないの〜?退屈は私にとって何よりの天敵なのよ。地獄よりも苦しいの!」

 

「そんな無茶苦茶な…!って、あれ?姫さま、あの小刀ってなんですか?」

 

「ああ、それ?かなりの大昔に少年から貰ったのよ。何か友情の証だって」

 

「友情の証、ですか?お名前は何と言うのです?」

 

「そんなのとっくの昔に忘れちゃったわ。まぁ、笑顔が胡散臭かったのはいつまでも記憶にはあるんだけど、ね」

 

遠い遥か昔に、屋敷をこっそりと抜け出して散歩してる時に、偶然今にも死にそうになっていたその少年を気まぐれに助けた。私に媚び諂う人間達が多い中、その少年はいつでも私に気兼ねなく接してくれる。身分という枠組みを越えた何か。気付けば私は、その少年とこっそり会うことが日課になっていた。今日はこんな事があった、こんな物を食べた、そんな他愛もない話。そんなある時に、この小刀を少年から貰った。『こんな気味の悪いボクと仲良くしてくれるのは貴女だけです。こんな物でしかお礼できませんが、受け取って貰えると嬉しいです。ボク達の友情の証として…』なんて断る私に強引に渡して来るものだから受け取るしかなかった。まぁ、こっそり抜け出してる事が屋敷の人間達にバレてからは外に出るのすらより困難になってたから、その少年とはもう二度と会うことはなかったけども。懐かしいわねぇ。あの少年…あの後どうなったのかしら?

 

 

 

 

 

 

鈴仙に昔話をしたせいか、何故だか無性にあの小刀に触れてみたくなった。珍品コレクターの私から言わせれば、これは本当に何の変哲もない唯の小刀。何百年も前に貰った刀にも関わらず、錆びてもない新品のように真新しい状態なのは、私が刀の永遠を弄っているから。何処にでもある普通の刀だけど、貰った大切なものを雑に扱うほど私は愚かではない。

 

「友情の証として刀を渡して来るなんて面白い子よねー。でも、あのぐらいの時代なら、刀は武士にとっての魂?みたいなものだから普通なのかしらね?」

 

鞘から刀を抜くと、傷一つない刀身が露わになる。光に反射して写り込む満月がとても神秘的だ。今度、コレを片手に弾幕勝負でもしてみようかしら。剣士の真似事ってのも面白そうね、と自分が剣士になった姿を想像してクスリと笑う。

 

「……えっ?なにこれ!?急に刀が光り輝いて…!」

 

刀を鞘に戻そうとしたその刹那、唐突に刀が真っ白い光に包まれて輝き始める。慌てて能力でここ一帯の空間を固定しようと試みるが、どういう訳かそれができなかった。光は徐々に私の今いる部屋中に広がり、あっという間に白く覆われた異空間に変わる。

 

「永琳ーー!鈴仙!てゐ!」

 

大声で従者の名前を叫ぶが返事はなし。何もない白い世界に1人ポツンと取り残された輝夜。然し、こんな非常事態にも関わらず──

 

「私に断りもなく勝手に連れ出そうとするなんて…面白いじゃない。いいわ。退屈過ぎて死にそうだったし、誘いに乗ってあげる」

 

彼女に恐怖や不安は微塵もなかった。それどころか、不敵な笑みを浮かべてすらいる。白い異空間はやがて反転し漆黒に染まっていき、そして徐々にひび割れていく。

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

「お姉さん、こんな所で何してるアルか?」

 

「人間観察よ。此処には老若男女、様々な人間達が楽しそうにしてるから気になっちゃってね」

 

公園の遊具で遊ぶ子供達。その近くベンチに座って喋り込む男女。散歩する老夫婦。輝夜の目にはそのどれもが新鮮な光景ばかりだった。──いや、それだけじゃない。排気ガスの出る謎の乗り物に、蒼空に浮かぶ奇妙な形の船。あんな物は幻想郷には無かった。月の住民による拉致ではないかとも思ったが、須臾を使って他人の認識を弄り私を視認できないようにし、その間に空を散歩して地上を観察して見た所、かぶき町と書かれた板状の物体を見つけた。幾ら月の技術が発展していたとしても、かぶき町などと言う場所を私は知らないし、聞いたこともない。このことから、月の住民による何らかの能力で拉致された訳では無いのだと推測した。ならば、あの賢者の仕業か?いや、それは有り得ない。力を持つものを幻想郷の外へ出すことは、即ち表と裏のパワーバランスが崩れることを意味する。表とは外の世界、裏とは幻想郷の事だ。幻想郷を誰よりも愛しているあの妖怪がそれを許すはずがない。

 

「こんな真昼間からブランコで黄昏れるヤツはみんなダメ人間だ、って銀ちゃんが言ってたネ」

 

「中々容赦がないのね。その銀ちゃんって人は。一部偏見も含まれてるように感じるけど」

 

「お姉さん、何処かのお姫さまみたいな服着てるアルな。ひょっとしてブルジョワ?」

 

「ブルジョワが何なのかはわからないけれど、お姫さまなのは確かね」

 

「マジでか!?何かそよちゃんみたいアルな!」

 

「そよちゃん?」

 

「この国でめちゃんこ偉い将軍の妹で、私の友達アル!」

 

将軍ってことは、此処は江戸時代前期なのかと少女の話を聞きながら考える。然し、どうも私の知っている江戸とは違う気がする。歴史にズレがある?

 

「もしもーし。聞いてるアルか?」

 

「ああ、ごめんなさいね。聞いてなかったわ。どうかしたの?」

 

「お姉さんの名前が知りたいヨ。私は神楽アル!」

 

「神楽ちゃんね。覚えたわ。私は蓬莱山輝夜。気軽に輝夜ってよ「ぐーやんって呼んでもいいアルか!」

 

「せっかく私が話してる所で水を差す〜。ええ、勿論よ。仲良くしてくれると嬉しいわ」





神楽ちゃんのモデルってかぐや姫なんですよ。
つまり…

輝夜の戦闘描写はあった方がいい?

  • できればあった方が良い
  • 無くてもいい
  • 作者に任せる
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