描写が足りなかったので、その補足の回。
時系列的には天導衆が江戸城に到着する前。
輝夜が虚と対面する前になります。
天導衆と虚が江戸城に到着少し前。江戸城の最上階では朧率いる天照院奈落、そして徳川定定が避難用の飛行船に乗り込もうとしていた。
「殿。我らは殿の力添えを仰せつかっており、その私兵でありますゆえ。何なりとご命令を」
「ほう…。何処へでも行くと? ならば…吉原へ行って参れ。我が覇道の始まりの地。そして、裏切りを受けた忌まわしき地。彼の地でそなたらの忠臣を示してみよ」
「如何ように…」
「鈴蘭を殺せ。奈落の力を持ってすれば吉原など一夜にして落ちよう。あの裏切り全ての元凶。あの裏切りから全ての裏切りが生まれた。鈴蘭…そして舞藏。お前達の約束を完膚なきまでに砕き、この因縁に終止符を打ってやろう」
「……今は御身の安全が第一に思いますが…。それで気が済むのであれば。 殿を案内せよ。私も後から行く。舵は吉原だ」
「吉原?それは残念だぜ。当船の行き先は吉原ではなくーー地獄行きだコノヤロー」
「……!? きさ…!」
銀時が城内での借りを返す勢いで木刀を朧の顔面に叩き込む。朧はそのまま砂埃を舞い上げながら壁に叩きつけられた。
「き、貴様ァァァァ!まだ抗うか!まだ吠えるか!その目を閉じれば全てを失わずに済むものを…。それでもお前は戦場に立つのか、白夜叉」
「一度交わした約束を破るなんざ、寝覚めが悪ぃだろが」
「銀時、背中は任せろ。お前は奈落の首領を」
「助かるぜ、ヅラ。そいつらは戦闘のプロ様だ。遠慮は要らねぇ。全力でぶった斬ってやれ」
桂が銀時に背中合わせになりながら、奈落の構成員達の出方を伺う。だが、そんな二人を煽るかのように、奈落の構成員達は一斉に錫杖を構えて飛び掛かって来た。
まるで死肉を貪る烏だ。
「ふっ!」
爆弾を器用に相手の足元に転がしながら、桂は錫杖を躱し、そのまま奈落の構成員達を斬り殺していく。
そして、その隙に銀時が朧に向かって木刀を振るった。
「吉田松陽の忘れ形見達が集まった所で、もうどうにもならぬ。どれだけ足掻こうと、お前達の元には何も戻らぬ。国も仲間も。松陽も。失ったものを求め、戦場を彷徨う幽鬼共が…。お前達の有るべき場所はここではない。己が復讐の業火に焼かれて地獄に還るがいい!」
毒針を木刀で弾いた銀時に、朧は仕込み錫杖で斬りかかる。だが、その攻撃を銀時は紙一重で躱し、そのまま朧に蹴りをかました。
《ねぇ、銀さん。毒針を無効化する方法が一つだけあるのだけど…試してみるかしら?》
「ああ!? 誰だ!こんなクソ忙しい時に話し掛けて気やがる奴ァ!」
耳に届く女の声。キョロキョロと辺りを見渡す銀時。だが、当然周りには桂と朧。天照院奈落の構成員達以外は誰もいない誰もいない。
《ほら、城内で貴方の話し相手になってあげてたじゃない。そんな事より、どうするの?試すの? それとも止めておくかしら?》
「お前…もしかして輝夜か?」
《輝夜?知らない人ね。 私はしがない
「いや、それほぼ答えを自分で言ってんだろ。まぁいいや。それより、そんな方法があんのか?あるなら今すぐやってくれや」
《ええ、分かったわ。それじゃ、一時的に永遠の魔法をかけてあげるわ》
「先程からブツブツと一人で何を喋っているのだ!白夜叉!」
朧が毒針を銀時に放つ。だが、その毒針は銀時の身体に突き刺さる事はなかった。勢いをつけて放たれた毒針は、重力に引っ張られてそのまま地面へと落下する。
「…な!? また針が床に落ちただと!?」
《私が変化を拒めば永遠は固定化される。あの人の毒針も例外じゃないの》
「よく解らんが、ジョジ️〇に出てくるデ〇オの
「何を訳の解らぬ事を!白夜叉、貴様はここで朽ちろ!」
拳を構えて飛び掛かる。だが、銀時はそれを難なく避けた。
《何か勘違いしてるみたいだけれど、私は時間を止めてる訳じゃないわ。永遠と須臾を操るの。言うなれば、種がないトリックマジックみたいなものね。時が止まれば空間そのものの変化も止まる。でも私は、歴史の進行を止める事でそれに伴う事象の変化を拒んでいるの》
「要するにどういう事だってばよォオォォォォォ!!」
早口で捲し立てる輝夜にキレながら銀時は木刀を朧に振り上げる。
《生き物は成長が止まり、食べ物は腐らず、割れ物は落下させても割れないって事。あっ、言い忘れていたけどーー》
「ぐあ!?」
銀時の木刀が朧に直撃。そのまま城の屋根に吹き飛ぶ…
「あり?」
「…む…?」
事はなかった。目をぱちくりさせる銀時。一方の朧も何が起きてるか全く分からない、とでも言いたげな顔で銀時を見つめる。
「銀時!俺達はファンタジーの世界にタイムスリップしたのか!? 爆弾は爆発せんし、こヤツらを幾ら斬りつけても血が出ん所か、傷すら付かん!」
《さっき、永遠の魔法を一時的にかけるって伝えたでしょ? 物体の運動量と衝撃に加わる質量に干渉しちゃったから殴っても相手は吹き飛ばないわ》
「思っくそ物理法則無視してんじゃねーか! じゃあ何か?かめはめ波撃っても相手は塵にならねーの!?」
《かめはめ波が何なのかは分からないけど、多分そうなるわね。生き物の体内エネルギーに干渉するから、変化は永遠に止まったままよ」
「チートじゃねーか! もう姫様が戦えよ!それで全部解決すんだろーが!」
《そうしてあげたいのは山々だけど…。能力に制限があるみたいだから、それは無理な相談ね。後もう一つ、銀さんに云わなければならない事があるわ」
「…?何だ一体?」
《永遠の魔法の効果が切れるわ》
「強者感匂わせながら結局何しに来やがったんだ!テメェェェェェェエエ工!!」
青筋を立てた銀時が力任せに朧の腹部を木刀で殴り付けて吹き飛ばした。地面に叩き付けられた朧は、そのまま瓦礫を巻き上げながら城の屋根を転がり、やがて屋根の突き当りに激突して止まった。
「後で文句言いまくってやるから覚悟しとけや姫様。あ、そうだ。今更だがよォ、爺さん助けてくれてありがとな」
輝夜に背を向けたまま、銀時は礼を言う。
《……ふふっ。ええ。どういたしまして》
「さて、天のパシリ様よォ! 第2ラウンドと行こうじゃねーか!」
全速力で屋根の上を走って朧の元へと駆け寄って行く銀時の背中を眺めながらポツリと《素直じゃないわね。礼を言うなら顔を見て言えばいいのに》と呟く輝夜。
◇◆◇◆◇◆
銀時と朧が激戦を繰り広げてる時、病院へと運び込まれた六転舞藏。幸い、全ての責任を取らされる前に輝夜によって救出された為、片腕は無事だった。だが、極度の緊張と疲れで肉体や精神が限界を迎え、そのまま意識を失ってしまう。
「姫様…?儂は一体どうなったんですじゃ…?」
「爺や!良かったぁ。目を覚ましたのですね」
病院の一室で目を覚ました舞藏は、そよ姫に抱きつかれる。
「姫様……。それで、儂は一体……。儂を庇って下さった、あの鬼のような面を被ったお方は何処に…?」
「ぐーやんさんは江戸城に戻って行きました。爺やはぐーやんさんを知っているの?」
「いえ…。儂も初めてお会いした方ですじゃ。何故こんな見ず知らずの老いぼれを助けるのかと、聞きましたが「自分を育ててくれた老夫婦に似ていた」としか言っておられませんでした…」
月を体現したかのように美しく、そして儚い。舞藏の脳裏に、そんな印象が残った。どうしてあの様な奇妙な仮面を被っていたかは不明だが、きっと人には話せない重大な秘密があの面の裏に隠れているのだろう、と舞藏はそう思うことにした。
「ごめんなさい…爺や」
「姫様?」
「私、ずっと爺やに我儘ばかり言ってた。本当は、爺やの方がずっと苦しかった筈なのに。本当にごめんなさい…!」
泣きながら謝るそよ姫の手に片手を添えながら、舞藏は口を開いた。
「謝る必要など御座いません。全てはこの六転舞藏めの不徳の致す所。姫様は何も悪くありませぬ。儂の方こそ、本当に申し訳御座いませんでした」
そよ姫の頭を優しく撫でながら舞藏は謝罪の言葉を口にする。
「爺やが無事で本当に良かった!」
そよ姫は涙を拭いながら、小さく笑った。
《……お爺様の様子を確認しに来たのだけど、余計な心配だったみたいね》
扉をほんの少しだけ開いて室内の様子を確認した輝夜が小声で呟く。そしてそのまま扉をパタリと閉めてその場を後にした。
《銀さんや神楽ちゃん達は大丈夫かしら?》
江戸城のある方角に視線を向けながら輝夜は、万事屋の安否を気遣った。
《一秒でも早く駆けつけたいけど、須臾はさっき使用したばかりだから暫くは発動できないわね。 まぁ、時間軸をちょっと進めて未来の江戸城を覗いてみましょうか。歴史の修正力は働かない筈だから……》
姫様の永遠と須臾については独自設定が含まれます。
「須臾」を使えばワンパンで戦闘が終わってしまうくらいにはチートなので弱体化はやもえなし。